高次脳機能障害特集 - 神奈川リハビリテーション病院

NO.7
2006年 7 月発行
発行者:神奈川リハビリテーション病院
〒243-0121
病院長 勝又 壮一
厚木市七沢 516
高次脳機能障害特集
高次脳機能障害のリハビリテーション
神奈川リハビリテーション病院は、平成 13 年
高次脳機能障害者数
から5年間行われた「高次脳機能障害支援モデル
事業」の1拠点施設として、さまざまな治療やサ
知的障害者
身体障害者
(知的障害者福祉法)
(身体障害者福祉法)
ービスを試みてきました。その中から、高次脳機
約42万人
約320万人
18歳未満若年者
失語
能障害を持つ方々にお役にたつプログラムを提供
高次脳機能
しています。
障害
約30万人
高次脳機能障害は、リハビリテーション医学の
精神障害者
約220万人
訳
(精神保健福祉法)
分野では 20 年近く以前から治療の対象となって
いました。脳卒中にしばしば合併する失語・失行・
失認などの症状のことです。しかし最近では医療が進歩し、脳が広範囲に損傷される外傷や病
気でも、救命される場合が多くなりました。そのような場合、脳損傷が広範囲であると複雑な
高次脳機能障害が残ります。そのため、復学や復職が難しくなることが多いのです。
今回厚生労働省が行った「高次脳機能障害支援モデル事業」は、脳外傷などの結果、記憶・
集中力・遂行機能・社会的行動障害などの症状を残し、社会参加に困難を感じている方へ、支
援の方法を探る全国的な事業でした。
脳外傷などによる高次脳機能障害の難しさは、麻痺などの身体の障害を伴わない場合、ご本
人はもとよりご家族も、物忘れや、落ち着きのなさ、怒りやすさ、動作の遅さ、手順の悪さな
どを、高次脳機能障害であるとは気がつかない場合があることです。
思い当たる方は、当院の「医療福祉総合相談室」へご相談ください。脳損傷外来での診察や
検査、あるいはリハビリテーション目的の入院治療手順についてご説明します。
また、高次脳機能障害について知っておきたいとお考えの方は、当事業団のホームページ
<http://www.kanagawa-rehab.or.jp/>から、「センター各施設の案
内」をクリックし、神奈川県リハビリテーション支援センターのページ
へ入ってください。そこから「高次脳機能障害 相談支援の手引き」をダ
ウンロードできます。高次脳機能障害とはどのような状態であるか、ど
のような支援が必要であるか、などの情報が満載されています。
リハビリ科
大橋 正洋
高次脳機能障害特集
≪リハビリ科・脳神経外科≫
(平成 17 年度入院患者数 241 名)
外傷性脳損傷後、重度の身体、認知障害を持ち、
急性期治療後のリハビリテーション医療目的のため
の治療ユニットです。
患者さまの年齢は平均46.5歳で、男性が 73%
を占めています。疾病は、外傷性脳損傷(入院全体
の 55%)を中心に脳血管障害・脳炎・蘇生後脳症
などで、重度の高次脳機能障害を伴っています。退
院先は在宅 75%、転院(施設復帰を含む)16%、
更生施設(更生ホーム)9%となっています。
脳神経外科においては、事故に伴う頭蓋骨形成術・水頭症による短絡手術や、その他緊急手術も行っ
ており周手術期の看護も展開しています。(手術件数 32 件/年)
入院時から担当看護師を決め、継続的な看護実践と退院後の方向性を明確にできるよう、患者さま・
家族への指導をおこなっています。
より質の高い看護を提供できるよう、脳損傷クリニカルパスを使用し、他職種とともに情報交換を行
い、包括的なチームアプローチを目指しています。
患者さま・家族が高次脳機能障害を理解し、対応方法を知るためのアプローチとして、病棟環境の整
備、生活リズムを作る為のスケジュール設定、病棟レクリエーションへの参集、家族講座トーク&トー
クの開催、脳外傷友の会、パンフレットの紹介等をおこなっています。
7B病棟 臼井
診療科別入院
脳外傷を除く高次脳機能障害患者数
3%
2%
(人)
7%
25
20
8%
15
17%
63%
リハビリ科
脳外科
内科
泌尿器科
神経科
その他
10
5
0
SAH
脳炎
低酸素 CO中毒
脳損傷リハビリテーション家族講座
トーク&トークのお知らせ
脳損傷とその障害および対応について(対象は、入院中・退院された患者さま
のご家族の方)、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・臨床心理士の立場
からのお話と、ご家族の方による自由な話し合いの場として講座を開催してい
ます。
毎月第4金曜日 14:30~16:00
次回は7月28日(金) 本館3階研修室でおこないます。
浩
高次脳機能障害特集
協働事業室の活動 ―専門家と家族会の協働―
「高次脳機能障害支援モデル事業」の開始に伴い、
1年後の平成14年5月に設置され、以来4年間にわ
たり様々な活動を展開して参りました。全国でも類を
見ない病院内での家族会活動は、当初の期待以上に成
果が認められるものと実感するところです。全国の脳
外傷友の会からは羨望の的となり、友の会に止まらず
各方面の専門家諸氏の見学も相次ぎ、励みともなり、
プレッシャーともなり、その重責を感謝と共に、日々
悩みを抱えて訪れるご家族やご本人のご相談を受けて
おります。
高次脳機能障害支援:協働事業室
病院内での相談活動の最大の利点は、ピアとしての
範疇を越え、専門職の情報が必要と判断される場合、
院内に家族会のボランティアが常駐し、ピアサポートや情
報提供などを行っている。
即座に繋ぐことが可能であり、岐路に立ち、悩み、時には追い詰められた状況にある当事者・家族にと
って大いなる福音となった例は数知れず、入院、外来の患者さまのみならず、協働事業室への来室を目
的として訪れる方も多く、診断・評価へ、更に入院、入所と繋がるのです。体験者であることが何物に
も変え難い共通項としての存在意義を自覚し、涙と笑顔の交錯する事業室の存在が病院と家族会双方向
の大切な社会資源であり続けたいと願って活動しております。
◆活動の概要
▲ 体験の共有による相互支援
≪ピアサポート≫
▲ 高次脳機能障害に関する生活相談 ≪ソーシャルワーカー等との協働≫
▲ 情報収集と提供
≪高次脳機能障害・脳外傷バンク≫
▲ 本人の学習・作業活動の開催
▲ スタッフ研修
≪社会参加への支援≫
≪相談支援の基本を学ぶ≫
◆活動実績
平成14~17年度 協働事業室活動状況
(単位:人)
来 室 者 数 (延べ)
本人
・
家族
14年度
15年度
16年度
17年度
合 計
1,798
1,495
1,299
1,282
5,874
相 談
支援者
341
547
401
443
1,732
合 計
来 室 目 的
当 事 者 活 動
家族会 専門家へ 専門家へ 公文式
での対応 つなぐ
依頼
学習
2,139
2,042
1,700
1,725
7,606
200
94
87
148
529
20
0
2
17
39
11
4
9
24
48
850
986
629
543
3,008
※
この指
とまれ
34
69
45
71
219
創 作
60
29
0
23
112
その他
スタッフ (取材等)
研修
0
24
25
84
133
46
13
7
18
84
※当事者本人たちのセルフヘルプグループ活動
NPO法人脳外傷友の会ナナ
大塚
由美子
高次脳機能障害特集
高次脳機能障害者への社会的支援の必要性について
平成 13 年度から実施された、高次脳機能
障害支援モデル事業(以下「モデル事業」)
図1
地域連携班を介した
高次脳機能障害者・家族への支援展開
地域連携班を介した高次脳機能障害者・家族への支援展開
連携協力関係にある機関など
に参加した 12 の都道府県(政令指定都市)
市町村
の平均年齢は約 33 歳でした。この方たちの
施設
社会参加や生活の安定のためには、既存の支
学校
援策だけでは不十分であり、様々の取組が必
要であることがわかりました。
相談・サービス
事業者
就労支援
機関
平成 16 年から2年間の後期モデル事業で
就労支援機関等
更生相談所
家庭
総合相談
アセスメント
支援計画検討
支援の展開
ーションセンターに登録された 424 名の方
地域支援班高次脳機能障害担当
本人家族
神奈川リハ病院
必要と判断され、国立身体障害者リハビリテ
(地域支援センター 兼務)
病院
の拠点施設(病院)において継続的な支援が
医療 福祉総合相談 室
当事者団体
地域施設
相談・サービス
事業者
会社
学校
七沢更生ホーム 神奈川リハ病院
診断・評価・訓練
七沢学園(知的)
評価・訓練(社会生活・職能訓練)
は、拠点施設(神奈川県リハビリテーション
支援センター‥地域支援センター)が試行的に社会生活支援を実施しました。神奈川県では、図 1 の
ような方式で支援を展開しました。
神奈川リハビリテーション病院医療福祉総合相談室に、高次脳機能障害支援コーディネーターが配
置されました。
平成 16 年 9 月から平成 17 年 12 月までの間に、支援コーディネーターが対応した入院・入所中
以外の高次脳機能障害者または家族の実人数は 213 名でした。実際に面談を実施した 143 名の方う
ち、初回面談時に福祉的な支援や就業をはたせずに自宅中心の生活をされていた方は 125 名でした。
125 名のうち、神奈川リハビリテーション病院と地域支援センター機能の連携により、福祉サービス
利用へ移行した方が 24 名、就労支援機関へ移行した方が 18 名、一般就労(復職を含む)された方
が 18 名であり、54 名の方に新たな社会とのつながりが生まれました。一度関わりを持った方は継
続的な支援が必要であり、新たな支援対象者との出会いも続いています。
このように高次脳機能障害をもつ方は、適切な支援が提供されることにより、地域生活の拡大や就
業を含めた社会参加が可能になる方たちが多い状況です。
拠点施設を利用される方の多くは、神奈川リハビリテーション病院の外来機能などを活用されてお
り、心理職による神経心理学的評価を受け、医師から障害の説明を受けた後に、必要な方には心理ス
タッフ、職業リハビリテーション(以下「リハ」)スタッフ、体育スタッフなどによる幅広いリハが
提供されると共に、支援コーディネーターによる総合相
談や個別支援が提供されています。
また、高次脳機能障害を持つ方や家族の支援方法につ
いて、地域の相談機関や障害者福祉施設が対応に苦慮す
ることも多いようです。このような場合には、神奈川リ
ハビリテーション病院のリハ機能と地域支援センターの
機能が有機的に地域に提供できるように心がけています。
医療福祉総合相談室
私達が地域連携班です
生方
克之
高次脳機能障害特集
おしらせ
今春 4 月より、地域からのニーズや社会保障制度の変革に対応すべく、従来ありましたソーシャル
ワーク業務と医療福祉連携室が統合され、医療福祉総合相談室にリニューアル
いたしました。これは地域の医療機関、社会福祉施設を含めて当院の医療・リ
ハビリテーション機能を十分に活用していただき、在宅生活への援助を含めて
総合的に立体的なソーシャルワーク業務を推進するために組織改変されました。
今まで以上に充実し迅速なサービスの提供をモットーに、入院・入所・外来受
診、補装具の作製(下肢装具、車椅子、義手・足、座位保持装置、また特殊な
装具)、高次脳機能障害支援、労災、年金や身障・精神福祉手帳など自立支援
法に基づく多種の社会保障制度や書類申請時のアドバイス、介護保険に関する
利用などの相談などに対応しております。
専任スタッフは 16 名が配属されており、従来の個人のソーシャルワークからチームでのソーシャ
ルワークに発展することを目標に、今まで以上にご利用をいただけるように努力をいたします。直接
のご来院または電話・ファックス・メールでもご利用可能です。気軽に当院の相談窓口をご利用くだ
さい。
医療福祉総合相談室 病診連携担当医師
てい
鄭
健錫
医療福祉総合相談室
地域連携班
医療班
福祉班
入院・受診相談、地域支援
相談、高次脳機能障害者支
援、権利擁護等の相談を主
に担当します。
入院の患者さまのご相談、
退院に向けての支援を主に
担当します。
当センター内の障害者施設
のご利用についての相談を
主に担当します。
入院・外来受診等相談窓口 (地域連携班)
TEL
FAX
046-249-2612
046-249-2576
平成18年 4~6月
入 院 患 者 状 況
18 年 4 月からのリハビリテーション
の日数制限の新設、精神科通院医療費
助成制度や更生・育成医療制度の障害
者自立医療への移行、また新設された
障害者の障害程度区分審査の医師意見
書の件数は、1ヵ月で 100 件を超え
対応で繁忙を極めています。
障害のある方と当院の関係の深さを、
改めて実感しています。
田中
入院患者総数
380 人
退院患者総数
402 人
病 床 利 用 率
93.9 %
平均在院日数
68.9 日
神奈川リハビリテーション病院
医療福祉総合相談室
神奈川県厚木市七沢 516
TEL 046-249-2612・2506
FAX 046-249-2576
E-mail/[email protected]
〒243-0121