洛中洛外図屏風歴博甲本右隻第二扇における欠損部分の再現

洛中洛外図屏風歴博甲本右隻第二扇における
欠損部分の再現
岩永てるみ
Reproduction of the Damaged Area on the Second Panel of the Right-hand Screen of a Pair of Folding Screens of Scenes In and Around Kyoto
(Rekihaku A Version)
IWANAGA Terumi
はじめに
❶研究目的
❷再現
❸再現図作成
まとめ
[論文要旨]
れた部分の取り扱いは除去する場合と除去しない場合の二様に分かれている。明らか
なく、加筆されることも多かった。現在の修理において、過去の修理によって加筆さ
により今日に伝えられているが、伝世のなかで、その時の修理で手当てされるだけで
を考証しながら画家としての制作や模写の経験を生かして検討を行い、より客観的に
市上杉博物館所蔵上杉本の三作品を中心に、建築、芸能、服飾、風俗、商業などの点
た類似作品である東京国立博物館所蔵東博模本、国立歴史博物館所蔵歴博乙本、米沢
再現は、オリジナル部分の調査と現状模写を行うことから始め、同時代に制作され
確かめるために再現研究を試みた。
に制作当初のものでは無いと認識出来ても、それを除去することによって作品の印象
なるように努めて行った。
紙や絹といった脆弱な素材の上に描かれた日本絵画は周期的に修理が施されること
が大きく変わってしまう場合や、過去の修理も貴重な資料であるという観点といった
る台形上に欠損部分には、周囲のオリジナル部分とは一見して技法、表現、様式が異
本研究の対象作品である「洛中洛外図屏風歴博甲本右隻第二扇」に広範囲に存在す
来たと考える。
を確かめることは出来ないが、一つの作例として学術的にも誤りの少ない再現図が出
法で制作し作品として完成させた。制作当初の図柄が無い以上、どこまで近づけたか
この再現図はオリジナル部分の現状模写の中に描き加え彩色を施し、原本と近い手
なり、鑑賞上に相当の影響を与えてしまうような後世の補筆が施されている。平成九
【キーワード】後補、模写、再現、船鉾、芸術性の回復
ことより、現状のままに修理を行うこともある。
年の修理においてこの後補部分はそのままに残された経緯を持っている。この後補部
分を再現することによって、損なわれてしまった芸術性を回復し得ることの可能性を
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