第2回 バリューチェーン1 - HIGUCHI Toru

第5回サプライチェーンの構造変化
【生産者優位の見方(伝統的)】
上
流
供給業者I
供給業者J
供給業者D
供給業者E
供給業者K
供給業者F
供給業者A
供給業者G
供給業者B
供給業者H
供給業者C
統合企業(工場)
卸売A
下
流
小売A
小売B
卸売B
小売C
卸売C
小売D
小売E
小売F
顧客
部品・材料の流れ
製品の流れ
情報(注文含む)の流れ
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【図の説明】
特徴
1. 個別の製品単位の視点;個別製品(例えば、ポッキー)の原材
料段階から完成後の移動の経路から構造を把握している。
2. 統合企業( 工場 )中心;原材料や部品が集まり、製品にな
り、そこから国内外の消費者に向けて流通活動が始まる。
3. 階層 構造;上流および下流に複数の段階がある(一社で
全ての原材料の生産から製品の完成まですることは困難で、
そして国内外の消費者に提供するのも困難なので、水平およ
び垂直的な分業が必要となる)。
※例えば、自動車は2万点の部品から構成されていると言われ
る。主なパーツは、自動車エンジン、ブレーキ、クラッチ車軸、
ラジエータ、タイヤなどがあるが、これらは多数の部品から構
成されていて、エンジンやブレーキを作る会社が全ての部品を
作ることはできないので、さらに協力企業が存在する。このよ
うに、自動車一台作るのに関連する全ての企業をトヨタや日産
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ですら把握していない。
【
消
費
者
優
位
の
見
方
】
• 消費者の視点;どこであるいはど
のように購入するかが重要に
• 物流センターの役割;効率的に商品の品揃え
なっている(スーパー、コンビニ、 を確保するため、物流センターの設置・運営あ
雑貨屋、ネット等)。
るいは物流機能のアウトソーシングが重要と
• 販売する側は、小売店あるいは
なる(例えば、自社はサイト運営だけで、運送
インターネット、あるいはミックス
事業者に商品の保管・発送・集金などを依頼)。
化を検討する;消費者が購入す ※消費者が優位になった背景には、小売りの
る場所にどのように商品を提供
チェーン化 、長引く不況、情報技術の進展
するか(あるいはネット上で受注
などで市場での競争が激化したことがある。
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し、配送するか)が重要になった。
【ネット購入、すぐ手元に 食品や家電、一度に配送 】
(2014/1/4付日本経済新聞 朝刊)
20XX年、子供が急に熱を出して夕飯の買い物に行けなくなった主
婦の高橋裕子さん(仮名)。タブレットを使いインターネット通販サイト
で解熱剤のほか、豚肉や野菜を注文した。10分後、呼び鈴が鳴り、薬
と夕飯の材料が一緒に届いた。店に行かなくても、必要なものをすぐ
入手できるネット通販の実現はすぐそこまで来ている。
アスクルとヤフーは昨夏、
複数のネットショップの商品
を一度に注文、当日にまとめ
て届けるサービスを始めた。
ミネラルウオーターや掃除機
など自社通販の「ロハコ」で
扱う商品以外に、百貨店の
「伊勢丹」や雑貨店の「無印
良品」が対象だ。約15の
ショップ数を今後倍増し、エリ
アも関東と関西の一部地域
から広げることを検討する。
アスクルの物流センター(埼玉県三芳町)
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では、スピーディーに作業が進む。
【20分で出荷準備】
新サービスの拠点は埼玉県三芳町にあるアスクルの物流センター。延べ床面
積7万2千平方メートルの施設には7万品目がそろう。注文を受けると自動で段
ボール箱がコンベヤーの上を動き出す。
商品は作業員が詰めた後、配達地域や運送業者ごとに仕分けられる。処理能
力は1分間で200個。出荷準備までの所要時間は20分だ。12年にサービスを始め
たロハコの13年度の取扱高は100億円になる見込み。
ネット通販は安さだけでは消費者をひき付
けられない。焦点はどれだけ便利になるのか
だ。
即日配送を先行導入したアマゾンジャパン
(東京・目黒)。ジャスパー・チャン社長は「1回
で受け取りたいという顧客の需要は大きい」と
して、複数のショップの商品をまとめて届ける
サービスの導入に前向きだ。
野村総合研究所の推計では17年度のネッ
ト通販市場は17兆3千億円と13年度比5割増
える。ネット利用人口は飽和に近く、市場拡大
には利用頻度を高めていくしかない。
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【実店舗にも商機】
受け取りまでの所要時間はさらに縮む見通しだ。米アマゾン・ドット・コムと独ド
イツポストDHLは昨年12月、無人ヘリコプターで配送実験をした。段ボールを1
キロメートル離れた場所に運ぶのにかかったのは2分程度。ヘリは遠隔操作に
限らず、全地球測位システム(GPS)を使った自動運転もできる。
ネットが便利になると、街のにぎわいを生み出してきた商店はどんどんシャッ
ターを下ろしていくのか。セブン&アイ・ホールディングス(HD)の村田紀敏社長
は「ネット化が進むほど実店舗のニーズは高まる」と反論する。働く女性が増え、
注文した商品を会社の近くの店舗で受け取りたくなるという。
セブン&アイは18年度までに、全社が扱う300万商品を全1万7千店で受け取
れるようにする。セブンイレブンの一部店舗では空き時間に販売員が客の自宅
に商品を届けている。今後、仕組みが整い、店舗に在庫があれば、注文から数
分で受け取ることも可能だ。
ヤマト運輸は客が事前登録すれば配達時間を変更できるほか、受取場所も自
宅や職場などを選べる。集配送で蓄積したビッグデータ、GPSなどを活用し、受
け取りに加えて荷物を出すのも時間や場所を選ばないサービスの実現をめざ
す。
ネット化の進展で実店舗は商品をそろえて客を待つだけの場所ではなくなる。
物流、配送拠点としての役割も担う。
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【物流サービス】
売上(増)⇐顧客満足(アップ)・・・顧客の欲しいものを、低価格で、欲
しい時に、希望する場所で購入できるようにする。
顧客満足(アップ)⇐顧客サービス・・顧客が商品を探索し、購入し、
購入後のアフターサービスなど全般に関するサービス
物流サービス・・・「顧客サービス」の中の一部で、物流活動に関する
サービス(付加価値)。顧客ニーズに対応する迅速性(リー
ドタイムの短さ)や正確性(誤納品の少なさ)が該当する。
※物流サービスの水準は?高け
れば高いほど良いということ
はない(コストとのバランス)。
適切な水準で行うのがよい
(低すぎず、高すぎず)。
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【物流サービスの中身】
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(1)受注手段の種類(郵便・宅配便・バイク便等)と利便性
(2)迅速さ(リードタイムの短さ)
(3)納品の正確さ/納期の遵守
(4)問い合わせへの回答速度
(5)納品時間指定への対応力
(6)付帯作業(流通加工業務)
【物流品質管理の重要項目】
(1)納期遵守率(=納期遵守件数/総出荷件数)
(2)納品の正確性(=納品点数/受注点数)
(3)貨物品質:貨物の劣化・汚損・破損(貨物事故)の防止
(4)労働災害: 度数率=死傷者の数/100万延べ労働時間)
(事故防止) 強度率=労働損失日数/1000延べ労働時間)
(5)印象:ドライバーや営業担当者の身なりや態度
(6)環境対応:温室効果ガス(CO2)や梱包資材の削減
※現状の物流サービス内容(水準)は当事者の長年の取引や業界慣行などによっ
て決定されているので、明文化されていない事が多い。さらに、担当者がいなくな
ると、事情が分からなくなることもある。現状分析や競合他社との比較を通して、
適切な指標を作成して、適切な物流サービス水準を設定する必要がある。