日本保育学会 第62回大会 2009年5月16日(土) 千葉大学 保育内容II(健康・人間関係・環境・言葉・表現)2 PB-38 ひかり保育園「うちゅうのおはなし」2008年度報告 富田晃彦*(和歌山大学)、井本トシミ、岡田桂子(ひかり保育園) 興味をお持ちの方、お名前、ご連絡先を: *[email protected] http://www.wakayama-u.ac.jp/~atomita/ この実践は、世界天文年2009公認企画です。 「うちゅうのおはなし」の目的 科学の教育普及活動のひとつとして、保育園で、宇宙・空の話をしている。 せいざのおはなし 科学の方法、見方* を、多くの人と共有したいから * 園児に対して、どう考えるか: 直接体験はもちろん、それだけにとどまらず、もっと大きく世界を感じる。 たがいに感じたことをしっかり表現する。そして伝えあう。 いつ ほぼ毎月1回、毎回30分程度 ▶ 2006年12月開始、2007年11月より毎月訪問 どこで ひかり保育園(大阪府藤井寺市、地域の中核的な園) ▶ 3,4,5歳児(80人) ▶ 単発渡り歩き型ではなく、一ヶ所継続型 だれが 富田(専門:天文学)と学生(教員養成の課程) ▶ ゲストとして → 園全体からの協力不可欠 なにを うちゅうのおはなし(星座、地球史、雲、空) なにで おはなし(PowerPoint紙芝居)+しつもん くも 黄道十二宮の神話をもとに園児向けに話を作りなおし、数枚の絵を描 いてPowerPointスライドショーで示してお話した。話と絵のアレンジは 富田の指導する学生(河野明里、2009年4月より、大阪府貝塚市で小 学校教員)が担当した。今晩見る星空との関連が強いわけではない (たとえばしし座生まれと言われる月にはしし座が見えない、おひつじ 座はとても見て分かりにくい、など)。しかし、毎月の星座巡りという形 になっていること(お誕生会と関連させ)、おとぎ話の世界と関連して いること(劇で使った童話との関連もあった)で、園児には好評である。 空は、誰もが満喫できる大自然。都会のど真ん中でも得られる し、太古の昔も現在も変わらぬ姿で私たちの頭の上にある。頭 の上は案外見ていないし、面白いものに気がつかないままで ある。そこで雲の十種の形を中心に12ヵ月で空巡りをした。筋 雲、うろこ雲(いわし雲)、薄雲、羊雲、おぼろ雲、うね雲、雨雲、 霧雲、綿雲、雷雲(入道雲)、飛行機雲、青空で12回。「うろこ… は、わからないな」「ひつじ、知ってる!」「綿はこんなお花が咲く よ」と話が弾み、天気の変化にも興味が出てきている。 2008年度の訪問記録 2008年4月22日 * 10:25-10:35「せいざのおはなし」、4月は「おひつじ座」 * 10:35-10:50「くも」、4月は「ひこうきぐも」、「これはなんだ?」、4月は「飛行船」 * 10:50-11:00「なんでもしつもん」 2008年5月20日 * 10:25-10:35「せいざのおはなし」、5月は「おうし座」 * 10:35-10:50「くも」、5月は「あまぐも」、「これはなんだ?」、5月は「虹」 * 10:50-11:00「なんでもしつもん」 2008年6月24日 * 10:30-10:40「せいざのおはなし」、6月は「ふたご座」 * 10:40-10:55「くも」、6月は「きりぐも」、「これはなんだ?」、6月は「ヘリコプター」 * 10:55-11:05「なんでもしつもん」 2008年7月7日、たなばたまつり(保護者参加催し) * 9:50-10:50「にじのはこ」の製作 * 11:00-12:00「銀河鉄道にご案内」のスライドショー これは なんだ? 虹は部屋の中にもあるぞ! わた雲といえば、綿 (見たことある?) 空を見上げれば、不思議なものがいっぱい。この園の近くには 小さな空港(八尾空港)があり、ヘリコプターなどの航空機は園 児にとって身近な存在のようだ。虹は、水や光をうまく料理す ると台所でも作り出せる。CDなどを斜めから見ても見える。湯 気や露などはコンロ、冷凍庫などで見ることができ、雲の正体 でもある。天上界と台所がつながっていることを(科学という乗 物で、頭が空を飛ぶ)、園児はだんだん感じ取っている。 きり の なかま 小さな水の粒は買い物中にも 顔を出すぞ! 2008年7月30日 * 10:30-10:41「せいざのおはなし」、7月は「かに座」 * 10:41-10:52「くも」、7月は「わたぐも」、「これはなんだ?」、7月は「逃げ水」 * 10:52-11:08「なんでもしつもん」 2008年8月26日 * 10:29-10:40「せいざのおはなし」、8月は「しし座」 * 10:40-10:50「くも」、8月は「かみなりぐも」 「これはなんだ?」、8月は「空飛ぶ円盤? いや、雲に写った光」 * 10:50-11:02「なんでもしつもん」 2008年9月30日 * 10:29-10:39「せいざのおはなし」、9月は「おとめ座」 * 10:39-10:57「くも」、9月は「すじぐも」、「これはなんだ?」、9月は「ゆげ、つゆ、雲の仲間」 * 10:57-11:10「なんでもしつもん」 2008年10月28日 事前・事後の活動 毎月訪問という形を利用し、 次回以降の活動の事前協議(事前の議論)+ これまでの活動の振り返り(事後の議論) を毎回行っている。 30分の実践のその日、昼休み後に、園長(岡田)、主任保育士(井本)、3,4,5歳児クラスの担任、富田と学生、以上7人で、 園の事務室で協議会を持っている(約30分間)。園長、主任保育士と、富田と学生は、これを含め2時間議論。 協議会での議論点 * 10:30-10:40「せいざのおはなし」、10月は「てんびん座」 * 10:40-11:00「くも」、10月は「うろこぐも」 「これはなんだ?」、10月は「一番星が2つある!(金星と木星)」 * 11:00-11:18「なんでもしつもん」 気付きの力、科学的見方・考え方の基礎(と私は考える) 普段あまり話さない園児が、よく質問するようになる。* 普段の園生活で、雲や虹を探すようになる。* 大人と一緒に星を見るようになる。* 冷凍庫を開け閉めで「白いもの」を何度も確認する。* 窓に「はー」をやって、くもりを何度も作ってみる。* 2008年11月25日 * * * * 10:34-10:47「せいざのおはなし」、11月は「さそり座」 10:47-10:58「くも」、11月は「うすぐも」 10:58-11:11「これはなんだ?」特別版「ハワイKaumana Keikilandからのビデオレター紹介」 11:11-11:18「なんでもしつもん」 2008年12月16日 * * * * 10:29-10:38「せいざのおはなし」、12月は「いて座」 10:38-10:47「くも」、12月は「ひつじぐも」 10:47-11:00「これはなんだ?」特別版「ハワイKaumana Keikilandへメリークリスマス」 11:00-11:06「なんでもしつもん」 2009年1月27日 * * * * 10:31-10:42「せいざのおはなし」、1月は「やぎ座」 10:42-10:51「くも」、1月は「おぼろぐも」 10:51-10:56「これはなんだ?」、1月は「雪の結晶」 10:56-11:09「なんでもしつもん」 ものごとに興味を示すということを表現し始めたり、 園児同士が興味(解釈)を話し合う、ということが見える。 話の脚色(学生担当)、 スライドの意匠の工夫は: ▶ 園児に分かりやすい? 納得? ▶ 言葉選び: てんびん? うろこ? 解釈しようとして、すっきりしないと「難しい」と表現する。 毎回読み切り話を、一貫した構成に作ろうとしているらしい。 夜は太陽はどこに行ったのか、園児どうしが激論することも。 人間はどこから生まれたのか、園児どうしが激論することも。 * 保育者・保護者の支援の影響が大きいもの。 新展開:ハワイの保育園との交流 国立天文台ハワイ観測所 outreach scientist との連携による ハワイ州ヒロ市のpreschool とのビデオメッセージ交換 2009年2月24日 * * * * 10:56-11:07「せいざのおはなし」、2月は「みずがめ座」 11:07-11:15「くも」、2月は「くもりぐも」 11:15-11:21「これはなんだ?」、2月は「つらら、霜柱、黄砂」 11:21-11:39「なんでもしつもん」 2009年3月13日 * * * * * 10:36-10:44「せいざのおはなし」、3月は「うお座」 10:44-10:53「くも」、3月は「あおぞら」 10:53-10:59「これはなんだ?」、3月は「グリーンフラッシュ」 10:59-11:06「ハワイKaumana Keikiland訪問のお土産話」 11:06-11:20「なんでもしつもん」 2009年度のシリーズ「うちゅうのたび」 * 毎回1つ天体を取り上げ、JAXA/NASAなどで公開されている写真の投影も利用しながら、案内をする。 * “風景画”をじっくり見てもらい、その世界を想像し、園児なりの空想の旅を楽しんでもらう。 * 「おとぎの世界とつながる宇宙・空への想い」、「空想力で、時・空間の旅を楽しむ」面をもっと引き出す。 * 投影した写真の何枚かを大判に印刷し、「敷物」にしてじーっと見てもらう。その星に「行って」もらう。 次回報告をご期待下さい。 この実践は科学研究費補助金 (富田晃彦、科学教育、基盤研究C、2008-2011年度、課題番号20500778) の補助を受けています。
© Copyright 2024 ExpyDoc