毒物劇物業務上取扱者のための 毒物劇物危害防止マニュアル (改訂版) 平成19年1月 鹿児島県保健福祉部薬務課 目次 第1 毒物及び劇物取締法に基づく業務上取扱者の位置付け及び留意点 ..............1 1 法に基づく業務上取扱者の位置付け .....................................1 2 法に基づく業務上取扱者の留意点 .......................................3 第2 毒物劇物危害防止規定の策定 .............................................11 第3 毒物劇物の貯蔵に係る安全対策 ...........................................21 1 試験室等における安全対策 ............................................21 2 屋外タンクにおける安全対策 ..........................................26 第4 毒物劇物の運搬に係る留意点 .............................................29 第5 毒物劇物の取扱いに係る安全性情報 .......................................33 1 取扱いに係る安全性情報の収集 ........................................33 2 県内で主に取り扱われている毒物劇物の取扱いに係る安全性情報 ..........34 3 県内の事業所における毒物劇物の事故処理剤について ....................53 参 考 保護具の備付け .....................................................54 付 録 関係行政機関等連絡先 ...............................................55 初版(平成16年2月) 第1 毒物及び劇物取締法に基づく業務上取扱者の位置付け及び留意点 1 法に基づく業務上取扱者の位置付け 毒物及び劇物取締法(以下「法」という。)では,毒物劇物の製造業者や販売業者については登録制度により規制を行っていることは勿論であるが,購入した毒物劇物を原材料として使用するなど業務上取り扱う者(以下「業務上取扱者」という。)についても,取扱いに関する 安全衛生を確保するための所要の規制がなされている。 業務上取扱者には,法の規制内容からみて次の2種類がある。(法第 22 条第 1 項及び第 5 項) (1)届け出を必要とする業務上取扱者 → 要届出業務上取扱者 (2)届出を必要としない業務上取扱者 → 非届出業務上取扱者 具体的に各事業者が上記( 1 )∼( 2 )のどの業務上取扱者に該当するか以下に示す。 (1)要届出業務上取扱者 下表の左欄に掲げる業種で,右欄に掲げる毒物劇物を取り扱う事業者が該当する。 (施行令第 41 条,第 42 条) 「要届出業務上取扱者」の業種 「業務取扱上届出を要する毒物劇物」の種類 (1) 電気めっき業 無機シアン化合物たる毒物及びこれを含有する製剤 (2) 金属熱処理業 無機シアン化合物たる毒物及びこれを含有する製剤 (3) 最大積載量が 5,000kg 以上の自動車若しくは被牽引自動車(以下「大型自動車」という。)に固定された容器を用い,又は内容積が厚生労働省令で定める量以上の容器を大型自動車に積載して行う毒物又は劇物の運送の事業 ( 1 )黄燐りん ( 2 )四アルキル鉛を含有する製剤 ( 3 )無機シアン化合物たる毒物及びこれを含有する製剤で液体状のもの ( 4 )弗ふっ化水素及びこれを含有する製剤 ( 5 )アクリルニトリル ( 6 )アクロレイン ( 7 )アンモニア及びこれを含有する製剤(アンモニア 10 %以下を含有するものを除く)で液体状のもの ( 8 )塩化水素及びこれを含有する製剤(塩化水素 10 %以下を含有するものを除く)で液体状のもの ( 9 )塩素 ( 10 )過酸化水素及びこれを含有する製剤(過酸化水素 6 %以下を含有するものを除く) ( 11 )クロルスルホン酸 ( 12 )クロルピクリン ( 13 )クロルメチル ( 14 )硅けい弗ふっ化水素酸 ( 15 )ジメチル硫酸 ( 16 )臭素 ( 17 )硝酸及びこれを含有する製剤(硝酸 10 %以下を含有するものを除く)で液体状のもの ( 18 )水酸化カリウム及びこれを含有する製剤(水酸化カリウム 5 %以下を含有するものを除く)で液体状のもの ( 19 )水酸化ナトリウム及びこれを含有する製剤(水酸化ナトリウム 5 %以下を含有するものを除く)で液体状のもの ( 20 )ニトロベンゼン ( 21 )発煙硫酸 ( 22 )ホルムアルデヒド及びこれを含有する製剤(ホルムアルデヒド 1 %以下を含有するものを除く)で液体状のもの ( 23 )硫酸及びこれを含有する製剤(硫酸 10 %以下を含有するものを除く)で液体状のもの (4) しろありの防除を行う事業 砒素化合物たる毒物及びこれを含有する製剤 以上の要届出業務上取扱者には特に次のような規制がある。 ①業務の届出(法第 22 条第 1 項) 事業場ごとに,届出を要する毒物劇物をその業務上取り扱うこととなった日から 30 日以内に,その事業場の所在地の所轄の保健所長に次の事項を届け出なければならない。 ・氏名及び住所 (法人の場合には,その名称及び主たる事務所の所在地) ・当該事業場で取り扱う毒物劇物の品目 ・事業場の所在地及び名称 届出を要する毒物劇物を業務上取り扱わないことになったとき,又は上記届出事項を変更したときも同様とする。(法第 22 条第 3 項) ②取扱責任者の届出(法第 22 条第 4 項で準用する法第 7 条第 3 項) 要届出業務上取扱者は,その事業場ごとに専任の毒物劇物取扱責任者を置かなければならず,置いたとき又は変更したときには,その事業場の所在地の所轄の保健所長に届け出なければならない。 毒物劇物取扱責任者の資格(法第 8 条) ◎次のいずれかに該当する者は毒物劇物取扱責任者になることができる。 イ 薬剤師 口 厚生省令で定める学校で,応用化学に関する学課を修了した者 ハ 毒物劇物取扱者試験合格者 ◎ 次のいずれかに該当する者は毒物劇物取扱責任者になれない。 イ 18 歳未満の者 口 心身の障害により毒物劇物取扱責任者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの ハ 麻薬,大麻,あへん又は覚せい剤の中毒者 二 毒物劇物又は薬事に関する罪を犯し,罰金以上の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から起算して 3 年を経過していない者 (2)非届出業務上取扱者(法第 22 条第 5 項) 厚生労働省令で定める毒物劇物は,すべての毒物及び劇物とする。 2 法に基づく業務上取扱者の留意点 毒物劇物による危害を防止するためには,取扱者がそれぞれの立場で,注意を払い,不測の危害の発生防止に務めなければならない。 前述の 1 (1)要届出業務上取扱者及び(2)非届出業務取扱者に該当する事業者については,法に基づく毒物劇物業務上取扱者の留意点を遵守しなければならないとされている。 なお,前述の非届出業務上取扱者に該当する事業者については,法に基づく毒物劇物業務上取扱者としての規制はないが,一般国民に対しても規制している事項(廃棄基準の遵守,運搬貯蔵その他取扱基準の遵守,シンナーの取扱い,爆発性毒物劇物の取扱い)について規制対象 となるのは,いうまでもない。 以下に法に基づく毒物劇物業務上取扱者の留意点を示す。 ( 1 )購入手続き(法第 14 条) 毒物劇物を購入する場合は,毒物劇物販売業の登録を有する者から購入する。購入の際は,次の事項を記載し,押印した書面の提出が必要である。 ① 毒物劇物の名称,数量 ② 購入年月日 ③ 氏名,職業及び住所(法人にあっては,その名称及び主たる事務所の所在地) ④ 押印 ( 2 )保管・管理(法第 22 条第 4 項) 毒物劇物が盗難にあったり,紛失したりしないように保管を厳重に行う。 厳重な保管をするには ① 保管設備は,錠のかかる丈夫な設備にする。 ② 毒物劇物は他のものと区別して保管する ③ 保管設備が性質上かぎをかけることができないものであるときは,その周囲に,堅固なさくを設ける。 ( 3 )取扱い(法第 22 条第 4 項) 毒物劇物が事業所の外に飛散し,漏れ,流れ出,若しくはしみ出,又はこれらの施設の地下にしみ込んだりすることのないように ① 毒物劇物を取り扱う場所の周囲に防液堤や避難ピット等を設ける。 ② 床面はコンクリート等にする。 運搬中に,毒物劇物が飛散,流出しないように,容器を,ロープ,シート等でしっかりと固定する。 ( 4 )表 示(法第 12 条) ①毒物及び劇物の容器や被包には,「医薬用外」の文字及び毒物については赤地に白色をもって「毒物」の文字,劇物については白地に赤色をもって「劇物」の文字を表示しなければならない。 (黒ぬりの部分を赤色で) (劇物の文字を赤色で) ②毒物劇物の貯蔵場所には「医薬用外」の文字及び毒物については「毒物」,劇物については「劇物」と表示し,注意を喚起する。 なお,貯蔵場所へ表示する文字には着色の規定はない。 ( 5 )廃 棄(法第 15 条の 2 ,施行令第 40 条) 毒物劇物を廃棄する場合は,技術上の基準に従って行い,環境汚染のないようにする。 廃棄の方法 ①厚生省薬務局長通知「毒物及び劇物の廃棄の方法に関する基準」にしたがって廃棄する。 ②廃棄に際しては,あらかじめ,作業計画,作業責任者を定め適切に行う。 ( 6 )事故の際の措置(法第 16 条の 2 ) 取り扱う毒物劇物が事業所の外に飛散し,漏れ,流れ出,しみ出,又は地下にしみ込んだ場合に,不特定又は多数の者について保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときは,直ちに,保健所,警察署又は消防機関に届け出るとともに,保健衛生上の危害を防止する ために必要な応急の措置を講じなければならない。 〔例えば〕 ①事故発生日時及び場所 ②事故当事者の氏名,住所及び業種 (事故当事者が運送人の場合は,荷送人の氏名及び住所も) ③事故の状況 ④毒物劇物の名称及び数量 ⑤被害の状況 また,毒物劇物が盗難にあったり,又は紛失した場合には,直ちにその旨を警察署に届け出なければならない。 毒 物 医薬用外 劇 物 毒物及び劇物取締法の概要について(物→規制→人の面から) 1 盗難,紛失の防止措置 2 施設外への飛散,流出等の防止措置 3 施設外で運搬する際の飛散等の防止措置 4 飲食物容器の使用禁止 取扱い( 11 条) 営業者( 3 条, 4 条) 製造・輸入業(大臣) →製剤製造業(知事) 販売業 登録基準( 5 条) 構造設備基準 人の適格性 事故の際の措置( 16 条の 2 ) 1 保健所,警察署又は消防機関への届出 2 必要な応急の措置を講ずる 3 盗難,紛失時の警察署への届出 毒物・劇物 表示,譲渡,交付の制限( 12 , 14, , 15 条) 1 容器及び被包の表示 ○「医薬用外」及び「毒物」又は「劇物」(着色) ○名称,成分・含量,解毒剤の名称など 2 貯蔵,陳列場所の表示 「医薬用外」及び「毒物」又は「劇物」 3 販売又は授与時 ○名称及び数量,年月日,譲受人の氏名・職業・住所(書面 5 年間保存) ○ 18 歳未満の者,心身の障害により業務を適正に行うことができない者,麻薬等の中毒者への交付制限 技術上の基準 廃棄( 15 条の 2 ) 回収等の命令( 15 条の 3 ) 廃棄物の回収,毒性の除去など 毒物劇物取扱い責任者( 7 条, 8 条) 各施設に専任で置く 保健衛生上の危害の防止に当たる 業務上取扱者( 22 条 1 項, 5 項) 電気メッキ業 金属熱処理業 運送業 しろありの防除業 その他の事業 毒物劇物業務上取扱者について 1 要届出業者(法第22条第1項:施行令第41条,42条) (1)業務上シアン化ナトリウム及び無機シアン化合物たる毒物及びこれを含有する製剤を取り扱う政令で定められた事業として ・電気めっきを行う事業 ・金属熱処理を行う事業 の2種類がある。 (2)黄燐等の23品目の毒物又は劇物を取り扱う政令で定められた事業として ・大型自動車(最大積載量が 5000kg 以上の自動車又は被牽引自動車)に固定された容器を用い,又は内容積が厚生省令(施行規則第 13 条の6)で定める量(四アルキル鉛を含有する製剤にあっては 200L ,その他の毒物又は劇物にあっては 1000L )以上の容器を大型自動車に積載して行う毒物又は劇物の運送の事業がある。 (3)業務上砒素化合物たる毒物及びこれを含有する製剤を取り扱う政令で定められた事業として ・しろありの防除を行う事業 2 不要届出業者(法第22条第5項:施行令第18条の2) 毒物劇物営業者,特定毒物研究者及び上記1に規定する者以外 ・原料に毒物劇物を使用する化学工業メーカー ・食品製造過程で毒物劇物を使用する食品メーカー ・毒物劇物である農薬を使用する農家 ・研究,教育の目的で毒物劇物である試薬を使用する研究,教育機関等 法第22条第5項:不要届出業者への準用規定 毒物劇物の取扱い(法第 11 条) 1. 盗難,紛失の防止措置 2. 施設外への飛散,流出等の防止措置 3. 施設外で運搬する際の飛散等の防止措置 4. 飲食物容器の使用禁止 毒物劇物の表示 ( 法第 12 条第 1 項,第 3 項 ) 1. 容器及び被包の表示 ¥¢ 医薬用外 £ 及び ¢ 毒物 £ 又は ¢ 劇物 £ 2. 貯蔵,陳列場所の表示 ¥¢ 医薬用外 £ 及び ¢ 毒物 £ 又は ¢ 劇物 £ 廃棄(法第 15 条の 2 ) 技術上の基準に合致した廃棄 運搬等の技術上の基準等(法第 16 条) 毒物劇物の運搬,貯蔵等の技術上の基準 事故の際の措置(法第 16 条の 2 ) 1. 保健所,警察署又は消防機関への届出 2. 必要な応急措置を講ずる(事故の拡大防止) 3. 盗難,紛失時の警察署への届出 立入検査等(法第 17 条) 毒物劇物業務上取扱者への立入検査権限 1. 必要な報告の徴収 2. 帳簿その他の物件の検査 3. 関係者への質問 4. 最小限度の収去 毒物劇物危害防止対策に係る関係機関の連絡体系毒物劇物の飛散,漏えい,流出事故発生時の措置(製造所,営業所,店舗又は事業場の場合)警察署県警察本部①交通規制②事故者の救出,救護及び避難,誘導,広報情報提供③事故の実態把握及び原因調査届出厚生労働省事故原因 者保健所薬務課①事故状況の把握①事故処理作業に①事故の実態把握②事故の状況の関係対する助言②事故処理に関する機関への届出②事故の実態把握物資及び資材の備情報提供③被害拡大防止のた③事故を起こした蓄,整備の把握等めの必要な応急措事業者への指導③厚生労働省 への通報置 () 保健衛生上重大な危害発生の場合④厚生労働省への報告消防機関危機管理防災課①火災の防御等の応急措置②負傷者の救出,救護・搬送協力事業所①事故処理に関する物資及び資材の備蓄,整備②事故時の応急措置に関する協力(事故処理剤の提供)※毒物及び劇物取 毒物劇物の飛散,漏えい,流出事故発生時の措置(運搬時の場合)警察署県警察本部荷送人①事故状況の関係機関①交通規制への届出②事故者の救出,②運送人の講ずる応急救護及び避難,措置への協力誘導,広報③事故の実態把握情報提供連協及び原因調査絡議届出厚生労働省事 故原因者保健所薬務課①事故状況の関係機関①事故処理作業に①事故の実態把握への届出対する助言②事故処理に関する②荷送人への事故の報②事故の実態把握物資及び資材の備情報提供告と応急措置の確認③事故を起こした事蓄,整備の把握等③被害拡大防止のため業者への指導 ③厚生労働省への通報の必要な応急措置 () 保健衛生上重大な危害発生の場合④厚生労働省への報告消防機関危機管理防災課①火災の防御等の応急措置②負傷者の救出,救護・搬送道路管理機関①道路の応急復旧及び交通路線の確保②事故の実態把握協力事業所①事故処理に関する物資及び資材の備蓄,整備②事故時の応急 毒物劇物の盗難・紛失発生時の措置事故発生当事者製造・輸入・販売業者,特定毒物研究者業務上取扱者(要届出業者・不要届出業者)届出警察署指導情報提供保健所情報提供生活衛生課薬務課農政部連携連携食の安全推進課情報提供通報(保健衛生上重大な危害発生の場合)報告 別紙1−4毒物劇物危害防止対策フロー受診毒物劇物取締法16条の2情報提供に基づく届出情報提供情報提供・連携情報提供情報提供協力情報提供情報提供鹿児島県地域防災計画・危険物災害等の防止策・事故現場処理体制鹿児島県高速道路等危険物連携運搬車両事故防止等対策 協支援報告議会運営要綱情報提供情報提供情報提供・連携情報収集日本中毒情報センター通報県薬剤師会薬事情報センター報告指示毒劇物等を原因とする報告警戒本部食中毒対策要綱情報提供・初動調査 実態の把握報告(被害の状況)情報提供(毒劇物の特定)連携報告・現地対 策本部の設置等開催(平常時)指示対策本部解毒剤の手配 緊急医薬品備蓄病院報告 県内6カ所事故発生現場保健体育課学校教育課食の安全推進課保健福祉課医務課消防機関危機管理防災課原因者・被害者盗難,紛失飛散,漏えい,流出事故薬 務 課道路管理機関科学捜査研究所県警察本部警察署保健所生活衛生課学事文書課総括危機管理監保健福祉部長県環境保健センター現地対策本部知 第2 毒物劇物危害防止規定の策定 毒物劇物による危害を防止するために,各事業所においていろいろな対策が講じられているが,実際に取り扱う毒物劇物の種類・量,取扱い方法等の態様に応じて危害防止対策が講じられるべきである。 この危害防止対策を体系的にまとめたものが,危害防止規定である。 危害防止規定は,事業所における毒物劇物の管理・責任体制を明確にし,もって保健衛生上の危害を未然に防止することをねらいとした,事業所の自主的な規範である。 まず,危害防止規定に盛り込むべき事項を示す。 ( 1 )職務と組織に関する事項 次に示すような作業について,管理・責任体制を明確にすることが必要である。 ① 毒物劇物の貯蔵・取扱いに係る作業 ② 毒物劇物の取扱い設備等の点検・保守 ③ 事故時の通報・応急措置 ( 2 )貯蔵・取扱い作業の方法に関する事項 実際に,毒物劇物を取り扱うあらゆる作業における作業手順を明確にし,作業者に周知 しておく必要がある。 ① 毒物劇物の受入れ,貯蔵,出庫,調製,(製造),使用,廃棄等に関する作業手順 ② 各種装置・機器類の作業手順 ③ 異常事態が発生したときの作業を中断する際の手順 ( 3 )設備等の点検の方法に関する事項 毒物劇物の貯蔵所(倉庫,タンク等),製造所,使用場所,運搬装置・容器,パイプライン,避難ピット,処理施設等の点検に関する作業手順を明確にしておく。 ( 4 )設備等の整備又は補修に関する事項 毒物劇物の貯蔵所(倉庫,タンク等)製造所,使用場所,運搬装置・容器,パイプライン,避難ピット,処理施設等の整備や補修に関する作業手順を明確にしておく。 ( 5 )事故時の通報又は応急措置活動に関する事項 次のことに閲し,具体的に定めることが重要である。 ① 事故時の連絡・通報体制 ② 事故処理体制 ③ 応急措置活動の手順 ( 6 )関係者の教育又は訓練に関する事項 定期的に研修・訓練が行われるよう計画する。 ① 毒物劇物の取扱い,事故時の応急措置方法等に関する関係者への教育 ② 危害防止に関する研修及び実地訓練等の計画 ( 7 )その他 その他実情に応じて,危害防止のために遵守すべき事項を定める。 次に,毒物劇物危害防止規定の作成案並びに作業手順書(塩酸の受入れ)の作成例を参考までに示す。 なお,毒物劇物危害防止規定は,具体的,かつ,詳細な内容となるよう作成することが重要であり,品目ごとの安全性情報,管理組織図,個別の作業手順書,事故時の通報連絡図,点検項目表,教育訓練計画書等の関係書類を添付しておくことが必要である。 例 示 株式会社○○○○鹿児島工場 毒物劇物危害防止規定(案) 1 目 的 この規定は,株式会社○○○○鹿児島工場における毒物又は劇物(以下「毒物劇物」という。)の受入れ,貯蔵,出庫,調整,(製造)使用,廃棄等に関する安全管理及び責任体制を明確にすることにより,もって保健衛生上の危害を未然に防止することを目的とす る。 2 適 用 この危害防止規定の事項は,株式会社○○○○鹿児島工場が取り扱う毒物劇物に適用する。 3 定 義 この規定において,用語の定義は次のとおりである。 3 . 1 「毒物劇物」とは,毒物及び劇物取締法(昭和 25 年法律第 303 号。以下,「法」という。)第 2 条に規定する毒物及び劇物をいう。 4 毒物劇物管理・責任体制 4 . 1 管理組織 当工場における毒物劇物の管理責任に関する組織は別表第 1 (略)のとおりとする。 4 . 2 毒物劇物取扱責任者 工場に毒物劇物取扱責任者(以下「取扱責任者」という。)を置き,以下の業務を行わせる。 1) 毒物劇物の取扱いに係る安全管理の業務を総括的に管理,監督すること。 2) 前項の業務を達成するために,工場長に対し必要な意見を述べるとともに,毒物劇 物を取り扱う関係部署の責任者に対して必要な助言を行う。 3) 当工場で取り扱う毒物劇物の安全性情報を収集すること。 4) その他毒物劇物の取扱いに係ること。 5 施設の安全対策 5 . 1 盗難防止措置 毒物劇物の取扱施設及び貯蔵施設(以下,「取扱施設等」という。)には,盗難又は紛失を防止するため,必要な措置を講ずる。 5 . 2 飛散,流出等防止措置 取扱施設等には,毒物劇物の飛散,流出,地下浸透を防止するため,防液堤等を設置するなど必要な措置を講ずる。 5 . 3 除外設備等 1) 取扱施設等には,毒物劇物を含有する粉じん,蒸気または排水の処理に必要な設備及び器具を設置すること。 2) 取扱施設等には,毒物劇物の漏えいに備えて除外設備,処理剤,保護具等を必要数量常備すること。 5 . 4 誤操作防止の措置 取扱施設等の配管,バルブ等には誤操作防止のため次の措置を講ずる。 1 )毒物劇物の配管には当該配管内の流体名,流れ方向を示す標識を取り付ける。 2 )毒物劇物のバルブには,当該パルプの開閉状態を示す標識を取り付ける。 5 . 5 毒物劇物の表示 1 )毒物劇物の容器及び被包には,「医薬用外」の文字及び毒物については赤地に白色をもって「毒物」の文字,劇物については白地に赤色をもって「劇物」の文字を表示すること。 2 )毒物劇物の貯蔵場所には,「医薬用外」の文字及び毒物については「毒物」の文字,劇物については「劇物」の文字を表示すること。 6 作業の安全管理 6 . 1 立入制限 取扱施設等には,取扱施設等の責任者が,特に立入りを認めた者以外の立入りを禁止するとともに,その旨を見やすい箇所に掲示する。 6 . 2 保護具の着用 作業者は,毒物劇物を取り扱うときには,適切な保護具を着用すること。 6 . 3 作業手順書の作成 毒物劇物を取り扱うときには,関係部署の責任者はあらかじめその作業に関して次の各号に掲げる事項を記載した作業手順書を作成し,これにより作業を行う。 また,作業手順書は必要に応じ,逐次改定するものとする。 なお,作業手順書の作成及び改定にあたっては,関係部署の責任者は取扱責任者に協議することとする。 1 )作業開始時の手順 2 )作業終了時の手順 3 )各種装置,機器類及びバルブ等の操作方法 4 )異常現象,事故発生時の処理手順 5 )準備の点検方法 6 )設備の整備・補修方法 7 )その他事故災害を防止するために必要な事項 各作業手順の末尾には,次の事項を記載すること。 8 )制定日及び制定年月日 9 )改訂者,改訂年月日,改訂事項及び改訂理由 6 . 4 廃棄の基準 毒物劇物を廃棄するときは,次の各項による。 1 )廃棄に際しては,あらかじめ作業計画及び作業責任者を定め,廃棄は当該作業計画に従い,かつ当該作業責任者の監督のもとに行う。 2 てる。 3 )作業計画は,水質汚濁防止法等の関係諸法令の規制等を十分考慮して作成する。 4 )毒物劇物の種類ごとの廃棄の方法は,毒物及び劇物取締法施行令第 40 条に規定する毒物劇物の廃棄に関する技術上の基準に定められた中和,加水分解,希釈その他適切な方法により行う。 5 )廃棄に際して,引火性,発火性等の物性を有する毒物劇物については,その危険性を十分考慮して作業する。 7 設備等の点検及び整備・補修 7 . 1 設備等の点検 各設備等の点検は, 6 . 3 で作成された作業手順書に基づき点検を行う。 7 . 2 設備等の整備・補修 各設備等の整備又は補修は, 6 . 3 で作成された作業手順書に基づき整備または補修を行う。 8 事故発生時の措置 8 . 1 事故時の通報及び応急措置 1) 火災,爆発,地震,漏えいその他の原因により事故が発生し,毒物劇物が飛散し,漏れ,流れ出,しみ出又は地下にしみ込んだ場合において,不特定多数の者に保健衛生上の危害の生ずるおそれのあるときは,ただちにその旨を別表第 2 (略)の通報網に従って関係機関に連絡するとともに,必要な応急措置を 6 . 3 の「異常現象,事故発生時の処理手順書」(仮称)に従い応急措置を講じなければならない。 2) 毒物劇物が盗難又は紛失した場合には,発見者は直ちに関係部署の責任者に連絡する。 連絡を受けた当該責任者は,盗難又は紛失の内容を確認し,取扱責任者へ報告する。取扱責任者はその旨を警察署へ届け出る。 8 . 2 事故原因の調査の再発防止措置 事故がおさまった後は,すみやかに取扱責任者を中心とし事故原因を調査し,再発防止に向けて所要の措置を講じる。 9 教育・訓練 9 . 1 教育・訓練体制 1 )工場長は,取扱責任者に,毒物劇物を取り扱う作業員に対する教育・訓練を実施させること。 2 )取扱責任者は,必要に応じ関係部署の責任者を教育・訓練の指導者として参加させることができる。 9 . 2 教育・訓練内容及び実施計画の作成 取扱責任者は,次の各号に掲げる教育・訓練を実施するため年間計画を作成し,それに基づき教育・訓練を実施する。 1 )毒物劇物関係法令に係る教育 2 )毒物劇物の性状,毒性等取扱品目に係る教育 3 )毒物劇物に係る作業手順等の教育 4 )事故時の応急措置方法等に関する教育及び訓練 5 )異常時の通報連絡に関する訓練 6 )蘇生法に関する教育及び訓練 9 . 3 教育・訓練の実施記録 取扱責任者は,教育・訓練の実施結果に関する記録を作成する。 10 記 録 10 . 1 記録簿の作成 取扱責任者は,次の各号に掲げる記録を作成し,記録の日から5年間保存しなければならない。 1 )毒物劇物の入荷,保管及び出庫記録 2 )取扱いに関する記録 3 )取扱施設等の点検整備記録 4 )異常発生に係る内容,原因究明及び改善措置を記載した記録 5 ) 9 . 3 の教育・訓練の実施記録 6 )その他,安全管理に係る記録 11 附 則 この規定は 年 月 日から施行する。 例 示 塩酸・苛性ソーダーの受入れ ( 1 )ポンプによる塩酸の受け入れ作業 〔厳守事項〕 1 顔面マスク・ゴム手袋を必ず着用のこと。 2 ホース接続用工具は,メガネスパナを使用のこと。 3 バルブの開閉には,絶対にウィルキーを使用しないこと。 4 エアー抜き弁は急開しないこと。 5 作業に当っては慌てないこと。 6 製品受け入れ中は現場を離れずに監視しておくこと。 7 洩液がある場合は,水洗及び中和すること。 8 ポンプ運転中(受け入れ中)に電流が 4A 位まで下がった場合は,ポンプを直ちに停止し, 原因を調べること。 9 空転防止装置が働いてポンプが起動しない場合,又は,空気防止装置が働いてポンプが 停止した場合は,エアー抜きを行なった後,再起動すること。 注 1 サクション側に液がない場合は,再起動しない。 注 2 空転防止装置が働いている場合でもスイッチを押している間は,ポンプは廻る。 注 3 スピンドルがセラミックの為,過熱破損のおそれがある。 番号 項 目 操 作 手 順 確 認 事 項 ア ローリー到着 (±) ローリーを所定の位置に停止させる。 a ホースに充分たるみが取れる位置に停止。 b 歯止めをしているか。 (²) 納入伝票を受け取る。 a JIS マークがあるか。 b 薬品は JIS 規定に合格しなければならない。 HC 35 %以上 c JIS マークがない場合は,試験 成績表でその成分を確認する。 d 納入伝票に JIS マーク及び試験成績表がない時は,受け入れせず資材課に連絡する。 e 抜き取り検査 ( 4 月と 10 月の第 1 受け入れ日は抜き取り検査する。) (³) 運転手が作業になれている人かどうか確認し,未経験の運転手であれば作業手順を説明する。 a 顔面マスク,ゴム手袋を着用する。 イ ホース接続 (±) 貯槽レベルを読む。 a 受け入れの余裕があるか。 (²) ホースの接続。 a 接触時ホースの口が土砂で汚れ ていないか。 b ホースの接続は確実か。 (ボトルは 4 本で締めているか) (³) ホースを架台に乗せる。 ウ 受け入れ前準備 (±) スクラバー通水弁を開ける。 a 受け入れる貯槽の入口弁が,開であるか。 b ポンプのバイパス弁は閉か。 c ポンプ吸込弁は開か。 d ドレン弁,エアー抜き弁は全閉 であるか。 (²) ローリー出口弁 開 受け入れ弁 開 a 接続部からの液洩れはないか。 b ローリーのエアー抜き弁は開い ているか。 エアー抜き ポンプ吐出弁 開 a サイドグラスで液が流れたか。 ポンプ吐出弁 閉 エアー抜き弁(図①弁)開 a (±) , (²) によりエアーが抜けきらない場合に行う。 b エアーが抜けたか。 エアー抜き弁(図①弁)閉 ポンプ起動 NFB を ON スイッチ ON a 起動後電流(吐出弁全閉の時) 4A 位 b ポンプに異音はないか。 受け入れ開始 ポンプ吐出弁少閉 a サイドグラスに気 がなくなったか。 ポンプ吐出弁を徐々に全開 a 負荷電流 7A b フランジ・バルブ等より洩れはないか。 c 全閉しても負荷がかからない場 合は,ク− (±) ・ケ− (±) ・エ− (³)(´) ・オ− (±) ・カ− (±)(²) の操作をくり返し行う。 受け入れ終了間近 ポンプ吐出弁を絞り込む a ローリー内の残量が 0 . 5M3 位になったら絞り込む。 b 負荷電流を 7A (全開)より 6 . 6A 位( 10 %開)に下げる。 受け入れ終了 ポンプ吐出弁 全閉 a サイドグラスに若干の気 が出る。 b 電流が, 4 . 0 ∼ 4 . 8A まで下がったら終了と判断する。 c 貯槽レベルが受入後予想レベル となっているか。 ポンプ停止 スイッチ OFF NFB OFF 各弁閉 受け入れ弁 閉 ローリー出口弁 開 スクラバー通水弁を閉める。 a ローリーのエアー抜き弁閉 サ ホース切り離し a ホースの取り外し時,ホースの中に少量 (0.5l 程度 ) 残っているので充分注意させる。 b 洩れた液・残った液は,すみやかに水洗 ¥ 中和する。 シ ローリー退去 (±) 貯槽レベルを読む。 a 受け入れ量の確認 b 受け入れ量と伝票とのチェック (²) 受領伝票を渡す。 a ローリーの退去 メモ
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