ホッキョクグマのエンリッチメントについて

ホッキョクグマの
エンリッチメントの
評価及び調整方法の一例
天王寺動植物公園事務所
上野将志
近畿ブロック飼育係研修会
個体紹介・飼育環境
性別:オス
愛称:ゴーゴ
生年月日:2004年12月3日
(ペルミ動物園)
来園年月日:2006年3月15日
全面コンクリート製、
陸地とプールで構成
陸地部:約185㎡
プール:約108㎡、水深2m弱
ゴーゴの1日の行動特徴の把握
午後に重点
野生では
午前活発に採食行動
午後休憩
午前は活発 午後はストレス行動
エンリッチメントの行動の発生の関係を把握
組み立てに活用
当園では
収容後に食事
ゴーゴの行動の課題
1、午前中は遊具で遊ぶ(狩猟行動の再現)が、午後には
飽きてしまう
→午後にも遊びの要素(狩猟行動の再現)を持ち込みたい
2、遊びが見られなくなった午後から常同行動が増加
→常同行動を減少させたい
3、野生のホッキョクグマはエサを探すのに長時間を費
やすのに対して動物園ではエサを与えるとすぐに食
べてしまい採食時間が短い。
→エサを採る過程で時間がかかるような工夫を
遊びの要素(狩猟行動の再現)と時間がかかる採食の融合したエンリッチメント
肉氷の開発
肉氷の獲とく方法の発展
2時間で氷が落ちる
2010
道具を使用 知能の飛躍的な発展
2009
常同行動の抑制 行動が活発化
目的
「肉氷」では
常同行動を抑制し行動の活発化に成功
道具使用を会得した事により採食時間
は短縮され運動量は減少
肉氷の難易度を高くすることで運動量増加を図る
方法①評価基準の設定
肉の獲得時間を指標としてホッキョクグマの道具使用の
適応レベルを設定し、レベルごとに実施頻度や難易度
の変更を行う事で適切なレベルのエンリッチメントを提
供。
飽きる性格
運動量
肉獲とく時間
肉氷実行頻度
調整
レベル5
二時間以上
難しすぎる?あきらめる?
ストレスなどに注意
様子を見る
レベル4
1時間~2時間
頻繁にやってもいい
現状維持
レベル3
30~1時間
頻繁にやってもいい
現状維持
レベル2
10~30分
週一回程度間隔をおく
対策の検討
レベル1
10以下
休止してもいい
対策の検討
行動別の時間帯発生率比較
2010.01.26行動別時間帯割合(%)
常同
パト
遊ぶ
小鯉
2010.03.31行動別時間帯割合(%)
泳ぐ
肉氷
常同
100%
80%
58%
20%
0%
9:00
0%
10:00
30%
25%
22%
0%
0%
11:00
12:00
肉氷
85%
60%
40%
33%
27%
63%
65%
58%
37%
28%
19%
0%
13:00
泳ぐ
100%
52%
48%
45%
遊ぶ
100%
81%
78%
42%
100%
パト
0%
14:00
0%
15:00
0%
16:00
0%
9:00
0%
10:00
12%
3%
0%
11:00
12%
0%
12:00
32%
22%
13%
0%
13:00
14:00
エンリッチメント内容
エンリッチメント内容
午前~常設の遊具
午後~鯉9匹
肉氷×1
午前~常設の遊具
タイヤ×1
午後~肉氷×4昼
タイヤ×1追加
二時間で取れない
肉氷の運動量レベル5
10%
0%
0%
15:00
肉氷の運動量レベル1
0%
16:00
平均8分!
肉氷の調整方法検討
約2か月行った肉氷の獲とく方法を検証
・使用する道具は選択できる状況
・物を投げて獲る
・棒は使わなくなった
・短期間で著しく獲とく時間は短縮
・運動量レベル5からレベル1に
対策の検討
採食時間を延長するには?
・難易度を上げる
どのように上げるか?
・比較的不得意な棒だけしか使用できない状況を作ることで
難易度は上がり採食時間は延長されると予測
・棒の形状が細くなり短くなるほど難易度は上がる
目標 運動量レベル3以上
実証
レベル3以上達成予定グラフ
ポイント
・朝から棒を入れて午前の遊具としての
棒と肉氷の道具としての効果も計る
・前日の餌の肉を使う
・レベル1であった場合調整として
2回目は
紐を強く縛るなど難易度を上げる
結果
・難易度を上げて運動量が増加することができた
・道具使用行動の中で運動量を基準値を設けて評価できた
・常同行動の抑制する方法を発展することができた
今後の可能性
・難易度を上げる度に再び時間短縮を
繰り返せば知能レベルが解ってくる
・知能レベルを把握することで
エンリッチメントの立案や進行に活用