岩塩も塩湖の塩も海水が元ですから、すべての塩は「海水からできている」とも言えますが、塩にになると違います。現在、海水中の ミネラル(金属イオン)は約70種類と言われています。約70種類のミネラルは、「それぞれ違った性質」を持った「違う物質」ですから、 海水が塩になったとき、塩化ナトリウム ( NaCl )の他にどんなミネラルがどのくらい塩に含まれているかによって、違った塩になります。 いろいろな塩 海水 海水塩 天然海塩 再生加工塩 原料: 海水100% 原料: オーストラリア・ メキシコの天日塩 + ニガリ等のミネラル分 を添加 完全天日塩 カンホアの塩 海の精( 青ラベル) 、 粟国の塩、美味海、 ゲランドの塩( フランス産) など 釜焚き塩 海の精( 赤ラベル) 粟国の塩( 釜焚き) 小笠原の塩 など 赤穂の天塩 伯方の塩 シママース 昔塩など Step 1 (海水塩と岩塩・湖塩) 海水自体にはさまざまなミネラルが含まれていますが、岩塩など、長い時間がたってできた 塩は塩化ナトリウム ( NaCl )の純度が極端に高くなってます。それは、各ミネラルが、それ ぞれ違う性質を持っているからで、NaClはNaClだけで、層になって固まっているからで す。だから、岩塩は自然にできた塩ですが、元の海水の成分のうち、「ほとんど NaClだけ が残った塩」と言えましょう。また、湖塩も同様に自然にできた塩ですが、それ故に、その ままではミネラルが偏っていて(マグネシウム分がとても多く)、食用にするには、加工が 必要です。 Step 2 ( 海水塩 ∼イオン交換膜法) 次に、さまざまなミネラルが含まれている海水からできた塩(海水塩)でも、その「製法」 によって、成分・味が違ってきます。「イオン交換膜法」とはNa+( ナトリウムイオン) とCl ( 塩素イオン) を海水を電解することによって、結合させてつくった塩ですから、NaClの純 度は高くなります。海の汚染や、天候に左右されないのがその特徴です。 Step 3 (天然海塩と再生加工塩) 再生加工塩とは、オーストラリアやメキシコの天日塩にニガリなどのミネラル分を添加して 再生した塩です。この天日塩は、自然現象などでできあがった天日塩なので、岩塩に近く、 NaClの純度がとても高いです(98%ぐらい)。そこでニガリを混ぜてその純度を抑えた塩 が再生加工塩です。また、ニガリとは、塩を採ったあとの残った液で(主に豆腐を凝固させ るときに使われます)、ミネラルの一種ですが、約70種類ある海水中のミネラルのひとつ のマグネシウム分のみが極端に多い液です。ですから、再生加工塩は海水中のミネラルのバ ランスとは違った、「ミネラル入りの塩」です。 岩塩・湖塩 イオン交換膜 製法の塩 ミネラル 添加塩 ミネラル 無添加 瀬戸のほんじお など 食卓塩 (塩事業センター) 岩塩 湖塩 アルペンザルツ ( ドイツ産) など 死海の塩 など Step 4 (天然海塩∼完全天日塩と釜焚き塩) 完全天日塩とは、塩田で海水を文字通り完全に天日だけで(最後まで)塩にする製法でつくられ た塩。そして、釜焚き塩は主に塩田である程度まで海水を濃くし、最後に釜で焚いて結晶させた 塩です。日本では比較的雨が多いので、釜で焚く製法が古くから行われてきました。「天然海 塩」と呼べるのは、この2つになるでしょう。天然海塩は、自然現象でできた塩などと違って、 「人間の手で、海水を元から塩にしている」ので、海水中のミネラル(微量ミネラルも含む)を 含ませることができるのです。しかしながら、天日で塩を結晶させるのと、釜の火で塩を結晶さ せるのとでは温度が違うので、ミネラルの結晶のしかたが若干違います。だから、より完全な自 然製法ということになると、完全天日製法ということになるでしょう。 Step 5 (カンホアの塩と完全天日塩) 完全天日製法が最も自然で、かつ海水中のミネラルをバランスよく含ませることができる製法 ですが、さらにどのような完全天日製法かによって、ミネラルのバランスは変わってきます。 塩田などで海水が濃くなっていって、ある程度濃くなると塩が結晶してきますが、NaCl が結晶 化する前にカルシウム分が結晶化し、NaCl の結晶化が終わる頃、マグネシウム分が結晶化しま す。各ミネラル成分は各々その性質が違うので、味だけでなく、結晶化するタイミングも違う のです。塩を結晶化させていくとき、NaCl だけを採ることを考えれば、NaCl が結晶化する直前 のタイミング(天日の温度の場合、塩分濃度25%ぐらい)で収穫する最後の塩田(結晶池)や 釜に入れてNaCl の結晶化が終わるタイミング(30%ぐらい)で収穫してしまえば、一番効率が いいわけです。しかし、カンホアの塩は最後の収穫する塩田(結晶池)に15%で入れているの で、カルシウム分やその他の微量ミネラルが豊富に含まれます。微量なミネラルは味に極端に は現れませんが、カンホアの塩にはしっかりといろんな海のミネラルが含まれているのです。 それから、カンホアの塩の収穫は塩分濃度30%のタイミング。これより早くてはマグネシウム 分が十分でなくなり、これ以上遅いと、マグネシウム分は豊富に含まれはしますが、料理には あまりにも苦味が強い塩になってしまうからです。ミネラルの量もある程度必要ですが、量だ けでなく、そのバランスが大切なのです。
© Copyright 2024 ExpyDoc