平成16年度応用物理学会北海道支部学術講演会 平成16年10月17日(日) 旭川勤労者福祉会館 大気圧コロナ放電中のベンゼン分解特性 ーマスバランスから見た分解過程ー 松澤 俊春 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 田頭 博昭(室蘭工業大学) 下妻 光夫(北海道大学) ① 背景 ② 実験装置・条件 ③ 実験結果 分解生成物の調査 C原子のマスバランス 堆積物の調査 ④ まとめ MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 背景と目的 ベンゼン ・ ・ ・ ・ 発ガン性や催奇形性を有し,白血病との因果関係がある 低濃度であっても長期的な摂取により健康への影響を生じる恐れがある物質 環境基準値は3mg/m3(0.86ppb) ダイオキシン類,トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンとともに早急 な抑制が必要な指定物質 既存の処理法 : 吸着法,触媒燃焼法,直接燃焼法 放電プラズマを用いた処理法 ・ 既存の処理法では処理が困難な数ppm程度の濃度に対しても適用可能[1] ・ 安定で付加反応を受けにくいベンゼン環等を有する物質の処理に有効 ・ 大流量のガス処理には適さない 排ガス処理に用いられる大気圧下の放電プラズマ パルスコロナ放電 バリア放電 ・放電領域を広くとることができ,大量のガス流に対して適合性がある[2] DCコロナ放電 ・放電が不安定で火花放電へ移行しやすい 針電極を密集させることでストリーマコロナ放電を安定に発生可能 目的 大気圧下でのストリーマコロナ放電による窒素-酸素混合ガス中のベンゼン分解特性の解明 酸素混合割合を変化させたときのベンゼン分解過程をC原子のマスバランスにより検討する [1] K. L. Vercammen, A.A.Berezin, F. Lox and J. S. Chang:J. Adv. Oxid. Tech. 2, 312(1997) [2]吉岡 芳夫 :電学論A ,Vol.122-A pp.676-682(2002) 実験装置 放電チェンバー (ステンレス製) 内径 高さ マクセレック(株)製 LS40-10R1 針電極形状 :f197mm :300mm 針電極数:13本 平板電極(ステンレス製) Vmax±40kV, Imax±10mA 針電極 台座 針密度 高圧側 直径 :f80mm 厚さ :10mm グランド側 :ステンレス製 直径f4mm :真鍮製 直径f50mm :0.66本/cm2 VACUUBRAND DVR2 測定範囲 測定精度 許容圧力 測定周期時間 日本MKS(株)製 622A12TCE フルスケールレンジ 分解能 精度 :1.33×104Pa :1×10-5F.S. :0.25% Infrared Analysis, Inc. ,10-PA 光路長 :1~1100hPa :<1hPa :0.2MPa :1sec :10m 島津製作所製 FTIR-8900 干渉計 エア・ウォーター(株)製 純度:99.5% 日本酸素(株)製 純度:99.999% Benzene濃度:766ppm :30°入射マイケルソン 干渉計 光学系 :シングルビーム方式 波数範囲 :7800cm-1~350cm-1 波数精度 :±0.125 S/N :20000:1 データサンプリング :He-Neレーザー MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 実験条件 電極構成 電極間隔 印加電圧の極性 印加電圧 初期ベンゼン濃度 酸素混合割合 [%] 0.2 2 20 :針(13本)対平板電極 :3.0cm :正極性 :23.0kV (約350~1400mA ストリーマコロナ) :約300ppm (280~320ppm) 窒素分圧 [hPa] 1011 993 810 封入したガス圧 酸素分圧 ベンゼン濃度 [hPa] [ppm] 2 280~320 20 203 全圧 [hPa] 1013 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 吸光度スペクトル ~ C6H6 ~ N2:O2 = 98:2 Absorbance[a.u.] 1.0 with discharge(33.8kJ) without discharge(0.0kJ) 0.8 Ring deform 0.6 0.4 CH bend CH str 0.2 0.0 3400 3200 NIST 3400 3200 3000 2800 2600 2400 2200 2000 1800 1600 ① 3000 1400 ④ 2800 2600 2400 2200 2000 1800 1600 1200 1000 ③ 1400 1200 800 600 ② 1000 800 600 -1 wave number [cm ] C6H6の赤外活性な振動 ① ② ③ ④ CH str CH bend CH bend Ring deform 3068cm-1 673cm-1 1038cm-1 1486cm-1 *NIST Chemistry webbook(http://webbook.nist.gov/chemistry/form-ser.html) 他の吸収ピークとの重複が無い 濃度を算出しC6H6中のC原子に見積る MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 吸光度スペクトル ~ 分解生成物 ~ N2:O2 = 98:2 with discharge(33.8kJ) without dischrge(0.0kJ) 0.8 H2O CO2 C6H6 CO2 C2H2 HCN CO HCOOH 0.6 C6H6 0.4 0.2 HCOOH N2O O3 C6H6 N2O HCN C2H2 C6H6 0.0 3400 3200 3000 2800 2600 2400 2200 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 -1 wave number [cm ] 1.0 分解生成物の赤外吸収スペクトル HCN C2H2 HCOOH CO CO2 bend CH bend CO str Anti str 712cm-1 730cm-1 1105cm-1 2040-2230cm-1 2349cm-1 Absorbance [a.u.] Absorbance [a.u.] 1.0 0.8 HCN 0.6 0.4 C2H2 CO2 0.2 0.0 750 740 730 720 710 700 690 680 670 660 650 -1 wave number [cm ] MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 濃度換算 Lambert-Beerの法則 透過率 %T I %T 10kcd I0 吸光度 A I0 A log10 kcd I k=吸光係数 I0=入射光強度 I=透過光強度 c=試料濃度[g/l] d=ガスセルの光路長[cm] 吸光度は試料濃度と比例関係 C6H6と分解生成物中に含まれるC原子 C6H6 1分子に含まれるC原子 = 6個 C6H6濃度[ppm] ×6 = C6H6中のC原子数 [ppm] C2H2濃度[ppm] HCN濃度[ppm] HCOOH濃度[ppm] CO濃度[ppm] CO2濃度[ppm] ×2 ×1 = 各分解生成物中のC原子数[ppm] MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY C原子のマスバランス ~ C6H6分解過程と堆積 ~ 1600 Amount of C atom 1800 C6H6 C2H2 HCN HCOOH CO CO 2 1400 1200 1600 Amount of atom 1800 酸素濃度 : 2% 57%(120kJ) Deposition 1000 800 600 CO2 400 C 6H 6 200 C6H6 HCN CO C2H2 HCOOH CO 2 0 35%(120kJ) 1600 1200 1000 CO2 800 600 20 40 60 80 100 120 140 160 24%(120kJ) Deposition 1400 1200 CO2 1000 800 600 CO C 6H 6 200 C 6H 6 HCOOH 0 0 0 C2H2 HCOOH CO 2 400 CO 200 C6H6 HCN CO 1800 Deposition 1400 400 CO 酸素濃度 : 20% Amount of C atom 酸素濃度 : 0.2% 0 Input energy [kJ] 20 40 60 80 100 120 140 160 Input energy [kJ] 0 20 40 60 80 100 120 Input energy [kJ] C6H6:0ppm 分解生成物と注入エネルギーとの関係 CO2が最終分解生成物で,HCOOHおよびCOは中間生成物である (今回の図では確認できないが,HCN,C2H2は微量な中間生成物) 酸素混合割合の影響 ・ 酸素濃度の増加とともにC6H6分解に必要なエネルギーが増加する ・ HCOOHの生成は,高酸素濃度のときはCOとほぼ同量で,低酸素濃度のときはHCNおよび C2H2と同様に微量である ・ (今回の図では確認できないが, HCNおよびC2H2の生成は低酸素濃度のときに多くなる) C6H6は, 低酸素濃度時にCOを経て 高酸素濃度時にCOおよびHCOOHを経て CO2に分解される 堆積の酸素混合割合の影響 酸素濃度を高くすると,堆積物中のC原子の割合が減少する(気相中のC原子の割合が増加する) 140 160 堆積の透過率スペクトル ~ 位置による変化 ~ -OH(str) -C=O(str) 120 110 100 90 80 ① Transmittance [%] 130 120 110 100 90 ② 120 110 100 90 80 150 140 130 120 110 100 160 (放電時間) (30min) ③ ② ④ ① ③ ⑤ ⑤ 140 120 100 130 120 110 100 90 80 100 90 80 70 60 50 4000 酸素濃度 : 0.2% 注入エネルギー : 29.8kJ ⑥ ⑥ ⑦ 3500 3000 2500 2000 1500 -1 wave number [cm ] 1000 ④ ⑦ 500 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 堆積の透過率スペクトル ~ O2濃度と注入エネルギー変化 ~ 酸素濃度 : 20% 酸素濃度 : 0.2% 140 140 147.7kJ 100 100 80 120 101.0kJ 93.17kJ 100 80 60 65.02kJ 63.55kJ 100 47.72kJ 29.75kJ 19.85kJ 11.91kJ Transmittance [%] Transmittance [%] 120 110 100 90 80 70 140 120 100 160 140 120 100 120 110 100 90 80 140 130 120 110 100 90 140 120 100 80 120 110 100 90 4000 122.37kJ 120 120 80 60 32.52kJ 120 100 80 17.13kJ 120 100 80 60 120 6.19kJ 100 6.28kJ 3500 3000 2500 2000 1500 -1 wave number [cm ] 1000 80 500 60 4000 3500 3000 2500 2000 1500 -1 1000 500 wave number [cm ] MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY まとめ 大気圧コロナ放電を用いて窒素-酸素混合ガス中のベンゼンを分解し, ベンゼンの分解過程をC原子のマスバランスから調査した ベンゼン分解過程 分解生成物と注入エネルギーの関係 CO2が最終分解生成物で,HCN,C2H2,HCOOHおよびCOは中間生成物である 酸素混合割合の影響 ・ 酸素濃度の増加とともにC6H6分解に必要なエネルギーが増加する ・ HCNおよびC2H2の生成は,低酸素濃度のときに多くなるがCOの生成に比べ微量である ・ HCOOHの生成は,高酸素濃度のときはCOとほぼ同量で,低酸素濃度のときはHCNおよび C2H2と同様に微量である ・ 酸素濃度を高くすると堆積物に含まれるC原子の割合が減少し,気相中の分解生成物の割合 が増加する C6H6は, 低酸素濃度時にCOを経て 高酸素濃度時にCOおよびHCOOHを経て CO2に分解される
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