3-(1)-3 スカムスキマの越流量調整方法の改善について - 東京都下水道局

3-(1)-3
スカムスキマの越流量調整方法の改善について
東京都下水道サービス(株)施設管理部東部保全センター
中川保全事業所
中濵
英仁
1.背景
中川保全事業所では、第一沈殿池及び第二沈殿池において季節によりスカムが大量に発
生し、収集しきれずに堆積してしまうことがある。堆積したスカムは固まることもあり、
竹竿で砕いたり、かき寄せたりして流していたが容易な作業ではなかった。
スカムの堆積を防ぐ目的で越流量を変える場合、スカムスキマと連動する水位検出用電
極棒の長さを変えることでスカムスキマの転倒角度を調整してきた。覆蓋下部での電極棒
の調整は、作業エリアが狭く作業性が悪い上、回転する機器に挟まれる恐れがある。臭気
や 流 入 水 が 飛 散 す る 劣 悪 な 環 境 の も と で の 作 業 で あ り 、作 業 環 境 が 非 常 に 悪 か っ た( 図 1 、
2 )。
図1
電極棒調整作業環境
図2
電極棒調整作業環境
そこで本調査では、越流量の調整方法を改善するとともに、スカムの堆積を防ぎスカム
収集を効率よく行うことで、安定した水処理の運転を目指した。
2.改善方法の検討
2.1
スカム越流量調整方法の検討
スカムの越流量を調整する方法として、次の方法を検討した。
(1)ス カ ム ス キ マ 転 倒 角 度 の 調 整
(2)ス カ ム ス キ マ 開 時 間 の 調 整
(3)ス カ ム ス キ マ 据 え 付 け 高 さ の 調 整
(4)ス カ ム 押 し 込 み 水 量 の 調 整
本 調 査 で は 、 効 果 、 費 用 、 手 間 等 を 総 合 的 に 判 断 し 、「 (1)
スカムスキマ転倒角度の調
整」による方法を採用した。
2.2
スカムスキマ転倒角度調整方法の検討
スカムスキマの転倒角度を調整する方法として、次の方法を検討した。
(1)水 位 検 出 電 極 棒 長 さ の 調 整 ( 従 来 )
(2)ス カ ム ス キ マ 転 倒 動 作 時 間 の 調 整
(3)ス カ ム ス キ マ 据 え 付 け 角 度 の 調 整
3 つ の 調 整 方 法 の う ち 、 (3)は 直 営 で は 対 応 で き な い た め 、 (1)及 び (2)に つ い て 検 討 し た 。
2.2.1
「 (1)水 位 検 出 電 極 長 さ の 調 整 ( 従 来 )」 の 特 徴
従来の方法である電極長さの調整の特徴は次のとおりである。
(1)長 所
スカムスキマの停止角度が視覚的にわかりやすい。
(2)短 所
1)越 流 量 を 増 や す 場 合 は 電 極 棒 を 短 く 切 れ れ ば 良 い が 、 越 流 量 を 減 ら す 場 合 は 電 極 棒
の交換が伴い、費用がかかる。
2)ス カ ム 混 じ り の 流 入 水 の す ぐ そ ば で 作 業 す る 必 要 が あ り 、 作 業 環 境 が 悪 い 。
3)工 具 や 電 極 棒 を 池 内 に 落 と し た 場 合 、 沈 殿 池 を 停 止 す る 必 要 が あ る 。
2.2.2
「 (2)ス カ ム ス キ マ 転 倒 動 作 時 間 の 調 整 」 の 特 徴
従来の方法である「電極長さの調整」は電極棒が水面に触れると転倒を停止する制御で
あった。これにタイマ回路を追加して停止までの遅延を作ることで、電極棒が水面に触れ
ても転倒を続け、転倒角度を大きくすることで越流量を増やす。スカムスキマの転倒状況
を図3に示す。
図3
スカムスキマ転倒状況
転倒動作時間の調整による方法の特徴を以下に示す。
(1)長 所
1)導 入 時 ・ 変 更 時 と も 、 手 元 盤 内 で 行 え る た め 作 業 環 境 が 良 い 。
2)タ イ マ の 追 加 ・ 設 定 時 間 の 変 更 の み で で き る た め 、 設 定 の 変 更 が 容 易 で あ る 。
3)水 位 変 更 時 に 費 用 が か か ら な い 。
(2)短 所
1)導 入 時 に 、 シ ー ケ ン ス 回 路 変 更 に 伴 う タ イ マ 等 の 費 用 が か か る 。
2)タ イ マ 設 定 時 間 を 同 じ に し て も 、 回 転 速 度 の 個 体 差 に よ り 、 ス カ ム ス キ マ の 停 止 角
度が異なる可能性がある。
以 上 の こ と か ら 、「 (2)ス カ ム ス キ マ 転 倒 動 作 時 間 の 調 整 」 に よ る 方 法 を 採 用 し た 。
3.改造要領
改造の流れは次のとおりである。
(1)シ ー ケ ン ス 回 路 変 更 の 検 討
(2)2 系 一 沈 1 号 池 で の タ イ マ 取 付 試 験
(3)2 系 一 沈 4 号 池 へ の 水 平 展 開
3.1
タイマ回路の作成
ス カ ム ス キ マ 転 倒 動 作 時 間 を 調 整 で き る よ う に す る た め 、水 位 検 出 回 路 に タ イ マ 回 路( 遅
延回路)を追加し、水位検出後もパイプスキマ転倒動作を一定時間継続するようにした。
改造に使用した部品は次のとおりである。
(1)タ イ マ
H3M
1個
( 設 定 可 能 範 囲 : 0~ 1、「 秒 」・「 分 」 切 替 付 き 、「 1 倍 」・「 10 倍 」 切 替 付 き )
(2)ベ ー ス
1個
(3)配 線 材 料
一式
※数量は 1 水路あたり
なお、部品はすべて在庫品を使用した。
改造前後のシーケンス回路図を図4、5に示す。
図4
シーケンス回路(改造前)
図5
3.2
シーケンス回路(改造後)
2 系一沈 1 号池でのタイマ取付試験
まず、2 系一沈 1 号池の手元盤にタイマを取付けて性能調査を行った。タイマの設置状
況を図6に示す。
図6
2 系一沈 1 号池タイマ設置状況
タ イマ 設 置 後 、設 定 時 間 を 1 秒 刻 み で変 え て ス カム ス キ マ を動 作 さ せ 、越 流 量 を 目視 で
確 認 し た 。そ の 結 果 、タ イ マ の 設 定 時 間 は 1 秒 が 適 し て い る と 判 断 し 、全 台 1 秒 に 設 定 し
た。
その後、定期的に状況を確認し、タイマ設定時間を変更した。
10 月 か ら 11 月 の 2 か 月 間 運 転 し た 結 果 、 シ ス テ ム と し て 問 題 な い こ と を 確 認 し た 。
3.3
2 系一沈 4 号池への水平展開
2 系一沈 1 号池でタイマ設定可能時間等に問題がなかったため、1 号池に加えて 4 号池
にもタイマ回路を設置した。1 号池と同様、定期的に状況を確認し、状況に合わせてタイ
マ 設 定 時 間 を 変 更 し た 。平 成 24 年 2 月 ま で の 3 か 月 運 転 を 継 続 し て 確 認 し た が 、2 系 一 沈
1 号池、4 号池とも目立ったスカムの堆積がなく、一定の効果がみられた。
平 成 24 年 3 月 現 在 の タ イ マ 設 定 時 間 は 表 1 の と お り で あ る 。
表1
2 系一沈 1 号池
号池
水路
設定時間
(秒 )
タイマ設定時間
2 系一沈 4 号池
1
2
3
4
1
2
3
4
2.5
1.5
1
1
1
1
1
2
4.結果
2 系一沈 1 号池、4 号池での改造により、次のような成果が得られた。
(1)ス カ ム 発 生 量 に 応 じ た 最 適 な ス カ ム ス キ マ の 越 流 量 調 整 が 簡 単 に で き る よ う に な っ
た。
(2)覆 蓋 下 と い う 劣 悪 な 環 境 で の 電 極 棒 の 調 整 作 業 を 無 く す こ と が で き た 。
5.まとめ
今回 2 系一沈 1 号池と 4 号池の計 8 台についてスカムスキマの越流量調整方法を改善し
た。
スカムの大量発生時にも、タイマ設定時間を変更し越流量を増やすことで、スカムの堆
積を防ぐことができた。今後、第一沈殿池の他の号池と第二沈殿池への水平展開を検討す
る。