3∼4銭の危機は何を意味するか 一対照的な2人の幼児の自己と保育者による受容に題する■例研究を通して一 真 攻 学校敬育学 コース 幼年散育コース 学頼番号 m60661 氏 名 触壕 恭一郎 近年,幼稚園は,子育ての支援や,小学校と 観察事例を挙げ,考察を巡らすことによって, の連携,あるいはτ認定子ども園」に代表され あらためて,3∼4歳の危機の意味と自己の有 る幼稚園機能と保育所機能の融合といった,制 り様を問い直した。また,そこに求められる保 度の激しい変化のうねりにさらされている。幼 育者の「受容」について,事例をもとにそれが 稚園現場も保育者も,この変化への対応に精一 成り立つ過程を検討し,保育者に求められる資 杯という様相が見受けられるが,そうした変化 質や専門性を明らかにしていくこととした。 の内側で集団生活を過ごしている,肝心の幼児 の今と育ちはどうなっているのだろうか。 本論の樽成は以下の通りである。 筆者は,私立幼稚園において,幼稚園教諭と して,あるいは保育主任として,直接的にも間 はじめに 接的にも幼児とその保育に携わり,3∼5歳児 第1章 挑発を繰り返す3歳児に関する事例研 が集団生活の場で育ちゆく姿を見てきた。保育 究:他者の受容による自己の発達 者や友達との出会いを経て,集団の中で操まれ 1.問題 ながら育つ幼児本来の姿が見られる一方で,感 2.方法 情のコントロールが難しい幼児や,大人を信頼 3.事例と考察 できる存在と感じていないかのような幼児など, 4.総合考察 様子の気になる幼児の存在が際だってきている。 5.今後の課題 「自己中心性」が,幼児期,特に3歳前後の幼 第2章信頼と勇気から見た保育者の受容の構 児の発達特性であることは,発達理解の基本だ 造:強情を張る4歳児への対応を通し と言えるが,その前提が疑わしくなっていたり, て 幼稚園入園前の育ちの「格差」とも言うべき違 1.問題 和感が感じられるようになってきている。 2.方法 そこで,特に『3∼4歳の危機」と言われる, 3.事例と考察 反抗心や強情といった唄の心の動き」が顕著 4.総合考察 で,保育者が扱いにくさを感じることが多い幼 5.今後の課題 児の自己の有り様に着目した。幼稚園に入園し, おわりに 集団生活を始める年齢である3歳から4歳の幼 児の危機的状況について,対照的な幼児の関与 一64一 第1章では,保育者や友達を「挑発」すると 課資■ いう攻撃性を前面に出しているYくんの事例を 子ども 箏 取り上げた。周囲に困惑を生じさせる行為の意 味は,狂おしいまでの自己充実欲求と繋合希求 ク構々... 1 性の反映であった。そこに,どんな対応であっ ㌧… i:=)…’ ても誰かに相手をしてほしいという「乾いた自 図:信頼と勇気という得点から見た受容の構造 己」の有り様を見いたすことができた。 また,その乾いた自己に対しては,それが集 団の正当性に基づくr叱責」という対応であっ 本研究では,3∼4歳の危機にある子どもに たとしても,保育者は逃げず怯まずr受けて立 とって,その自己の有り様を欲求に従い精一杯 つ」という受容的態度が求められることが浮き 表出していくことが自然な姿であること。そし 彫りになった。 て,その環境として幼稚園と保育者が必要であ 第2章では,遊びの中で自分にとって不利な ることを改めて確認することができた。 状況に追いつめられた結果,周囲との関わりを また,保育者と幼児の問にある「勇気」とい 完全に拒否するという「強情」を張ったIくん う概念を見いだし,それが「信頼」へと重なっ の「籠城する自己」の事例を取り上げた。膠着 ていくこと。そして,とかく保育現場では経験 した状況が好転することを願い,筆者が関与の 則だけで語られることが多い「受容」について 視点を改めたことから,彼が握りしめたボール も,勇気と信頼という観点からその構造を明ら に込められた心情について洞察を得て対応を行 かにすることができた。 った。そしてお互いが,後に「信頼」に融合し ただ,これは,3∼4歳の危機とその受容の ていく「勇気」を差し出し合うことで,Iくん 切り取られた場面での研究であり,長期的,縦 の強情が解消し,問題の解決に至った。 断的な研究の観点は含まれない。この点に関し ここからは,保育者が幼児と相互の受容を成 ては,今後の研究の課題として残るものと捉え り立たせるために求められる資質と専門性につ ている。 いて考察を行った。それは,「理解カ」「洞察力」 「行動力」『表現力」の4つのカと,それらのカ を有効的に発揮するための「感性」と「理性」 である。「感性」と「理性」がバランス良く働く とき,上記4つの力が活きてくる。 また,この事例の考察により,保育者と幼児 の問に,「信頼」と「勇気」という関係性の概念 があることがわかった。そして,r信頼」とr勇 気」という観点から,r受容」の構造を見いたす 主任指韓教員 横川 和章 教撮 ことができた。(図参照) 指韓徴員 石身 秀明 准教緩 一65一
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