捜査官がやって来た時に: やるべきことトップ 10 - DLA Piper

【独占禁止法ハンドブック】
捜査官がやって来た時に:
やるべきことトップ 10、やるべきでないことトップ 10
危機は突然に
あなたの会社が、米国での独禁法捜査に巻き込まれているこ
とに初めて気づくのは、捜索令状を携えた連邦当局の職員が
玄関をノックした時かもしれません。
あなたの会社に、ある日突然、捜索令状を携えた連邦職員がやってくる
ことを想像したこともありますでしょうか?このようなことはあなた、あるいは
あなたの会社にとって悪夢のような出来事かもしれません。しかし、米国
だけでなく世界中の至る所で、このようなことが現実に発生しております。
また、米国司法省反トラスト部門が米国外の競争当局(とりわけ欧州委員
会)と捜査協力し、捜査協力協定を締結を締結しています。このような各
当局の協力関係の下、ある日の明朝、突然に捜査官が訪れる、「夜明け
の強襲」もしばしば行われております。特に、多国籍企業では、複数の国
における複数のオフィスで、捜索令状を持った連邦職員によるカルテル
捜査、夜明けの強襲に直面することもありえます。
そのような捜査に対して効果的に防御活動を行うためには、平時の段階
において十分な事前準備をしておくことが重要です。また十分な事前準
備をすることにより、捜査が起こった際に何が起こっているのかを理解で
きるだけでなく、事態の対処に関する適切なガイドラインや手順書を用意
しておくことも可能となります。
このハンドブックは、米国独禁法の手続の流れを簡単にまとめるとともに、
米国での捜査令状を伴ったカルテル捜査への対処に関して、「やるべき
こと」と「やるべきでないこと」のトップ 10 を記載しております。各社様にお
かれましては、このハンドブックを一つの材料として、適切なご準備をい
ただくことを祈念しております。
(昨今、日本においても、独禁法違反による調査に加え、景品表示の問
題、消費者問題等、企業不祥事に対する当局からの調査、それへの対
応が必要とされる事案も急増しております。本ハンドブックは、主に米国
の独禁法当局による調査を想定したものではありますが、多くの部分に
おいて、日本における調査等にも応用が可能です。もちろん、具体的な
対応についてはケースバイケース、弁護士との協議の下で進めていかれ
る必要がありますが、本ハンドブックが、そのような場面における対応に
ついてのヒントとなれば望外の喜びです。また、今後これ以外のテーマに
関してもハンドブックを作成する予定としております。)
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何がリスクなのか
カルテル捜査に対する対応を誤った場合、その結果は、会社とその経営陣にとって破壊的なものとなり
得ます。シャーマン法の下での会社に対する罰金は最高 1 億米ドルですが、他の法律等における罰金
規定の下で 5 億米ドル相当の罰金を受ける可能性もあります。処罰と再発防止のためにさらなる罰金の
高額化を求める声もあります。
また上記の罰金金額は米国だけのものにすぎません。国際的なカルテル事案では、米国での罰金に加
え、数百万ドルの罰金を、世界中の多くの国や地域当局に対して支払うことを求められる可能性もありま
す。また、カルテルの事案の多くの場合、カルテル捜査に引き続く形で民事訴訟が提起され、これも同様
に会社にとって破壊的なものとなり得ます。
これらの影響は、会社だけに限られるものではありません。反トラスト局は会社だけでなく個人に対しても
起訴を行います。また、米国人だけでなく米国人以外の者も被告人となります。価格拘束で有罪と判決さ
れた個人の禁錮刑は、最長で 10 年です。現在のところ、独禁法違反による個人に対する有罪判決で最
も長い刑期は、4 年となっています。
このように、独禁法違反のリスクはとても高いため、会社は、会社自身とそこにいる人々とを守るためにあ
らゆる準備をしておく必要があります。予防は最高の治療薬ですが、予防はいつも作用するとは限りませ
んし、当局が誤った情報に基づいて捜査を行うこともあります。但し、いずれにせよ、以前に準備を行うこ
とで、捜索令状、夜明けの強襲等による捜査に対して素早く適切に対応することにより、悪影響を最小化
することができます。
どのようにカルテル捜査について学び、準備を行うか
会社や経営陣、従業員を守るためには、最初の数分・数時間における会社の対応や、その後の数日間
の間に行う会社の対応が非常に重要です。とはいえ拙速であってはなりません。適切な指示の下、しか
るべくコーディネートされたものであることも必要です。そしてそのためには 2 つの要素が重要となります。
つまり、経験豊かな弁護士を活用することと、そして効果的かつ徹底的に準備することです。
このパンフレットは、我々の経験に基づく一般的な原則を御社に提供することを目的としております。しか
し、各社、各事案によっても対応は異なってまいりますので、弁護士とさらなる議論をされることをお勧め
いたします。
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捜査はどのように始まっていくのか
多くの場合、捜索令状が執行されることにより初めて、反トラスト局が秘密裏に行ってきたカルテル捜査が
公になります。米国では、捜索令状が発行される前提として、犯罪が行われたという具体的な情報、及び
当該犯罪の証拠が特定の場所で見つかる可能性が高いことが示されていることが必要とされます。一般
的に、会社内部の関係者(例えば会社に対して不満を有している(元)従業員)や、リニエンシー(課徴金
の減免制度)に申請した共犯者の協力がある場合には、当局は、これらについて具体的な情報を有して
いることになります。
また当局には、電話をテープ録音したり盗聴器を身につけたりして会話を記録している協力者がいるか
もしれません。独禁法違反がさらに重大な犯罪の前提となる犯罪となっていることも多いため、当局は、
盗聴器あるいは高度な監視方法により、電話を傍受したり会議を監視したりしているかもしれません。当
局は、特に電話を監視することを好んでおり、捜査日に可能であれば、上司が部下と話しているかどうか、
競争者が裏工作を組織化しようとするために互いに話しをしていないかを確かめています。当局の捜査
官は、急襲の日、またはその前の晩に、情報提供や協力に応じる可能性があると彼らが考える従業員又
は元従業員に接近するかもしれません。
当局の捜査員は、秘密裏に証拠を入手する方法が尽きたと考えられるとき、秘密捜査が発覚し証拠隠滅
の可能性があると思われるとき、あるいは特定の潜在的な証拠が捜索対象となる物件に存在していると
予想されるような場合、捜索令状の執行を進めようとする可能性があります。
もちろん、実際の捜査の結果、当局が依拠した情報が間違っているか、不完全であるか、不正確である
ことが最終的に判明することもあります。しかし、最終的にそのような結果となるか否かという問題と、政府
が捜索令状を得て御社がそれに対応をしなければならないということは別問題です。仮に最終的には当
該捜査が間違ったものであること判明したとしても、捜査の段階においては、捜査官はその令状によって
許可されたすべての場所を捜索するでしょうし、御社はそれに対処する準備を整えている必要がありま
す。
十分な準備・計画をしておくこと
捜索令状への対応策に関する事前の準備と指導は、実際の捜査日において効果的に対処するために
重要です。
例えば、捜索情報の判明直後にすぐ通知すべき人物のリストを作成しておくことは重要です。会社の顧
問弁護士や、経験豊かな独禁法弁護士にも、すぐに知らせる必要があります。取締役会や上級役員にも、
できるだけ早く知らせておかなければなりません。メディア・広報を取り仕切るスポークスマンも、事前に十
分トレーニングを受けておくことが望ましいです。また、現場の担当者にも、前もって担当を割り振ってお
くべきです。それら担当者が不在の場合に備えて、念のため、それらの各ポジションにおける予備人員も
指定しておくとよいと思います。また場合によっては、各従業員にも、連邦等の捜査員による予定外の訪
問に対処する方法について指導しておくことも考えられます。
我々は、一般的なガイドとして、もしカルテル捜査において当局職員が令状を携えて御社の玄関に現れ
た場合にやるべきこと、やるべきでないことのリストを以下のとおり用意しました。ただし、これらはあくまで
も一般的なガイドラインであり、事前にしかるべきトレーニングと弁護士との協議を行っておくことをお勧め
します。
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当局が御社にやって来たときに
やるべきことトップ 10
令状を携えた当局職員が会社のドアをノックしたときに:
1.
直ちに顧問弁護士や外部の独禁法専門弁護士に連絡して下さい。
2.
弁護士が到着するまでは捜査を延期できないか依頼して下さい。ただし、このような延期は職員の裁量に属す
るため、却下される可能性があります。
3.
記録を保存するとともに一切の文書廃棄行為を停止するよう、直ちにすべての役員・職員に対して書面で指示
をして下さい。
4.
弁護士が到着するまでの間、当局や報道機関等からの捜査に対応する担当者を少なくとも一人選任して下さ
い。担当者がいつでも対応可能なようにするために、余剰人員も必要となります。
5.
令状の写しを入手し、確認した上で弁護士に送付して下さい。令状には、職員による捜査が許可されている場
所や差押えが許可されている物が記載されているはずです。
6.
当局の責任者と話をして、なぜ会社が捜査を受けているのかを尋ねて下さい(ただし、名刺と名前は全職員分
を入手して下さい)。職員には令状に関する説明を超えて情報提供をすべき義務はありませんが、尋ねられれ
ば捜査に関する情報を進んで開示する可能性があります。
7.
従業員に保障されている権利に関する説明を行って下さい。事前に行う方が望ましいですが、当局と話をすべ
きかどうかは各従業員が判断することができることを説明して下さい。従業員は、当局と話すことを拒むことも、
条件付で話をすることも、単に質問を受けることもできます。会社は、インタビューに際して弁護士を同席させる
ことも可能であると提案することができます。
8.
捜査時に付添いの者を職員に同行させ、どのようなことが行われているかを監視して下さい。ただし、会社側に
施設内を案内すべき義務はありません。付添いの者を手配することで、当局の職員が、令状で許可されていな
い場所に立ち入ったり、令状で許可されていない物を持ち去ったりといった不適切な行為に及ばないことを確実
にすることに役立ちます。
9.
当局職員が持ち去ろうとする物を観察して、弁護士の意見とともに、令状の対象外である物品の差押えに対し
て抗議して下さい。弁護士も、秘匿特権で保護されている通信の差押えに対して抗議することができます。もし
これらが持ち去られてしまった場合には、他の差し押さえられている物品と区別するよう依頼して下さい。
10.
差し押さえられたすべての物品及び文書の差押えが行われた場所に関して、可能な限り詳細な目録を作成し
て下さい。可能であればコピーも作成して下さい。当局職員は目録を交付することが義務付けられております
が、たいていの場合、そのような目録はあいまいです。
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やるべきでないことトップ 10
捜査中、一定の行為は避けなければなりません:
1.
捜査の範囲に関しては協力的であるべきですが、御社の事業や業界、捜査対象者についての情報を自発的に
提供しないで下さい。当局職員は、オフレコで質問に答えることを提案するかもしれませんが、オフレコで話をす
ることほど状況を良くしないものはありません。自発的な情報提供は、捜索令状の執行を円滑にするのに必要
な場合だけにして下さい(例えば、令状で特定されているファイルやサーバーに関する情報の提供)。捜査には
協力的であるべきですが、弁護士の助言がない状態での捜査は状況が異なります。
2.
令状の範囲外での捜査や令状に記載のない文書の差押えを許可しないで下さい。
3.
捜査の妨害をしないこと。もし、令状に記載された場所の範囲や秘匿特権で保護されている文書の該当性、そ
れらに関連する不同意事項についての争いが生じた場合には、仮に当局職員が物品の差押えを決定したとし
ても彼らを妨害するのではなく、記録に残すようにして下さい。
4.
文書や電子的な情報を、絶対に壊したり、隠したり、変えたり、改ざんしたりしないで下さい。これは捜査を受け
ている場所にある文書だけでなく、他の場所にある文書も同様です。捜査妨害は極めて重大な犯罪であり、捜
査の理由となった事項が不起訴相当であると判明したとしても、捜査妨害それ自体で起訴される可能性があり
ます。
5.
他の従業員に対して文書を壊したり、隠したり、改ざんしたりすることを指示したり提案したりしないで下さい。こ
のような行為は、まるで自身がそれらの行為をやったかのように、御社を捜査妨害の罪にさらすおそれがあり
ます。
6.
当局職員と話をしてはいけないと従業員に指示をしないで下さい。このような行為は捜査妨害と受け取られる
おそれがあります。前述したように、当局職員と話すかどうかということは、従業員が判断すべき事項です。
7.
一切の事項に関して、当局職員に対しては嘘をつかないで下さい。意図的な誤解を招くような発言や遺漏もこ
れに含まれます。当局に対して虚偽の発言をすることは、いかなる事項についても、それが御社にとって些細と
思われるものであったとしても、すべて重罪とされる可能性があります。
8.
競争相手に対して、電話をしたり、捜査に関する警告をしたりしないで下さい。競争相手は当局に対して協力す
るために、御社と競争している関係にあるかもしれませんし、誰かが御社の電話を録音しているかもしれませ
ん。
9.
捜査は心配の種かもしれませんが、パニックになったり過剰に反応したりしないで下さい。御社は、競争相手や
元従業員、何からの別の情報源によって、間違って名指しされているだけかもしれません。
10.
このリストにある警告の多くは、いずれにしても捜査を妨害してはならないということを意味しています。このこと
は、いくら強調してもし足りないということはありません。捜査の原因である疑いのいずれについても当局が立
件できなかったにもかかわらず、捜査中に妨害行為や虚偽の発言があったために誰かが起訴されて懲役に服
するということは、まさに不要な惨事にほかなりません。
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攻めながら守る。守りながら攻める。
カルテル事案の捜索令状が御社に対して執行された場合、既に当局は、数ヶ月又は数年にわたる捜査
を行っているものと思われます。したがって、連邦当局職員が御社の玄関に現れたとき、御社の社員が
対応方法を知っていることは重要です。また弁護士にもすぐに電話をするべきです。当局が令状を執行
した時の、弁護士にとっての最初の仕事は、御社を代理する一次的な当局との連絡役として行動するこ
とになるでしょう。ひとたび捜索が完了すれば、弁護士は捜査を指揮している反トラスト局の検察官と連絡
を取れるようになり、すぐに徹底的な内部調査を始めることができ、経営陣や重要な社員と話をして、文
書や通信のやり取りを収集し検証しながら、それらの事実が当局の主張している事項と関連しているもの
であるかを見極めます。内部調査を行うことにより、御社の選択肢について独禁法弁護士がアドバイスす
ることが可能となります。
カルテルの捜査と法の執行は、世界中で増加しています。大部分の会社は、カルテルには一切かかわ
ったことがないでしょう。しかし、それでもカルテル(あるいはカルテルに関する捜査)は起こります。その
対応いかんによっては、会社に破滅的な危機が及び、最悪の場合、会社の存続が危ぶまれるかもしれま
せん。平時において、積極的かつ防御的なコンプライアンス・トレーニングやレビューの手続を導入する
とともに、念のため、最悪のシナリオに対応するための計画を立てておくことが、御社の利益を保護する
ためにも重要となります。
DLA Piper について
各国の捜査当局はそれぞれ捜査協力をしており、カルテルに対する法の執行も多くの国・地域にまたが
って行われるため、これに対する適切な防御、法律事務所によるアドバイスも、グローバルに行われる必
要があります。
DLA Piper は、アメリカ、アジア太平洋、ヨーロッパ及び中東の 30 カ国以上で 4,200 人の弁護士を擁する、
世界最大の法律事務所であり、世界のあらゆる場所で法的アドバイスを提供できる、グローバルなプラッ
トフォームを有しております。また、DLA Piper は、独禁法、カルテル、企業不祥事等に対しても豊富な経
験と世界的なネットワークを有しております。メンバーの中には、前米国司法省検察官や FTC 当局経験
者、他の国や地域における競争当局と協働した経験のある弁護士等もおり、複数の国や地域におけるカ
ルテル捜査という難題にクライアントの皆様が効果的に取り組むことをお手伝いしております。
詳細な情報は、以下までご連絡下さい:
米国における連絡先
日本における連絡先
Carl W. Hittinger
電話 +1 215 656 2449
メール [email protected]
石田 雅彦
電話 03-4550-2808
メール [email protected]
James R. Nelson
電話 +1 214 743 4512
メール [email protected]
Robert E. Connolly
電話 +1 215 656 3318
メール [email protected]
鵜澤 圭太郎
電話 03-4550-2833
メール [email protected]
(なお、本日本語パンフレットは、DLA Piper US オフィスによって作成されたものを元に翻訳・作成されたものであり、一部
表現として不自然な個所、あるいは英語パンフレットの内容と相違する箇所もございますことにご留意下さい。)
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