実学を通じて マ ン グ ロ ー ブ 林 に 眠 る 怪 物

タイで撮影した思い出の写真。深さ1mのトレンチに海
1. マングローブ原生林で行った根掘り。1982 年に南
頃の私。
2. 土壌微生物による有機物の分解速度の測定。東タ
水が湧きだしている。バケツの手前にいるのが 30 歳
設や観光地を数多く訪れられて、とても充
実した研修でした。また多民族国家の利
点や課題を知ることは、多民族共生や異
文化交流について深く考えるきっかけにも
なりました。今後もぜひ多くの人に参加し
てほしいと思います。
教育学部 英語教育講座 4 年
オーストラリアは世界有数の
the
White
Australia
Policy
to
移民国家であり、移民の歴史、
」
the Universal Migration Act
多文化主義、オーストラリア英 「
Australian
Multiculturalism
語、先住民族のアボリジニなど
」
/ A Multicultural Japan?
について 現 地で 学 ぶ 授 業 で あ 「
Australia-Japan
relations
and
る。授業は、午前中のシドニー
」
Japanese culture in Australia
大 学 に お け る 講 義 と 午 後の 地
等、オ ース トラ リアの 歴 史 と
域にお け る 文 化 体 験 実 習・小
現 代 社 会、その文 化の理 解 を
旅行などを通して、座学と体験
深めていく。併 せ て、 Reading,
的 な 学 習の両 面 か ら 理 解 を 深
Writing, Speaking, Listening
めるように計画されている。授
全 て の Language Skill
を総合
業 で 学 ん だこ と を 実 践 的 に 活
的 に 使った 授 業、地 域 に お け
用し、日本では経験出来ない形
る 異 文 化 体 験 実 習、シドニー
で英 語や 異 文 化 を 学べるよ う
大 学 International House
にお
なコース・デザインとなってい
け る 生 活 等 を 通 じて、参 加 者
る。
の英 語 運 用 力・異 文 化 理 解 力
具体的に取り上げるトピック
を 実 践 的 に 高 め てい く こ と を
は、「
」 目標とする。
Becoming
a
British
colony
「 Aboriginal Australia
」
「 From
語学習ができるだけでなく、歴史のある施
のだ。この森林は、地下にもの
が集積し、潮が入る環境のゆえ
に、特殊な炭素循環の様式を持
つ可能性がある。私は、この仮
説を検証するため、熱帯で仕事
を続けることを決心した。
大気と森と海の間で、炭素は
生物・物理的に循環している。
森林生態系は、生物群による同
化と異化のバランスで、炭素固
定速度を変化させている。具体
的にこの速度を解析するには、
ま ず 樹 木 量とその時 間 変 化 を
求めねばならない。東南アジア
各地で、ギネスに載りそうなく
らい多 くの樹 木 を 測 定 す る 作
業 を 続 け た。器 官の枯 死 脱 落
速度や、土壌微生物による分解
呼吸の速度も測定した。
充実した 年間が、夢のよう
に 過 ぎ た。現 地の仲 間 や 教 え
子と一緒に、検証に必要なデー
タをそろえた。その結果はこう
である。マングローブの同化速
度に較べて、土壌に集積する有
機 物 が 分 解 す る速 度 は極 端に
小さかった。つまり、収入が支
出を超え、この生態系の炭素固
定 速 度 は 非 常 に 大 きいことに
なる。これは、莫大な量の炭素
が、水浸しの地下に未分解のま
ま眠っていることを意 味 する。
もし、人間がマングローブ林を
土壌まで破壊してこの怪物を覚
ますと、とんでもない環境変化
が起こるのだ。
すでに人間は、原生的な森林
を、小規模な二次林にほぼ置き
換えてしまった。私たちの警鐘
は、世界に届くだろうか。
マングローブ林に眠る怪 物
日常会話から英語に触れ、実践的な英
巽 徹 准教授
実学を通じて
教育学部英語教育講座
熱帯雨林は、一年中高温多湿
な環境にあり、生物本来の生活
が観 察できるはずだ。これは、
昭 和 期 に 活 躍 し た 生 態 学 者の
言葉である。私にとって熱帯雨
林はまだ見ぬ聖地で、途方もな
い巨樹、不思議な生物、未知の
探検、何もかもが好奇心をくす
ぐった。1982 年に、日タイ
合 同の 学 術 調 査 隊 に 加 えて も
らったのは、恩師の推薦による
もので、この瞬間に私の人生は
変わった。師はありがたい先達
であった。マングローブ林の根
量を調べるために、期待と不安
の中、タイ王国に出発した。
調 査 許 可 な ど必 要 な 手 続 き
を済ませて、ようやく長距離バ
スで南タイにたどり着いた。こ
こは泥と水の世界で、 m近い
高さの大木が林立していた。毎
日、暑 さ と 泥 と 虫 に 悩 み な が
ら、仲間とともに原生林で根を
掘った。そして、マングローブ
林が大量の根を持つことに気づ
いた。根が多いからこそ、大木
が泥地に平気で立っていられる
小見山 章 教授
(森林生態学)
横幕 香澄さん
応用生物科学部
総合文化海外実習
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岐大のいぶき No.23 Spring - Summer |
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イの森林で女性研究者(チュラロンコン大学講師=連
合農学研究科修了生と本学卒論生)が奮闘した。
3. マングローブ林生態系をめぐる炭素の循環経路。写
真は東タイにあるヒルギの二次林。中央の木には、
キュ
ウリのような胎生種子が葉間に多数ぶらさがっている。
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