くらしと経営の相談室 <税務編> 減価償却不足額の処理について パートナーズプロジェクト税 理 士 法 人 税理士 藤井英雄 Q 会社の決算において固定資産の減価償却額 を、税法上の限度額以下で計上しました。 翌期にその計上不足額を追加計上できるで しょうか。 A な ん ら か の 事 情 で 減 価 償 却 費( 普 通 償 却 分 )に 不 足 額 が あ る 場 合 で も 、税 務 上 は そ の期の一期分の償却限度額以上の追加計 上 は で き ま せ ん 。 但 し 、 特別償却費につい て は 翌 期 に 繰 り 越 す こ と が で き る の で 、翌 期 において前期から繰り越した分の特別償却 費を追加計上することができます。 (1)減価償却費の考え方 減 価 償 却 は 、資 産 を 使 用 期 間 に お い て 適 正 に 費 用 配 分 す る 会 計 手 法 で す の で 、任 意 の金額を計上することはできません。 し か し 、税 法 上 は 法 人 の 減 価 償 却 は 任 意 計 上 で あ る た め 、決 算 に お い て 数 字 調 整 の た め 利用されることが過去は多くありました。 現 在 で は 、会 社 法 の 整 備 や「 中 小 企 業 の 会 計に関する指針」 の 普 及 に よ り 減 価 償 却 費 の調整はまれなケースと言えるでしょう。 また不足額がある場合には個別注記表 に記載することが望ましいでしょう。 ( 2 )減 価 償 却 費 が 税 法 限 度 と 異 な る ケ ー ス ・会計上の償却方法と税務上届け出た償却方 法が違う場合 ・ 計算誤りや、数値調整の場合 ・ 会計上で過年度分を計上した場合 ・ 会社独自で耐用年数を見積もっている場 合 (3)普通償却と特別償却 ①普通償却とは、定率法や定額法などで次の ように毎期の決算に計算されるものです。 ・定率法の償却限度額 期 首 帳 簿 価 額 ×定 率 法 の 償 却 率 ・定額法の場合の償却限度額 取 得 価 額 ×定 額 法 の 償 却 率 ② 特 別 償 却 と は 、良 く 知 ら れ る「 中 小 企 業 者 等 が 取 得 し た 機 械 等 の 特 別 償 却 制 度 」な ど 3 0 種 類 ほ ど の 制 度 が あ り 、特 別 償 却 費 の 限度額は概ね次のように計算されます。 取 得 価 額 ×特 別 償 却 の 償 却 率 (4)償却不足額はどうなる? <定率法の場合> 償却不足額があると、翌期首の帳簿価額が その分多くなり翌期以降の償却額が多くな ることから、償却不足額はいずれ解消されま す。 <定額法の場合> 償却限度額を計算する償却期間が償却不足 分長くなります。耐用年数の経過後、償却不 足額は解消されます。 以上のことから、償却不足額はいずれ解消 されることから、税務上は償却不足額の繰越 は認められていません。 <特別償却の場合> 特別償却は政策目的のために減価償却費の 増加をインセンティブに資産の取得を促進さ せようとする制度ですから、償却不足額が出 た場合1年間の繰越を認めています。 <償却限度額の計算例> 普通減価償却費 200万円 特別減価償却費 100万円 決算書の償却費 100万円 償却限度額300万円 普通償却分 特別償却分 200万円 100万円 償却実施額 100万円 翌期繰越不可 翌期繰越可
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