中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012年 -季節消長

生物機能開発研究所紀要
51
13:51-68(2012)
総 説
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年
―季節消長―
酒井舜1)、水谷嘉孝1)、堀川大介2)、南基泰1)、宗宮弘明1)
1)
中部大学応用生物学部,
要
2)
ジャペル(株)
旨
岐阜県恵那市武並町にある中部大学恵那キャンパス周辺において,2012 年 7 月下旬から同年 10
月下旬までの間,チョウ相の調査を行った.本調査から,恵那キャンパス周辺のチョウ相の特徴を
考察した.本調査では 5 科 43 種のチョウ類が確認された.これは岐阜県に生息するチョウ類の約
3 分の 1 にあたる.また丘陵地に生息するチョウ類に限ると約 43%にあたる.本調査結果を 2003,
2004 年に行われた昆虫相の調査結果と比較した.前回の調査と本調査において確認された種の大
部分(約 75%)は一致していたが,本調査において初めてオオムラサキとナガサキアゲハが確認さ
れた.北上傾向のあるナガサキアゲハの確認は,地球温暖化の進行と関係している可能性がある.
1. はじめに
中部大学恵那キャンパス(以下、恵那キャンパス)
は、岐阜県恵那市武並町竹折の丘陵地(標高約 300m)
にある.総面積は、約 40 万 m2(40 ヘクタール、約 12
万坪)で高低差が約 60m である.この地域は、地質的に
は 200 万年にわたって存続してきた東海丘陵の一部分
をなしている(上野ら 2006)
.
これまで、恵那キャンパスの植物相(南ら 2004)
、
昆虫相(堀川ら 2005)
、哺乳類相(久保ら 2007)が調
査されてきた.今回,恵那キャンパス周辺(図-1参照)
のチョウ相,とくに活動季節ごとの種数,固体数,優
占種の違いなどを調査したので、報告するとともに
2003,2004 年に行われた調査結果(堀川ら 2005)と
比較した.
2. 調査地及び調査方法
図-1 中部大学恵那キャンパス周辺の
航空写真 (Google マップより引用)
2.1 調査方法
ひと月を上中下旬の 3 旬に分け,7 月~10 月ま
で 1 旬につき 2 回の定点観測を地点 A,地点 B の
2 箇所で行った.毎回得られた種ごとの目撃個体
数を記録し,発生と消える時期の解析を行った.
また定点観測以外に,恵那キャンパス周辺で時
間を定めず行う自由調査を行った.
定点観測調査は各地点で 1 時間ずつ行った.調
査地に出現した蝶をすべて捕獲し,種,個体数を
記録した.地点 A は 10 時頃開始し,その後地点
52-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
調査日
時刻,A
天候,A
時刻,B
天候,B
B を調査した.調査間隔は一定が理想であり,計
7/25
10:38
晴時曇
14:41
曇り
画では,毎月,3,8,13,18,23,28 日の 6 回を
7/30
10:10
晴れ
11:35
快晴
調査予定日とし,やむを得ない場合はできるだけ
8/3
10:20
快晴
11:38
快晴
それに近い日でふりかえた.2012 年 7 月下旬から
8/8
10:15
快晴
11:41
快晴
10 月下旬まで,1 旬に 2 回,計 20 回行った.調
8/12※
10:30
晴時曇
12:00
晴時曇
8/18※
10:30
晴時曇
11:57
晴後曇
8/24
10:10
快晴
11:30
快晴
8/30
10:20
快晴
11:52
快晴
9/4
10:05
曇時晴
11:35
曇時晴
9/10※
10:01
快晴
11:29
晴時曇
9/13
10:05
快晴
11:26
快晴
9/19
10:12
曇り△
11:28
晴後雨
9/25
10:05
晴れ
11:26
曇後晴
9/28※
10:03
快晴
11:30
快晴
10/3
10:04
晴時曇
11:23
晴時曇
10/9
10:03
快晴
11:19
晴れ
10/13※
09:40
快晴
10:50
快晴
10/19※
10:02
快晴
11:18
快晴
10/24
10:01
快晴
11:15
快晴
10/29
09:46
快晴
10:57
快晴
査は基本的に二人で行った.(以下,上,中,下
旬をそれぞれ E,M,L と表記する.
)
図-2,3 の調査季節の気温及び日照時間は,気
象庁発表の恵那市のデータを用いた.
本調査で捕獲したチョウは一種一頭ずつ乾燥
標本とした.標本は中部大学環境生物科学科の宗
宮研究室が管理している.
・調査日及び調査開始時刻,天候
時=時々
※1人での調査,△雨上がり
9/4,B にて 2 割程,9/10,A にて 1 割程,
9/10,B にて 7 割程の草刈りが行われた.
図-2 調査季節の気温.地点 A,B の調査時間帯の気温
E:上旬,M:中旬,L:下旬
図-3 調査時の日照時間.地点 A,B の調査時間帯の日照時間
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年 ―季節消長― -53
2.2 調査地 (図-1 参照)
定点観測調査地 A(北緯 35 度 25 分 49.7 秒,東
や樹林の周辺などのほか,都市公園でも見られ,やや
発達した森林環境を好む.本調査では,8M に地点 A
経 137 度 21 分 7.1 秒)
:針葉樹及び広葉樹からな
で 1 頭確認した.
る森林の開けた草地
シロチョウ科
定点観測調査地 B(北緯 35 度 25 分 51.7 秒,東
6.キタキチョウ:小型.東北北部を除く本州に分布す
経 137 度 21 分 27.6 秒)
:針葉樹及び広葉樹からな
る.食草は,メドハギ,ミヤギノハギなどのマメ科.
る森林沿い休耕田
平地~山地の樹林の周辺や草地など食草の生える幅
広い環境に生息し,都市部の公園などでも見られる.
本調査では,地点 A,B で常に多数確認でき,9 月,
3. 結果及び考察
10 月に個体数が増した.
3.1 本調査で確認されたチョウ
7.モンキチョウ:中型.日本全土に分布する.食草は,
アゲハチョウ科
シロツメクサ,レンゲソウなどの各種マメ科植物.平
1.クロアゲハ(未捕獲)
:大型.北海道と本州の一部
地~山地の草地に広く生息し,都市部の公園,農地周
を除く日本全土に分布する.食草は,カラスザンショ
辺,河川堤防のほか,山地草原にも見られる.本調査
ウ,サンショウなどのミカン科.都市部の公園や人家,
では,10E に地点 A で 1 頭,10L に地点 B で 2 頭確認
農地,森林などに幅広く見られ,樹木が茂ったやや日
した.
当たりの悪い場所を好んで生息する.本調査では,7L
8.モンシロチョウ:中型.日本全土に分布する.食草
に恵那スケート場横の道路で 1 頭確認した.
はキャベツ,ブロッコリーなどのアブラナ科.平地~
2.ナガサキアゲハ(未捕獲)
:大型.近年分布域が北
山地に見られるが,主に平地~丘陵地の農地やその周
方に拡大している.東京近郊以南に分布する.食草は,
辺の荒地で発生.本調査では,9M~10E にかけて地点
ナツミカン,ユズなどの栽培ミカン類.平地~丘陵地
A,B 両方で複数確認した.
のミカン類の植栽・栽培地に生息する.主に食草の多
9.スジグロシロチョウ:中型.日本全土に分布する.
い,農地や人家周辺で発生する.本調査では,9 月 19
食草は,ヒロハコンロンソウ,タネツケバナなどのア
日に恵那スケート場横の道路で 1 頭確認した.
ブラナ科.平地~山地の森林の林縁部や渓流沿いのほ
3.アゲハ:大型.日本全土に分布する.食草は,カラ
か,都市近郊の公園や荒地にも広く見られる.やや湿
スザンショウやイヌザンショウなどのミカン科.平地
った環境を好む.本調査では,8E に地点 A で,8M に
~低山地の人家や農地などの栽培ミカン類がある場
地点 B で,それぞれ 1 頭確認した.
所や伐採地や林縁部でカラスザンショウやイヌザン
シジミチョウ科
ショウなどが生える場所に生息する.本調査では,地
10.ウラギンシジミ:小型.北海道,東北の大部分を
点 A で 7L,8E,9L に,地点 B では 9L にそれぞれ 1 頭
除いた地域に分布する.食草は,クズ,フジなどのマ
確認した.
メ科.平地~低山地の樹林地,樹林の多い公園や人家
4.キアゲハ(未捕獲)
:大型.ほぼ日本全土に分布す
周辺に生息する.本調査では,地点 A,B で多数確認
る.食草はセリ,ミツバなどのセリ科.都市部の公園,
した.
丘陵地の農地などから山地の草原や湿地などに生息
11.ムラサキシジミ(未捕獲)
:小型.北海道と東北北
する.本調査では,8E に武並駅北の草原で 1 頭確認
部を除く地域に分布する.食草は,アラカシ,イチイ
した.
ガシなどのブナ科.平地~山地の照葉樹林や落葉広葉
5.カラスアゲハ(未捕獲)
:大型.日本全土に分布す
樹林に生息する.暖地性のため,照葉樹林が中心だが,
る.食草はコクサギ,カラスザンショウなどのミカン
夏季にはやや山地でも見られる.本調査では,7L に
科.主に平地~山地の森林環境に生息する.渓流沿い
地点 B で確認した.
54-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
12.トラフシジミ:小型.沖縄を除く日本全土に分布
などの各種スミレ科植物.平地~山地の樹林およびそ
する.食草は,マメ科,ウツギ科,バラ科,ツツジ科
の周囲に生息する.丘陵地~低山地が分布の中心だが,
など幅が広い.平地~山地の樹林に生息する.雑木林
山地の林道でも個体数は多い.本調査では,地点 B で
の明るい林縁や渓谷,灌木が茂る草原などに主に生息
9E に 1 頭確認した.
し,公園や人家でも見られる.本調査では,7 月 30
19.オオウラギンスジヒョウモン:中型.沖縄と千葉
日にテニスコート東側で 1 頭確認した.
を除くほぼ日本全土に分布する.食草は,タチツボス
13.ベニシジミ:小型.沖縄を除く日本全土に分布す
ミレ,ニョイスミレなどの各種スミレ科植物.主に山
る.食草は,スイバ,ギシギシなどのタデ科.平地~
地の樹林地周囲の草原に生息する.ウラギンヒョウモ
山地の草原.路傍や農地周辺などの小規模な草地にも
ンよりもやや森林性で,林間の草原などやや小規模な
生息し,ある程度の草地があれば都市公園や都市部の
草原にも見られる.本調査では,地点 A で 9L に確認
荒地にも見られる.本調査では,地点 A,B で確認で
した.
き,10 月に個体数が増した.
20.ウラギンヒョウモン:中型.沖縄を除く日本全土
14.ウラナミシジミ:小型.ほぼ日本全土に分布する.
に分布する.食草は,スミレ,タチツボスミレなどの
食草は,エンドウ,ダイズ,クズなどのマメ科.平地
各種スミレ科植物.平地~山地の草原に生息する.山
~丘陵地のマメ科植物の生える農地に生息する.秋に
地の自然草原,採草地,農地周辺,河川堤防などに見
はマメ科の野生種の見られる路傍や荒地,伐採地など
られる.本調査では,地点 A,B でともに 9 月,10 月
でも見られる.本調査では,地点 A,B で 9L に確認し
に複数確認した.
た.
21.ツマグロヒョウモン:中型.関東以南に分布する.
15.ヤマトシジミ:小型.北海道と東北北部を除いた
食草は,パンジー,ニオイスミレなどのスミレ類の栽
地域に分布する.食草は,カタバミ.平地~低山地の
培種.主に平地~丘陵地の明るい草地に生息する.人
人為的な環境に広く見られ,人家や石垣,荒れ地など
家周辺,都市公園,農地などに見られ,特にパンジー
カタバミが少しでも生える空間があれば,どこでも発
の植栽に伴って都市部で多い.本調査では,地点 A で
生する.本調査では,地点 A,B ともに確認でき,地
7L から 10L まで散発的に複数確認した.地点 B では
点 B では 9 月~10 月にかけて個体数が増した.
10E~10L にそれぞれ 1 頭確認した.
16.ルリシジミ:小型.沖縄を除く日本全土に分布す
22.イチモンジチョウ:中型.沖縄を除く日本全土に
る.食草は,マメ科,ミズキ科,タデ科などが主で幅
分布する.スイカズラ,キンギンボクなどのスイカズ
が広い.平地~山地の樹林やその周辺,農地,河川,
ラ科.平地~山地の林縁部や低木林,雑木林周辺,や
公園など食草のあるさまざまな環境に見られる.本調
や発達した森林の渓谷沿いに生息する.本調査では,
査では,地点 A,B で確認でき,9 月に個体数が増し
地点 A で 8E と 9E に 2 頭確認した.
た.
23.アサマイチモンジ:中型.本州に分布する.食草
17.ツバメシジミ:小型.沖縄を除く日本全土に分布
は,スイカズラ,タニウツギなどスイカズラ科.平地
する.食草は,レンゲソウ,シロツメクサなどの各種
~低山地の明るい樹林環境に生息する.雑木林や農地
マメ科植物.平地~山地の丈の低い草地に生息する.
の林縁部や低木林のほか,河川堤防の藪でよく見られ
公園や農地,河川堤防,牧草地,採草地など様々な環
る.イチモンジチョウよりも明るい環境を好み,一般
境に見られる.本調査では,地点 A,B ともに常に確
に山地には見られない.本調査では,地点 B で 7L に
認でき,9 月に個体数が増した.
確認した.
タテハチョウ科
24.コミスジ:中型.沖縄を除く日本全土に分布する.
18.メスグロヒョウモン:中型.沖縄を除く日本全土
食草は,フジ,クズなどのマメ科.平地~山地の樹林
に分布する.食草は,タチツボスミレ,ニョイスミレ
地およびその周辺,農地や公園など幅広い環境に生息
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年 ―季節消長― -55
する.本調査では,地点 A で 7L~10E に,地点 B で
地点 A で 8L~9E にかけて 2 頭確認した.
7L~9M に確認した.地点 A,B のピークはそれぞれ 8L
31.クロヒカゲ:中型.沖縄を除くほぼ日本全土に分
~9E,9E に見られる.
布する.食草は,メダケ,アズマネザサなどのイネ科.
25.キタテハ:中型.沖縄を除くほぼ日本全土に分布
平地~山地の樹林及びその周辺,丘陵地の雑木林周辺
する.食草は,カナムグラ,カラハナソウなどのクワ
に生息する.本調査では,地点 A で 9E~9L にかけて
科,ホソバイラクサなど.主に平地~低山地のカナム
3 頭,地点 B で 8E~9L にかけて 4 頭確認した.
グラがよく生える草地に生息する.人家や公園,荒地,
32.サトキマダラヒカゲ:中型.沖縄を除く日本全土
墓地などの明るい草地の空間や河川の堤防や鉄道の
に分布する.食草は,マダケ,アズマネザサなどのタ
土手,農地脇などで見られる.本調査では,地点 A で
ケ・ササ類の各種.平地~山地の森林に生息する.平
7L,9L,10E にそれぞれ 1 頭確認した.地点 B で 10M
地~丘陵地を中心とし,都市部の公園でも見られる.
に 3 頭確認した.
本調査では,
地点 A で 8M~9E にかけて 12 頭確認した.
26.ルリタテハ:中型.日本全土に分布する.食草は,
33.ヒメジャノメ:中型.沖縄を除くほぼ日本全土に
サルトリイバラ,ホトトギスなどのイネ科.平地~山
分布する.食草は,イネ,チヂミサヤなどのイネ科,
地の森林や林縁,雑木林などの明るい場所に見られる
カサスゲ,ヒメスゲなどのカヤツリグサ科.平地~低
ほか,都市部の公園や人家など小規模な樹林の周辺に
山地の明るい草地,農地,河川堤防,雑木林周辺など
も生息する.
本調査では, 地点 A で 8L~9L にかけて 3
の開放的な環境に生息する.
地点 A で 8E~8M に 2 頭,
頭確認した.
10E に 1 頭,地点 B で 9E に 1 頭確認した.
27.コムラサキ:中型.沖縄を除く日本全土に分布す
34.ヒメウラナミジャノメ:小型.沖縄を除く日本全
る.食草は,ネコヤナギ,オノエヤナギなどのヤナギ
土に分布する.平地~低山地,樹林地の周辺,農地,
科.平地~山地のヤナギ類の生える樹林,河畔林や湿
河川堤防,公園,湿地などの草丈の低い草地に生息す
地帯,渓谷のほか,都市公園や街路樹などにも生息す
る.本調査では,地点 A で 8E~9E に多数,地点 B で
る.
本調査では地点 B で 8L に黒色型を 1 頭確認した.
7L~9M に非常に多く確認した.地点 A,B のピークは
28.オオムラサキ:大型.沖縄を除くほぼ日本全土に
それぞれ 8L,8M~8L に見られる.
分布する.食草は,エノキ,エゾエノキなどのニレ科.
セセリチョウ科
主に丘陵地~低山地の落葉広葉樹林,里山の雑木林や
35.ダイミョウセセリ(未捕獲)
:小型.沖縄を除くほ
河畔林,山地のブナ林に生息する.本調査では,地点
ぼ日本全土に分布する.食草は,ヤマノイモ,ナガイ
A で 8E に 1 頭確認した.本種は環境省レッドリスト
モなどのヤマノイモ科.平地~山地の樹林およびその
で準絶滅危惧に指定されている.
周辺の草地,樹林周辺の明るい場所に生息する.本調
29.ジャノメチョウ:中型.沖縄を除く日本全土に分
査では,地点 B で 8M に 1 頭確認した.
布する.食草は,ススキ,スズメノカタビラなどのイ
36.ギンイチモンジセセリ:小型.沖縄を除く日本全
ネ科,ヒカゲスゲ,ショウジョウスゲなどのカヤツリ
土に分布する.食草は,ススキ,チガヤなどのイネ科.
グサ科.河川堤防や荒地,公園,農地や雑木林周辺の
平地~山地の乾性草原,河川堤防や農地周辺の草地,
草地,採草地や山地草原の明るい環境に生息する.本
採草地,山地の稜線沿いの草原に生息する.地点 B で
調査では,地点 A で 7L~8M に多数,地点 B で 7L に 1
7L に 1 頭確認した.本種は環境省レッドリスト及び
頭確認した.
岐阜県レッドリストで準絶滅危惧に指定されている.
30.ヒカゲチョウ:中型.本土と四国に分布する.食
37.ホソバセセリ:小型.北海道と沖縄を除く日本全
草はメダケ,アズマネザサなどのイネ科.平地~山地
土に分布する.食草はススキ,カリヤスなどのイネ科.
の樹林及びその周辺,平野部の公園~丘陵地の雑木林
平地~低山地の森林に接した草地や疎林・林縁部など
周辺のほか,山地の樹林周辺に生息する.本調査では,
のやや日当たりの悪い場所に生息する.本調査では,
56-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
地点 B で 7L に 2 頭確認した.
ある蝶にとって,飛ぶ場所や時刻を変えるなどの
38.コチャバネセセリ:小型.沖縄を除く日本全土に
対応をし,それも限界を越えると,もはや活動を
分布する.食草は,クマザサ,ミヤコザサなどイネ科.
停止せざるをえないことになる.」(福田,高橋,
平地~山地のタケ類・ササ類の生える場所に生息する.
1988)とあるように,チョウは気温が高すぎると不
単調なササ群落よりも,森林内の空間の林庄や林縁な
活発になる.そのため 8 月は高温によって種数が
どでよく見られる.本調査では,地点 A で 8E に 1 頭,
落ち込んだものと推察される.そして 9 月には
地点 B で 7L,8L に 1 頭,9E に 2 頭確認した.
30℃を下回り,夏眠(夏季の不活動状態)してい
39.ヒメキマダラセセリ:小型.北海道,沖縄を除く
たヒョウモンチョウ類などが出現したため,種数
日本全土に分布する.食草は,チヂミササ,アシボソ
が再び増加したものと考えられる.
などのイネ科,カサスゲなど.主に低山地~山地の樹
また種数の落ち込み時期において,地点 A より地
林の林縁,疎林,樹林周辺の草原に生息する.本調査
点 B の方が 1 旬遅れている.これは地点 B が水辺
では,地点 B で 9L に 1 頭確認した.
環境であるために,高温になるのが遅れたからで
40.キマダラセセリ:小型.沖縄を除く日本全土に分
あると考えられる.そして種数の回復時期におい
布する.食草は,アズマネザサ,マダケなどのタケ科.
ては,地点 B の方が 1 旬早い.これもやはり,地
ススキ,エノコログサなどのイネ科.平地~低山地の
点 B が水辺環境であるために,地点 A より先に気
樹林及びその周辺の草地,都市公園や雑木林などに生
温が下がったためであると考えられる.
息する.本調査では,地点 B で 9L に 1 頭確認した.
3.3 個体数
41.イチモンジセセリ:小型.日本全土に分布するが,
地点 A における大きなピークは 9E と 9L だっ
北海道は非土着個体のみ.食草は,イネ,イヌムギな
た(図-5).これは気温の変動が大きく関係してい
どのイネ科.山地~高山,都市の花壇など,どのよう
ると考えられる.
「2.種数」の項目でも述べたよう
な場所でも生息する.本調査では,地点 A で 9E~10M
に気温が 30℃を超えるとチョウは活性が低下す
に,地点 B で 8M~10L に多数確認した.地点 A,B の
る.そのため 8 月はチョウの活性が落ちていた.
ピークは 10M,8L と 9M~10E に見られる.
9 月は気温が 30℃を下回り,チョウの活動に際し
42.チャバネセセリ:小型.北海道を除く日本全土に
て適温となったため増加したものと考えられる.
分布する.食草は,チガヤ,イネなどのイネ科.林縁,
ところが,ピークの 9E, 9L に挟まれた 9M は個
農地,河川,公園,人家に生息する.本調査では,地
体数が落ち込んでいる.これは,地点 A の優占種
点 B で 10E に 1 頭確認した.
であるコミスジ,サトキマダラヒカゲ,ヒメウラ
43.オオチャバネセセリ:小型.沖縄を除く日本全土
ナミジャノメの消失時期に重なったためである
に分布する.食草は,アズマネザサ,メダケなどのイ
と考えられる.
ネ科.平地~山地のササ原や樹林周辺の草地に生息す
地点 B における大きなピークは 8L,9M,10E
る.本調査では地点 A で 9E~10E に,地点 B で 7L~
だった.これは極端に個体数の多かった 3 種,キ
10E に確認した.いずれもピークは 9E と 9L に見られ
タキチョウ,ヒメウラナミジャノメ,イチモンジ
る.
セセリの個体数のピークによるものだと考えら
3.2 種数
れる.
合計種数のグラフ(図-4)を見ると,地点 A では
また各地点の全種を合わせた総個体数は,地点 A
8M から,地点 B では 8E から種数が落ち込んでい
が 238 頭であるのに対し地点 B は 724 頭であり約
ることが読み取れる.これは気温が関係している
3 倍にあたる.これは地点 B が水辺環境であるた
と考えられる.
「……気温が 30℃を超えることが
めに,チョウ類の食草となる植物が豊富にあるか
多い日本の夏は,体温調節機能が弱い変温動物で
らだと考えられる.
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年 ―季節消長― -57
図-4 地点 A,B で確認した各旬の合計種数
図-5 地点 A,B で確認した各旬の合計個体数
3.4 優占種
てほぼ決まっている.この性質を化性という.
」(白
各地点の平均個体数を超える種を共優占種と
水隆,2006).東京近郊では,カラスアゲハ,ヒメ
し,最も優占度が高い種を優占種とする.地点 A
ウラナミジャノメは 3 化性である.しかし図-6-1
では 3 科 8 種 179 頭 (全個体数の 75.2%)であり,
より最後の発生時期が,日本のチョウ(2012)に書
個体数はキタキチョウ,コミスジ,ジャノメチョ
かれている 3 化性の場合とは考えられず、2 化性
ウ,ツバメシジミ,ヒメウラナミジャノメ,ベニ
である可能性が高い.このことは、恵那キャンパ
シジミ,サトキマダラヒカゲ,ウラギンシジミの
ス周辺が比較的冷涼な気候であることに関連す
順に多かった.地点 A の優占種は調査季節全体を
ると考えられた.
通して,キタキチョウであった.
3.6 恵那キャンパス周辺のチョウ相の特性
地点 B では 4 科 5 種 613 頭(全個体数の 84.7%)で
恵那キャンパス周辺で行った本調査では 5 科 43
あり,個体数はキタキチョウ,ヒメウラナミジャ
種が確認できた.日本のチョウ(2012)によると岐
ノメ,イチモンジセセリ,ヤマトシジミ,ツバメ
阜県に生息するチョウは 5 科 147 種である.今回
シジミの順に多かった.また地点 B では季節にお
の調査でその約 3 分の 1 の種が確認できたことに
ける優占種の移り変わりが確認された.7L~9E
なる.さらに丘陵地に生息するチョウ類に限定す
はヒメウラナミジャノメ,9M~10L はキタキチョ
ると,岐阜県では 5 科 94 種,本調査では 5 科 40
ウが優占種であった.
種であるので,約 43%の種が確認できたことにな
二つの地点を比較すると,地点 A は共優占種 8 種
る.
で全個体数の 75.2%を占めるのに対し,地点 B は
また環境省で準絶滅危惧に指定されているオオ
共優占種 5 種で全個体数の 84.7%を占めており,
ムラサキ,ギンイチモンジセセリが確認された.
地点 B は共優占種の優占度が高かった.
田中(1988)が日本産のチョウ類各種を,森林的環
3.5 チョウ相から見た恵那キャンパス周辺の気候
境を好む種と草地的環境を好む種に大別してい
「昆虫が 1 年間に繰り返す世代の数は種によっ
る.ここでは,本調査で得られた種を森林性と草
58-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
原性の 2 つに分け(表-2),地点 A,B の比較,チョ
・ミヤマセセリ
このうちの 5 種,ギフチョウ,コツバメ,ミヤ
ウ相の把握に用いた.
マセセリは 4 月,アカシジミ,テングチョウは 6
表-1
草原性
森林性
合計
月に見られるチョウであり,今回の調査時期より
地点 A(種)
13
16
29
も早いため,確認できなかったものと考えられる.
地点 B(種)
16
16
32
オオヒカゲは岐阜県では準絶滅危惧に指定され
合計(種)
16
23
39
ており,個体数が少ないため確認できなかったと
表-1,表-2,表-3 から地点Aの草原性チョウ類 4
考えられる.ウラミスシジミとオオミドリシジミ
科 13 種は全て地点 B でも確認されたことが読み
の活動時間はそれぞれ夕暮れと朝方であり,今回
取れる.森林性チョウ類は地点 A の 5 科 16 種と
の調査時間外であるため確認できなかったと考
地点 B の 5 科 16 種のうち一致しているのは 9 種
えられる.ミヤマカラスアゲハは 2003,2004 年
であり,生息する種類に大きな違いが見られた.
の調査においても,2003 年は確認されておらず,
自由調査を含めた調査全体で確認された 43 種
恵那キャンパス周辺においては個体数の少ない
のうち森林性チョウ類は 26 種であり,全体の約
チョウであると考えられる.コジャノメについて、
60%だった.この森林性チョウ類の多さが恵那キ
その活動時期,活動時間ともに,本調査の調査時
ャンパス周辺のチョウ相の特性のひとつと言え
期,調査時間と一致しているにもかかわらず確認
る.これは恵那市の森林率が約 77%(恵那市の森林
できなかったことから,個体数が減少している可
整備計画書による値)と高いことに裏付けられる.
能性がある.
このキャンパスの森林性チョウ類で最も優勢な
2003,2004 年の調査で確認されておらず,本調
ものはキタキチョウであった.
査で確認された種は以下の 14 種である.
3.7 2003,2004 年の調査との比較
・ナガサキアゲハ
2003,2004 年の調査(2005)と比較するために,
・アゲハ
リストに記載されている種を当時の標本を用い
・カラスアゲハ
て確認した.この際,リストに記載されていたチ
・ウラナミシジミ
ョウ目 5 科 38 種の他に,キアゲハ,ウラギンヒ
・ツバメシジミ
ョウモンの 2 種が確認された.この 2 種は記載漏
・オオウラギンスジヒョウモン
れとして,報告しておく.
・アサマイチモンジ
2003,2004 年の調査で確認された 5 科 39 種の
・コムラサキ
中で,今回確認できなかった種は以下の 10 種で
・オオムラサキ
ある.
・ホソバセセリ
・ギフチョウ
・ヒメキマダラセセリ
・ミヤマカラスアゲハ
・キマダラセセリ
・アカシジミ
・イチモンジセセリ
・ウラミスシジミ
・チャバネセセリ
・オオミドリシジミ
本調査ではチョウ相のみに注目したのに対し,
・コツバメ
2003,2004 年の調査は昆虫種全てを調査対象とし
・テングチョウ
ているため,必然的にチョウ相の把握にかけられ
・オオヒカゲ
た時間は少なかったと思われる.ゆえに,普通に
・コジャノメ
存在した種でも確認されなかった可能性が考え
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年 ―季節消長― -59
られる.そのため,本調査は 7 月下旬という遅い
河野恭廣・谷山鉄郎(2005)「東海丘陵要素植物群落の保
時期から始めたにもかかわらず,新たに 14 種も
全生態学的研究‐保全・修復とその管理に関する研究‐
確認できたのだと考えられる.
(2)中部大学恵那キャンパス内及びその周辺部の昆虫種
また新たに確認された中で特筆すべき種は,オ
調査」中部大学生物機能開発研究所紀要,5:21-35
オムラサキとナガサキアゲハの 2 種である.オオ
ムラサキは環境省で準絶滅危惧に指定されてお
環境省,生物多様性情報,システム絶滅危惧種情報,第
り,良好な里山の象徴とされるチョウである.こ
4 次レッドリスト(2012):
の種が 2 頭確認されたということは,2003,2004
http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f.html
年の調査当時よりも恵那キャンパス周辺の森林
環境が良好な状態になった可能性も考えられる.
桐谷圭治・湯川淳一(2010)「地球温暖化と昆虫」全国農
次にナガサキアゲハについて考察する.白水隆
村教育協会
(2006) によると,2006 年の時点では恵那市はナガ
サキアゲハの分布域でない.そして本調査では 1
気象庁:気象観測データ
頭の目撃のみであった.そのことから近隣の市か
http://www.jma.go.jp/jma/index.html
らの迷チョウである可能性が高い.日本のチョウ
(2012)によると南方系のチョウであるナガサキア
久保壮史・上野 薫・南 基泰・寺井久慈・愛知真木子・
ゲハは近年分布域が北方へ拡大している.北原ら
谷山鉄郎(2005)「東海丘陵要素植物群落の保全生態学
(2001)はナガサキアゲハの分布拡大の原因は気候
的研究‐保全・修復とその管理に関する研究‐(5)中部大
温暖化に伴う冬季の気温上昇の影響が強いと推
学恵那キャンパスにおける哺乳類調査」中部大学生物
定している.そこで恵那市の 1980 年以降の最寒
機能開発研究所紀要,7:101-107
月の平均最低気温の変化を調べ,表-7 に示した.
表-7 最寒月平均最低気温の推移
松本和馬(2007)「5. 丹沢主稜の森林衰退とチョウ相の変
時期
‘80
‘90
00~11
気温
-4.6
-4.0
-3.7
化」丹沢大山総合調査学術報告書
上記より 1980 年から 2011 年までの間に 0.9℃の
南 基泰・寺井久慈・河野恭廣・谷山鉄郎(2004)「東海丘
気温の上昇がわかる.このペースで気温上昇が継
陵要素植物群落の保全生態学的研究‐保全・修復とその
続すれば恵那市に本種が定着する可能性がある.
管理に関する研究‐(1)中部大学恵那キャンパス内及び
その周辺部の植物種調査」中部大学生物機能開発研究
謝辞
所紀要,4:41-51
本調査を進めるに当たり,調査にご協力頂いた恵那
研修センターの方々,各位に深く感謝申し上げます.
日本チョウ類保全協会(2012)「フィールドガイド日本のチ
ョウ」,誠文堂新光社
引用文献
福田晴夫・高橋真弓(1988)「蝶の生態と観察」,築地書館
白水隆(2006)「日本産蝶類標準図鑑」,学習研究社
岐阜県レッドデータブック(2009):
田中蕃(1988)「蝶による環境評価の一方法」日本鱗翅学
http://www.pref.gifu.lg.jp/kankyo/shizen/red-data-dobutsu/
会特別報告 (6),527-566
堀川大介・南 基泰・寺井久慈・愛知真木子・上野 薫・
上野 薫・安藤憲亮・加藤知恵・愛知真木子・南 基泰・
60-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
寺井久慈・谷山鉄郎(2006)「東海丘陵要素植物群落の保
全生態学的研究‐保全・修復とその管理に関する研究‐
(3)中部大学恵那キャンパス内湿地の土壌調査」中部大
学生物機能開発研究所紀要,6:33-43
山本道也(2009)「竜ヶ崎市周辺のチョウ相,1992 年:季節
消長」流通経済大學論集,43(4),191-206
八杉龍一・小関治男・古谷雅樹・日高敏隆(1996)「岩波
生物学辞典 第 4 版」岩波書店
Title: Butterfly fauna in Ena Campus of Chubu
University, 2012
Author(s) : Shun SAKAI 1) , Yoshitaka MIZUTANI 1) ,
Daisuke HORIKAWA 2 ) , Motoyasu MINAMI 1 ) ,
Hiroaki SOMIYA1)
Address(es) : 1)Department of Environmental Biology,
College of Bioscience & Biotechnology, 2) Japell Co.
Ltd.
Keywords : Butterfly, fauna, Ena Campus
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年 ―季節消長― -61
表-2 地点 A における旬ごとの確認個体数 E:上旬,M:中旬,L:下旬
性質
種名
7L
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
種別個体数
(頭)
森林性
アゲハ
1
1
0
0
0
0
1
0
0
0
3
森林性
カラスアゲハ
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
森林性
キタキチョウ
5
4
2
5
4
6
9
11
17
12
75
草原性
モンキチョウ
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
草原性
モンシロチョウ
0
0
0
0
0
1
0
2
0
0
3
森林性
スジグロシロチョウ
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
森林性
ウラギンシジミ
0
1
0
1
0
0
2
2
2
1
9
草原性
ベニシジミ
2
1
1
3
2
0
1
4
0
0
14
草原性
ウラナミシジミ
0
0
0
0
0
0
2
0
1
0
3
草原性
ヤマトシジミ
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
2
草原性
ルリシジミ
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
草原性
ツバメシジミ
1
3
1
0
4
1
3
1
1
0
15
森林性
オオウラギンスジヒョウモン
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
草原性
ウラギンヒョウモン
0
0
0
0
0
0
3
1
0
0
4
草原性
ツマグロヒョウモン
1
0
0
1
0
1
2
0
0
1
6
森林性
イチモンジチョウ
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
2
森林性
コミスジ
2
3
3
4
7
2
0
1
0
0
22
草原性
キタテハ
1
0
0
0
0
0
1
1
0
0
3
森林性
ルリタテハ
0
0
0
1
0
1
1
0
0
0
3
森林性
オオムラサキ
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
2
草原性
ジャノメチョウ
9
6
2
0
0
0
0
0
0
0
17
森林性
ヒカゲチョウ
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
2
森林性
クロヒカゲ
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
3
森林性
サトキマダラヒカゲ
0
0
4
5
3
0
0
0
0
0
12
森林性
ヒメジャノメ
0
1
1
0
0
0
0
1
0
0
3
森林性
ヒメウラナミジャノメ
0
3
3
5
4
0
0
0
0
0
15
森林性
コチャバネセセリ
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
草原性
イチモンジセセリ
0
0
0
0
1
1
1
1
3
0
7
草原性
オオチャバネセセリ
0
0
0
0
3
1
2
1
0
0
7
22
28
19
27
31
15
31
27
24
14
238
8
14
10
10
11
9
15
12
5
3
29
総個体数 A(頭)
種数(種)
62-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
表-3 地点 B における旬ごとの確認個体数 E:上旬,M:中旬,L:下旬
性質
種名
森林性
アゲハ
森林性
7L
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
確認個体数
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
キタキチョウ
12
15
9
12
13
38
32
41
36
28
236
草原性
モンキチョウ
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
草原性
モンシロチョウ
0
0
0
0
0
0
1
1
0
1
3
森林性
スジグロシロチョウ
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
森林性
ウラギンシジミ
0
3
1
0
0
2
2
1
0
0
9
森林性
ムラサキシジミ
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
草原性
ベニシジミ
1
0
0
1
0
0
0
8
3
4
17
草原性
ウラナミシジミ
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
草原性
ヤマトシジミ
2
1
0
0
0
1
8
9
9
3
33
草原性
ルリシジミ
0
0
0
0
1
6
0
0
0
0
7
草原性
ツバメシジミ
3
2
1
2
2
10
5
4
0
0
29
森林性
メスグロヒョウモン
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
草原性
ウラギンヒョウモン
0
0
0
0
1
1
0
0
2
1
5
草原性
ツマグロヒョウモン
0
0
0
0
0
0
0
1
1
1
3
森林性
アサマイチモンジ
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
森林性
コミスジ
2
1
0
0
8
1
0
0
0
0
12
草原性
キタテハ
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
3
森林性
コムラサキ
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
草原性
ジャノメチョウ
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
森林性
クロヒカゲ
0
1
0
1
0
1
1
0
0
0
4
森林性
ヒメジャノメ
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
森林性
ヒメウラナミジャノメ
32
37
65
58
28
10
0
0
0
0
230
森林性
ダイミョウセセリ
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
草原性
ギンイチモンジセセリ
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
森林性
ホソバセセリ
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
森林性
コチャバネセセリ
1
0
0
1
2
0
0
0
0
0
4
森林性
ヒメキマダラセセリ
0
0
2
2
0
1
0
0
0
0
5
草原性
キマダラセセリ
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
草原性
イチモンジセセリ
0
0
1
11
1
18
19
27
7
1
85
草原性
チャバネセセリ
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
草原性
オオチャバネセセリ
1
1
0
2
4
2
6
3
0
0
19
総個体数(頭)
63
61
81
91
62
91
77
96
61
41
724
種数(種)
13
8
8
10
11
12
11
10
7
8
32
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年 ―季節消長― -63
図-6-1 地点 A における個体数変動
7L
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
7L
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
3.アゲハ
5.カラスアゲハ
10
6.キタキチョウ
7.モンキチョウ
8.モンシロチョウ
9.スジグロシロチョウ
10.ウラギンシジミ
13.ベニシジミ
14.ウラナミシジミ
15.ヤマトシジミ
16.ルリシジミ
17.ツバメシジミ
19.オオウラギンシジミ
20.ウラギンヒョウモン
21.ツマグロヒョウモン
22.イチモンジチョウ
24.コミスジ
25.キタテハ
26.ルリタテハ
28.オオムラサキ
29.ジャノメチョウ
30.ヒカゲチョウ
31.クロヒカゲ
32.サトキマダラヒカゲ
64-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
図-6-2 地点 A における個体数変動
7L
33.ヒメジャノメ
34.ヒメウラナミジャノメ
38.コチャバネセセリ
41.イチモンジセセリ
43.オオチャバネセセリ
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年 ―季節消長― -65
図-7-1 地点 B における個体数変動
7L
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
7L
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
3.アゲハ
40
30
20
10
6.キタキチョウ
7.モンキチョウ
8.モンシロチョウ
9.スジグロシロチョウ
10.ウラギンシジミ
11.ムラサキシジミ
13.ベニシジミ
14.ウラナミシジミ
15.ヤマトシジミ
16.ルリシジミ
17.ツベメシジミ
18.メスグロヒョウモン
20.ウラギンヒョウモン
21.ツマグロヒョウモン
23.アサマイチモンジ
24.コミスジ
25.キタテハ
27.コムラサキ
29.ジャノメチョウ
31.クロヒカゲ
66-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
図-7-2 地点 B における個体数変動
7L
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
7L
8E
8M
8L
9E
9M
9L
10E
10M
10L
33.ヒメジャノメ
60
50
40
30
20
10
34.ヒメウラナミジャノメ
35.ダイミョウセセリ
36.ギンイチモンジセセリ
37.ホソバセセリ
38.コチャバネセセリ
39.ヒメキマダラセセリ
40.キマダラセセリ
20
10
41.イチモンジセセリ
42.チャバネセセリ
43.オオチャバネセセリ
中部大学恵那キャンパス周辺のチョウ相,2012 年 ―季節消長― -67
表-4 2003,2004 年及び 2012 年の調査結果
03,04年の調査
2012年の調査
Papilionida
アゲハチョウ科
Papilio xuthus xuthus
アゲハ
‐
Papilio machaon hippocrates
キアゲハ
○
Papilio protemor
クロアゲハ
○
△
Papilio dehaanii
カラスアゲハ
‐
△
Papilio maackii
ミヤマカラスアゲハ
○
‐
Papilio memnon thunbrgii
ナガサキアゲハ
‐
△
Luehdorfia japonica
ギフチョウ 環・Ⅱ,岐・準
○
‐
Pieridae
シロチョウ科
Eurema mandarina
キタキチョウ
○
○
A,B
Colias erate poliographs
モンキチョウ
○
○
A,B
Artogeia rapae crucivora
モンシロチョウ
○
○
A,B
スジグロシロチョウ
○
○
A,B
A,B
Artogeia melete
Lycaenidae
○
※
A,B
△
A
シジミチョウ科
Curetis acuta paracuta
ウラギンシジミ
○
○
Narathura japonica japonica
ムラサキシジミ
○
Rapala arata
トラフシジミ
○
○
Lycaena phlaeas daimio
ベニシジミ
○
○
A,B
Lampides boeticus
ウラナミシジミ
‐
○
A,B
Pseudozizeeria maha
ヤマトシジミ
○
○
A,B
Celastrina argiolus ladonides
ルリシジミ
○
○
A,B
Everes argiades hellotia
ツバメシジミ
‐
○
A,B
Japonica lutea lutea
アカシジミ
○
‐
Wagimo signatus
ウラミスシジミ
○
‐
Favonius orientalis
オオミドリシジミ
○
‐
Callophrys ferra
コツバメ
○
‐
Nymphalidae
△
B
タテハチョウ科
Damora sagana liane
メスグロヒョウモン
○
○
B
Argyronome ruslana lysippe
オオウラギンスジヒョウモン
‐
〇
A
Fabriciana adippe pallescens
ウラギンヒョウモン
○
○
A,B
Argyreus hypeerbius hyperbius ツマグロヒョウモン
Limenitis camilla japonica
イチモンジチョウ
○
※
○
A,B
○
〇
A
Limenitis glorifica
アサマイチモンジ
‐
○
B
Neptis sappho intermedia
コミスジ
○
○
A,B
Polygonia c-aureum
キタテハ
○
○
A,B
Kaniska canace no-japonicum
ルリタテハ
○
〇
A
Apatura metis substituta
コムラサキ
‐
○
B
Saaskia charonda charonda
オオムラサキ 環・準
‐
〇
A
Libythea celtis celtoides
テングチョウ
○
Ypthima argus argus
ヒメウラナミジャノメ
○
○
A,B
Minois drays bipunctatus
ジャノメチョウ
○
○
A,B
Ninguta schrenckii
オオヒカゲ 岐・Ⅱ
○
‐
Lethe sicelis
ヒカゲチョウ
○
〇
A
Damora sagana liane
クロヒカゲ
○
○
A,B
Neope goschkevitschii
サトキマダラヒカゲ
○
〇
A
Mycalesis gotama fulginia
ヒメジャノメ
○
○
A,B
Mycalesis francisca perdiccas
コジャノメ
○
‐
‐
68-酒井舜・水谷嘉孝・堀川大介・南基泰・宗宮弘明
Hesperiidae
セセリチョウ科
03,04年の調査
2012年の調査
Daimio tethys tethys
ダイミョウセセリ
○
Erynnis montanus montanus
ミヤマセセリ
○
‐
Leptalina unicolor
ギンイチモンジセセリ 環,岐・準
○
○
B
Isoteinon lamprospilus
ホソバセセリ
‐
○
B
Thoressa varia
コチャバネセセリ
○
○
A,B
Ochlodes ochraceus rikuchina
ヒメキマダラセセリ
‐
○
B
Potanthus flavus
キマダラセセリ
‐
○
B
Parnara guttata guttata
イチモンジセセリ
‐
○
A,B
Polytremis pellucida pellcida
オオチャバネセセリ
○
○
A,B
Pelopidas mathias oberthueri
チャバネセセリ
‐
○
B
△
○:捕獲(標本有り).△:目撃(標本無し).‐:未確認.
環:環境省カテゴリー.岐:岐阜県カテゴリー.準:準絶滅危惧種.Ⅱ:絶滅危惧Ⅱ類
A:地点 A で確認された種.B:地点 B で確認された種.
※:2003,2004 年の調査においての記載漏れの種
B