地震発生層の考え方について - 原子力規制委員会

WG2 第 11-2-2 号
地震発生層の考え方について
(1) 審議経過
① 第5回ワーキング・グループ2(1月15日)
■事業者からの説明要旨
WG2 第5-3号に基づいて、敷地周辺の微小地震分布に基づく検討結果等から、
地震発生層の深さは 3~15km であると考えられるが、地震動評価上は、余裕を見込ん
で、地震発生層の深さを 3~18km(厚さ 15km)と設定していること、ただし、敷地の
ごく近傍に限った場合、能登半島地震の知見等により、震源を特定せず策定する地震
動で考慮している地震発生層は 3~15km(厚さ 12km)としている旨説明。
■コメント要旨(佃委員)
震源を特定せず策定する地震動で考慮している地震発生層の考え方を説明するこ
と。
② 第7回ワーキング・グループ2(1月20日)
■事業者からの説明要旨
WG2 第7-2-2号に基づいて、震源を特定せず策定する地震動で考慮している地
震発生層の深さの設定の考え方について説明。
■コメント要旨(山岡委員、大谷副主査)
余震の稠密観測や地下構造調査等のデータに基づいて、地震発生層の上限深さの設
定について明確にすること。
地震発生層の厚さについて、不確かさの考え方を再整理すること。
■コメントに対する対応
本日、第11回ワーキング・グループ2(1月29日)において、下記のとおり説
明。
追加説明事項に関わる本日の説明
・震源を特定せず策定する地震動で考慮している地震発生層の上限深さ及び地
震発生層の厚さの考え方について説明。
No
Ss策定
4-01
項
目
地震発生層の考え方
について
コメントの要旨
余震の稠密観測や地下構造調査等のデータに基づいて,地震発生
層の上限深さについて明確に説明すること。
コメント4-01
これまでの説明①
敷地周辺の地盤の速度構造に基づく検討
地震調査委員会の強震動予測レシピでは,地震発生層の上限深さについては深い地盤構造からVp=6.0km/s
相当の層を目安とする,とされており,敷地周辺の地下構造の知見であるIidaka et al.(2003)によれば,
地震発生層上限深さに相当するVp=6.0km/s程度の層の深さは敷地周辺では5.5kmとされている。
志賀原子力発電所敷地より南方約20kmの羽咋市付近
志賀原子力発電所
P波速度構造断面図
Iidaka et al.(2003)に一部加筆
調査測線
中部日本を横断する地殻のP波速度構造断面図
Iidaka et al.(2003):Configuration of subducting Philippine Sea plate and crustal structure in the central Japan region,
GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS,VOL.30,NO.5
強震動予測レシピ:震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」),地震調査研究推進本部地震調査委員会,2008
1
コメント4-01
これまでの説明②
「2007年能登半島地震合同余震観測グループ」による余震分布
縁付き丸印:海底地震観測による震源(Yamada T.,et.al.,投稿中)。
(観測期間:平成19年4月5日から約1ヶ月間)
縁無し丸印:臨時陸上地震観測による震源(Sakai S.,et.al.,投稿中)。
(観測期間:平成19年3月25日~平成19年5月末頃)
F14~F16:活断層(片川ほか2005)。Fg:活断層(Okamura Y.,2007)。
★:本震、陸側の最大余震、海側の最大余震の再決定震源
3km
15km
金沢(2007) に一部加筆
海底地震観測と臨時陸上地震観測による高精度な余震分布(震央と深さの分布)
平成19年能登半島地震の震源域では「2007年能登半島地震合同余震観測グループ」による海底
地震計等を用いた精度の高い余震分布が求められており,その余震分布によると深さ3~15km
に大半の余震が分布している。
金沢(2007):2007年能登半島地震の余震活動調査(臨時地震観測) 海底・陸上の両観測で見えた震源断層と海底活断層との関係,
SEISMO,2007年11月号
2
敷地周辺の地盤の速度構造に関する知見の追加
コメント4-01
志賀原子力発電所
志賀原子力発電所
調査測線
P波速度構造断面図
Iidaka et al.(2008)に一部加筆
中部日本を横断する地殻のP波速度構造断面図
・Iidaka et al.(2008)では,Iidaka et al.(2003)と同様に,中部日本を横断する地殻のP波速度構造を推
定している。
・Iidaka et al.(2003)では敷地から南へ約20km離れた羽咋市付近が測線の最北端であったが,Iidaka et
al.(2008)では敷地の北に位置する志賀町富来付近まで測線が延長されており,敷地周辺の地盤の速度構
造についても推定している。
・これによれば,地震発生層の上限深さに相当するVp=6.0km/s程度の層は敷地周辺では深さ4kmよりも深い
ところに位置していると考えられる。
Iidaka et al.(2008):Fine seismic structure around the Atotsugawa fault revealed by seismic refraction and reflection experiments, 7th
General Assembly of Asian Seismological Commission and Seismological Soceity of Japan, 2008 Fall meeting,B41-05
3
コメント4-01
地震発生層の上限深さに関する検討結果のまとめ
これまで説明してきた敷地周辺の速度構造に関する知見
及び稠密余震観測による余震分布に基づく検討結果
上限深さ
速度構造に基づく検討(Iidaka et al.(2003))
5.5(km)
「2007年能登半島地震合同余震観測グループ」による余震分布
3(km)
今回追加した敷地周辺の速度構造に関する知見
上限深さ
速度構造に基づく検討(Iidaka et al.(2008))
4(km)以深
・地震発生層の上限深さについて,以下の知見が得られた。
①Iidaka et al.(2003)による速度構造から,敷地周辺の地震発生層の上限深さは約5.5kmと推定で
きる。
②「2007年能登半島地震合同余震観測グループ」による高精度の余震分布から,敷地周辺の地震発
生層の上限深さは3kmと推定できる。
③今回,敷地周辺も含めてより広範囲の地域の地盤の速度構造を推定しているIidaka et al.(2008)
による知見を新たに追加した。これによれば,敷地周辺の地震発生層の上端深さは4kmよりも深
い位置と推定できる。
・以上①~③の結果から,敷地周辺の地震発生層の上限は深さ3kmと設定する。
4
No
Ss策定
4-02
項
目
地震発生層の考え方
について
コメントの要旨
地震発生層の厚さについて,不確かさの考え方を再整理すること。
コメント4-02
①理学的に考えられる地震発生層について
敷地周辺の地下構造に関する知見及び稠密余震観測による余震分布に基づく検討結果
上限深さ
下限深さ
速度構造に基づく検討(Iidaka et al.(2003))
5.5(km)
-
速度構造に基づく検討(Iidaka et al.(2008))
4(km)以深
-
コンラッド面深さに基づく検討(Zhao et al.(1994))
-
14(km)
キュリー点深度に基づく検討(大久保(1984)など)
-
13.5~15(km)
「2007年能登半島地震合同余震観測グループ」による余震分布
3(km)
15(km)
【参考】敷地周辺の微小地震分布等に基づく検討
上限深さ
下限深さ
気象庁地震カタログ(1997年10月~2007年12月)
3(km)
11(km)
気象庁地震カタログ(1997年10月~能登半島地震発生前)
7(km)
15(km)
(独)原子力安全基盤機構(2004)
3.2(km)
10.7(km)
敷地周辺の地下構造に関する知見及び「2007年能登半島地震合同余震観測グループ」による稠密余震観
測による余震分布に基づく検討結果から,理学的に考えられる地震発生層の上限深さを3km,下限深
さを15kmとして厚さ12kmと設定している。
したがって,「震源を特定せず策定する地震動」において「震源と活断層を関連付けることが困難な内陸
地殻内地震」の最大規模を検討する際の地震発生層の厚さは12kmとしている。
Iidaka et al.(2003):Configuration of subducting Philippine Sea plate and crustal structure in the central Japan region, GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS,VOL.30,NO.5
Iidaka et al.(2008):Fine seismic structure around the Atotsugawa fault revealed by seismic refraction and reflection experiments, 7th General Assembly of Asian Seismological Commission
and Seismological Soceity of Japan,2008 Fall meeting,B41-05
Zhao et al.(1994):Deep structure of Japan subduction zone as derived from local, regional,and teleseismic events,Journal of Geophysical Research,99,22313-22329
大久保(1984):全国のキュリー点解析結果,地質ニュース,362号,12-17
(独)原子力安全基盤機構(2004):地震記録データベースSANDELのデータ整備と地震発生上下限層深さの評価に関する報告書,JNES/SAE04-017
1
コメント4-02
②理学的に考えられる地震発生層と震源断層モデル
との関係について
L=13.9km
理学的な
上限深さ
3km
地震発生層
・「孤立した短い活断層」の地震規模を想定する際には,安全評価上,震
源断層が地震発生層の上限から下限まで拡がっているものとして,断
層幅と同じ断層長さをもつ震源断層モデルを想定することとしている。
・しかし,理学的な地震発生層の厚さ12km及び能登半島周辺に分布する活
断層の特徴等を踏まえた断層傾斜角60°の震源断層モデルを設定した
場合,断層長さとマグニチュードの関係を用いて地震規模を算定する
とM6.7となり,M6.9に見合う震源断層モデルを設定することができ
ない。
傾斜角60°
M6.7
W=13.
9km
志賀原子力発電所における「震源を特定して策定する地震動」で考慮する
地震については,「震源を特定せず策定する地震動」で考慮している地震
の最大規模M6.8との連続性の観点から,「孤立した短い活断層」による
地震も含めてM6.9以上の規模を想定して具体的な震源断層モデルを設定
することとしている。
理学的な
下限深さ
15km
理学的に考えられる地震発生層厚さから想定される
「孤立した短い活断層」の震源断層面及び地震規模
L=17.3km
以上のことから,「震源を特定して策定する地震動」に考慮す
る地震の震源断層モデルの下端深さは,理学的に考えられる地
震発生層の下限深さ15kmを貫く深さ18kmとしている。
理学的な
上限深さ
3km
地震発生層
理学的な
下限深さ
15km
傾斜角60°
M6.9
W=17.
3km
よって,M6.9となるような断層長さと断層幅をもつ震源断層モデルを設
定するため,仮想的に,理学的に考えられる地震発生層を貫くモデル下端
深さが18kmとなる右下図のような震源断層モデルを設定している。
2
18km
震源断層モデルの下端深さ
「孤立した短い活断層」の地震規模がM6.9となる
断層長さ及び断層幅をもつ震源断層モデル