スーパーSRコート麦用077 スーパーSRコート麦用077 現地試験報告

スーパーSRコート麦用077
スーパーSR
SRコート麦用
麦用077
077
現地試験報告
ムギ用の元肥一発肥料として、西日本向けに成
各タイプのムギ用077がそれぞれの地域に適す
分が 30 − 7 − 7 のムギ用 077 を販売しておりま
るかどうか、昨シーズン慣行施肥と比較する試験
す。西日本のムギ栽培は播種時期が地域により大
を各地で行い、肥効およびムギの生育を調査しま
きく異なり、11月上旬に播種する滋賀県から12
した。また同時に、被覆肥料の圃場埋設試験(被
月に播種する九州まで約 1 ヶ月半の期間がありま
覆肥料を圃場に埋設し被覆肥料を定期的に回収し
す。また施肥量も、チッソ成分で 10kg/10a 程
て、肥料溶出量を調べる試験)も行いました。紙
度から 20kg/10a と幅広く、追肥も播種時期に
面の関係ですべての試験結果を説明できません
応じて異なります。このように、播種時期や施肥
が、その中で参考となる試験をご報告します。
量、追肥時期・回数が異なる各地域のムギ栽培に
ムギ用 077 を適応させ
るため、配合する被覆尿
素のタイプを調節し、
10月下旬から11月上旬
播種用の L タイプ、11
表1. ムギ用077各タイプの特長
銘 柄
成 分
適応地域
特 長
ムギ用077(L) 30−7−7
10月下旬∼11月上旬に
播種する地域
ムギ用077(M) 30−7−7
11月中旬∼下旬に
播種する地域
低温溶出型被覆尿素を含む
3種類の被覆尿素配合
ムギ用077(S) 30−7−7
11月下旬∼12月中旬に
播種する地域
低温溶出型被覆尿素を含む
2種類の被覆尿素配合
3種類の被覆尿素配合
月中旬から下旬播種用の
M タイプ、12 月播種用
の S タイプ、この 3 種類
の 銘 柄 を 揃 え ( 表 1 )、
昨シーズンより本格的に
販売を開始しました。
1. 滋賀県、ムギ077(L)
滋賀県では、南部 1 箇所と北部 2 箇所の合計 3
玄麦中のタンパク質含量が低くなることがあり、
箇所で試験を行いました。その中で南部(竜王町)
4 ∼ 5 月に実肥の施用が奨励されている点にあり
で行った試験結果を説明します。滋賀県のムギ栽
ます。肥料が抜けやすい畑や多湿となりやすい畑
培の特徴は、播種が 11 月上旬と早いことおよび
も多く、ムギ作りが難しい地域です。今回行った
−8−
住友肥料 ,242
試験の耕種および施肥概要を表 2 に示します。施
滋賀県北部で行った試験でも生育は順調に推移
肥量はムギ 077(L)が 35kg/10a で、チッソ量
しましたが、慣行の施肥体系では降雪のために追
として 10.5kg/10a 施用しました。慣行施肥区
肥できない場合もあったとのこと。元肥一発栽培
は元肥にチッソ量で 4.8kg/10a 施用し、追肥を
では追肥の時期にも肥料が効きますので、そのよ
1 月 8 日、3 月 4 日、4 月 22 日、の 3 回行い合計
うな降雪地域では077(L)は追肥を心配せずに栽
施肥チッソ量は 13.4kg/10a でした。施肥チッ
培できる特長があります。
ソ量は慣行区が077(L)区より2.9kg/10a多い
計算です。
表2. 耕種および施肥概要(滋賀県竜王町ムギ用077(L)試験)
生育調査結果を表 3 に
品種:農林61号、播種:11月9日(条播)、条間=25cm、穂揃期:4月23日
施用量(kg/10a)
示します。草丈および葉
色(SPAD)を定期的に
元肥
測定しましたが、077
(L)施肥区および慣行施
肥区ともほぼ同様の値で
SSR区 ムギ用077(L)
35
差は認められませんでし
化成肥料(12−18−14)
た(写真1、2参照)。ま
化成肥料(16− 0−16)
た穂数は、077(L)区が
1月8日
3月8日
4月22日
(kg/10a)
無
無
無
10.5
40
4.8
20
〃
慣行区
3.2
18
硫 安
2
459 本/m 、慣行区が
合計
施肥チッソ量
追 肥
424本/m2 で、077(L)
2.9
12
2.5
合計
13.4
区が多い結果でした。
このように、播種の早
表3. ムギの生育調査結果(滋賀県竜王町)
い滋賀県では077(L)の
草 丈(cm)
施肥チッソ量が少ないに
もかかわらず慣行施肥区
とほぼ同様の葉色および
12月19日 2月26日
3月26日
4月23日
穂数/m2
葉色値(SPAD)
2月26日
3月26日
4月23日
077(L)
10∼14
施用区
21.6
43.7
83.3
459
43.5
34.5
31.6
慣行
施肥区
22.9
43.2
83.9
424
42.7
36.2
29.8
生育を示し、慣行の 3 回
の追肥が省力できる元肥
一発栽培が可能であるこ
10∼14
とが示されました。
写真1. ムギの生育状況(2月26日、滋賀県竜王町)
写真左側の畑が慣行区、右側が077(L)区
写真2. ムギの生育状況(4月23日、滋賀県竜王町)
、
写真左側の畑が慣行区、右側は077(L)区。
−9−
2. 愛知県 ムギ077(M)
愛知県では安城市で 11 月中旬から下旬播種用
生育調査時には、慣行施肥区の一部でムギがなび
のムギ用077(M)の試験を行いました。愛知県は
き、倒伏が起きそうな状況でした(写真 5、6)。
播種を 11 月に行いますが、今回の試験でも播
葉色は、3 月 8 日と 4 月 15 日に測定しましたが、
種・施肥を 11 月 20 日、施肥量は 077(M)を
慣行施肥区および077(M)区ともほぼ同じ値でし
40kg/10a(チッソ量で12kg/10a)施用しま
た(写真 3、4)。後述しますが、ムギ用 077 の
した(表 4)。慣行施肥
区では、元肥にチッソ量
表4. 耕種および施肥概要(愛知県安城市、ムギ用077(M)試験)
で 6.3kg/10a、追肥は
品種:農林61号、播種:11月20日(条播)、条間=18cm、出穂期:4月17日
施用量(kg/10a)
2 月上旬にチッソ量で
元 肥
2.4kg/10a、2 月下旬
11月20日
に 1.6kg/10a、合計で
10.3kg/10a で、077
SSR区 ムギ用077(M)
合計
施肥チッソ量
追 肥
2月上旬
2月下旬
40
(kg/10a)
12
(M)区で施肥チッソ量が
1.7kg/10a多いです。
ムギの生育調査結果を
化成肥料(14−13−10)
慣行区
6.3
45
2.4
15
化成肥料(16− 0−14)
表 5 に示します。草丈の
10
1.6
推移を見ると、慣行施肥
合計
10.3
区が 077(M)区よりや
や高めに推移しました。
表5. ムギの生育調査結果(愛知県安城市)
1月15日
3月8日
4月15日
5月20日
3月8日
4月15日
077(M)
施用区
10∼12
23.9
70.8
79.3+8.5*
44.2
37.6
慣行
施肥区
10∼12
26.1
87.8
89.7+8.6*
45.2
35.3
は、慣行施肥区は 89.7
+ 8.6cm、077(M)区
は79.3+8.5cmで、約
葉色値(SPAD)
草 丈(cm)
5 月 20 日の稈長+穂長
10cm の差が見られま
す。これは慣行施肥区の
草丈が高くなり過ぎた結
果であり、5 月 20 日の
* 稈長+穂長
写真3. 077(M)区ムギの生育状況
(3月8日、愛知県安城市)
写真4. 慣行区ムギの生育状況
(3月8日、愛知県安城市)
−10−
住友肥料 ,242
写真6. 077(M)区ムギの生育状況
(5月20日、愛知県安城市)
写真6. 慣行区ムギの生育状況
(5月20日、愛知県安城市)
適する葉色基準値は、3 月時点で SPAD 値で 35
が示されました。一方、20 日タイプは追肥とし
∼ 40 です。3 月 8 日の測定では 077(M)区でも
て効かす目的でムギ用077(M)に最も多く配合し
葉色が 44.2 と高く、今回の試験は施肥量が少し
ている被覆尿素ですが、1 月 15 日には 19 %、3
多すぎたようです。
月8日には51%、そして5月20日には90%と、
追肥の時期の 3 月上旬を中心に溶出していること
安城市で行った被覆尿素の現地圃場埋設試験結
が確かめられ、これも計算どおりでした。このよ
果を表 6 に示します。実際の圃場で被覆肥料から
うに、11 月播種の愛知県のコムギにはムギ用
肥料成分がどの程度溶出するか確かめる試験で
077(M)の肥効が適することが示されましたが、
す。まず低温溶出型被覆尿素ですが、これは元肥
施肥量はこの畑では 35kg/10a が適していたと
の補強と低温時の肥効確保のためにSSRに配合し
思われ、畑の地力の高低を考慮した施肥量の調整
ています。溶出率を見ると、1 月 15 日ですでに
が必要です。
半分以上の 58 %が溶出
しており、また、3 月 8
日には 82 %が溶出して
表6. 被覆尿素の現地圃場における溶出(愛知県安城市、12月3日埋設)
溶 出 率(%)
被覆尿素
います。このように、低
1月15日
3月8日
5月20日
温溶出型被覆尿素は、そ
低温溶出
58%
82%
95%
の配合目的の初期肥効お
20日タイプ
19%
51%
90%
40日タイプ
14%
27%
86%
よび低温時の肥効として
計算どおり溶出すること
3. 長崎県、ムギ077(S)
九州では佐賀県および長崎県でムギ用077(S)
播種をしておこうとの心理が働いたようです。諫
を試験しましたが、長崎県諫早市行った試験結果
早での試験の耕種概要および施肥概要を表 7 に示
を報告します。九州は播種を11月下旬から12月
しますが、品種はシロガネコムギ、播種は 11 月
中旬に行うのが一般ですが、昨年は 11 月中旬に
14 日です。施肥量は、慣行施肥区で元肥にチッ
播種された農家さんが多かったようです。一昨年
ソ 量 で 7 . 5 k g / 1 0 a 、追 肥 は 、 1 回 目 追 肥 で
は 12 月に雨が多く播種時期を逸したことと、昨
8.3kg/10a、2 回目追肥で 3.2kg/10a、合計
年 11 月中旬は好天が続き、天気が良いあいだに
19kg/10a でした。諫早近郊はムギの産地です
−11−
が、海に近く肥料が抜けやすいため施肥が多い土
の後この抑制は回復し、3 月 13 日以降は葉色は
地柄です。ムギ用 077(S)区は、元肥施用時に
適正に推移しました(写真7、8)。
50kg/10a(チッソ量で15kg/10a)施用しまし
た。2 月に除草剤と麦踏みの影響と思われる生育
圃場埋設試験による諫早での被覆尿素の溶出率
抑制と葉の黄化が見られ、回復させるため化成肥
を表9に示します。埋設は11月28日で、栽培試
料をチッソ量で 2.4kg/10a 追肥しました。それ
験の施肥日(11月14日)よりも2週間遅くなっ
ゆえ、077(S)区のトータル施肥チッソ量は合計
ていますが、低温溶出型被覆尿素は 1 月 9 日には
で17.4kg/10aです。
58%、2月12日には75%、そして5月16日に
コムギの生育を表 8 に
示します。草丈は測定日
表7. 耕種および施肥概要(長崎県諫早市、ムギ用077(S)試験)
品種:シロガネコムギ、播種:11月14日
(条播)、条間=20cm、出穂∼穂揃期:4月11日
施用量(kg/10a)
で振れがありますが、慣
行区が少し高く推移して
元 肥
います。葉色は 2 月 12
11月14日
追 肥
1月7日
2月10日
又は14日
合計
施肥チッソ量
(kg/10a)
日観察時には除草剤+麦
踏みの影響で生育抑制と
黄化が見られ、SPAD値
は 077(S)区が 26.7、
慣行区は 31.4 と低い値
50
SSR区 ムギ用077(S)
+化成肥料(16−0−16)
15+2.4=17.4
15
化成肥料(15−15−15)
慣行区
でした。この生育抑制は
50
尿 素
7.5
18
化成肥料(16− 0−16)
8.3
20
3.2
19
合計
077(S)区と慣行施肥区
で同様に見られました
が、2 月 12 日時点で慣
表8. ムギの生育調査結果(長崎県諫早市)
草 丈(cm)*
行施肥区が077(S)区よ
1月9日
2月12日
3月13日
4月11日
5月16日
2月12日
3月13日
4月11日
077(S)
10∼15
施用区
18.7
36.9
84.0
72.2+6.0
29.7
39.0
42.1
慣行
施肥区
19.2
42.7
84.5
78.2+5.9
31.4
38.9
38.8
りもSPAD値が高い(葉
色が濃い)のは、1 月 7
日に慣行区でチッソ量で
8.3kg/10a とかなり多
く追肥を行った影響と考
えられました。しかしそ
葉色値(SPAD)
10∼15
* :5月16日の草丈は稈長+穂長を表わす。
写真7. 077(S)区ムギの生育状況
(3月13日、長崎県諌早市)
写真8. 077(S)区ムギの生育状況
(4月11日、長崎県諌早市)
−12−
住友肥料 ,242
は 96 %と予想通りの溶出を示しました。一方、
に増量する必要があります。今回はムギ用 077
20日タイプはそれぞれ24%、44%、94%の溶
(S)を50kg/10a施用し2月に追肥として化成肥
出です。ムギ用077(S)にも低温溶出型被覆尿素
料をチッソ量で 2.4kg/10a 施用しました。除草
を元肥の補強と低温時の肥効確保として、また
剤の抑制作用から回復させるためでしたが、2 月
20 日タイプを追肥として配合していますが、こ
∼ 3 月にムギの葉色を診断し、生育を見てチッソ
れら 2 タイプの被覆尿素は諫早の気象条件でも計
量で 2kg/10a 前後追肥する肥培管理も、ムギの
算通り溶出していることが確認されました。
安定多収生産のための一つの技術と思われます。
このように、ムギ用077(S)の肥効が諫早のム
ギに適していますが、現
地慣行は施肥チッソ量が
表9. 被覆尿素の現地圃場における溶出(長崎県諫早市、11月28日埋設)
かなり多く、その慣行と
溶 出 率(%)
被覆尿素
1月9日
2月12日
5月16日
低温溶出
58%
75%
96%
20日タイプ
24%
44%
94%
肥効を合わせるために
は、ムギ用077(S)の施
肥量を 60kg/10a(チ
ッソ量で 18kg/10a)
以上、滋賀県での077
(L)、愛知県の077
(M)
、
してチッソ成分で 2kg/10a 前後追肥していただ
九州での077(S)と3つの試験結果を説明いたし
くと、その後も葉色は落ちることなく肥効が持続
ました。今回の現地試験から得られたムギ用SSR
し好成績を収めます。
のポイントを整理すると、
③SSR +追肥診断で農家さんにご満足いただく、
①施肥チッソ量を慣行施肥の合計チッソ量と合わ
これもSSRの利点。
せること。減肥しない。
SSRは追肥が不要な肥料ですが、別の観点から
水稲用の元肥一発肥料では被覆肥料が効率的に
見ると、これまで肥培管理がなおざりにされてい
稲に利用されるので、施肥量をチッソ成分で 1 ∼
たムギに対し、元肥一発肥料という新しい肥料を
2 割減肥するのが普通です。これに対しムギでは
使い適期に診断することで、省力以上に品質や増
慣行の施肥チッソ量と同量となるようにムギ用
収をもたらすことができる肥料でもあります。上
077を施用する必要があります。これは畑作では、
述しましたように葉色に基づき 2 月∼ 3 月に追肥
元肥+追肥の慣行施肥でも肥料が比較的効率的に
診断することで農家さんにこれまで以上に満足い
作物に吸収されるためです。畑により地力の高低
ただけます。“SSR を使用したのだから追肥は要
がありますので、ムギ用077の施肥は畑ごとに微
らない”ではなく、“SSR +追肥診断で品質・増
調整する必要がありますが、チッソ量で換算して、
収を目指す”こともSSRの使い方の一つです。そ
これまでの元肥+追肥の合計施肥量と同量になる
のために、ムギの診断ポイントを写真とともに解
ようにムギ用077を施肥するのがよく、この点を
説したリーフレットは別途作成いたします。ご期
農家さんに認識いただき、施用量を決めていただ
待ください。
きたくお願いします。
②ムギの葉色は2月中旬から3月中旬にSPAD値
ムギの肥料はこれまで、かえりみられる事が少
で35∼40が適値である。
なかったと思います。今回ムギ用077の試験結果
ムギも葉色に基づき追肥量の調整が可能ですが
をご説明しましたが、なおざりにされたムギ用肥
栽培指針や基準がないのが現状です。今回の試験
料だからこそ工夫の余地があります。ムギ用077
にこれまでの試験結果を加味すると、ムギ葉色の
を始めとするムギ用SSRで、ムギ肥料をもう一度
適値は 2 月中旬から 3 月中旬に SPAD 値で 35 ∼
見直して、肥料店さんの看板肥料にしようではあ
40です。SPAD値が35に満たない場合、追肥と
りませんか!
−13−