課 題 <5> 社会的な規制による殺人 ~<A3> 官僚による死~ A3 社会が選ぶ最適安全水準 <N1章 pp.22-30> 1 ★<1章>官僚による死 2 規制の実態に共通する教訓・原理 3 政府の役割と消費者主権 Microeconomics 競争市場と公共政策 [email protected] Q 読解力チェック PP.22-30 Slide 2 第1章 (pp.22-30) の主旨・用語を理解した? 1. 2. 3. 4. 5. 危険な薬か薬の欠如,どっちで死にたい? p.22 FDAの役人の過酷なトレードオフとは? p.25 タイプ1エラー・タイプ2エラーとは? p.25 サリドマイド事件による62年の法改正がドラッグラ グに及ぼした影響は? p.23-4 必要条件である有効性の証明は十分条件? p.23 1 <1章> 官僚による死 Slide 3 FDA(食品・医薬品局)による規制 p.22-4 1. 2. 3. 1906年 FDAに新薬販売の認可権限 1938年 「安全性の証明」の強制 スルファニラミド 1962年 +有効性の証明+期限撤廃 サリドマイド ドラッグラグ(新薬認可の遅れ) p.24 1. 2. 平均認可期間: 7カ月(62年以前) 9年(70年代末) 平均新薬開発費用: $8億↑ 新薬↓ ★ 解説: 第1種・2種の過誤 Slide 4 新薬検査の帰無仮説H (推測)統計学 申請された新薬は安全ではない 例:有意水準1% タイプ1 エラー: Hが真なのに棄却 安全でない薬を認可 タイプ2 エラー: Hが偽なのに受容 安全な薬を認可しない FDAが直面する過酷なトレードオフ Slide 5 精査水準Xの引き上げによるトレードオフ タイプ1エラー(費用C1)の減少: 危険な薬↓ タイプ2エラー(費用C2)の増加: 安全な薬↓ 最適(=効率的)な精査水準X* =社会的費用C(=C1+C2)を最小化するX But 世間はC1には注目してもC2は軽視しがち Q1 ★ 確認: 命対命のトレードオフ Slide 6 1. 2. 3. 4. 5. 6. Xが低ければC1は高い,その具体例は? Xが高ければC2は高い,その具体例は? なぜマスコミはC2よりC1に注目する? このときFDAは社会的費用Cを最小化するか? このトレードオフが生じる理由は? 人員や予算の倍増は問題を解決するか? A1 薬にも絶対に安全などない Slide 7 1. 2. 3. 4. 5. 6. スルファニラミドによる107人の死亡 p.23 抗生物質(5年で8万人),心臓発作(10年で25万人)p.24 世間の多数の関心,容易な因果関係 No C1の減少に力点 社会的費用C↑ 資源(精査の予算・人員・時間)の希少性 この問題は緩和 but フリーランチはない p.26 ★社会的に最適な新薬の精査水準X* Slide 8 実際に官僚の選択するXはX*か? 社 会 的 費 用 (総)社会的費用C 社会的最適水準 タイプ2エラー費用C2 タイプ1エラー費用C1 X* 精査水準X Q演習問題(P.30)2-4 Slide 9 2. 役人にC2を減少させる誘因を与えるには? 3. 当局は認定しても認可権のない制度は? 4. 役人の評価システム: 「C1のみ」から「C2も明示的に考慮」へ + 新薬増加 + 消費者の選択の自由↑ ー 医師の必要な知識&責任↑ S4: 高速ツアーバスの場合は? C1もC2も死者と単純化した場合のX*は? 「人命も金銭評価して考慮」した前頁と同じ 2 規制の実態に共通する教訓・原理 Slide 10 希少性ゆえにフリーランチはない 新薬・バスの例 1. その費用とは,機会費用 問題理解の鍵 2. 最適な水準は,限界便益・費用で決まる 3. しかし個人の誘因は多様: 個人の最適≠社会の最適 4. 政策効果の分析は,常に不十分である 5. 政策は,常に意図しなかった副作用を伴う Q2 確認: 新薬認可規制からの教訓 Slide 11 1. 2. 3. 4. 安全でも有効でもない新薬を防ぐのに尽力し たFDAの規制のコスト(費用)は? p.26 絶対的な安全が最適ではない理由は? p.26 誘因(インセンティブ)に反応するのは消費者, 生産者,それとも公務員? p.26 政策効果の分析にそれが実施されなかった 場合の効果が考慮されていない例は? pp.27-8 人間行動&政策分析の要点 Slide 12 再論: 事実としての「人間の性」 S1 1. 2. 3. 不完全な情報・知識 情報の経済学 怠惰・怠慢 希少性・トレードオフ・機会費用 私益中心 次頁: 『利己的な遺伝子』 + 同感 3条件の吟味が行動&政策分析には必要 「全知・無費用・無私」前提の分析には疑問 利己的な事実と価値判断 Slide 13 「利己的」なことは悪いのか? S6: 価値判断 1. 2. 3. R(03) 「良くも悪くもない」 『利己的な遺伝子』 ガンダム? 人間の本性 but 同感 アダム・スミス 正しい事実判断は,良き価値判断に必要<6> ∴ 人の性を考慮しない行動&政策分析は疑問 十分条件と必要条件 Slide 14 命題: 定義AとBが明確な文章 例:A(新薬を認可する)は,B(有効性を証明する) 表記法: A ⇒ B (AならばBである) AはBの十分条件,BはAの必要条件 逆命題: B ⇒ A 裏命題: ┐A ⇒ ┐B ┐: Not 対偶命題: ┐B ⇒ ┐A 恒真命題 対偶命題の恒真性 Slide 15 「A ⇒ B」が真 ⇔ 「┐B ⇒ ┐A」が真 A: マグロ・B: 魚,水なくして生存見込なし A: 合格・B: 練習,構造改革なくして成長なし B A ┐B ┐B ┐B ┐A Q3 論理を理解する基礎 Slide 16 真の命題「犬(A)なら動物(B)である」 1. 1. 2. 3. 2. 3. 十分条件・必要条件は? 逆命題・裏命題・対偶命題は? そのうち常に真の命題は? 「練習(B)なくして合格(A)なし」,練習は何条件? これは「練習すれ合格する」を意味する? A3 十分条件と必要条件の識別の重要性 Slide 17 真の命題「犬(A) ⇒ 動物(B)」 1. 1. 2. 3. 2. 3. 犬は動物の十分条件,動物は犬の必要条件 「B ⇒ A」・ 「 ┐A ⇒ ┐B」 ・ 「┐B ⇒ ┐A」 対偶命題: 動物でないなら犬ではない 「┐練習(B) ⇒ ┐合格(A)」,練習は合格の必要条件 No: 練習は十分条件ではなく,必要条件 3 政府の役割と消費者主権 Slide 18 国家・政府の主要な役割 1. 国土の保全・国民の安全 政治の最重要課題 民主党政権下の惨状 2. 3. 奥脇直也 「竹島・尖閣諸島編入の歴史」 『日経新聞』 12/9/14 自由取引・市場の整備 S3<A1> 制度と経済成長 市場の失敗への対応 <C-E> 三大失敗: 4. 不完全競争,外部性・公共財,非対称的情報 再分配 課税(所得税etc.)・福祉(生活保護etc.) But近年,「<E>政府の失敗」こそ深刻な問題 深刻な「政府の失敗」 Slide 19 =政府の市場介入による歪み H(08, pp.7-8) 例: 美容・理容師,司法試験,コンビニ・ネットの薬販売 「政府の失敗」がもたらした日本経済の危機 1. 2. 政府による裁量的介入の是認 ケインズ・失業 戦後日本の官僚主導型介入の常態化 成長(パイの増加)より,多様な名目でパイの再分配 3. 歳出100兆円&税収50兆円の赤字財政・累積債務 経済学と消費者主権 Slide 20 経済学の目標: 国民の余剰の最大化(短期・長期) 1. 消費者(家計),生産者(企業),政治家,官僚? 2. 誰もが消費者 & 究極の目標は消費の可能性 ∴ 消費の可能性を高める<B>社会余剰の最大化 消費者主権実現への枠組 1. 2. 消費者の選択・取引の自由(市場)の整備・促進 そうなるような生産・政治・官僚の誘因制度設計 要点 本日のポイント Slide 21 認可される新薬も,「絶対に安全」ではない 1. 2. But 現状は,社会的最適水準よりたぶん安全すぎる ∵ 社会は,そのため死亡する等の費用C2を軽視 政府の政策・規制は不可欠 市場の失敗 But 介入実態は,改善による効率化余地が大きい 特に日本では,政府の失敗が拡大&深刻化 S6 次回準備: N2章 & <A4> 参照文献紹介 Slide 22 ドーキンス (06) 『利己的な遺伝子』 紀伊国屋 「as if 遺伝子が利己的」の科学的な仮説説明 堂目卓生 (08) 『アダム・スミス』 中公新書 スミスの『道徳感情論』のコンパクトな要約 八田達夫 (08) 『ミクロ経済学 <1>』 S1の同著者新版の元の教科書の前巻
© Copyright 2024 ExpyDoc