死体取扱要領の制定について(例規通達)

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○死体取扱要領の制定について(例規通達)
捜査第一課
平成21年12月25日
本部(捜一)第51号
〔沿革〕 平成23年3月本部(警務)第15号、24年3月本部(警務)第12号、25年3月
本部(捜一)第16号改正
死体取扱要領を別添のとおり制定し、平成21年12月25日から実施することとしたから、
適正な運用に努められたい。
なお、死体の発見及び処理に伴う報告の改正について(昭和49年2月8日付け捜一発
第34号)及び多数死体取扱要綱の制定について(昭和38年8月26日付け捜一発第800号、
捜二発第612号、鑑(現)発第89号、警備二発第234号、保発第560号、交指発第368号)
は、廃止する。
別添
死体取扱要領
目的
この要領は、死体の取扱いについて必要な事項を定め、迅速かつ適正な死体取
扱業務を行うことを目的とする。
第2 用語の定義
この要領における用語の意義は、それぞれ次に掲げるところによる。
(1) 検視
刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の規定に基づく死体の検証・実況見分、
刑事訴訟法及び検視規則(昭和33年国家公安委員会規則第3号)の規定に基づ
く司法検視(代行検視)並びに警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等
に関する法律(平成24年法律第34号。以下「死因身元調査法」という。)の規
定に基づく行政検視(調査)をいう。
(2) 解剖
司法解剖、行政解剖、病理解剖等をいう。
(3) 死体所在地署
死体が発見された所在地を管轄する署をいう。
(4) 原因発生地署
死亡原因が発生した場所を管轄する署をいう。
第3 死体取扱いの管轄
検視は、原則として死体所在地署が行うこととする。ただし、死体所在地署と
原因発生地署が異なる場合においては、次によるものとする。
(1) 救急車等第三者により移動された死体
移動後に死亡した場合を含め、原因発生地署が取り扱う。ただし、その死亡が
犯罪に起因するものでないことが明らかである場合で、原因発生地署が遠隔地
であって検視が著しく遅延するなどその取扱いに支障が生じるときは、死体所
在地署に検視を依頼することができる。
(2) 漂流死体
死体を収容し、上陸させた場所を管轄する署が取り扱う。
なお、海上における死体取扱いに関する海上保安庁との関係は、別に定めると
ころによる。
(3) 列車、船舶、航空機等において死亡した場合
死体が列車、船舶、航空機等から搬出された場所を管轄する署が取り扱う。
(4) 死体の取扱いに疑義が生じた場合
第1
事案の軽重、事件性の有無、業務の効率等を勘案し、捜査第一課長が関係署長
等と協議して決定するものとする。
(5) 死体の取扱いが他の都道府県警察と競合する場合
捜査第一課において関係都道府県警察と協議し、調整するものとする。
第4 死体の発見報告
1 本部長に対する報告
署長は、犯罪死体並びに検視規則及び死因身元調査法第4条第2項に定める死
体があることを認知したとき又は死体の発見届があったときは、直ちに捜査第一
課長に電話報告(検視官室経由)した後、別に定める様式により、ファクシミリ
等で速やかに本部長に報告(捜査第一課長経由。以下同じ。)すること。
2 検察官への通知内容の報告
検視規則第3条の規定により検察官に通知をしたときは、通知内容等を1の様
式に記入し、併せて報告すること。
第5 検視の留意事項
1 検視担当者
検視は、原則として幹部警察官が行うこと。ただし、犯罪死体及び検視規則に
定める変死体については、刑事課又は刑事第一課の幹部警察官が行うこと。
2 臨場時の措置
(1) 死体発見現場においては、不用意に死体に触れることなく、現場の状況を観
察し、写真撮影等必要な措置を講じた後、順次捜査を進めること。その際、鑑
識資料の保護には十分配意すること。
(2) 死傷者の収容及び救護のため現場を変更するときは、写真撮影、見取図等に
よって死傷者の位置、姿勢、方向等を明らかにしておくこと。
3 検視の要領
(1) 死体の検証・実況見分は、捜査手続の一環であることから、死因の究明のみ
にとどまらず、死体所見から捜査資料の発見及び証拠の収集保全に努めること。
(2) 司法検視及び行政検視に当たっては、検視規則及び死因身元調査法に定める
事項を綿密に行い、犯罪性の有無を判断すること。
4 不審点発見時の措置
検視の過程において、事件性が疑われるなど不審点を発見したときは、現場保
存の上、直ちに上級幹部に報告するとともに、検視官室に速報して現場臨場を要
請すること。
5 死因の認定
死因の認定は、死亡態様や死体の表見的現象のみにとらわれず、現場の状況、
死体所見、生前の状態、関係者の供述、検案医師の意見、資料の鑑定結果等を総
合判断し、合理的認定に努めること。
6 身元確認の徹底
(1) 死者の身元については、家族、雇用主等からの顔ぼう等による確認だけでな
く、手術痕等の身体特徴、所持金品、着衣等も矛盾がないか確認し、確実な根
拠が得られないときは、指紋、歯牙所見等により確認すること。
(2) 身元不明死体については、その所持金品の追跡捜査、発見場所付近の聞き込
み、指紋照会、DNA型照会、行方不明者関係記録との対照等により、早期に
身元確認ができるよう努めること。
7 交通事故に起因するか否か判然としない事案への対応
死因が明らかに交通事故によると認められる場合を除き、いずれか判然としな
いときは、刑事係が積極的に現場臨場するとともに交通係と連携して死因等の究
明に努めること。
8 多数死体の取扱い
多数死体を伴う大規模事案発生時における検視要領等については、別に定める
多数死体取扱要領により行うものとする。
9 受傷事故防止
死体の収容及び検視に当たり、河川、火災現場、山岳地帯等の危険場所に臨場
第6
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第8
第9
1
2
第10
する場合又は死体の周囲に一酸化炭素、硫化水素等の有毒ガスが発生し、若しく
は死体自体がウイルス等に感染していると認められる場合は、装備資器材を活用
して受傷事故防止、感染防護に細心の注意を払うこと。また、上級幹部は、捜査
員に対して事前に具体的な事故防止の指示を行うこと。
解剖要否の判断
現場の状況、死体の創傷、関係者の供述等から事件性が認められる死体、身元
不明死体、死因等の判断に疑義がある死体等については、検視官室と解剖の要否
について協議して判断すること。
外国人死体の措置要領
外国人死体を認知した場合において、国籍が判明したときは、死体取扱規則(平
成25年国家公安委員会規則第4号)第2条の規定により、遅滞なく、その旨を当
該国の領事機関に通報するとともに処理経過を記録すること。
死者に対する尊厳の保持
現場における死体の取扱いについては、むやみに人目に触れることのないよう
適切な場所に安置し、毛布を掛けるなど死者に対する礼を失しないよう配意する
こと。
また、死者の所持金品等については、紛失、滅失、き損等のないよう適正に保
管し、返還したときは、その状況を明らかにしておくこと。
検視結果の報告
本部長に対する報告
署長は、検視後別に定める様式により、ファクシミリ等で速やかに本部長に報
告すること。
現場見取図、人体図等の活用
現場の状況、創傷の部位・形状その他身元不明死体の身体特徴の記載に当たっ
ては、現場見取図、人体図、デンタルチャート、デジタル画像等を活用し、1の
様式とともに併せて報告すること。
特異事案の速報
検視担当者は、検視の過程において、臓器移植に関係する死体及び特異な死体
を認めたときは、直ちに署長の指揮を受けるとともにその状況を捜査第一課長に
速報(検視官室経由)し、必要により検視官室員の臨場を要請すること。