債権総論講義

債権総論講義
第9回
明治学院大学法学部教授
加賀山茂
 トピックス
 民法の適用頻度(1945~2013)の図表を作成
 一番適用頻度の高い不法行為法のメカニズムの電気回路図化
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
1
債権総論の位置づけ
成立
Ⅲ
債
権
債権
総論
債権
各論
契約
総論
契約
事務管理
契約
各論
効力
解除
不当利得
不法行為
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
2
債権総論の位置づけ
→Best30
成立
Ⅲ
債
権
債権
総論
債権
各論
契約
総論
契約
事務管理
契約
各論
効力
解除
不当利得
不法行為
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
3
債権総論の内容 →位置づけ
債権の目的
対内的効力
債権の効力
対外的効力
債
権
総
論
可分・不可分債権
多数当事者関係
債権の譲渡
履行強制
損害賠償
債権者代位権
詐害行為取消権
連帯債務
保証
弁済
相殺
債権の消滅
更改
免除
混同
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
4
債権総論の内容 →位置づけ, Best30
債権の目的
対内的効力
債権の効力
対外的効力
債
権
総
論
可分・不可分債権
多数当事者関係
債権の譲渡
履行強制
損害賠償
債権者代位権
詐害行為取消権
連帯債務
保証
弁済
相殺
債権の消滅
更改
免除
混同
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
5
前々回の復習→債権総論
 債務不履行に基づく損
害賠償の要件
 債務不履行の効果
 損害賠償
 損害賠償の範囲
 債務不履行
 従来の考え方
 通常損害
 特別損害
 英米法の考え方
 三分類
 二分類
 帰責事由
 損害の発生
 因果関係
 確率論に基づく因果関
係
 事実的因果関係
 相当因果関係
2014/6/3
 契約の解除
 履行の強制
Lecture on Obligation 2014
6
債務不履行の三分類(通説) →Best30
債
務
不
履
行
履行遅滞
本旨に
従った履
行がない
こと
履行不能
(原始的・後発的)
不完全履行
(瑕疵ある履行)
三分類は,漏れが生じることが多い。
この場合には,履行拒絶が漏れている。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
7
債務不履行の二分類
(履行期に履行があるかどうか?)→Best30
履行遅滞
債
務
不
履
行
本旨に
従った
履行が
ない
履行期に
履行がない
履行拒絶
履行不能
履行期に
履行がある
不完全履行
(瑕疵ある履行)
基準が明確なので,実務的には,この区分が一番役に立つ。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
8
帰責事由の判定(1/2)
法学的視点→電気回路図,債権総論
帰責事由とは何か?
 1.債務者にとって,結果
(損害発生)が予見可能で
あり,
 2.結果の回避が可能であ
るにもかかわらず,
 3.結果回避の措置をとら
ないこと
(注意義務違反,または,
結果回避義務違反)
2014/6/3
予見可能性の意味のブレ
帰責事由の場合
 債務者(通常の合理人)
にとって,事前的に,予
見可能であるかどうか
因果関係の場合
 裁判官(最高度の合理
人)にとって,事後的に
見て,予見可能である
かどうか
Lecture on Obligation 2014
9
帰責事由の判定(2/2)
法と経済学の視点→電気回路図
140
過失あり
過失なし
社会費用の極小点
120
100
80
損害の期待値
注意の費用
期待損害
60
社会費用
40
適切な注意の量
20
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
必要なことはしてよい。しかし,損害を最小にするような注意を払うべきである。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
10
損害とは何か? →電気回路図
差額説(あるべき財産状態 - 現実の財産状況)
 損害額=あるべき収入-(現実の収入-現実の支出)
 損害額=あるべき収入-現実の収入+現実の支出
35
30
30 30
30
30
30
30 30
25
20
15
15
15
15
仮想的収入(万円)
10
現実の収入(万円)
5
0
0
-5
1
0
2
3
5
5
-10
-15
4
現実の支出(万円)
10
15
-20
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
11
事実的因果関係と相当因果関係
→電気回路図
事実的因果関係
相当因果関係
 あれなければこれなし
 sine qua non
 A ⇒ B の代わりに ¬A ⇒ ¬B を使う。
 具体例
 先天性奇形症の子が出産したのが,
サリドマイド剤の服用によるものかどう
か証明が困難であった。
 しかし,サリドマイド剤が販売禁止に
なってからは,この先天的奇形症の子
は一人も生まれていない。
 したがって,サリドマイド剤の服用と先
天性奇形症の子の出産との間には,
事実的因果関係がある。
2014/6/3
 原因事象が,結果事象に対して,そ
の確率を高めたか?
 具体例
 ある夫婦の子が,何人もの人を殺害
した。夫婦がその子を出産したこと
と,それらの殺人との間に因果関係
があるか?
 馭者が道を間違えて,左折したとこ
ろ,落雷に遭い,乗客が死亡した。
馭者の過失と乗客の死亡との間に
因果関係があるか?
 相当因果関係は,一般的には,事実
的因果関係の範囲を狭める作用が
ある。
Lecture on Obligation 2014
12
事実的因果関係が破綻する例
 複数原因がある場合には,事実的因果関係は破綻する。
 1.致死量10mgの毒物をY1,Y2,Y3のそれぞれが4mgずつ
ワイングラスに注いで,Xを殺害した。
 Y1,Y2,Y3の行為とXの死亡との間に事実的因果関係はあるか?
 2.致死量10mgの毒物をY1,Y2,Y3のそれぞれが5mgずつ
ワイングラスに注いで,Xを殺害した。
 Y1,Y2,Y3の行為とXの死亡との間に事実的因果関係はあるか?
 3.致死量10mgの毒物をY1,Y2,Y3のそれぞれが10mgず
つワイングラスに注いで,Xを殺害した。
 Y1,Y2,Y3の行為とXの死亡との間に事実的因果関係はあるか?
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
13
事実的因果関係の破綻の解消?
→Best30
Y1
Y2
Y3
関
連
共
同
共
同
行
為
事実的因果関係
不
真
正
連
帯
Y1
部分的因果関係(相当因果関係)
Y1
Y2
部分的因果関係(相当因果関係)
Y2
Y3
部分的因果関係(相当因果関係)
Y3
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
連
帯
債
務
一
つ
の
結
果
一
つ
の
結
果
14
民法416条の意味(通説)
→電気回路図 ,Best30
損
害
賠
償
の
範
囲
2014/6/3
必然・当然
(確率が高い)
通常事情による
通常損害
蓋然
(蓋然性がある)
特別事情による
通常損害
偶然
(確率が低い)
特別損害
(相当因果関係なし)
Lecture on Obligation 2014
15
確率論に基づく因果関係
ベイズの定理の応用
事前確率
p(Cn)
条件付確率
p(R|Cn)
原因(C1)
0.5
R
(結果)
原因(C2)
0.5
2014/6/3
事後確率
p(Cn|R)
p(C1|R)
≒0.86
p(C2|R)
≒0.14
Lecture on Obligation 2014
16
履行の強制→債権総論
民法
債務の種類(引渡しの観点)
金銭債務
作為
債務
402~
405条
623~ 414条2項
666条 (代替執行)
騒音を出さない,住居に侵
不作為
入しない,競業しない等の
債務
債務
2014/6/3
43~167条
414条1項
引渡
物の 種類物 401条
債務
(直接強制)
引渡
債務 特定物 400条
引渡債務以外の
作為(なす)債務
民事執行法
414条3項
(差止めを
含む)
Lecture on Obligation 2014
168~170条
171条(代替執
行の手続)
172条,173条
(間接強制)
17
前回の復習
 損害賠償額の予定における契約自由とその制限
 民法420条,91条
 歴史
 ドイツ民法343条ではなく,フランス民法1152条を導入
 変化
 フランス民法1152条は,1985年に改正
 取り残された民法420条
 改正の必要性
 特別法
 割賦販売法6条,消費者契約法9条,10条
 消費者契約法9条
 消費者契約法10条
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
18
民法における「契約自由」の規定
→契約と民法の条文との優先関係は?
損害賠償額の予定
→消費者契約法10条
契約自由と
任意規定の効力→Best30
 第91条(任意規定と異なる意思
表示)
 第420条(賠償額の予定)
 法律行為の当事者が法令中の公
の秩序に関しない規定と異なる意
思を表示したときは,その意思に
従う。
 第92条(任意規定と異なる慣習)
 法令中の公の秩序に関しない規
定と異なる慣習がある場合にお
いて,法律行為の当事者がその
慣習による意思を有しているもの
と認められるときは,その慣習に
従う。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
 ①当事者は,債務の不履
行について損害賠償の額
を予定することができる。
この場合において,裁判
所は,その額を増減するこ
とができない。
 ②賠償額の予定は,履行
の請求又は解除権の行使
を妨げない。
 ③違約金は,賠償額の予
定と推定する。
19
契約自由の下での
任意規定の位置づけ→条文は?
公序に関しない事項
当事者意思あり
当事者意思不明・意思なし
事実たる慣習あり
事実たる慣習なし
?
?
?
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
20
契約自由の下での
任意規定の位置づけ→条文は?
公序に関しない事項
当事者意思あり
当事者意思不明・意思なし
当事者の意思と
民法の条文(任意
規定)との関係で,
どちらが優先され
るのか?
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
21
契約自由の下での
任意規定の位置づけ→条文は?
公序に関しない事項
当事者意思あり
当事者意思不明・意思なし
事実たる慣習あり
当事者意思に従う
(民法91条)
慣習と民法の規定
とでどちらが優先?
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
22
契約自由の下での
任意規定の位置づけ→条文は?
公序に関しない事項
当事者意思あり
当事者意思不明・意思なし
事実たる慣習あり
事実たる慣習なし
当事者意思に従う
(民法91条)
事実たる慣習に従 何が適用されるの
う(民法92条)
か?
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
23
契約自由と任意規定の位置づけ
→条文は? →消契法10条,Best30
公序に関しない事項
当事者意思あり
当事者意思不明・意思なし
事実たる慣習あり
事実たる慣習なし
当事者意思に従う
(民法91条)
事実たる慣習に従 任意規定が適用さ
う(民法92条)
れる
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
24
契約自由と損害賠償額の予定
第420条(賠償額の予定)
①当事者は,債務の不履行について損害
賠償の額を予定することができる。この場
合において,裁判所は,その額を増減する
ことができない。
②賠償額の予定は,履行の請求又は解除
権の行使を妨げない。
③違約金は,賠償額の予定と推定する。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
25
損害賠償額の予定の比較法
契約自由から契約正義へ
フランス民法
 フランス民法1152条(旧)
 当事者の一方が債務を履行しない場合に
は,他の債務者に対して,損害賠償として
一定額を支払うとの合意がある場合には,
その額よりも多くを支払うこともできないし,
その額よりも少なく支払うこともできない。
 1985年の改正により2項を追加
 ②損害賠償額の予定が明らかに過大また
は過小であるときは,裁判官は,職権に
よって,それを増減することができる。これ
に反する特約は無効とする。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
ドイツ民法
 ドイツ民法343条
 ①課せられた違
約金が不相当
に多額であると
きは,債務者の
請求によって判
決をもって適切
な額に減額する
ことができる。…
26
消費者契約法 第1条
 第1条(目的)





2014/6/3
この法律は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交
渉力の格差にかんがみ,
事業者の一定の行為により消費者が誤認し,又は困惑した場合に
ついて契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことがで
きることとするとともに,
事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益
を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか,
消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が
事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより,
消費者の利益の擁護を図り,もって国民生活の安定向上と国民経
済の健全な発展に寄与することを目的とする。
Lecture on Obligation 2014
27
消費者取消権(第4条)
類型
条文
勧誘の
態様
4条1項1号
事業者の行為と消費者の
行為との間の因果関係
事業者
不実告知
消費者
事実である
との誤認
断定的判断の 確実である
4条1項2号 重要事項
詐欺型
提供
との誤認
の説明
不利益事実
不利益事実の
4条2項
が存在しない
不告知(故意)
との誤認
4条3項1号
強迫型
2014/6/3
4条3項2号
不退去
勧誘行為
監禁
困惑して契約
の申込み
又は承諾
Lecture on Obligation 2014
消費
者の
権利
事業者
の義務
重要事項
に関する
正確な
情報
取消権 提供義務
適正な
勧誘義務
28
消費者の無効主張権(8条~10条)
類型
免責型
違約金型
包括型
2014/6/3
条文
契約条項が無効とされるための要件
事業者の無効要件
事業者の免責要件
8条1項1号
債務不履行責任の全部免責
8条1項2号
債務不履行責任の一部免責
8条1項3号
不法行為責任の全部免責
8条1項4号
不法行為責任の一部免責
事業者に故意・重過失
がない場合
8条1項5号
瑕疵担保責任の全部免責
代品取替え又は瑕疵
修補責任を負う場合
他の事業者が瑕疵
担保責任を負う場合
9条1号
解除に伴う損害賠償額(解約金)の定めが平均的な
損害額を超えるもの
9条2号
遅延損害金の定めが年14.6パーセンを超えるもの
10条
任意規定に比較して消費者の利益を一方的に害する
規定
消費者
の権利
事業者
の義務
事業者に故意・重過失
がない場合
Lecture on Obligation 2014
契約条の
全部又は
一部の
無効を
主張する
権利
民法・商法
の任意規定
に比較して,
消費者の
利益を
一方的に
害する
契約条項を
消費者に
押し付けない
義務
29
消費者契約法9条
 第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無
効とする。
 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項
であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等
の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生
ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日
(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同
じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条
項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期
間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支
払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて
計算した額を超えるもの 当該超える部分
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
30
利息制限法における
損害賠償額の予定
制限利息
損害賠償額の予定
 第1条(利息の制限)
 金銭を目的とする消費貸借にお
ける利息の契約は,その利息が
次の各号に掲げる場合に応じ当
該各号に定める利率により計算
した金額を超えるときは,その超
過部分について,無効とする。
 一 元本の額が10万円未満の場
合 年2割
 二 元本の額が10万円以上100
万円未満の場合 年1割8分
 三 元本の額が100万円以上の
場合 年1割5分
2014/6/3
 第4条(賠償額の予定の制
限)
 ①金銭を目的とする消費貸借
上の債務の不履行による賠償
額の予定は,その賠償額の元
本に対する割合が第一条に規
定する率の1.46倍を超えるとき
は,その超過部分について,無
効とする。
 ②前項の規定の適用について
は,違約金は,賠償額の予定
とみなす。
Lecture on Obligation 2014
31
日歩と年利との関係
(利息制限法の上限金利15%~20%)→消契法9条
日歩(銭) 年利(%)
1
3.65
2
7.30
3
10.95
4
14.60
5
18.25
6
21.90
7
25.55
8
29.20
9
32.85
10
36.50
2014/6/3
日歩 年利(%) 日歩 年利(%)
11
40.15
21
76.65
12
43.80
22
80.30
13
47.45
23
83.95
14
51.10
24
87.60
15
54.75
25
91.25
16
58.40
26
94.90
17
62.05
27
98.55
18
65.70
28
102.2
19
69.35
29
105.85
20
73.00
30
109.50
Lecture on Obligation 2014
32
消費者契約法10条
第10条(消費者の利益を一方的に害す
る条項の無効)
民法、商法その他の法律の公の秩序に関
しない規定の適用による場合に比し、消費
者の権利を制限し、又は消費者の義務を
加重する消費者契約の条項であって、民
法第1条第2項に規定する基本原則に反し
て消費者の利益を一方的に害するものは、
無効とする。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
33
今回の学修目標→債権総論
 債権の相対的原則
 債権の効力は,当事者間でのみ生じる。
 第三者に請求することはできない。
 第三者の物に対して強制執行をすることはできない。
 債権の対外的効力
 第三者に対する請求
 債権者代位権(民法423条)
 他の債権者とともに,第三者(第三債務者)に請求することができる。
 直接訴権(民法613条,自賠法16条)
 排他的に,第三者(第三債務者)に請求することができる。
 第三者に対する追及効
 詐害行為取消権(民法424条~426条)
 第三取得者(受益者,転得者)に対して強制執行を行うことができる。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
34
債権者代位権(民法423条)
債権差押えとの比較(競合) →債権総論,Best30
債権者A
α債権
γ債権
債務者B
債権者D
β
債
権




債務者が無資力の場合
自己の名で
他人に代わって(間接訴権)
β債権を行使
2014/6/3
第三債務者
C
Lecture on Obligation 2014




債務不履行がある場合
自己の名で
自己のために
β債権を行使(取立・転付)
35
直接訴権(1/2) →債権総論
 民法613条に基づく賃貸人の転借人に対する直接の権利(直接訴権)の効力
 民法613条の直接訴権は,賃貸人(A)が受益の意思表示をした時点で効力を生じ(民法537条参照),
賃貸人(B)の転借人(C)に対する債権が先取特権とともに,賃貸人に移転する(民法314条)。
 この効力は,賃借人に対する権利を保持したまま(民法613条2項),しかも,転付命令と同様,移転的
効力を生じるので,賃借人の他の債権者(D)の差押えに優先する。
 さらに,直接訴権は,民法314条の先取特権によって,転借人の債権者(E)にも優先する。
賃貸人A
賃料債権
先取特権
移転
賃借人B
(転貸人)
債権者D
債権
債権者E
転
先転
借
先取
借
料
取特
料
債
特権 権
債
権
権
転借人C
2014/6/3
債権
Lecture on Obligation 2014
36
直接訴権(2/2) →債権総論
 自賠法16条に基づく保険金の直接請求権(直接訴権)の効力
 自賠法16条の直接訴権は,被害者(A)が事故で損害を受けた時に,加害者・被保険者(B)の保険会
社(C)に対する保険金債権が先被害者に移転する(自賠法16条)。
 この効力は,加害者に対する権利を保持したまま,しかも,事故時に転付命令と同様,移転的効力を
生じるので,加害者の他の債権者(D)の差押えに優先する。
被害者A
加害者B
損害賠償
(被保険者)
移転
債権
債権者D
保
保
険
険
金
金
債
権
債
権
保険会社
C
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
37
詐害行為取消権(1/2)
(民法424条~426条)→債権総論,Best30
金銭債権
債権者A
債務者B
責任財産
詐害
譲渡





債務者が責任財産を
悪意で逸失させたときには,
債権にも,追及効がある。
悪意の転得者に対しても,
どこまでも追及できる。
2014/6/3
責任財産
悪意の
受益者C
詐害
譲渡
責任財産
Lecture on Obligation 2014
悪意の
転得者D
38
詐害行為取消権(2/2)
取消しの意味に関する学説→債権総論,Best30
取消しの
意味
相手方
形成権説
詐害行為
の取消し
請求権説
詐害行為の取消しの効果
A・B間
B・C間
B+C
無効
無効
無効
BとCの双方を訴え
なければならない
逸失財産
の取戻し
C
有効
有効
有効
折衷説
(相対的
取消説)
取消しと
取戻し
C
有効
有効
無効
Cだけを訴えること
ができるが,逆に,
Bに対して物の受け
取り,登記の引取り
を強制できない
責任説
責任移転
の無効
B+C
有効
有効
有効だが
責任無効
別途,執行認容判
決が必要
有効
有効だが
対抗不能
B名義のまま,Cに
対する強制執行が
可能となる
訴権説
責任移転
(対抗不能 の対抗不
説)
能
2014/6/3
C
有効
Lecture on Obligation 2014
A・C間
実効性の確保
39
資料→債権
民法一般,債権総論
 民法の条文の適用頻度
 債権の目的
 債権の目的と目的物
 債権の種類
債権各論
 契約
 契約総論,契約の流れ
 契約の成立
 契約の効力
 契約の解除
 債権の効力
 対内的効力
 対外的効力
 多数当事者の債権・債務
 連帯債務
 保証
 債権の移転
 債権譲渡
 債務引受
 債権の消滅
 弁済,相殺,更改,免除,混同
2014/6/3
 契約各論
 13の典型契約
 事務管理
 不当利得
 不法行為
 電気回路図による理解
Lecture on Obligation 2014
40
民法条文の適用頻度ベスト20
(1945~2014) →債権,頻度表
95 601
541
1% 1%
703 2%
2%
110 711 416 723
1% 1% 1% 1%
656
1%
612
2%
177
2%
90
2%
719
4%
2014/6/3
770
1%
709
32%
1
5%
415
6%
715
8%
722
9%
710
18%
Lecture on Obligation 2014
41
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)→図
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11 703条 722 21 717条 448
710条 7,705 12 541条 672 22 724条 436
722条 3,725 13 95条 615 23 644条 399
715条 3,301 14 601条 614 24 555条 395
415条 2,618 15 110条 587 25 616条 391
1条 2,256 16 711条 564 26 907条 389
719条 1,944 17 416条 528 27 424条 379
90条
939 18 723条 522 28 162条 368
177条
838 19 656条 518 29 91条 327
612条
722 20 770条 450 30 423条 299
Lecture on Obligation 2014
42
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No. 条文
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
頻度
No. 条文 頻度
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
43
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No. 条文 頻度
1 一般不法行為
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
No. 条文 頻度
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
44
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No. 条文 頻度 No. 条文 頻度
1 709条 13,803 11
慰謝料
2
12
3
13
4
14
5
15
6
16
7
17
8
18
9
19
10
20
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
45
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No. 条文 頻度 No. 条文 頻度
1 709条 13,803 11
2 710条 7,705 12
3 過失相殺
13
4
14
5
15
6
16
7
17
8
18
9
19
10
20
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
46
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11
710条 7,705 12
722条 3,725 13
使用者責任
14
15
16
17
18
19
20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
47
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11
710条 7,705 12
722条 3,725 13
715条 3,301 14
債務不履行
15
16
17
18
19
20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
48
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11
710条 7,705 12
722条 3,725 13
715条 3,301 14
415条 2,618 15
基本原則
16
17
18
19
20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
49
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11
710条 7,705 12
722条 3,725 13
715条 3,301 14
415条 2,618 15
1条 2,256 16
共同不法行為
17
18
19
20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
50
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11
710条 7,705 12
722条 3,725 13
715条 3,301 14
415条 2,618 15
1条 2,256 16
719条 1,944 17
公序良俗
18
19
20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
51
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No. 条文 頻度 No. 条文 頻度
1 709条 13,803 11
2 710条 7,705 12
3 722条 3,725 13
4 715条 3,301 14
5 415条 2,618 15
6 1条 2,256 16
7 719条 1,944 17
8 90条
939 18
9 不動産物権変動 19
10
20
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
52
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11
710条 7,705 12
722条 3,725 13
715条 3,301 14
415条 2,618 15
1条 2,256 16
719条 1,944 17
90条
939 18
177条
838 19
無断譲渡・転貸
20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
53
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11
710条 7,705 12
722条 3,725 13
715条 3,301 14
415条 2,618 15
1条 2,256 16
719条 1,944 17
90条
939 18
177条
838 19
612条
722 20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
54
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11 不当利得
710条 7,705 12 契約解除
錯誤
722条 3,725 13
715条 3,301 14 賃貸借
415条 2,618 15 表見代理
1条 2,256 16
719条 1,944 17
90条
939 18
177条
838 19
612条
722 20
Lecture on Obligation 2014
No. 条文 頻度
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
55
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11 703条 722 21
710条 7,705 12 541条 672 22
722条 3,725 13 95条 615 23
715条 3,301 14 601条 614 24
415条 2,618 15 110条 587 25
1条 2,256 16 近親者慰謝料
26
719条 1,944 17 損害賠償範囲
27
90条
939 18 名誉毀損
28
177条
838 19 準委任
29
612条
722 20 裁判上の離婚
30
Lecture on Obligation 2014
56
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11 703条 722 21 工作物責任
710条 7,705 12 541条 672 22 消滅時効
722条 3,725 13 95条 615 23 委任・注意
売買
715条 3,301 14 601条 614 24
415条 2,618 15 110条 587 25 賃・使用貸借
1条 2,256 16 711条 564 26
719条 1,944 17 416条 528 27
90条
939 18 723条 522 28
177条
838 19 656条 518 29
612条
722 20 770条 450 30
Lecture on Obligation 2014
57
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11 703条 722 21 717条 448
710条 7,705 12 541条 672 22 724条 436
722条 3,725 13 95条 615 23 644条 399
715条 3,301 14 601条 614 24 555条 395
415条 2,618 15 110条 587 25 616条 391
1条 2,256 16 711条 564 26 遺産分割
719条 1,944 17 416条 528 27 詐害行為
90条
939 18 723条 522 28 取得時効
177条
838 19 656条 518 29 契約自由
612条
722 20 770条 450 30 債権者代位権
Lecture on Obligation 2014
58
民法条文の適用ベスト30
(1945~2014)(全体で39,408件)→図
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2014/6/3
条文 頻度 No. 条文 頻度 No. 条文 頻度
709条 13,803 11 703条 722 21 717条 448
710条 7,705 12 541条 672 22 724条 436
722条 3,725 13 95条 615 23 644条 399
715条 3,301 14 601条 614 24 555条 395
415条 2,618 15 110条 587 25 616条 391
1条 2,256 16 711条 564 26 907条 389
719条 1,944 17 416条 528 27 424条 379
90条
939 18 723条 522 28 162条 368
177条
838 19 656条 518 29 91条 327
612条
722 20 770条 450 30 423条 299
Lecture on Obligation 2014
59
契約の流れ(手動)→債権
Start
成立
Yes
有効
No(不成立)
不当利得
No(取消し・無効)
(停止条件・始期が未到来)
効力
発生
履行
No(条件・期限)
Yes
No (解除条件・終期が到来)
未発生
履行強制
No(不履行)
No(救済)
免責
Yes
契約解除
損害賠償
End
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
60
契約の流れ(自動)→債権
Start
成立
Yes
有効
No(不成立)
不当利得
No(取消し・無効)
(停止条件・始期が未到来)
効力
発生
履行
No(条件・期限)
Yes
No (解除条件・終期が到来)
未発生
履行強制
No(不履行)
No(救済)
免責
Yes
契約解除
損害賠償
End
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
61
契約の流れ(静止)→債権
Start
成立
Yes
有効
No(不成立)
不当利得
No(取消し・無効)
(停止条件・始期が未到来)
効力
発生
履行
No(条件・期限)
Yes
No (解除条件・終期が到来)
未発生
履行強制
No(不履行)
No(救済)
免責
Yes
契約解除
損害賠償
End
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
62
契約の解除(旧理論)→(新),債権
履行
遅滞
解
除
の
要
件
履行
不能
不完全
履行
2014/6/3
相当期間を定めた催告の後
(民法541条)
定期行為の場合は催告不要
(民法542条)
帰責事由があるとき
(民法543条)
帰責事由がないとき
(民法534条~)
危険
負担
契約目的を達成できないとき
(民法561~566~572条)
Lecture on Obligation 2014
63
契約の解除(新理論)→(旧),債権,Best30
履行
遅滞
解
除
の
要
件
2014/6/3
契
約
目
的
不
達
成
履行
不能
不完全
履行
相当期間を定めた催告の後
(民法541条)
定期行為の場合は催告不要
(民法542条)
帰責事由があるとき
(民法543条)
帰責事由がないとき
(民法534条~)→解除へ
契約目的を達成できないとき
(民法561~566~572条)
Lecture on Obligation 2014
64
タール事件と危険負担→契約解除
差戻審(否定)
控訴審判決(肯定)
少数説
債権法改正
調査官解説
最高裁判決
543条
(解除)
536条1
項(債務
者主義)
536条2
項(債権
者主義)
債権者だけに
帰責事由あり
債務者に
帰責事由あり
債務者に帰責事由なし
履行不能
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
65
危険負担の解除への吸収
不動産売買契約の実務→契約解除
 不動産売買契約書ひな形 第9条(危険負担)
 ①本契約締結後,本件土地建物の引渡しの完了前に,売主又は買
主のいずれかの故意又は過失によらないで本件土地建物の全部又
は一部が火災,流出,陥没その他により滅失又は毀損したとき,又
は公用徴収,建築制限,道路編入等の負担が課せられたときは,そ
の損失は全て売主の負担とし,買主は売主に対して売買代金の減
額又は原状回復のために生ずる損害の賠償を請求することができる
ものとする。
 ②前項に定める滅失又は毀損により買主が本契約締結の目的が達
することができないときは,買主はその旨を売主に書面でもって通告
することにより本契約を解除することができるものとし,この場合,売
主はすでに受取った手附金を全額買主に返還するものとする。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
66
契約各論(典型契約)→債権
無償
契
約
各
論
典
型
契
約
財
産
権
移
転
返還不要
財
産
権
非
移
転
2.売買
有償
返還必要
物の利用
3.交換
4.消費貸借
無償
5.使用貸借
有償
6.賃貸借
一般
7.雇用
8.請負
特別
(専門家)
9.委任
10.寄託
役務の提供
事業
紛争の解決
2014/6/3
1.贈与
Lecture on Obligation 2014
11.組合
12.終身定期金
13.和解
67
不動産売買の二重譲渡→Best30
物
権
第1買主
第一売買
第176条(物権の設定及び移転)
物権の設定及び移転は,当事者の意思表示の
みによって,その効力を生ずる。
第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要
件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は,不
動産登記法その他の登記に関する法律の定め
るところに従いその登記をしなければ,第三者
に対抗することができない。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
売主
登記
第
二
売
買
第2買主
68
賃貸借の無断譲渡・転貸→Best30
賃借人が無断で
賃借物を転貸した。
おそらく
誤り
賃貸人は,賃貸借
契約を解除できる。
背信行為と認め
るに足りない特
段の事由がある。
賃借人は,民法
612条1項に違
反しており,2項
に基づいて契約
を解除できる。
無断譲渡・転貸の場合に賃貸借契約を解除できるかどうか:
1. 継続的契約関係の当事者が,信頼関係を破壊したときは,契約を解除できる(原則)。
2. 賃借人が無断譲渡・転貸を行ったときは,信頼関係の破壊が推定される(推定規定)。
3. 信頼関係を破壊したと認められない事由があるときは,契約は解除できない(例外)。
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
69
事務管理の体系→債権
普通事務管理
民法上の事務管理
事
務
管
理
緊急事務管理
準事務管理
(侵害不当利得)
遺失物法
特別法上の事務管理
水難救助法
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
70
Do for others の民法的解釈
→債権総論の位置づけ
条文
立法理由
 第697条(事務管理)
 ①義務なく他人のために事務の
管理を始めた者(以下この章に
おいて「管理者」という。)は,そ
の事務の性質に従い,最も本人
の利益に適合する方法によって,
その事務の管理(以下「事務管
理」という。)をしなければならな
い。
 ②管理者は,本人の意思を知っ
ているとき,又はこれを推知する
ことができるときは,その意思に
従って事務管理をしなければな
らない。
2014/6/3
 本条第2項は,管理の方法に付き本人の
意思が管理者に明白なるか又は之を推
知することを得る場合に於ては,第1項に
規定する所の管理の方法に依らずして,
寧ろ,本 人の意思に従ひ管理を為すべ
きことを規定し,
 事務管理の名義を以て濫りに他人の事
務に干渉し,本人の欲せざることを行ふ
こと勿からしむるものにして,
 本人の意思 に反するも,尚ほ且つ,此者
に利益なりとして,其事務に干渉する如
きは,事務管理の立法の本旨に反し,寧
ろ不当利得の規定に従はしむべきものと
云ふべし。
Lecture on Obligation 2014
71
不当利得の体系→債権,Best30
不
当
利
得
一般不当利得
給付不当利得
民法703条,704条
民法705,706,708条
特別不当利得
支出不当利得
民法707条
侵害不当利得
民法191条,248条
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
72
民法707条の支出不当利得
事務管理になり損ねた不当利得
証書滅失・損傷,担保放棄,時効消滅
債権者
債権(行使不能)
債権
債務者
支出
不当
利得
第三者
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
73
不法行為法の体系→債権,回路図,Best30
不
法
行
為
単独
不法行為
複数
不法行為
一般
不法行為
特別
不法行為
一般共同
不法行為
特別共同
不法行為
名誉毀損
監督者責任
使用者責任
注文者責任
工作物責任
動物占有者責任
2014/6/3
Lecture on Obligation 2014
74
不法行為法の動態的理解(1/3)
故
意
又
は
過
失
因
果
関
係
損
害
責任無能力
責任阻却事由
加害者を知って
過失
から3年経過
相殺
損害賠償
請求権
消滅時効
2014/6/3
事件から20年経過
Lecture on Obligation 2014
75
不法行為法の動態的理解(2/3)
故
意
又
は
過
失
因
果
関
係
損
害
責任無能力
責任阻却事由
損害賠償
請求権
2014/6/3
過失
相殺
Lecture on Obligation 2014
76
不法行為法の動態的理解(3/3)→Best30
故
意
又
は
過
失
因
果
関
係
損
害
責任無能力
責任阻却事由
加害者を知って
過失
から3年経過
相殺
損害賠償
請求権
消滅時効
2014/6/3
事件から20年経過
Lecture on Obligation 2014
77
参考文献
 民法の入門書(DVD付)
 加賀山茂『民法入門・担保法革命』信山社(2013)
 民法(財産法)全体を理解する上での助っ人
 我妻栄=有泉亨『コンメンタール民法』〔第3版〕日本評論社(2013)
 金子=新堂=平井編『法律学小辞典』有斐閣(2008)
 契約法全体についての概説書
 加賀山茂『契約法講義』信山社(2009)
 債権総論の優れた教科書
 平井宜雄『債権総論』 〔第2版〕弘文堂(1994)
 債務不履行に関する文献
 平井宜雄『損害賠償法の理論』東京大学出版会(1971)
 浜上則雄「損害賠償における「保証理論」と「部分的因果関係の理論」(1)(2・完)民商
66巻4号(1972)3-33頁, 66巻5号35-65頁
 ベイズの定理の応用
 浜上則雄=加賀山茂「法医学者による血液型に基づく証明方法に対する批判と提案」
(上)(下)ジュリ650号(1977)95-101頁,ジュリ651号118-130頁
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Lecture on Obligation 2014
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