LCA講義全部 東北大学使用版

「変わりつつ有る地球へ」の対応
~人類は何で苦境に陥るか~
@花王“いっしょにeco”フォーラム2014
安井 至
(独)製品評価技術基盤機構理事長
東京大学名誉教授
国際連合大学元副学長
http://www.yasuienv.net/
1
:環境関係
ダボス会議の世界リスク2014
影
響
大
財政危機
気候変動
水関連リスク
失業
生態系の崩壊
情報システムインフラの崩壊
政治的社会的不安定性
異常気候
財政機構の崩壊
ガバナンス喪失
パンデミック
サイバーアタック 所得格差
自然崩壊
食糧危機
抗剤性
細菌
流動性危機
テロリスト
デジタル窃盗
環境破壊
国際紛争
資源・経済ナショナリズム
政治的腐敗
不適切な都市化
可能性大
2
「地球の破綻」を書きました
2012年12月刊
気候変動などの八人衆の専門領域
の未来像を議論し、執筆は個人的に遂行
 未来の地球が破綻する形はどのようなものか
 「21世紀版成長の限界検討会」の八人衆との共著


江守正多
川島博之
薗田綾子
原田幸明
馬場未希
藤野純一
松田裕之
森口祐一
国立環境研 気候変動リスク評価研究員
東京大学大学院農学生命科学研究科
(株)クレアン代表取締役
物質材料研究機構 元元素戦略グループ長
日経エコロジー副編集長
国立環境研 温暖化対策評価研究室
横浜国立大学 環境情報研究院 教授
東京大学大学院 工学系研究科 教授
3
リスクの大きな環境関連事象
ダボス会議の評価





気候変動
異常気象
水関連リスク
生態系の崩壊
自然崩壊

環境破壊
食料危機
資源経済ナショナリズム
不適切な都市化

財政危機



地球の破綻の記述
化石燃料が最大の原因







気候変動
生物多様性の喪失
金属資源の枯渇
化石燃料の枯渇
人口爆発と食料危機
環境汚染
対策費用の不足
4
「10万年の経済史」
by Gregory Clark, 2007
per capita Income
不思議な量 実は、十分な良い食物という量
Great Divergence
Industrial
Revolution
『マルサスの罠』
Malthusian Trap
1000BC 500BC
1
500
1000
1500
2000
過去12000年間の世界人口
7000
定
住
型
農
業
家
畜
の
労
働
力
灌
漑
技
術
の
発
明
鉄
器
の
発
明
6000
5000
20th C.
4000
3000
2000
19th C.
1000
0
-12000
-10000
-8000
-6000
BC
-4000
-2000
0
2000
AD
th C.
18
4000
Million
人口の増加の変曲点
食
糧
革
命
産
業
革
命
Year
20世紀の人口爆発の原因は
穀物単収(単位面積当たりの収穫量)の増加にある
フランスの小麦 出展 Michel & FAO
8
4
単収
(t/ha)
6
2
0
1800
1850
1900
1950
川島博之氏提供
2000
2050
Nitrogen Fixed Metric Tons
140,000,000
120,000,000
100,000,000
ハーバー・ボッシュ法
によるアンモニア生産
80,000,000
60,000,000
40,000,000
十分な食料は豊かさ
=> ヒトは1950年以降、
飽食を実現したが、
他の野生動物は、常に、
飢えている。
化学肥料
硫安
硝安
20,000,000
0
1940
1950
1960
1970
1980
1990
2000
2010
2020
ハーバー・ボッシュ法は、全エネルギーの1%を消費
9
IPCC AR5 WG3
エネルギー=CO2で何が起きた
一人あたりの
GDPの増大
10
なぜ我々はエネルギーを使いたがるか
その1 豊かな生活とは食料だった ⇒ 人口増加


答:その2 楽な生活をするため
多分、輸送。以前は歩くか馬。



ガソリン自動車: ガソリンエンジン(内燃機関)は
一つのエポックを作った。1885年にダイムラー
による特許。それまでの蒸気エンジン、電気
モーターを性能で凌駕。
1901年にはアメリカのテキサスで油田が発見さ
れてガソリンの安定供給開始。
1908年には、フォードがT型を発売した。大量生
産方式を採用し自動車の価格を引き下げ。
11
なぜ我々はエネルギーを使いたがるか その3



答:快適で便利な生活をするため
それには、電気に関する発明が大きい
=電力のみが可能にした快適性と利便性。
=主として、モーター。そして、ヒートポンプ。


洗濯機、掃除機、エレベータ、エスカレータ、冷蔵
庫、エアコン、、、、、、、
=主として、半導体デバイス・ディスプレイ。



テレビ、スマホ、通信機器、BD、、、、
低電力照明(LED)
本質的かどうか不明ながら、娯楽性も
12
最低、どのぐらいエネルギーが必要か
基礎値=ヒトの生存のためのエネルギー
 ヒトは、エネルギーを補給するために、毎日
食物を摂取 2000-2500kcal/日
 体内で酸化して、700-1000gCO2/日を排出
部位
エネルギー消 部位 の重量
費量 (%)
エネルギー消
(%)
脳
18
心臓
11
腎臓
7
肝臓
20
筋肉
20
皮膚
5
その他
重量 当 りの
19
費量(Kcal)
2
900
6
633
52
48
40
48
13
日本人の一人あたりCO2排出量
年間約10トン/人(産業を含む)
 家庭用だけなら、6.1kg/人日
=召使を6~8人ぐらい
使っている勘定に
なる。

エネルギーで、豊かで楽で
便利な生活ができる訳だが、
そう思っているだろうか?
『ライフスタイルを変える
ことができるだろうか』
14
Part2. 使えるエネルギーを作る
「元」となるのは3種類の一次エネルギー
15
3種類の一次エネルギー

ヒトが使える一次エネルギーは、たった3種。

化石燃料=石油、石炭、天然ガス




核燃料=もともと宇宙起源



樹林、植物、藻類などが起源
核融合
数1000万年から数億年前か
元は、かつて地球に降り注いでいた太陽エネルギー
超新星爆発
質量とエネルギーの変換によって作られた
E=mc2 (アインシュタインの式)
自然エネルギー


核融合
基本的に現時点の太陽エネルギーの利用
他の二種がストック型に対し、フロー型
16
地球のエネルギーフローとバランス
12000倍
崩壊熱、摩擦熱、
ジュール熱、残留熱
赤外線
エネルギー消費 15TW
崩壊:長寿命核種、ウラン、トリウム、カリウム40
CO2が
吸収
一部が
地球へ
2012年
原子力発電=暴力的危険人物
一見、魅力的な人物だが、本性を見せると暴力的危険人物



1.福島第一の事故のように、放射性物質を
まき散らす可能性 原因は様々
1’.隣国からの放射性物質の侵入
2.使用済み核燃料の処理・最終処分



もしも再処理をしなければ10万年
cf.現人類の歴史は20万年
3.増殖炉のシナリオがなければ、ウランは
資源的に不十分 ⇒ 遠い将来かもしれない
が、燃料の枯渇による高騰がありそう
18
火力発電の特性=地球を破壊する悪魔
見かけは普通の人間のように見えるが、実は、地球を破壊する悪魔





二酸化炭素をそのまま放出すれば、化石燃料を使う
限り気候変動を引き起こす
二酸化炭素は、炭素分離貯蔵(CCS)で処理するこ
とも可能だが、問題もある=場所がない、コスト
CCS設備を付けた装置によって褐炭から水素を製造
し輸入することが現実的か?
しかし、エネルギー輸入による貿易赤字の影響によ
って、破綻国家になるか? 2013年10兆円赤字
それなら、やはり自然エネルギーで置き換えることで
日本という国は安定化するだろう。
19
CO2排出量/年 MtonーC/Year
世界全体
工業国とその他
700GtC
350GtC
2080年
20
2080年
どちら?
どちらでもその後の
排出許容量はゼロ
現
在
IPCC AR5 WGⅠ
未来永劫成立する関係
21
Allowance of
Integrated Assessment Model
最善でもこれ?
IPCC AR5 WGⅠ
22
シェール革命???
天然ガスなら良いのか
エネルギー源
単位 発熱量kcal kg-CO2 g-CO2/kcal
一般炭(輸入炭)
kg
6,354
2.39
0.376
液化天然ガス
(LNG)
kg
13,019
2.77
0.213
ガソリン
L
8,266
2.38
0.288
1.77倍
1.35倍
◆石炭の変わりに天然ガスで発電しても効率が同じ
ならば、CO2量は44%削減にしかならない。
◆自動車の燃料として、ガソリンの代わりに天然ガス
という選択肢もなさそう。レンジエクステンダー用なら可??
◆日本に「シェール革命」は無関係 パイプラインが無いから
◆しかし、いずれ、天然ガスもCCSが必要に!
23
自然エネルギー=気まぐれな浪費家
いかにも善人を装うが、実は、気まぐれな浪費家

不安定な自然エネルギーの過剰導入



今後の開発の見通しが暗い



電気代上昇
1.5兆円分/年
海洋エネルギー 社会制度
地熱 過剰規制?
不安定性への認識


太陽光発電 すでにFITの支払い30兆円分
風力発電
安定な電力が必須=『認知バイアス』
適地が遠い 北海道、東北、九州

直流送電網建設のコスト
24
再生可能エネルギー
必要な対応の準備不足リスク


地熱などから実用化する配慮不足
長距離直流送電技術







九電力体制では不必要だった
電力を不安定なまま使う技術
ダイナミックプライシング 価格が変動する
所有者不明の森林のバイオマス
漁業権と海洋エネルギー開発の整合性
地中熱の自治体(下水道)の認識
天然ガスの分散型利用を無視
25
第四のエネ源:省エネ
省エネ技術を極限まで活用


日本のさらなる省エネはかなり難しい
北海道の冬でも、エアコン暖房を可能に



都市部での冬に、下水の熱をヒートポンプで
くみ上げて使用


地中熱をヒートポンプの熱源に活用
河川水も同様に
都市排熱・地中熱の活用
二国間クレジットによる途上国の低炭素化

日本の7~8年前の技術を移転することで、アジ
ア、アフリカの国々の省エネ・低炭素化を支援
26
日本の技術で海外で省エネ=国際貢献
27
第五のエネ源:ライフスタイル
CO2排出の要素分解式
満足サービス
Service Satisfaction
低炭素エネルギー源
省エネ
Energy Saving LowーC E. Resources
28
米国、Opowerというベンチャー



Smart Meter(電力消費量がインターネットで分かる)
を活用して、人々の行動を変えることで、省電力を実
現している会社。
カリフォルニア州のPG&E(電力・ガス会社)等と提携
方法





気温などから、消費量の増加を予測
もし、増加が大と予測された場合には、消費者にメール
「明日、11時から14時までの消費量をXX以下に抑えて貰
えたら、ご褒美として、8ドル差し上げます」
XXは、その家の実績を用いて、Opowerが適切な値を提案
cf.日本流:「明日の11時から14時には消費電力が
増大するので、電力単価が2倍になります。。。。」
29
温室効果ガスの放出によって、
どのような気候変動が起きているか
さらに異変が加速することは何か
1.強い台風が多発する
2.ブロッキング高気圧の影響
3.降水量の変化
30
思考停止をしている日本を完全停止させたい?

エコノミスト誌が報じた温暖化の「停滞」
2000年以降、地球の平均気温が余り上昇していないのは事実

国際環境経済研究所主席研究員

http://www.gepr.org/ja/contents/20130415-02/



「東京大地震研究所が、地中に埋まっていたコンク
リート構造物を地震の際にできた石と誤認していた
として、これを「活断層を確認した」としていた見解を
撤回するという出来事があったが、事程左様に科学
とは万能ではないのである」。
単なる思い込みによるミスと気候変動予測の不確
実性を同じレベルで議論して良いのだろうか。
典型的「環境経済相反型認知バイアス」ではないか
31
ハイエイタス Hiatus
2000年ぐらいから、気温は余り上昇していない。
32
計算値



観測値
地球が溜め込んでいるエネルギーは増え続けて
いると考えられる。
大気よりも海洋にエネルギーが吸収されていると
考えられる。
水温の上昇に異常が見られる。
http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2013/20130718.html
33
海水温度の年比較
2013年9月1日
「秋」が消える
台風大型化
2012年9月1日
2014年9月1日
34
2014年9月1日の海面水温by気象庁
http://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/kaikyo/daily/sst_jp.html
35
中緯度の気候はどう決まる 「大気の循環」
北へ移動
気温上昇
偏西風が
蛇行する
=
これが
中緯度に
おける
気候変動
の一つ
36
2010年の夏 モスクワの猛暑=6月26日に32.4℃
2012年のNY ハリケーン・サンディ
 偏西風の蛇行
 ブロッキング高気圧という現象
Hurricane Sandy
高気圧
被害総額6兆円
地下鉄1週間後にも2割不通、停電復活に1ヶ月
37
2014年1月~3月の気温の変化
http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/longfcst/extreme_japan/
北
風
三寒四温
とは違う事象
南
風
38
降水量の変化の将来予測
陸地は海よりも暑くなる。回帰線の間が暑くなる。
減少
増加
39
今世紀末までの大局観
大目標は、
持続可能性よりは定常状態の達成
1.世界人口を微減状態に
2.「一人あたりの地球への負荷
=地球の回復力」を達成
40
地球の定常状態の実現




自然エネルギーへ 化石燃料はCCSでも枯渇
核燃料 やはり枯渇する(汚染は論外)
廃棄物(CO2、核燃料) 地球の処理能力内
物質資源 すべて有限 「再生をする」


再生可能資源



金属・鉱物資源 →自然エネで丁寧リサイクル
生物資源
淡水資源
再生速度の範囲内で使用
再生速度の範囲内で使用
環境資源(生態系)

各種環境維持機能 かなり脆弱、保全が必要
41
22世紀までの世界での
一人あたりのCO2排出量・エネルギー
標語:ほぼ自然エネルギーだけの2100年
一人あたり
エネルギー半減
120
化石燃料からのエネ
=10%ぐらい
原子力(含む廃棄物処理)
=5%ぐらい
100
80
%
CO2排出量
60
化石燃料(CO2はCCSでも削減)
40
自然エネルギー
原子力
20
0
1980
2000
2020
2040
2060
2080
2100
2120
2140
2160
2180
42
結論

対応すべき地球環境問題はほぼ2種類



鉱物資源は、気候変動&生物多様性との関係で
配慮=具体的には3R できるだけ水平リサイクル


気候変動 含む 淡水供給問題 土地の冠水
生物多様性 最悪のシナリオを早く見つける
ただし、鉄に限り、今世紀中は土木・建設用ニーズがあ
るのでカスケードリサイクルで良い
とりあえず持続可能社会へは3種の対応で


1.イノベーション
2.社会システム変更



ソフトロー=ISO26000など for Global Company
ハードロー=??? 個人的には国際環境連帯税
3.ライフスタイル変更
43