愛知工業大学研究報告 第 33号 A 平成 1 0 年 7 9 断眠が視覚機能のサーカデ、イアンリズムに与える影響 O nt h eE f f e c to fS l e e p D e p r i v a t i o n o nt h eC i r c a d i a n 町l y t h 皿 石 o fV i s u a lF u n c t i o n 垣 H i s a o 尚 回 ヨ ブ3 I S H I G A K I S u m m a r y F i v es u b j e c t sw e r el o a d e dt h es l e e pd e p r i v a t i o ne x p e r i m e n td u r i n g3 6h o u r s .T h e e f f e c t so fs l e e pd e p r i v a t i o nt oC i r c a d i a nR h y t h mo ft h ev i s u a lf u n c t i o nw e r ei n v e s t i g a t e d . 1 1v i s u a lf u n c t i o n sh a v i n gb e e nt e s t e dd u r i n gt h es l e e pd e p r i v a t i o ne x p e r i m e n t, a n dt h e v i s u a lf u n c t i o nw a sm e a s u r e de v e r yt h r e eh o u r s . M a i nr e s u l t sa r ea sf o l l o w s . 1 .T h eC r i t i c a 1F l i c k e rF r e q u e n c y( C F F ) h a dc l e a rp e r i o d i c i t y .H o w e v e r,C F Fo ft h en e x t a n dt h ef r e q u e n c y sw e r el o wl e v e l . d a yh a dn o tc l e a r p e r i o d i c i t y, 2 .I tw 田 e s t i m a t e dt h a ts u b j e c tw h ow a sl o wv i s u a la c u i t yc h a n gi n t ov i s u a la c u i t yvalue d u r i n gad a y, h o w e v e rt h e v i s u a la c u i t yi sn o td e t e r i o r a t ed u etothes l e e p d e p r iv a t i o n . i d 3 .T h ea c c o m m o d a t i o nn e a rp o i n td i s t a n c ee x t e n d e db ya b o u t6 c mf o rad a y .H o w e v e r,d n o tr e t u r nt ot h ev a l u e b e f o r el a s tm o r n i n g . 4 .I tw a sc o n s i d e r e dt h a tt h es t e r e o p s i sw a sn o t. i np e r . i o d i c it ya n de f f e c to fs l e e p d e p r i v a t i o n 5 .T h ee y em o v e m e n t h a d t h ea p p r o x i m a t e dp e r i o d i c i t yi nt h eC F F . 6 .T h ec o n t r a s ts e n s i t i v i t yh a dt h et e n d e n c yw i t hh i g h e rs e n s i t i v i t yo ft h e e v e n i n g t h a nt h em o r n i n g . 7 .C l e a rp e r i o d i c i t yw a sn o tp r o v i d e da so t h e rf u n c t i o n s . 1園 購 買 自 的 生体は昼夜の周期に合わせて限りと目覚めを繰り返 し,それにともない生体機能はサーカデ、イアンリズム ( c i r c a d i a nr h y t h m )と呼ばれる一定の周期性をもっ て変動することは知られている.生活パターンが夜型 に移行し,睡眠不足や睡眠時間帯のズレが日常的な現 代では,生体機能のサーカディアンリズムがどのよう に変動するのかを知ることは健康な生活の上でも重要 である. この研究はこれまで、周期'性についてほとんど明らか になっていない視覚機能にサーカディアンリズムがあ るのかを明らかにし,さらに通常の睡眠時間帯を眠ら ないことによって,サーカデイアンリズムは変動する か観察することを目的としている. C F F ( C r i t i c a lF l i c k e r F r e q u e n c y )は,覚醒レベル を反映する 1)ものとして,サーカディアンリズムの客 観的指標として用いられることが多い. M u s u m e c iら2) は午前 9時から午後 9時の間, 3 時間ごとに 6 才 ~8 才の児童 28名の C F Fを観察して, C F Fは一日のうち に一定の周期性をもって変動していることを確認して し、る. C F F は比較的測定容易な指標であり,覚醒レベルや 他の視覚機能との関係が深い叫 と考えられることか ら本研究でも C F F の周期性を軸とし, C F F をもとに他 の視覚機能との関係を観察した贋本実験では午前 9時 より翌日の午後 9時までの 3 6時間,一睡もしない場 合,時間の経過にともなって視覚機能はいかなる変動 を示すのかを観察した. l 8 0 愛知工業大学研究報告,第 3 3号A,平成 1 0年 ,V o133-A, M 世 . 1 9 9 8 2. 方 法 1) 被 験 者 2l ~22 才の健常な男子大学生 5 名.うち,コンタ クトレンズによる矯正が 3名,非矯正 2名である. 2) 被 験 者 の 睡 眠 時 間 の 統 制 被験者には実験日の 1週 間 前 か ら 午 前 0 時(以 下 , AMO) 前後に就寝し,午前 7時(以下, AM7) 前後に 起床するように要請した.全員おおむねこの睡眠時聞 を 1週間継続した.被験者 5名の実験日の平均睡眠時 間は 7時間 10分であった. 3) 実 験 時 間 (9) コントラスト感度 VISTECH 社の VISI側 CONTRASTTEST パネノレを使用し た. (10) 深視力 深視力計 CP250 (TOMEY) を使用した.前→後,前← 後各 3回,計 6回測定し平均値を求めた ( 1 1)眼と手の協応動作 WAYEN社製 SACCADICFIXATORを使用した. 3 0秒間に タッチできたターゲットの数を測定した 以上の項目のうち,被験者はまず CFF を測定し,次 に視力を測定した.その他の項目の測定は順不同とし た.すべての測定が終了した後に,産業疲労研究会の 自覚症状調べを行った .11 項目の測定に要した時間 は約 10 分/人であった. 3 時間ごとの測定回数は 36 時間内にのべ 13 回であった.被験者には予備実験で これらの測定に習熟させた. 被験者には,実験日当日は AM7前後に起床させた. AM9より実験を開始し,翌日 PM9の測定で終了した. 5) 実 験 中 の 行 動 の 統 制 4) 測定項目 ・実験中は仰臥,居眠りを禁止し,検者が監視,確認 した. 以下の 1 1項目の測定と, r 産業疲労研究会の自覚症 状調べ」を 3時間ごとに行った. (1) CFF NEITZ ハンディフリッカーを使用した.赤色光の点滅 周波数を下降法により両眼視で 5回測定し,平均値を 求めた. (2) 静止視力 VDT視力計 NS-050 ( T O 肥Y ) を使用して右,左,両眼 視力を測定した. (3) 立 体 視 NEW STEREO TEST(臥 NDAYA)の升目図形を使用した. (4) 調節近点距離 近点距離計 (Kowa)を使用し,両限で測定した. 3 閲 測定し平均値を求めた. (5) KVA動体視力 AS-4A主主 ( K o w a )を使用した.視距離 30 皿で視力1.0 に相当するランドノレト環を 50m より眼前に 8.3皿Isec で接近させ,識別できた距離を測定した. 5回測定し 平均値を求めた. (6) DVA動体視力 自作 DVA動体視力計を使用した.視力値換算 0.04の ラ ント守ルト環を 40rpmから自動的に減速させ,識別できた時 r p m ) を 5回測定し,平均値を求めた. 点の速度 ( (7)眼球運動 自作パソコンソフトワェアを使用した. Display 上に O .5sec のインターパルで連続して出現する緑色視標 / 5の確率で出現する を眼球運動で追跡し,その聞に 1 黄色視標が識別できたらスペースキーを押し,時間内 に正しく押すことができた数を計測した. (8) 瞬 間 視 自作パソコンソフトを使用した.Display上に 100msec 提示される 6桁の数字を瞬間的に判別させた.これを 1 0回提示し判別できた数の平均値を求めた. ・実験中の読書,テレピ視聴は許可したが,測定開始 1時間前からの飲食,コーヒー,お茶,軽運動,テレ ビ守視聴を禁止した. ・トイレを除いて原則として被験者の実験室からの外 出を禁止し,食事はすべて差し入れた, -実験室は蛍光灯の約 1000lxの照明であった.窓に はカーテンをせずに昼夜にわたって外光を入れた. 2 日間の天候は晴れであった. 3. 結 果 自覚症状 表 1は,産業疲労研究会の自覚症状(気分しらべ) のアンケートの結果である. 1 日間の AMOまではリラ ックスした気分が多いが,夜中の AM3にはボウッとし ている,少し眠いという訴えが出だし, 2 日目の PM12 頃には眠い,横になりたい ( 1名),とても眠い,目を 開けていられない ( 2 名)といった強い眠気を訴える 被験者が増えている.その後,強い眠気の訴えは減り ( 1名) ,眠い,横になりたい ( 3名)という訴えが増 えている. 2 日目の PM3以降には眠気とともに,活動 性の低下がおきることが推測される. 1)GFF 図 1は , 36時間にわたる CFFの各被験者の変動と, 平均値の変化である. CFFの個人差は 1 日目の AM9で 平均 40.5~47.2Hz の範囲にあった. 36時間の変動パ ターンは各個人により違い,必ずしも全員一定のパタ ーンをとらなかった.しかし, P怖 か ら PM9 にかけて は全員の周波数の低下が観察された.平均値は AM9か ら PM12にかけて上昇し, PM3で一旦低下し, PM6 にか けて再び上昇した.その後, PM9にかけて低下し, PM9 断H 民が視覚機能のサーカディアンリメムに与える影響 8 1 表 1 自覚症状(気分しらベ)の結果 気分 。 。 。 。。 。。 。。 。 。。 。。。 。 。 。。。 。。。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。。。。。。。。。 。 AM9 P日12P副3 P闘6 P閑B AMO A闇3 A闘E AM9 P悶12 P日3 P闇6 PM9 活動的 活動的だが高いとはいえない 2 2 りフツウスした気分 少しボウツとしている 3 3 2 2 3 4 E 3 3 2 ボウッとしている。少し眠い 眠い。検になりたい 2 3 2 3 2 とても眠い。目を開けていられない 町 川 n Z L ﹁ 一 番 ← W A 一量一一間U ー者一闇A FU F Fは低 ターンと近似している.しかし 2日目には C 下したのに対し,視力は断眠によって低下していない のが特徴である.少なくとも 1昼夜程度の断眠では視 力は低下しないものと思われる. 1.5 同 民d A . q u η 乙 4 2 n u nu n 6 守F D F D n 斗 qu ι t f n u n 3 0 0 'Ruphu 叫 RdFE吋 z-uRdRUE-u 絹UTnYAUYA・ 凋 守 A 1 凋斗 nuynμya斗 qJqdマ qdqd 勺JU 一---NA -者一 2 品 1 . 4 ︽ 1 .3 M 土 晶 1 . 2 。 1 .1 O .9 0.8 A M 9P M 1 2P M 3 P M e P M 9 A M O A M 3 図1 州6 A M 9P M 1 2P 間 ータ←胡A P M 6 P 同 GFFの周期性と断眠による影響 の周波数は A M 9より低くなった.このような 3時間ご との 日の C F F変動パターンは,同じく, AM9~PM9 の 3時間ごとの児童の C F Fを観察した M u s u m e c iら 2) の結果とまったく同様で、あった. AMO~AM7 は通常の睡眠時間帯であるが,この間の CFF は 41~42Hz と低いまま,ほぼ一定値を保った 断眠後の 2 日目の AM9 時~PM9 時の CFF は 1 日目にみ られた周期的な変動はなく,また周波数も 41~43Hz と,前日の同時間帯より 3~4Hz 低く推移した.通常 の睡眠をとれば健常であれば 1 日目とほぼ同じ周波数 で,一定の周期的な変動パタ」ンをとると恩われるが, F Fの 断限後の変動は異なっていた.このことから, C 周期的な変動は断眠によってくずれ,しかも周波数が 低いまま推移することが明らかとなった. 2) 視力 問眼視力(以下,視力)の変動を小数視力で図 2に 示した. 5名のうち,被験者 M Aのみが大きな変動を 示した.被験者胞の視力は 1日目の A M 9の時点で O .7 であり,その後, 3 6時間の聞に1.5の問を変動した. Aにみられたような大きな変動はな 他の被験者には M かった.視力が低い被験者は一日のうちに変化するこ とが推測される. 5名の被験者を平均した変動は図 1の C F Fの変動パ O .7 -骨ト F U 由。ー平均 O .6 A M 9 P M 1 2 P l . ¥ 3 P M 6 P M 9 A M O A M 3 A M 6 A M 9 P M 1 2 P M J P M 6 P M 9 図 2 視力(両眼)の変化 3) 立体視 NEW STEREO TEST の升目図形の評価は全員が 9であ 6 時間にわたって変動が一切なかったー り , しかも 3 したがって,立体視には周期性がなく,かっ断眠によ って影響されないと思われる. 4) 調節近点距離 調節近点距離(以下,近点)は 1目の P M 1 2より測定 M 3に向かつて延長すると を開始した.近点は全員が A いうほぼ同じパタ」ンを示した.被験者即をのぞい て近点は 12~14cm であったが,品13 では平均で約 6cm 延長した.ピークは A M 3にあり,その後, -_ e _A M 9に 向かつて短縮するが, 1日目の値まで短縮せず, 2 日目 は延長したまま推移した.通常の睡眠をとれば 1 日目 の同時間帯まで、近点は短縮するはずであるが戻らなか った. AM3~AM9 にかけてみられた短絡が睡眠中に前 日値まで回復する機序を示唆しているものと思われる. 近点は朝がもっとも近くにあり,その後,時間をへるご とに延長をつづけ,睡眠中に前日値まで回復するとい う周期性をとるものと思われる.しかし,断眠によっ てこの周期性はくずれることが明らかになった a 愛知工業大学研究報告,第 3 3号 A,平成 1 0年 ,V o133-A,M 町 1 9 9 8 8 2 39 , rpm cm 23 2 1 35 1 7 33 15 3 1 13 1 1 2 9 9 一←?仏 27 一号ー 7 FU 由。田平均 5 PM12 PM3 PM6 PM9 AMO AM3 AM6 AM9 PM12 PM3 PM6 PMe 25 AM9 PM12 P M 3 国5 図 3 調節近点距離の変化 5) KVA動体視力 KVA 動体視力の変動は被験者 MU を除いてわずかで あり,とくに被験者に共通した変化を示していない¥ 断眠によって KVA動体視力が低下するという傾向もな かった(図 4)固 40,- m PMG PM9 AMO AM 陥 A1 r !6 AM9 PMl2 PM3 PMG PM9 DVA動体視力の変化 7)眼球運動 図 6に眼球運動の変化を示す.眼球運動は図 1の CFF と同じような周期性をもって変動した, AMO にピ ークがあり, AM6 に向けて能力は低下した.第 2 日目 には 1日目よりやや低下したものの,まったく同じ 周期性を示した. --NA --WA 35 ー#ー聞A 30 ーー昌一 FU 25 人J 95 90 85 20 80 15 7 5 1 0 70 5 65 。 AM9 PM12 P I :3 図4 P I I 6 PM9 A削 AM3 AM6 UI9 PM12 P 田 PM6 PM9 60 AM9 PM12 PM3 K V A動体視カの変化 6) DVA動体視力 DVA動体視力は, 1 日目の PM6に向かって向上し, PM9で低下したのち, AM3にピークとなった.断眠に よっても低下しなかった.また 1日目のような周期性 は 2 日目にはみられなかった(図 5) PM6 図6 PM9 AMO AM3 AM6 AM9 PM12 PM3 PM6 PUg 眼球運動の変化 8) 瞬間禄 1 日目の瞬間視は PM3にピークがあり, PM6~AMO に は低下した. 2 日目の変化も 1 日目と同様に, PM3に ピークのある周期性を示した.また,断眠によって能 力の低下は観察されなかった固 8 3 断眠が視覚機能のサーカディアンリズムに与える影響 10) 深視力 深視力は 1 日目, 2 日目を通して向上する傾向を示 した(図 9)ーしかし,その差はわずかであり,差と は言えない範囲内の変動である.被験者 FU の変動が 大きく,平均値を左右している圃他の被験者の変動を みると共通した変化パターンがなく周期性は不明確で ある.しかし, 2 日目の低下はなく 深視力は断限に よって影響されないものと思われる. 6 5目呂 5 .6 5.4 p 5.2 0,m r n 5 4 .8 ku 4 .6 4.4 一10 2 4 .. 4 A M 9P M 1 2 P M 3 P M 6 P M 9 A M O A M 3 A M 6 A M 悶 P M 1 2P M 3 P M 6 P M 附 一1 5 図 7 瞬間視の変化 9) コントラスト感度 図 8は ,V I S I O NC O N T R A S TT E S Tパネルの1.5Hz~18Hz 2 .0 の 5 つの周波数におけるコントラスト感度値 (1~8) の平均値である圃数値が上がれば,コントラスト感度 は上昇したことを表す. 1 日目のコントラスト感度は 各周波数とも AM9 より上昇し, PM6に感度のピークが あった. PM9, PMOには感度は下がっているー第 2 日目 は AM9 より再び上昇し,感度のピークは PM6にあると いうパターンを示した.とくに周波数による変動のパ ターンの違いはないと恩われる.コントラスト感度は 朝より夕方の方が高いという周期性をし,断眠による 影響はないものと推測される. 。 置 平均 E 2 .5 A M 9 P M 1 2 P M 3 P M 6 P M 9 A M O A M 3 A M 6 A M 9 P M 1 2 P b ! 3 同胞 P " ' 園9 深視力の変化 11)眼と手の協応動作 限と手の協応動作も 1 日目, 2 日闘を通して向上す る傾向を示した(図 10). AMO~AM6 という睡眠時間帯 での低下も観察されない.眼と手の協応動作は,視覚 的には周辺視野での認知であり,両手によるターゲッ 3 0可回仁王ご雨 7 . 5 2 .8 7 26 24 仕 5 2 . 2 . . 20 6 1 8 5 . 5 14 5 A M 9 P M 1 2 P M 3 P M 6 P 山 A M O A M 3 A M 6 A M 9 P M1 2 図 8 コントラスト感度の各周波数の 変化(平均値) 1. 2 A M 9 P M 1 2 P M 3 P M 6 P M 9 A M O A M 3 A M 6 A M 9 P M 1 2 P M 3 P M 6 P M 9 図 10 眼と手の協応動作の変化 愛知工業大学研究報告,第 3 3号A,平成 1 0年 ,V o 1 3 3 -A, M a r .1 9 9 8 8 4 トのタッチという動作が伴う したがって,パラメー タであるタッチできた個数には,視覚以外にも反応 3 意欲といった要素が他の測定より多く含まれると恩わ れる.わずかながら向上した理由には視覚以外の要素 も考慮し f よければならないだろう. 2 日目の P M 1 2の ピークは,表 1にあるような強い眠気を払うため,さ M 9のピークは,最後の測定であるため被験者が らに P とくに意欲をもって臨んだためと考えることもできる. 少なくとも眼と手の協応動作は断眠によって影響され ないものと思われる. 4固考察 この実験を通して得られた結果は複雑であり,視覚 機能によって周期性と断眠の影響はさまざまであるー この実験の軸として設定した C F Fの 1日呂の周期性は, M u s u m e c i ら2) の結果とまったく同じパターンであっ た.このことは本実験が統制された条件下で行われた ことを示唆するものである 断眠によって C F Fの周期 性はくずれ, 2 日目の周波数は 1 日目より 3~4Hz 低 かった.したがって断眠により 2 日目の覚醒レベルは 低いまま推移していることを示唆する.このことはボ ウッとしている,眠い,績になりたいという気分の増加 と符合している. a このように C F Fは明確に変動したが,他の視覚機能 の中で C F Fの変動と近似したものは,唯一,眼球運動 の周期性で、あった.断眠によって 2 日目の能力が低下 したことも共通である.しかし, C F F と眼球運動の共 通性を考察する知見はない固 視力の低い被験者は一日のうちで変動することを示 唆する結果が得られた しかし,断眠によって 2 日目 の視力の低下はなく,少なくとも一昼夜の断眠では視 力は低下することはないといえよう. 立体視には潤期性はなく,また断眠の影響もないと 患われる。立体視は両眼視機能の中でもっとも発達し た機能であり,立体視機能の程度を表したものが深視 力である 4) とされることから,深視力の変動がほとん どなかった(図 9) ことと符合する ものを立体的に 見るという高次な視覚機能には周期性はなく,一昼夜 程度の断限によって変動する機能ではないものと思わ れる. 調節近点距離は朝がもっとも近く,深夜に向かつて 延長するパターンを示した.近点は V D T作業 5) 筋運 動 6)によっても延長することは知られ,疲労の指標の D T 作業 5)での延 ーっとされるものである. しかし, V 長は 2 0 回 程 度 , 筋 運 動 6) では 1 0 m m程度であるのに 対し,一日のうちに約 6 0 皿延長しており,変化が大き い.また,近点は睡眠中に前日値まで回復するものと 思われるが,断眠すると回復しないまま経過する ことが明らかとなった. コントラスト感度は朝より夕方の方が高いというパ ターンであった.また断阪によっても影響されなかっ 即時頃にピ}クがある変動で た.瞬間視は朝よりホ P あった. K V A 動体視力, D V A動体視力,眼と手の協応 動作は一日ーのうちで,とくに特徴的な変動は示さず,ま た,断眠による影響もなかった. 周期性と断眠影響でまとめると?明確な周期性があ F F,近点,眼球運動であり,これらは断眠に ったのは C よって翌日の能力が低下した. しかし,その他の機能 には,明確な周期性と断眠による能力低下は観察され なかった. 本実験は被験者が 5名であり,傭人差の変動が平均 値に大きく作用していた.また,周期性については 1 週間というスパンの中での曜日の影響も考えられるこ とから 2 それらを考慮した実験事態が望ましいと恩わ れた. 文献 1)橋本邦衛司 i F l i c k e r値の生理的意味と測定上の 諸問題 F l i c k e rT e s tの理論と実際 J,産業医学 , 5 6 3 ー7 6, 1 9 6 3 . 第 5巻 9号 2) 橋本邦衛,遠藤敏夫: i 生体機能の見かた一人間 9 7 3,1 0 9 1 0 . 工学への応用ーJ,人間と技術社, 1 3) M ,M u s u m e c i .,H ,M i s i a k:C i r c a d i a nv a r i a t i o no f c r i t i c a 1f 1 i c k e rf r e q u e n c y四 o n gc h i 1 d r e n, P e r c e p t u a 1a n dM o t o rS k i l 1 s, V o 1 .3 8,7 5 1 7 5 4 , 1 9 7 4 4) 大島祐介: i 運転適性検査と動体視力・深視力に ついて J,日本の眼科,第 5 5巻 1 0号 , 1 0 3 9 4 0,1 9 8 4 . 5) 岩崎常人・他: i V i s u a 1D i s p l a yT e r m i n a l使用 者の調節機能に関する研究j 眼紀, 3 3,9 0 9 5,1 9 8 2 . 6) 石垣尚男・ i 1 5分間の自転車エルゴメーター運動 による視力低下と要因分析 J,体育学研究, V o l .3 3, N o 3,1 8 5 1 9 2,1 9 8 8 . 〔受理平成 1 0年 3月2 0日 〉
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