乾乳期飼料への塩化マグネシウム添加による低カルシウム血症の予防

-------------------------------------------------------------------------------[ 成果情報名]乾乳期飼料への塩化マグネシウム添加に よ る低カルシウム血 症の予防
[ 要 約] 乾 乳 牛の 飼 料に 塩化 マ グ ネ シ ウ ムを 添加 して 陰イオン の量 を増 やすと ,体 内に
よ り多くのカルシウムが 蓄積す る の で ,分娩後 の低カルシウム血症の 予防が期待 できる 。
[ キーワード]乾 乳 牛,塩化マグネシウム,陰イオン,低 カルシウム血症
[ 担当部署] 家畜部・乳 牛チーム
[ 連絡先]092-925-5232
[ 対象作目] 乳用牛
[専門項目 ]飼養管理・ 衛 生
[ 成果分類] 技術改良
-------------------------------------------------------------------------------[ 背景・ねらい]
乳牛は ,分娩後の泌乳開始によって ,多く の血中カルシウムを 乳汁中に移動させるため ,
低 カルシウム血 症になりやすい。低カ ル シ ウ ム血症に な っ た乳牛は,食欲 が無くなり,症
状 が重くなると 立てなくなったり心臓の機能障害によって 死亡する。この 病気は,施肥量
の 多い畑で栽培 された粗飼料 に含まれる陽イオン「カ リ ウ ム」の多量摂取 が誘因と指摘さ
れている。従来 より乾 乳 期 飼 料のカルシウム 量を抑えることで一定の予防効果が得られて
き が,近年はクロールやイ オ ウなどの陰イ オ ンを多く含む 飼料を与えると ,予防効果が高
まることが期待されている。
今回は,乾 乳 期の飼料にクロールイオンを 多く含む「塩 化マグネシウム 」を添加するこ
と で,より効果的な 低カルシウム血症の 予防方法を明らかにする。
[ 成果の内容・特徴 ]
1 .塩化マグネシウムを添加 することで飼料中 のイオンバランス (DCAD値)を−15mEq/100
gに す る と,ふ ん尿か ら排泄 される 「カルシウム 」の量 が少な く な り,体 内に蓄 積する
「カルシウム」が 増える(表1 )。
2 .飼料中のDCAD 値を−15mEq/100gにすると,低カルシウム血症の誘 因 物 質である「カリ
ウム」をより多く 排泄する(表1 )。
3 .飼 料 中のDCAD値 を−15mEq/100gに す る と,尿 のpHが 6前 後まで 低下す る。こ れ は乳牛
の体液が酸性 に傾くことで, 血液中のカルシウム濃度を 調節するホ ル モ ン(パラソルモ
ン)の感受性が高 まっていることを示 している(図1 )。
4 .飼料中のDCAD 値を−15mEq/100gにすると,分娩1日 前∼分娩1日後の 「血中カルシウ
ム濃度」が高まる 傾向にある(図2 )。
[ 成果の活用面・留意点]
1 .乳牛の分娩後の 低カルシウム血症の 予防方法の1つとして活用できる。
2 .塩化マグネシウムの添加量は,各農家の乾乳飼料中のイオン(ナトリウム,カリウム,クロール,
イオウ)の量を測定し,表1・注2の式を用いて決める。給餌後の尿pHが6∼ 7程度になるようにす
る。
3 .塩化マグネシウムを添加すると飼料 の嗜好性が低下す る場合がある。
[ 具体的データ]
注 )1.各 区の飼料 のDCAD値は, −15区 =− 15mEq /100 gDM, 0区 =0mEq /100 gDM, 無調整区 =約 16mEq /100gDM
2.DCAD値 (mEq /100 g)= (Na%/0.023 + K%/0.039) - (Cl%/0.0355 + S%/0.0161 )
3.DCAD値 を調整したTMR飼料は分娩予定 の3週間前から与えた。
4.ミ ネ ラ ル 量は ,各区2頭ずつの連続 3日間 の採食量および 排泄量に お け る1日あたりの 平均値。
処
置
前
処
置
前
図1
尿pHの推移(平成13∼15年)
図2
血中カルシウム濃度の推移(平成13∼15年)
注)pHおよびカルシウム濃度の値は,各区3頭ずつの測定時における平均値。
[ その他]
研究課題名: 生涯生産性向上の た め の分娩前後 の飼養管理技術
予 算 区 分:国庫助成(地域基幹)
研 究 期 間:平成15年度(平成13∼15年 )
研究担当者:北崎宏平 浅岡壮平 原田美奈子 横山学 梅田剛利 古 賀 康 弘
発 表 論 文 等:九州地域基幹研究成果No 10 (平 成16年 ),平 成15年度畜産関係試験成績書