訪問看護に関わる 高齢者と家族の理解 京都保健会盛林診療所 所長 三宅貴夫(老年科) 1.高齢者の理解 1)高齢者とは 高齢者:65才以上の人 老人:老化により心身の機能が低下し、 自立した生活が困難な人 2)高齢者と老人の関係 老人 高齢者 3)老化とは 生理的老化 病的老化 4)老化の要因 内因 外因 遺伝 気候 風土 食生活 住居 仕事 嗜好:飲酒、喫煙 精神的環境 その他 5)高齢者の特徴 多機能が混在している 低下しない機能 老化による機能低下 疾患による機能低下 恒常機能が低下している 身体・精神・生活の相互影響性が強い 死を迎えつつある 6)身体・精神・生活の相互影響 身体状態 精神状態 生活状態 7)高齢者の疾患の特徴 複数の疾患をもっている 症状が非定型的なことが多い 精神症状が現れやすい 治療に抵抗し、障害を残し、死に至りやすい 8)高齢者の検査と基準値 高齢者の検査の基本 高齢者の基準値と判断 9)高齢者の薬物療法 高齢者と薬物 服薬の方法 2.高齢者医療 1)高齢者の評価① 身体面 精神面 社会・生活面 1)高齢者の評価②‐身体状態‐ 循環器系 神経系 消化器系 骨・関節・筋肉系 感覚器系(聴力・視力) その他 1)高齢者の評価③‐精神状態‐ 認知機能 感情 性格 1)高齢者の評価④‐社会・生活状態‐ 日常生活能力 家族 有無 健康状態 人間関係 居住環境 経済状態 社会制度の利用状況 その他 2)医療の場①-施設医療ー 病院 総合病院 専門病院 精神病院 療養型医療施設 老人保健施設 特別養護老人ホーム 有料老人ホーム ケアハウス グループホーム その他の施設 2)医療の場ー在宅医療ー① 在宅医療に関わる人たち 訪問看護師 医師 理学療法士 ケアマネージャー 訪問介護職 ボランティア その他 2)医療の場ー在宅医療ー② 在宅医療に関わる施設 訪問看護ステーション 診療所・在宅療養支援診療所 デイサービス・デイケア 地域包括支援センター その他 3)在宅医療の条件 高齢者の心身の状態 家族の高齢者の心身の理解と技術 家族の健康状態と人間関係 住居環境と経済状態 周囲の理解と協力 地域の社会的サービスと連携 その他 3.認知症とその他の精神疾患 1)認知症①‐診断基準‐ 以下のすべてがそろっていること ① ② ③ ④ ⑤ 記憶障害がある 失語・失認・失行・実行機能障害のひとつがある ①と②のために生活に支障がある ①と②の原因として脳などの身体疾患がある 意識は清明である 精神障害の診断と統計の手引き第4版(DSM-Ⅳ)アメリカ精神医学会1994年より 1)認知症②‐記憶関連障害‐ 生理的記憶障害 病的記憶障害 加齢関連認知低下(AACD) 軽度認知障害(MCI) 健忘症 認知症 高次脳機能障害 AACD:Aging-associated Cognitive Decline MCI: Mild Cognitive Impairment 1)認知症③ー原因ー 1次要因 アルツハイマー病 脳血管障害 その他(慢性硬膜下血腫、低酸素脳症、ヤコ ブ病など) 2次要因 身体状態(脱水、熱発、貧血など) 精神状態(緊張、不安、うつ状態、混乱など) 生活・環境状態(介護者、居住環境など) 1)認知症③ー1次要因と2次要因の関係ー 2次要因 1次要因 1次要因と2次要因 1)認知症④-認知症高齢者の心理① 記憶の障害 判断の障害 総合的判断 抽象的判断 時系列的判断 過去に生きる 感情・プライド・性格が残る 1)認知症⑤-認知症高齢者の心理② 混乱 怒り うつ状態 不安 喜び その他 1)認知症⑥-認知症高齢者のケアの基本‐ 認知症の人を知る 残存能力に働きかける 「生きている世界」を受け入れる 感情や思いに配慮する 身体状態を把握する 身の安全を守る 周囲の理解を得る 地域のサービスを利用する 人権に配慮する 介護する人をケアする その他 1)認知症⑦-認知症の治療‐ 薬物療法 抗認知症薬(アリセプト) 向精神薬(抗不安剤、抗うつ剤など) その他(降圧剤、糖尿病薬など) 非薬物療法 回想法 音楽療法 バリデーション その他 外科的治療 1)認知症⑧‐BPSDへの対応‐ 「お金がない。盗まれた」 「食べてない。食べさせてください」 「徘徊」 夜間不穏 失禁 その他 BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(認知症の行動と心理症状) 2)その他の精神疾患① せん妄 幻覚妄想状態 妄想症 2)その他の精神疾患② うつ状態 不安神経症 心気症 性格障害 その他 3)その他の状態 心身症 その他の状態 不眠症 性行動 自殺 その他 4.在宅における終末期医療 1)終末期医療の用語 終末期医療 Terminal medical care 終末期ケア Terminal care 緩和ケア Palliative care ホスピスケア Hospice care エンド・オブ・ライフ・ケア End-of-Life care 2)終末期とは①‐身体疾患の場合‐ 「積極的な医療行為がないと生命の維持が不可能であり, またその医療行為を必要としなくなる状態には回復する 見込みがない状態」(三宅貴夫) 「病状が不可逆的かつ進行性で,その時代に可能な最善の 治療により病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり, 近い将来の死が不可避となった状態」(日本老年医学 会) 2)終末期とは➁‐認知症の場合(狭義)‐ 認知症である。 意志疎通が困難か不可能な状態である。 認知症の原因疾患に伴い 嚥下が困難か不可能な状態である。 上記の状態が非可逆的である。 (三宅貴夫) 2)終末期とは③‐認知症の場合(広義)‐ 狭義の終末期の状態である。 または 治癒しない認知症で、認知症とは直接関係しな い身体疾患が終末期の状態である。 (三宅貴夫) 3)終末期医療の目標 その人中心に 身体・精神・生活をみる 多職種による 死に向かうよりQOLの高い生の支援 4)QOLとは 人生の質 より健康で幸福な人生の質 生活の質 より苦痛が少なくより自由な生活の質 生活環境の質 より自由な生活を保障する生活環境の質 5)高齢者の終末期医療の特徴 より死を受け入れやすい。 より苦痛が少ない。 複数の疾患がある。 6)終末期医療と高齢者観・死生観 高齢者本人 家族 医療職 7)在宅での終末期医療の条件 高齢者自身が希望している 家族が希望している 鎮痛などの症状・状態がよい 居住環境がよい 在宅医療の体制が整っている その他 8)終末期医療に関わる人たち‐在宅‐ 高齢者本人 家族 医師 看護師 栄養士 介護職 ボランティア その他 9)終末期医療に精神的支援 本人への支援 家族への支援 10)高齢者の終末期医療-その他の課題- 終末期の告知 尊厳死または安楽死 倫理的課題 法的課題 宗教の役割 その他 11)終末期の症状と対応-身体症状 疼痛 呼吸困難 嚥下困難 縟創 排尿障害 関節拘縮 かゆみ その他の身体状態 12)終末期の症状と対応-精神症状ー せん妄 幻覚妄想状態 不穏 うつ状態 その他の精神症状 13)認知症高齢者の終末期医療 アルツハイマー病の場合 脳血管障害の場合 その他の認知症性疾患の場合 14)終末期のその他の対応‐延命処置‐ 経管栄養(経胃瘻経管栄養) 中心静脈栄養法 気管切開・挿管・人工呼吸 その他 15)意思の確認 高齢者 認知症のない場合 認知症のある場合 家族 医療職 6)意思決定の妥当性 意思決定をする人 意思決定の過程 意思決定の妥当性の判断 17)高齢者の終末期医療‐その他の課題‐ 高齢者死後の家族のケア 医療職自身のケア その他 虐待の防止 身体拘束の禁止 成年後見制度 その他 4.高齢者と家族 1)家族とは 法的 経済的 物理的 情緒的 その他の関係のなかで 2)高齢者と家族の状況 3世代家族世帯 2世代家族世帯 1世代家族世帯 高齢者のみの世帯 一人暮らし世帯 その他の世帯 3)高齢者と家族の関係 理性的関係 情緒的関係 倫理的関係 法的関係 経済的関係 文化的関係 宗教的関係 その他の関係 4)介護家族の心理と行動-認知症の場合 否定 落胆 期待 誤解 不安 うつ状態 自責 後悔 孤立 暴力 発病 喜び その他 5.その他の課題 1)高齢者虐待①‐定義‐ 身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること 無視または放置という虐待 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置 心理的虐待 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外 傷を与える言動を行うこと 性的虐待 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること 経済的虐待 高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得る こと (「高齢者虐待防止法」(正式名称:「高齢者の虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」より) 1)高齢者虐待②-背景 高齢者 家族 社会的背景 1)高齢者虐待③-対応 早期発見 高齢者の保護 家族の保護 再発防止の支援 2)疾患・障害の予防 身体疾患の予防 精神疾患の予防 事故の予防 転倒 窒息 溺水 火傷 おわり 社団法人奈良県看護協会 第22回訪問看護養成講習会 2007年6月2日 奈良県看護研修センター 付録:認知症に関するサイト 認知症なんでもサイト(三宅貴夫編) www2f.biglobe.ne.jp/~boke/boke2.htm 認知症を知るホームページ(エーザイ編) www.e-65.net/
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