周波数変換と非線形適応信号 処理を用いた電子透かしの研究 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 直江健介 電子透かし 直江健介 透かし情報 透かしの復元に 必要となる 復号鍵の生成 透かし情報 復号鍵がないと 透かしを復元できない 透かしの復元 透かしの埋め込み 元の画像 直江健介 電子透かしが 埋め込まれた画像 (不可視) 電子透かしが 埋め込まれた 画像が改変 著作権管理に用いるためには、透かし情報がいかなる処理を施しても頑健にコンテンツに存在し続ける必要がある =ロバスト性 研究の目的及び概要 本研究は静止画像に適用されるロバスト性の高い電子透 かしの埋め込み・抽出手法の実現を目的とする 1.適応信号処理を用いた鍵の生成により情報秘匿を高度化 • 透かしを埋め込む際に必要になる「情報」と、復元する際に必要になる 「情報」が同じではない(非対称性) • 非線形適応信号処理システムによる透かし情報の埋め込みと復元 (秘匿性) 2.鍵穴の位置情報のみを埋め込むため、少ない埋め込み情 報に対して、多くの情報の復元を可能 • 鍵生成に必要となる鍵穴ブロックの位置情報を埋め込む(コンテンツ の品質劣化を抑える) 研究の背景 ロバスト性を高めるために用いられてきた従来の手法 • 画像に対して周波数変換処理を行い、信号を拡散スペクトラム 方式を用いて埋め込む 提案手法の特徴 • 周波数変換後の画像の、特定領域の特徴情報を 入力とし、透かし情報を応答とするパターン認識問 題として捉える – 学習による鍵の生成 – パターン認識による透かし情報の復元 • 画像の特徴情報は複雑かつ似た性質を持つ可能 性があるため、非線形分離が必要 – 階層型ニューラルネットワークの多層パーセプトロンに よるパターン分離 • バックプロパゲーション学習による非線形分離 提案手法の手順 埋め込み処理 1. 画像の周波数変換処理 2. 鍵穴ブロックと鍵穴の位置情報埋め込みブロックの選定 3. 鍵穴の位置情報の埋め込み 4. 鍵の生成 5. 画像の再構成 復元処理 1. 画像の周波数変換処理 2. 鍵穴の位置情報の取り出し 3. 埋め込み処理4.で作った復号鍵を用いて透かし情報の復元 提案手法の手順(埋め込み処理) 1.画像の周波数変換処理(変換、量子化) 2.鍵穴ブロックと 鍵穴の位置情報埋め込みブロックの選定 鍵穴の位置情報 B 3.鍵穴の位置情報の 埋め込み 4.鍵穴ブロックから透かし情報を認識する 分類器の生成 A 透 か し 情 報 学習後の 結合係数群 鍵穴の位置情報を 埋め込んだ画素の 位置情報 5.画像へ再構成(量子化>逆量子化、変換>逆変換) 提案手法の手順(埋め込み処理) 1.画像の周波数変換処理(変換、量子化) 2.鍵穴ブロックと 鍵穴の位置情報埋め込みブロックの選定 鍵穴の位置情報 B 3.鍵穴の位置情報の 埋め込み 4.鍵穴ブロックから透かし情報を認識する 分類器の生成 A 透 か し 情 報 学習後の 結合係数群 鍵穴の位置情報を 埋め込んだ画素の 位置情報 5.画像へ再構成(量子化>逆量子化、変換>逆変換) 埋め込み処理1:画像の周波数変換処理 256 256 256 8 256 8 1.画像を用意 2.細かいブロックに分割されて 周波数変換が行なわれる 3.ブロックの中の 各画素値はDCT係数に変換される 本研究では、周波数変換処理手法として離散コサイン変換(DCT)を用いる 提案手法の手順(埋め込み処理) 1.画像の周波数変換処理(変換、量子化) 2.鍵穴ブロックと 鍵穴の位置情報埋め込みブロックの選定 鍵穴の位置情報 B 3.鍵穴の位置情報の 埋め込み 4.鍵穴ブロックから透かし情報を認識する 分類器の生成 A 透 か し 情 報 学習後の 結合係数群 鍵穴の位置情報を 埋め込んだ画素の 位置情報 5.画像へ再構成(量子化>逆量子化、変換>逆変換) 埋め込み処理2:「鍵穴ブロック」と「鍵穴の 位置情報を埋め込むブロック」の選択 256 256 256 256 細かく分割されたブロックから 鍵の生成に用いる「鍵穴ブロック」と 「鍵穴ブロックの位置情報を 埋め込むブロック」を任意に選択する 埋め込み処理2:「鍵穴ブロック」と 「鍵穴の位置情報埋め込みブロック」の選定 8 8x32 A 8x32 B 8 係数の行列 拡 大 1.鍵穴ブロックとしてA(7,3)を選択 2.鍵穴ブロックの位置情報を埋め込 むブロックとしてB(4,5)を選択 直流成分(DC係 数) 中周波数領域 低周波数領域 高周波数領域 提案手法の手順(埋め込み処理) 1.画像の周波数変換処理(変換、量子化) 2.鍵穴ブロックと 鍵穴の位置情報埋め込みブロックの選定 鍵穴の位置情報 B 3.鍵穴の位置情報の 埋め込み 4.鍵穴ブロックから透かし情報を認識する 分類器の生成 A 透 か し 情 報 学習後の 結合係数群 鍵穴の位置情報を 埋め込んだ画素の 位置情報 5.画像へ再構成(量子化>逆量子化、変換>逆変換) 埋め込み処理3:鍵穴の位置情報の埋め込み 8 鍵穴ブロックであるAブロックが 全体のサブブロック32x32のなかの (7,3)という位置であることを埋め込む 7 8 3 (28,3 4) (26,3 6) 鍵穴となるブロック の位置情報が 埋め込まれている 画素の位置 フィルタの影響の少ない 中間周波数領域に 位置情報を埋め込む Bブロック 提案手法の手順(埋め込み処理) 1.画像の周波数変換処理(変換、量子化) 2.鍵穴ブロックと 鍵穴の位置情報埋め込みブロックの選定 鍵穴の位置情報 B 3.鍵穴の位置情報の 埋め込み 4.鍵穴ブロックから透かし情報を認識する 分類器の生成 A 透 か し 情 報 学習後の 結合係数群 鍵穴の位置情報を 埋め込んだ画素の 位置情報 5.画像へ再構成(量子化>逆量子化、変換>逆変換) 埋め込み処理4:鍵穴ブロックから鍵を生成 8 8x32 A 8x32 拡大 8 B 1. 鍵穴ブロックAに着目 鍵穴ブロックA 埋め込み処理4:鍵穴ブロックから鍵を生成 1.鍵穴ブロックに着目し 対角線の係数をBack Propagationへの入力とする 2.二値化した透かし情報をBack Propagationの教師信号とする (教師信号=透かし情報 例:10110101) 3.学習後の結合係数と鍵穴の 鍵穴ブロックA 位置情報を復号鍵とする 適応信号処理システム (階層型ニューラルネットワーク:3層パーセプトロ ン) 透かし情報 01 10 1 1 0 1 ・鍵穴の対角線の係数を入力、透かし情報を教師信号とし 学習を行う。学習が収束した時の2対の結合係数U,Vを鍵として 外部で保持する 鍵の生成 • 鍵は画像の特定領域の特徴情報を用いた、 バックプロパゲーション学習で生成 • 透かし情報を復号する鍵は、鍵生成に用いら れた「鍵穴ブロックの位置情報」と「分類器」 の組み合わせで構成される 提案手法の手順(埋め込み処理) 1.画像の周波数変換処理(変換、量子化) 2.鍵穴ブロックと 鍵穴の位置情報埋め込みブロックの選定 鍵穴の位置情報 B 3.鍵穴の位置情報の 埋め込み 4.鍵穴ブロックから透かし情報を認識する 分類器の生成 A 透 か し 情 報 学習後の 結合係数群 鍵穴の位置情報を 埋め込んだ画素の 位置情報 5.画像へ再構成(量子化>逆量子化、変換>逆変換) 提案手法(復元処理) 1.画像の周波数変換処理(変換、量子化) 2.鍵穴の位置情報の取り出し 鍵穴の位置情報を 埋め込んだ画素の 位置情報 3.鍵穴ブロックの特徴情報を適応信号処理の 入力とし、復号鍵である結合係数を用いて 出力応答として透かし情報を得る 透 か し 情 報 復号鍵である 2対の結合係数群 復元処理1~3:透かし情報の復元 鍵穴の位置情報を 埋め込んだ画素の 位置情報 透 か し 情 報 A B 周波数変換後の画像 ブロックA 復号鍵である 2対の結合係数群 (ブロック分割) 1. 2. 3. 画像を周波数変換し、ブロックに分割する 復号に必要となる「鍵穴ブロックA」の位置情報を持つ「ブロックBの位置」に 関する位置情報を復号者は知っているためブロックAを探索可能 「鍵穴ブロックA」の対角線上の係数を適応信号処理の入力信号とし、復号 鍵である結合係数群を用いて出力することで透かし情報得ることが出来る 手法のまとめ:埋め込みと復号に使う情報(鍵) 1.埋め込む情報: 鍵穴ブロックの位置情報 2.透かし情報を復元する際に必要になる情報: 鍵である「2対の結合係数群」と「鍵穴ブロックの位置 情報が埋め込まれている座標」 – 鍵は画像の特定領域の特徴情報を用いた、非線形 適応信号処理による学習で生成 – 鍵は「鍵穴ブロックの位置情報が埋まっている位置 情報」と「分類器(Classifier)」によって構成される 評価実験 • 実験1 透かし情報の認識率 • 実験2 フィルタに対する耐性評価 実験1:透かし情報の認識率 透かし情報(ビット列):10110101 の復号実験 認識率 認識率 1 0.25 0.8 0.2 0.6 0.15 0.4 0.1 0.2 0.05 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 図1.透かし情報の入っているブ ロックから復号(1byteのデータ) 正しく復号できた bit 1 2 3 4 5 6 7 8 図2.まったく関係ないブロック から復号(1byteのデータ) 正しく復号できない bit 実験2:フィルタに対する耐性評価 透かし情報の入った画像にデジタルフィルタ をかけた後に透かし情報を復号できるか 認識率 図1.フィルタ処理前の画像 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 図2.フィルタ処理後の画像 1 2 3 4 5 6 7 8 1byteのデータを抽出 bit ハイパスフィルター処理後の認識率 まとめ • 特徴 – – • 非線形適応信号処理によるパターン認識問題と して捉えた 特徴情報の信号が存在するブロックの位置情報 のみの埋め込み 効果 – – – 画像の劣化を抑え、フィルタへの耐性を向上 拡散スペクトラムよりも、鍵の秘匿性が高まる 少ない埋め込み情報に対して多くの情報を復号 することが可能 今後の課題 • 周波数変換手法にウェーブレット変換を用 いる(JPEG2000) • 汎化能力向上のためにBack Propagation の代わりにSupport Vector Machineの利用 • パッチワーク法との連携により、埋め込む 情報を画像全体へ拡散 • ステガノグラフィへの応用 先行研究 ●拡散スペクトラムを用いた電子透かし 画像を周波数変換し、特定のエリアの係数にPN係数を掛け、 拡散スペクトラムを行い透かし情報を埋め込む →本研究では直接拡散時のPN係数の変わりに 非線形適応信号処理時に生成された鍵を用いる(秘匿性の向上) ●LVQ(学習ベクトル量子化)を用いた電子透かし 画像に対して透かし情報をエンコードするのではなく、コードブックに 透かし情報をエンコードする。 →本研究ではコードブックの代わりに、 非線形適応信号処理(Back Propagation)によって階層ネットワークに 透かし情報をエンコードする(透かし埋め込み後の画質の劣化防止) 比較評価 • 秘匿性の評価:PN係数との比較 – PN係数の取りうる組み合わせ • 8^2=256通り – 提案手法:結合係数 • (10^m)^10*8*8*2通り mは結合係数の桁数 • 埋め込み量の比較:ハフマン符号化圧縮との比較 – ハフマン符号化による圧縮で必要になる埋め込み量 • 8bit情報は3bitに圧縮で、埋め込むのに3画素必要(24bit必要) – 提案手法で必要な埋め込み量 • 圧縮比固定:8bitの情報を埋め込むのに2画素(16bit必要) バックプロパゲーション(逆誤差伝播法) • 以下の3つの特徴併せ持つ 1.汎化能力 2.誤り訂正と補完性 3.追加学習性
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