国際収支と為替相場の基礎的概念 MBA国際金融2015 1 国際金融への視点 • 国際金融は時間軸と通貨軸のマトリックスで考 える。 ①時間軸⇒金融取引:将来に関する不確実性(= 金融リスク) ②通貨軸⇒外国為替取引:為替相場 ①と②が結合して、国際金融にとって外国為替リ スクが重要。 MBA国際金融2015 2 外国為替リスクとは • 外国為替リスク:予想将来為替相場から実現さ れた為替相場が乖離すること。 • その乖離は、円高方向もあれば、円安方向もあ る。 • 為替リスクの尺度: ①分散(=平均値から乖離の二乗の平均値) ②標準偏差(=分散の平方根) MBA国際金融2015 3 確率 標準偏差 ‐5円/ドル +5円/ドル 平均値・期待値 (110円/ドル) 為替相場 MBA国際金融2015 4 為替エクスポージャーと外国為替リスク 資産 負債 ドル建て資産 120円/ドル (120円/ドル) ハイパワードマネー 円建て負債 円建て資産 資本金 MBA国際金融2015 5 為替エクスポージャーと外国為替リスク 資産 負債 ドル建て資産 (115円/ドル) 100円/ドル ハイパワードマネー 円建て負債 円建て資産 資本金 円高によって外貨建て資産の円建て評価額が減少 MBA国際金融2015 6 外国為替リスク管理 • ナチュラル・ヘッジング(マリー等) ⇒バランスシートの調整 • 金利スワップ ⇒バランスシートの調整 • 金融派生商品の利用(先物、フューチャー、オプ ション) ⇒将来の為替相場の確定 MBA国際金融2015 7 ナチュラル・ヘッジング 資産 負債 ドル建て資産 120円/ドル (120円/ドル) ドル建て負債 120円/ドル (120円/ドル) 円建て負債 円建て資産 資本金 ドル建て資産相当額のドル建て負債を保有。 MBA国際金融2015 8 ナチュラル・ヘッジング 資産 負債 ドル建て資産 (115円/ドル) 100円/ドル ドル建て負債 (115円/ドル) 100円/ドル 円建て負債 円建て資産 資本金 ドル建て資産相当額のドル建て負債を保有。 MBA国際金融2015 9 金利スワップ 資産 負債 ドル建て資産 (120円/ドル) 120円/ドル 円建て負債 円建て資産 資本金 円建て資産 ドル建て負債 (120円/ドル) 120円/ドル ドル建て資産相当額のドル建て負債と円建て資産をスワップ。 MBA国際金融2015 10 金利スワップ 資産 負債 ドル建て資産 (115円/ドル) 100円/ドル 円建て負債 円建て資産 資本金 円建て資産 ドル建て負債 100円/ドル (115円/ドル) ドル建て資産相当額のドル建て負債と円建て資産をスワップ。 MBA国際金融2015 11 先物取引による為替ヘッジ (先物ドル買いのケース) 損益 将来直物相場-先物相場 0 先物相場 (120円/ドル) MBA国際金融2015 将来直物相場 12 先物取引による為替ヘッジは事前的リスク管理 • 先物取引による為替ヘッジは事前的な為替ヘッジで あって、事後的な為替ヘッジとはならない。 ケース:日本航空 1985年:10年後に航空機を購入するための為替ヘッジの ために、当時の相場(200円/ドル)で10年物先物契約を 結ぶ。 1995年:直物相場が80円/ドルにまでドル安。 ⇒事前的には為替ヘッジとなっていたが、事後的には航 空機購入に円建てで2倍以上のコストを要した。 MBA国際金融2015 13 オプション取引による為替ヘッジ (コール・オプションのケース) 損益 将来直物相場-行使価格-プレミアム 0 将来直物相場 -プレミアム 回避された損失 行使価格 (120円/ドル) 110円/ドル MBA国際金融2015 14 オプション取引による為替ヘッジは事前的・ 事後的リスク管理 • オプション取引による為替ヘッジは事前的かつ事後 的なリスク管理。 • 事後的なリスク管理に見合ったプレミアム(手数料)を 支払わなければならない。 • 裁定取引によって、マーケット全体から見れば、先物 取引のメリットとオプション取引のメリットの相違に見 合った手数料の相違が発生する。 ①先物取引:低コスト+事前的リスク管理 ②オプション取引:高コスト+事前的・事後的リスク管理 MBA国際金融2015 15 国際金融と外国為替 国内金融取引 国際金融取引 国内商取引 外 国 為 替 取 引 MBA国際金融2015 国際商取引 16 国際収支と外国為替取引の関係 • 生産物(財・サービス)の国際取引→外国為替 取引 • 生産要素サービスの国際取引→外国為替取引 • 資本の国際取引→外国為替取引 MBA国際金融2015 17 財・サービスの国際取引と外国為替取引 • 輸出 ↓ • 輸出代金(ドル)を円に 交換 • 【ドル売り円買い】 ↓ 輸出=外貨供給 • 輸入 ↓ • 輸入代金(ドル)のた めに円と交換 • 【ドル買い円売り】 ↓ 輸入=外貨需要 財輸出と財輸入の差=外貨需給 MBA国際金融2015 18 生産要素サービスの国際取引と外国為替取引 • 利子受取 ↓ • 受取利子(ドル)を円に 交換 • 【ドル売り円買い】 ↓ 利子受取=外貨供給 • 利子支払 ↓ • 支払利子(円)をドル に交換 • 【ドル買い円売り】 ↓ 利子支払=外貨需要 利子受取と利子支払の差=外貨需給 MBA国際金融2015 19 資本の国際取引と外国為替取引 • 資本輸入(対内投資) ↓ • 資本(ドル)を円に交換 • 【ドル売り円買い】 ↓ 資本輸入=外貨供給 • 資本輸出(対外投資) ↓ • 資本(円)をドルに交 換 • 【ドル買い円売り】 ↓ 資本輸出=外貨需要 資本輸入と資本輸出の差=外貨需給 MBA国際金融2015 20 国際収支表 • 経常収支:生産物(商品・サービス)と生産要 素サービスの国際取引 • 貿易収支:生産物(商品)の国際取引 • サービス収支:生産物(サービス)の国際取引 • 第1次所得収支:生産要素サービスの国際取 引 • 金融収支:資本の国際取引(直接投資、証券 投資、金融派生商品、その他投資(銀行預 金・融資)、外貨準備) MBA国際金融2015 21 国 際 収 支 表 の 構 成 MBA国際金融2015 22 図1:日本の経常収支の動向 MBA国際金融2015 23 日本の経常収支の構造変化 • 2007年以前:貿易収支黒字⇒経常収支黒字⇒資本 輸出(=金融収支黒字)⇒対外資産累積⇒第一次 所得収支黒字 • 2005年に、第一次所得収支黒字が貿易収支黒字を 上回る。 • 2008年以降:世界金融危機による世界不況と超円 高によって貿易収支悪化。さらに、2011年東日本大 震災の影響を受けて、貿易収支赤字へ。2013年後 半には経常収支赤字に。2014年以降経常収支黒字 へ回復。 24 MBA国際金融2015 為替相場の種類 • 二国間為替相場vs.実効為替相場 (1) 二国間為替相場:2つの国の通貨間の交換比率 (2) 実効為替相場:ある特定国の通貨の価値(通常は、 貿易相手国通貨の加重平均値) • 名目為替相場vs.実質為替相場 (1) 名目為替相場:通貨と通貨の交換比率(1ドル=S円) (2) 実質為替相場:通貨の実質的価値の交換比率 (1ドル/(P*ドル/個)=S円/(P円/個) ⇒1ドル=(S×P*)/P円) MBA国際金融2015 25 図2:名目二国間為替相場(円/ドル) MBA国際金融2015 26 図3:実効為替相場(円) MBA国際金融2015 27 為替相場の基本要素 • 財・サービスの国際取引 • 資本の国際取引 ↑ ↑ • 商品裁定 • 金利裁定 ⇒購買力平価 ⇒金利平価 • 為替相場決定の基本は、購買力平価と金 利平価である。 MBA国際金融2015 28
© Copyright 2024 ExpyDoc