携帯電話 NTTグループの防災ビジネスへの取り組み 一斉配信 防災ソリューション 携帯電話向け情報配信サービス 「emergecast(エマージキャスト)」 あかぼし NTTドコモでは,自治体や企業の管理者が職員・社員等関係者の携帯電話 向けにメッセージを配信し,呼び出すことを目的としたASPサービス 「emergecast(エマージキャスト) 」を本年6月11日より開始しました.本サー まこと やまもと だいすけ 赤星 誠 /山本 大介 なかにし さ と し やまもと ま さ と 仲西 哲志 /山本 真人 ビスはインターネットメールだけに頼った一般的なシステム・サービスに比 NTTドコモ べて伝達確実性を向上させたものとなっています. emergecast開発の背景 近年,自然災害発生時等の職員・ 社員への連絡用として,または住民向 なかったり,半日以上経過してから届い して各携帯電話キャリアのメールセン たりといった事象が発生し,新聞に記 タに入り,交換機や基地局によって構 事が掲載されるなど,ここ数年問題と 成されるネットワークを通って携帯電 して認識されるようになってきました. 話端末に到達します.こうした経路には けの情報配信サービスとして,携帯電 携帯電話向けメール配信における インターネットを経由することによる遅 話向けのメール配信を行っている自治 メールの不達や遅延の問題点を図1に 延や,局地的な通信の集中などさまざ 体や企業が増えています.しかしなが 示します.通常,メールサーバから送 まなリスクがありますが,中でももっと ら,メールを送ったが携帯電話に届か 出されたメールはインターネットを経由 も考慮しなくてはならないのが各携帯 インターネット通信系路上の混雑,故障 1 2 1 入口における輻輳の発生 迷惑メール規制 (瞬間的な大量配信,大量の宛先が設定されたメール,無効アドレス を宛先に多く含むメール) 2 3 4 インターネット 情報配信者 設備 インターネット網 3 携帯電話キャリア (キャリア通信設備) ネットワーク (交換機・基地局) 局地的な通信の集中 4 電源OFF,圏外,アドレス変更,通話中, メッセージに気付かない 図1 携帯電話向けメール配信の問題点 32 NTT技術ジャーナル 2007.9 携帯電話 ユビキタス性の追求 特 集 電話キャリアのメールセンタにおける の特性をよく理解して設計する必要が 本サービスにおける全体構成を図2 あります.emergecastでは迷惑メー に示します.NTTドコモのデータセン 各携帯電話会社は無差別に送信さ ルブロックに配慮したメール配信制御 タにはemergecastに必要なサーバ機 れる迷惑メールにより,携帯電話利用 を行うとともに,一般的なメールとは 器類が設置されており,24時間365日 者の利便性が損なわれることがないよ 異なったメッセージ配信手段を用いる 運用,監視されています.お客さま うに,迷惑メールの配信を停止する仕 ことで,この問題を回避しています. (情報配信者)のビル内には管理用PC 「迷惑メールブロック」の仕組みです. 組みを備えています.各携帯電話会社 を設置します.情報配信者はこの管理 emergecastの概要 のメールセンタでは常にメールの配信状 用PCにてメッセージの配信先や本文な 況を監視し,瞬間的な大量メール送信 e m e r g e c a s t は, ① 情 報 配 信 者 どを設定・入力し,携帯電話端末向 や,大量の宛先が設定されたメールの (管理者)があらかじめ登録された携 けにメッセージを配信することができま 送信,実際には使用されていないメール 帯電話に対してメッセージを配信,② す.管理用PCとデータセンタを接続す アドレスを宛先とした大量のメール送信 情報受信者が携帯電話の操作により る手段は専用線,NTT東日本の地域 などが認められた場合は該当の送信者 回答を返信,③情報配信者(管理者) IP網を利用した「フレッツ・グループ からのメール配信要求を拒否します.携 が回答内容を確認,することで,職員 アクセス」,FOMA網経由の直収サー 帯電話向けのメール配信システムを構 等の参集や状況確認を可能とするASP ビス「ビジネスmoperaアクセスプレミ 築する場合は,この迷惑メールブロック 型のサービスです. アム」,インターネット接続から選択可 お客さま事業所−ドコモデータセンタ の接続回線は用途に応じて選べます 配信者 (管理者) ドコモデータセンタ−iモードセンタ は専用線で接続されています ドコモ データセンタ 通常のメールより一斉配信に適した 「メッセージR」を利用します iモードセンタ ドコモ パケット網 専用線 管理用PC メールサーバ 専用線 マイボックス サーバ 回答返信 地域IP網 管理用PC フレッツ・グループアクセス インター ネット ドコモ パケット網 管理用PC (モバイル) ビジネスmopera アクセスプレミアム ドコモ以外の携帯電話にも配信可能 (メールによる配信) アプリサーバ au パケット網 SoftBank パケット網 Webサーバ 音声呼出機能も用意されています インター ネット 管理用PC 公衆回線網 CTIサーバ 図2 本サービスにおける全体構成 NTT技術ジャーナル 2007.9 33 NTTグループの防災ビジネスへの取り組み 迷惑メール規制 携帯電話アドレス変更 による不達のおそれ 入口での輻輳 iモードセンタ 配信者 (管理者) iモードメールサーバ [email protected]宛 イ ン タ ー ネ ッ ト 管理用PC 配信者 (管理者) 管理用PC メッセージR配信要求 1通送信 ド コ モ パ ケ ッ ト 網 マイボックスサーバ 最大2万宛先へ複製 090 ─XXXX ─XXXX宛 携帯電話アドレスが変 更されても届く 図3 メッセージRの特徴 能です. ドコモデータセンタとiモードセンタ は専用線(NTTPCコミュニケーショ ンズによる「iモードCUGサービス」 ) により接続されています.ドコモデー 機能や,携帯電話および固定電話に メールブロックなどの影響を受けるお 向けて発呼し,PB信号で回答を受付 それがありますが,メッセージRの場 ける音声呼出機能を備えています. 合はあらかじめドコモが申込を受け付 サービスの特徴 けた送信者からメッセージRに登録済 みの携帯電話に対して送信されるメッ タセンタにて生成されたメッセージはi 本サービスの大きな特徴は,ドコモ セージだけを取り扱うため迷惑メール モードセンタ内のマイボックスサーバを 携帯電話向けのメッセージの配信手段 ブロックの影響を受けずに,メッセー 経由してドコモパケット網に送出され, に通常のiモードメールではなく「マイ ジ送信が可能になります.またiモー 携帯電話端末に届きます. ボックスメッセージR(メッセージR)」 ドメールが受信者側で自由に変更が可 情報受信者より返信された回答はド サービスを採用していること,メッセー 能なメールアドレスを宛先にして送信 コモデータセンタにて集計され,情報 ジを受信するドコモ携帯電話に専用の されるのに対して,メッセージRは受 配信者は管理用PCにて回答状況や回 アプリケーションを搭載していることの 信者側での変更ができない電話番号に 答の内容を確認することができます. 2点です. 紐付いた固有のIDを宛先として送信 このほかに, 本 サービスにはa u , まずメッセージRの特徴を図3に示 されるため,受信者によるメールアド S o f t B a n k 携帯電話向けにインター します.iモードメールの場合,前述 レス変更やドメイン指定受信拒否など ネットメールを送信し回答を収集する のとおりiモードセンタにおける迷惑 を原因としたメッセージ不達を回避す 34 NTT技術ジャーナル 2007.9 特 集 ることができます. さらに,メッセージの内容が同一で こと,回答返信における操作が簡単で して回答を送信するという一般的な あることがあげられます. Web回答方式に比べて回答操作が大 あれば1通の送信依頼をもとにiモー 通常のメールなどでは受信時の鳴動 ドセンタ内のメッセージRサーバにて2 時間が短く,情報受信者がメッセージ 万件までメッセージを複製し,送信す の受信に気付かないおそれがあります. や通話終了時などさまざまなタイミン ることが可能であり,通常のメール配 本アプリケーションではメッセージ受信 グで自動的にサーバへの問い合わせを 信に比べて設備負荷を分散させたシス 時に携帯電話端末の特定のボタンを押 行うため,メッセージの取りこぼしを テム運用が可能となります. すまで鳴動を継続させることが可能で 減らすことができます. このように,emergecastではメッ セージRを使うことによりメッセージ伝 達における確実性を向上させています. 幅に簡略化されています. また本アプリケーションは電源ON時 すので,より確実にメッセージの受信 を気付かせることができます. さらに,通常のメールと異なり情報受 信者の携帯電話端末にメッセージが届 鳴動を停止させるとメッセージ本文 いたこと,さらには情報受信者がメッ 次にemergecastのもう1つの特徴 と回答選択肢が携帯電話端末に表示 セージを開封したことを情報配信者が であるドコモ携帯電話用の専用アプリ されます.情報受信者は選択肢の番号 管理PCにて把握できるといったメリッ ケーションについて,その概要を図4 に対応する携帯電話端末の数字キーを トもあります. に示します.このアプリケーションの特 押すことで回答登録を完了できます. なお,本アプリケーションが対応し 徴としては,メッセージ受信時に受信 受信したメールの本文にあるリンクか ていない一部のドコモ端末およびau, 者が気付くまで鳴動を継続させられる ら回答登録用のWebページにアクセス SoftBank端末にてメッセージの受信 携帯電話の状態 ①待受状態 ②メッセージRを受信 ③呼出し (鳴り続けます) ④指示内容等表示 自分宛の 呼出の有無を サーバに 自動問合せ 鳴動開始 センタへ 自動返信 管理端末上の表示 クリアボタン押下 (鳴動停止) センタへ 自動返信 数字ボタンを 押して回答 センタへ 返信 配信済み 通知済み 開封済み 回答済み サーバから対象者に メッセージRを送信 アプリが自分宛の 呼出しを検知し, 鳴動を開始 クリアボタンが押され 鳴動が停止.指示内容 等を表示 対象者から回答が 返信 図4 情報受信携帯電話用アプリの概要 NTT技術ジャーナル 2007.9 35 NTTグループの防災ビジネスへの取り組み 携帯電話の状態 ①メールまたは メッセージRを受信 ②メールを開く ③詳細確認ページに 接続 ④回答送信 詳細確認ページを 数字ボタンを 表示(パスワード入力) 押して回答 メール本文中の リンクをクリック センタへ 返信 管理端末上の表示 配信済み メールサーバから 対象者にメールまたは メッセージRを送信 開封済み 回答済み 受信者が詳細確認 ページを開封 対象者から回答が 返信 図5 Web回答方式によるメッセージ受信から回答登録までの流れ と回答登録を行う場合は,図5に示す を民間企業へも拡大していく計画です. Web回答方式にて行うことになります. 本サービスにおけるサーバアプリケー ションおよび携帯電話端末用アプリケー ションは,NTTアドバンステクノロジ の「Emergec@ll」をベースにしてお り,これにNTTドコモのメッセージR (左から)赤星 誠/ 山本 大介/ 仲西 哲志/ 山本 真人 とデータセンタの機能を組み合わせる ことで,サービス全体を構成しています. 今後の展開 NTTドコモはグループ各社との連携のも と,携帯電話キャリアとしてのノウハウを 活かして,競争力のあるシステム・サービ スを展開していきます.ご意見ご要望等を ぜひお寄せください. 携帯電話向けの情報配信サービスに 対する市場のニーズはますます高まっ ているとともに,多様化しています.今 後は気象情報などの自動配信機能の 追加等,サービスの競争力を高めると ともに,自治体中心の販売ターゲット 36 NTT技術ジャーナル 2007.9 ◆問い合わせ先 NTTドコモ 第一法人営業部 TEL 03-5156-2081 FAX 03-5114-7051 E-mail [email protected]
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