医療連携ニュース NO.73 眼科

 平成25年8月発行
医療連携ニュース NO.73
TEL:(03)3373-5931 FAX:(03)3370-7478 URL http://www.jreast.co.jp/hospital/
発行責任者 : 医療連携室長 上田賢一 担当 : 尾崎信夫、小池真紀子
眼科
✽ 老眼 ✽
山上 部長
今回のテーマは「老眼」です。「そんなの知ってるよ」と思われるかもしれませんが、改めて、この老眼
とその対策についてご説明します。
【老眼とは】
老眼は、眼内にある水晶体の弾力(調節力)の経年変化(図)により、年齢とともに近方が見にくくな
る現象です。老眼の始まりの頃、読書などの際に離すとはっきり見えるようになるのを経験されると思
いますが、これが徐々に困難になるのが調節力の低下です。近視では、近方にピントがあるのでメガネ
をかけなければ老眼の症状は出ませんが、かければ同様の状態となります。
遠方でも調節力を働かせて見ている遠視*の場合、通常より若い年齢から老眼鏡が必要となりま
す。軽い遠視の方は40歳を過ぎるくらいから、遠視の強い方は40歳以前でも近方が見にくく、眼精疲
労や集中力の低下を起こしやすくなります。また、近視の方でもメガネの度数が強すぎると遠視の状
態になるので、注意が必要です。
なお、60~70歳以上の方で「老眼鏡がいらなくなった」という方がいます。これは目が近視や乱視に
なるためで、角膜の加齢変化や核白内障が原因と考えられます。この場合の白内障は必ずしも手術
を要することはありませんが、眼科での検診をしておいた方がよいと思います。
*調節力を働かせなくても遠方にピントのある眼を正視と呼びます。
図 年齢と調節力の関係
15
10
( ィ
調
節
力
デ
14
調節力は年齢とともに
低下します
10
7
ー )
オ
プ 5
ト
リ
5.5
4.5
3.5 2.5
1.5 1
0.5 0.25 0
0
10 20 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75
年齢
【老眼鏡と遠近両用メガネ】
「老眼は訓練すれば治る」と信じて、老眼鏡を使わない方がいますが、調節力は腹筋などの筋力増
強と異なり、訓練により回復させることはできません。目の病気になるわけではありませんが、眼精疲
労の原因となることもありますので、見にくい場合は無理をしないで老眼鏡をお使いになる方がよい
でしょう。
老眼鏡は、遠方を見るメガネの度数に、①年齢、②見たい距離、により決定される凸レンズの度数を
加えることによって処方されます。老眼鏡を作る場合、ただ「老眼鏡を処方してください」とお願いす
るのではなく、自分がどの距離でどのように使用するか(読書・パソコン・細かい作業など)をあらかじめ
考えておくことが必要です。
遠近両用メガネは、メガネをかけ替えなくても遠近ともに見える利点はありますが、よく見える範囲が狭
く、特に遠視の方は初めのうちは足元が浮いて見えるなど、うまく使えない場合もあります。したがっ
て、遠近両用メガネを作ろうと思った場合、自分のニーズをよく考えた上で、実際に作る度数で十分な
装用テストをしてから購入することがポイントとなります。
特に長い時間同じ作業をする場合など、面倒でもその距離に合った単焦点メガネをかけるのが見え
方としてベストです。近視の方は、あえて遠方の視力を弱めに合わせることにより、中・近距離重視に
するのも一法ですが、調節力の低下とともに遠方視力を落とさないと近方が見にくくなります。このほ
か、メガネの左右で遠近のピントを変え、優位眼(いわゆる効き目)を遠方、非優位眼を近方に合わせ
る方法もあり、(モノビジョン法)、コンタクトレンズ、白内障手術の際の眼内レンズ度数やレーシックでもこの方法
を利用することができます。
【老眼治療の展望】
現在いくつかの老眼治療が行われていますが、白内障手術の際に多焦点眼内レンズを移植するこ
とにより、比較的良好な結果が得られています。ただ、すべての方が適応とはならず、また、見え方が
はっきりしないため移植した眼内レンズを摘出しなければならない可能性もありますので、このレンズで
の手術をお考えの場合、慎重な判断が必要です(多焦点眼内レンズは先進医療として認可されてお
り、手術に関する費用は保険適用にはなりません)。このほか、伝導性角膜形成術やレーシックカメラなど
も紹介されていますが、発展途上の状態です。
老眼と思っていたら思わぬ病気であった、ということが少なからずあります。見にくいと思ったら、眼
科での検診をお受けになることをお勧めします。
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