経営学Ⅰ

経営学Ⅰ
競争優位
競争優位性
• 市場経済体制の下では、企業は、他の企業との競争にさら
される。このような環境で企業がその目標を達成するには、
競争相手との競争に勝ち残らなくてはならない。そのために
は、競争優位性の構築・維持が重要になる。つまり、競合相
手との間に違いを作り出し、自社の製品を選んでもらえるよ
うにする必要がある。この競争優位性をうむ要因は大きく2
つに区分することがある。価格競争と非価格競争である。価
格競争では、企業はどの競合相手よりも低いコストで、同じ
性能の製品を生産できるような地位を構築する、コスト・リー
ダーシップ戦略とる。それに対して、顧客が製品に対して
持っている価値において、競合他社との間に違いを作り出す、
差別化戦略がある。
完全競争
• なぜ企業は利潤をあげられるのか。経済学では、そ
の理由を何らかのかたちで競争が制限されている
からであると説明する。もし市場で完全な競争が行
われれば、企業の利潤はゼロになる。
• この完全競争とは、1)売り手と買い手の企業数が
極めて多く、また個々の企業が取引する量が小さい
ため、企業は市場で決まった価格で販売する。2)
取引される製品・サービスは完全に同質であり、製
品差別化のよちはない。3)市場の参加者は製品の
価格・品質・製造技術・販売知識等について完全な
情報が与えられている。4)法的・物理的・心理的な
参入、退出障壁が存在しない。
競争優位
ポジションニング・スクール
•
•
勿論、完全競争の世界など存在せず、なんらかの要因が競争を制限し、それが、
企業に利益をもたらす。この要因の企業の外部(ポジションを基盤とする優位性)
に求める学派と内部(組織能力を基盤とする優位性)に求める学派がある。
ポジショニング・スクールの創始者であるハーバード大学のマイケル・ポーターに
よれば、産業の構造は競争状態に影響を与える5つの力(Five Forces)を分析す
ることで理解できる。5つの力とは、「既存企業間の対抗度」「新規参入の脅威」
「代替品の脅威」「供給業者(売り手)の交渉力」「顧客の(買い手)の交渉力」であ
る。これら5つの力が弱ければ弱いほど、その産業における競争は制限され、中
にいる企業の収益可能性は高まる。
新規参入
供給業者
既存企業
代替品
顧客
ポジションニング・スクール
既存企業の対抗度
• 既存企業の対抗度とは、その産業に存在するライ
バル企業同士がどれだけ激しく競い合っているかを
あらわす指標である。例えば、松下とソニーとシャー
プ、あるいはトヨタと日産とホンダの間で繰り広げら
れているような競争である。企業が競争に勝ち、顧
客がみずからの製品・サービスを選んでもらうため、
価格を引き下げたり、宣伝や販売促進の費用を増
す必要が生まれる。そうなると「利益=価格ー費用」
であるから利益は低下する。
• 競争の度合いに影響を与える要因として、1)企業
数と企業間規模の差、2)産業の成長率、3)固定費
と在庫費用の高さ、4)製品差別化の難しさがある。
ポジションニング・スクール
新規参入の脅威
• これは、産業への新規参入を虎視眈々と狙う産業外の企業
との競争である。ある産業の企業が高い利益を上げていれ
ば、新たにその産業に参入しようとする企業が出現する可能
性が高くなる。例えば、ソニーやカシオによって創造されたデ
ジタルカメラ産業には、利益の分け前に預かろうと松下や
キャノンをはじめ多くの企業が次々参入していった。そうなる
と、企業間の対抗度が高くなり、企業の利益は失われる。新
規参入を押しとどめる有効手段がない場合、企業はその製
品の価格を下げ、新規参入者にとって魅力がなくなるように
するしか手段がなくなる。
• 価格以外に新規参入を押しとどめる要因を参入障壁と呼ぶ。
参入障壁には、規模の経済性、流通チャネルの確保、巨大
な初期投資、政府の規制などが存在する。
ポジションニング・スクール
代替品の脅威
• 企業が行うもう一つの潜在的な競争が代替
的な製品・サービスとの競争である。顧客の
特定のニーズを満たす方法は、必ずしも1つ
であるとは限らない。有力な代替品が存在す
ればするほど、その産業に存在する企業の
利益は損なわれる。
ポジションニング・スクール
供給業者(売り手)の交渉力
顧客の(買い手)の交渉力
• 企業は原材料の供給業者(売り手)や製品の
顧客(買い手)との間で利益の取り分をめぐる
競争も行っている。原材料の価格が大幅に上
昇すれば、企業は製品を売れば売るほど赤
字になる事態に追い込まれるかもしれない。
製品の価格が下がった場合にも同様のこと
がおこる。例えば、パソコン産業ではOSの供
給はマイクロソフト、CPUの供給はインテルに
よって実質的に独占されているため、これら
の供給業者の交渉力はきわめて強い。
ポジションニング・スクール
分析の限界
• ポーターの「5つの力」は、産業の収益可能性を分析するの
に有効であるが、この理論には分析できない限界が存在す
る。それは、同一産業内においても企業間に収益格差が存
在する、つまり儲かっている企業と儲かっていない企業が存
在するという現象を説明できない。例えば自動車産業をみる
と、企業間の対抗度はそれほど強くない、新規参入の脅威も
低い、代替品の脅威もほとんど存在しない、また供給者の交
渉力、顧客の交渉力もともに弱い。したがって、ポーターの
「5つの力」の分析によると、そこそこ儲かる産業ということが
できる。しかし、自動車産業の中には膨大な利益を上げるト
ヨタから、巨額の赤字を抱える三菱まである。そこで、企業内
部の分析が必要になってくる。それが資源ベースの戦略論
である。
資源ベースの戦略論
• 企業が事業活動を行うには、経営資源が必要であ
る。経営資源には一般的にヒト、モノ、カネ、情報的
資源の4つのことである。これらの資源には、市場
で調達可能なものと、取引困難なものとがある。情
報的資源には顧客ニーズに関する知識、特許、生
産ノウハウ、技能、新製品のアイデア、経営者の能
力、ブランド、等々は市場で調達することはできない。
そのためこうした資源を持たない企業が新たにこれ
らの資源を獲得する事が困難に成るため、企業間
での資源の異質性は維持され、競争優位が持続す
るのである。