アジアへの直接投資による影響 南山大学 太田代ゼミナールⅢ 目次 1.テーマを選んだ理由 2.直接投資について 2-1 直接投資とは 2-2 アジアへの直接投資 3.直接投資は何に作用しているか 3-1 仮説 3-2 回帰分析 3-3 回帰分析の結果 4.直接投資の影響力 4-1 現地に与える影響 (1) 回帰分析 (2) 回帰分析の結果 4-2 インドネシアの実例 4-3 日本にあたえる影響 (1) 回帰分析 (2) 回帰分析の結果 4-4 実例 5.総括 発表の大まかな流れ 1. テーマを選んだ理由 日本は、近年アジアへの対外直接投資に力を入れ てきている。 対外直接投資をすることで、日本とアジアの国々 でそれぞれどのような影響があるのか疑問に思っ た。 そのため アジアのいくつかの国に注目し、本当に直接投資を 続けていくべきか調査することにした。 2.直接投資について 2-1.直接投資とは 2-2.アジアへの直接投資額 2. 直接投資について 2-1 直接投資とは 民間部門における長期の国際間資本移動 対外直接投資 日本 対内直接投資 日本 海外 直接投資 海外 2. 直接投資について 2-1 直接投資とは 日本のエリア別の対外直接投資額推移 (単位:100万ドル) 120,000 リーマン ショック 100,000 欧州 80,000 60,000 北米 円安 40,000 20,000 0 ※JETROより作成 2. 直接投資について 2-2 アジアへの直接投資額 日本のアジア5か国への対外直接投資額 (単位:100万ドル) 16,000 14,000 中国 12,000 シンガポール 10,000 インドネシア 香港 タイ 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 △ 2,000 (年) ※JETROより作成 まとめ 直接投資とは、民間部門における長期の国際間資本移 動のことである。 対外直接投資の中で中国とインドネシアが大きな割合 を示している。 日本の対外直接投資は、年々増えている。 3.直接投資は何に作用している か 3-1.仮説 3-2. 回帰分析 3-3. 回帰分析の結果 3. 直接投資は何に作用している か 例、法人税率 3-1.仮説 法人所得課税の実効税率の国際比較 (2013年1月現在) 法人税は近年に各国 で減少傾向にある。 (出所)財務省資料 3. 直接投資は何に作用しているか 3-1.仮説 図解 法人税率 低 高 直接投資 受け入れ国 現地雇用への 影響 ex,雇用率の増減 … 海外で生産し たほうが、 コストダウン 直接投資 直接投資 投資国 現地の経済へ の影響 ex,GDP、 インフレ率 対外競争力へ の影響 ex,為替レート 3. 直接投資は何に作用しているか 3-1.仮説 ・ここでは、アジア地域のうち日本からの対外 直接投資額が高い5ヶ国を選び、実証分析を行 う。 ・先行研究として「法人税と海外直接投資の実 証分析」/佐藤智紀/2010年/財務省財務総合政 策研究所を参考にした。OECD加盟国におけ る、対外直接投資へ効果を与える要因を分析し た論文である。特に、先進国では、法人税、前 期の直接投資額に有意な効果があったと述べら れている。 3. 直接投資は何に作用しているか 3-2 回帰分析(推定式) 対外直接投資の作用を考えるために、先行研究を参考に 以下の対数線形式を立てる。 FDI=α1FDIt-1+α2Taxt +β1X1t+β2X2t+β3X3t・・・ ※FDItは対外直接投資額。FDIt-1はラグ付き被説明変数で あり、前年度の対外直接投資額を表す。 ※Xは説明変数である。 ※系列相関が見られるので最尤法を用いた (被説明変数) FDIt (説明変数) FDIt-1、GDP、法定所得課税の実効税率、1人あたりの 平均賃金、実質為替レート、失業率 3. 直接投資は何に作用しているか 3-3 回帰分析の結果 定数項 FDIt-1の弾力性 GDP(10億ドル)の弾力性 法定所得課税の実効税率 の弾力性 失業率(労働力人口比) の弾力性 インフレ率(1990年基準) の弾力性 実質実効為替レート の弾力性 決定係数 中国 香港 シンガポール タイ インドネシア -57.955 111.685 252.110 17.922 0.697 (-13.698) (-1.608) (-2.599) (-0.723) (-0.198) 0.457 -0.665 -0.160 -1.059 0.464 (6.971)** (-1.555)* (-0.958)* (-1.245)* (1.82)* -0.397 0.527 -32.610 -0.567 0.056 (-3.907)** (1.308)* (-3.008)* (-0.818) (-0.745) 3.688 1.677 -13.831 2.201 0.001 (16.77)*** (2.625)* (-2.305)* (2.646)* (0.946)* 0.395 0.192 -8.742 1.959 -0.067 (1.996)* (1.308)* (-2.708)* (1.231)* (-0.877) 0.260 0.185 0.872 0.087 0.213 (5.151)** (2.497)* (3.917)** (1.673)* (2.998)* 8.109 0.185 14.460 -0.112 0.001 (9.672)*** (-1.677)* (2.143)* (-0.662) (0.368)** 0.998 0.845 0.886 0.780 0.802 (最尤法) (最尤法) (最尤法) (最尤法) (最尤法) (備考) 決定係数は自由度修正済み。括弧内はt値であり、***は1%、**は5%、*は10%水準で有意であることを示す。 3. 直接投資は何に作用しているか 3-3 回帰分析の結果 結果の解釈 (1)各国共通して、インフレ率にプラスの有意な 水準が見られたことから、東南アジア地域で は経済成長が対外直接投資に正の影響をもた らしている。 (2)同じく、法定所得課税の実効税率にも比較的 有意な水準が出ており、各国とも法人税を 使った税制が直接投資に影響を与えているこ とがうかがえる。 まとめ 法人税率は、減少の傾向にあり、それが直接投資を 生み出している。 対外直接投資は、インフレ率と法人税に大きく作用 されている。 4.直接投資の影響力 4-1 現地に与える影響 (1) 回帰分析 (2) 回帰分析の結果 4-3 日本にあたえる影響 (1)回帰分析 (2)回帰分析の結果 4-2 インドネシアの実例 4-4 日本の実例 4. 直接投資の影響力 直接投資をすることで 多大なる影響を両国に与えることになる 良い影響、悪い影響 どちらのほうが 大きいのだろうか?? 4. 直接投資の影響力 日本のアジア5か国への対外直接投資額 (単位:100万ドル) 16,000 14,000 12,000 中国 シンガポール 香港 タイ 日本から対外直接投資額の多い インドネシア 中国とインドネシアに絞って分析を行っていく 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 △ 2,000 (年) ※JETROより作成 4. 直接投資の影響力 4-1 現地に与える影響 (1)回帰分析 直接投資の作用を考えるために、以下の対数線形式を立て る。 GDP=α1FDIt+ α2 FDIt-1 +β1X1t+β2X2t+β3X3t・・・ ※FDItは直接投資額。FDIt-1はラグ付き被説明変数であり、前年 度の直接投資額を表す。 ※Xは説明変数である。 t年の直接投資額 ※最小2乗法を用いた。 (被説明変数) GDP (説明変数) FDIt、FDIt-1、法人税率、失業率、インフレ率、実質為替 レート 4. 直接投資の影響力 4-1 現地に与える影響 (1)回帰分析~インドネシア~ 回帰統計 重相関 R 重決定 R2 補正 R2 標準誤差 観測数 0.851684 0.725366 0.656708 0.225049 16 法人税率 係数 6.924559 0.261066 -0.03806 t 5.740205 3.105411 -1.67128 P-値 9.31E-05 0.009098 0.120518 実質為替レート 4.69E-05 1.387067 0.190645 切片 In(FDIt-1) 4. 直接投資の影響力 4-1 現地に与える影響 (1)回帰分析~中国~ 回帰統計 重相関 R 重決定 R2 補正 R2 標準誤差 0.99265015 0.98535432 0.97803148 0.105356272 観測数 16 切片 In(FDIt) In(FDIt-1) インフレ率 実質為替レート 係数 10.75515 0.11544 0.16699 -0.01231 -0.93417 t 13.56626 1.83386 2.98138 -0.77941 -6.00406 P-値 9.1442E-08 0.096564 0.013775 0.453789 0.000131 法人税率 0.05442 2.01406 0.071687 4. 直接投資の影響力 4-2 インドネシアの実例 トヨタ、ホンダ、ダイハツ、スズキなど 主要自動車メーカーが多額投資 →関連企業の進出(部品、保険、メンテナンス) →それらの企業を支えるサービスを供給する企業の 進出 (会計、人材派遣、不動産仲介) →インフラ整備の必要性 多様多種な日本企業がインドネシア へ 4. 直接投資の影響力 4-2 インドネシアの実例 日本自動車メーカーの進出 1970年代 現地企業との提携 インフラ整 備の必要性 現地メーカー 保険 人材紹介 金融 サービ ス 仲介 不動産 会計 監査法人 4. 直接投資の影響力 4-2 インドネシアの実例 インドネシア進出 【初期】 部品、組立てなど単純作業→日本で完成→輸出 【現在】 部品調達→組み立て→完成→販売 部品メーカーへのアドバイスなどを通じ て、インドネシアの企業と一緒に成長す る 経済発展を促し 人材、企業形態の育成にも貢献 4. 直接投資の影響力 4-2 インドネシアの実例 雇用創出 国民所得の増加 生産の活性化 経済成長 しかし 生産性スピルオーバー効果 生産力の低下 ↓ 地場企業は市場シェアを維持するために, 倒産 技術を向上させるインセンティブを高める まとめ 日本からの直接投資が多かったインドネシアと中国 は、日本の直接投資により現地のGDPに影響を与 える。 日本は、自動車業界がインドネシアへの直接投資を 増やすことで、さらに直接投資が増えていき、実際 に結果として経済発展を促した。 4. 直接投資の影響力 4-3 日本に与える影響 (1)回帰分析 日本のエリア別の対外直接投資額推移 (単位:100万ドル) 120,000 100,000 80,000 欧州 北米 アジア 60,000 40,000 20,000 0 ※JETROより作成 4. 直接投資の影響力 4-3 日本に与える影響 (1)回帰分析 減少 増加 減少 増加 4. 直接投資の影響力 4-3 日本に与える影響 (1)回帰分析 直接投資の作用を考えるために、仮説を元に以下の式を立てる。 N=α1FDIa+ α2 FDIw +β1W+β2E+β3GDP+β4P (※)FDItは直接投資額。 1990~2012年分のデータを用いて分析を行う (※)最小2乗法を用いた。 (※)コクランオーカット法による系列相関処理済 (被説明変数) 雇用 (説明変数) FDIa(日本→中国・インドネシア),FDIw(日本→世界), 1人当たりの平均賃金,実質為替レート,GDP,消費者物価指数 4. 直接投資の影響力 4-3 日本に与える影響 (2)回帰分析の結果 回帰統計 重相関 R 重決定 R2 補正 R2 標準誤差 観測数 切片 FDI(日本→世界) FDI(日本→中国・インドネシア) 1人あたりの平均賃金 実質為替レート GDP 消費者物価指数 0.999485 0.998971 0.998585 49.92704 23 係数 11.90029 0.000176 -0.01627 0.74004 1.430231 0.00759 -1.85566 t値が2以上である t値が2以上であるものの もののうち、 うち、 FDI(日本→中国・ FDI(日本→中国・イン インドネシア)のみ ドネシア)のみ係数が 係数がマイナス マイナス t 0.335018 0.202164 -2.75467 5.476852 0.977824 12.57892 -0.29542 P-値 0.741963 0.842337 0.014098 5.07E-05 0.342715 1.04E-09 0.771472 4. 直接投資の影響力 4-3 日本に与える影響 (2)回帰分析の結果 日本からの中国・インドネシアへのF DI 増加 15歳以上の就業者 数 減少 日本での産業の空洞化が発 生 4. 直接投資の影響力 直接投資をすることで 多大なる影響を両国に与えることになる 直接投資による産業空洞化は、 実際に発生していると思います か? 4. 直接投資の影響力 4-4 日本の実例 空洞化がおきているか 自社 起きている 21.0% どちらともいえない 無回答 19.2% 7.6% 9.8% 国内一般 46.9% 52.1% 起きていない 取引先 22.8% 66.3% 20.4% 6.0% 17.8% 9.8% 488社の「我が国企業の海外事業戦略に関するアンケート調査」から作成。 4. 直接投資の影響力 4-4 日本の実例 海外展開により将来国内で縮小する要素 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 100.0% 従業者数(製造系) 取引先数(調達先) 従業者数(事務系) 製造機能(汎用品) 取引先数(顧客) 拠点数 製造業では「従業者数(製造系)」 56% 製造機能(マザー工場) 事業数(種類) 産業集積の厚み・多様性 開発機能 本社機能 その他 人材育成機能 基盤的な技術 研究機能(応用) 研究機能(基礎) 無回答 合計 非製造業 製造業 4. 直接投資の影響力 4-4 日本の実例 JT(日本たばこ産業株式会社)の場 合 少子高齢化・消費税増税・喫煙規 制の強化 成人男性の約60%が喫煙、約250万 人に上るアジア最大の市場。 新たな市場獲得に向け、強力な基盤をインドネシアで構築しようと試み る。 それに伴い 国内では、国内たばこ部門で1600人規模のリストラ策を打ち出 す! ・工場閉鎖 ・人員削減 つまり 低迷する国内販売を踏まえ、海外に軸足を移す戦略 4. 直接投資の影響力 4-4 日本の実例 国内雇用低下 国内生産力低下 産業の空洞化 安い労働力確保 企業の収益拡大 まとめ 日本がアジアへの直接投資を増やすことで、日本の 雇用が減少するなど産業の空洞化が懸念されてい る。 実際に海外展開により従業者数を減らすと提言し、 日本の市場に見切りをつけ、海外へシフトする企業 も増えている。 しかし、企業にとっては収益が上がるため必ずしも 日本にとってマイナスの影響ではない。 総括 日本からアジアへの対外直接投資によりアジアへは、現地の経 済成長に影響を与え、日本へは、雇用の減少を生み出す。 直接投資を受けることにより現地企業の生産の低下があるがス ピルオーバー効果により必ずしも悪影響とは限らない。 また、日本は対外直接投資の影響が国内雇用を減らすが企業に とっては利益が増えるため日本にとって悪影響とは限らない。 なので、デメリットよりメリットの方が大きな効果をもたらす ため、対外直接投資をすることは世界の経済にとってよりよい 効果を生み出す。 参考文献 深尾 京司(経済産業研究所)袁堂軍(一橋大学)、「日本の対外直接投資と 産業の空洞化」、 国際協力銀行開発金融研究所 「直接投資が投資受入国の開発に及ぼす効 果」 佐藤智紀著 「法人税と海外直接投資の実証分析」 財務省財務総合政策研究所 2010年 経済産業省 http://www.meti.go.jp/ 財務省 http://www.mof.go.jp/ 総務省 http://www.soumu.go.jp/ 東洋経済 http://toyokeizai.net/list/welcome IMF(国際通貨基金) http://www.imf.org/external/index.htm JETRO(日本貿易振興機構)http://www.jetro.go.jp/world/japan/stats/fdi/ JT(日本たばこ産業) http://www.jti.co.jp/ ご清聴ありがとうございまし た。
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