スライド 1

資料2
ガイドライン改訂後の合併審査
について
平成19年1月31日
経済産業省
1-1.市場画定の考え方
○ 国内市場画定を原則とする記述は廃止。 国境を越えて市場画定を行うことを明確化。
(国境を越えて市場画定が行われる場合)
① 国内外の制度上・輸送上の条件に差異が少ない
※ただし、輸送費等が大きくても人件費などで相殺可能
② 国内外の商品の代替性が高い
③ 国際的な価格指標が形成されている
【国境を越えた市場画定が検討されうる例(経団連資料参考)】
(例:薄型TV〔37インチ以上〕)
世界市場
日本市場
(例:電磁鋼板)
A社 17%
日本市場
A社 55%
アジア市場
A社 21%
A社 27%
HHI:2395
HHI:862
HHI:4070
HHI:1325
【欧米において国際市場画定が行われた事例】
・航空機エンジン市場 (GE-Honeywel, 2001)
・ソフトウエア市場 (Oracle-People Soft, 2004)
・露光計市場 (Konica-Minolta, 2003)
・酢酸市場 (Blackstone-Acetex , 2005)
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1-2.市場画定の考え方
○ 商品範囲の画定に際しては、需要者の購買行動のみならず、供給者の代替性も考
慮されることを明確化。
(供給の代替性が考慮される場合)
① 供給者が製造・販売を変更する際に、多大な追加的費用やリスクを伴わない。
② 供給者が短期間(1年を目途)に製造・販売を変更しうる。
【例:製紙業界】
(需要者の購買行動で判断する場合)
コート紙
軽量コート紙
上級印刷用紙
微塗工印刷用紙
(供給者の代替性も考慮し商品市場を捉える場合)
コート紙
軽量コート紙
雑誌用紙市場
(Magazine Paper)
上級印刷用紙
微塗工印刷用紙
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2.輸入増加の競争圧力に係る基準が明確になる
○ 現行基準の整理統合、具体的例示の追加など、潜在的な輸入圧力の評価方法を明
確化。
○ 評価の対象となる期間を明示(原則2年以内)。
(現行ガイドライン)
以下の8項目を羅列し、総合的に考慮。
①輸入量の推移や輸入品・国内品の価格差と輸入量
の増減との関係
②価格・品質等の面における輸入品の競争力の程度
③物流・貯蔵設備の問題やいわゆる使い慣れ等の問
題の有無
④主な需要者の輸入品を使用した経験の有無
⑤海外における有力な事業者の存在等による輸入の
蓋然性や当該事業者の数
⑥輸出国の需給状況
⑦輸入品、輸出品及び国内品の価格形成の要因や
価格差の程度
⑧関税その他の輸入に係る税制や法制度上の規制
の状況等
(改訂ガイドライン)
1.制度上の障壁の程度
・関税、法制度上の規制が存在しない
・近い将来制度上の障壁が除かれる予定がある
2.輸入に係る輸送費用の程度や流通上の問
題の有無
・輸送費用が低く、流通上の問題がない
・現在、相当量の輸入品が入っている
3.輸入品と当事会社グループの商品の代替
性の程度
・内外の商品の代替性が高い
・国内価格上昇時に輸入が増加した実績がある
4.海外の供給可能性の程度
・十分な供給余力を有している
・日本向け輸出の具体的計画がある
・価格が上昇すれば日本に仕向地を変更する海外
事業者が存在する
・海外に比べて国内の商品価格が高い
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3.需要者の購買圧力の評価手法が明確になる
○ 大型量販店、総合メーカーなど価格交渉力のある需要者を考慮することを明確化。
(需要者の価格交渉力の考慮要素)
①需要者間の競争状況
・需要者の商品市場の競争が活発な場合
②取引先変更の容易性
・大規模量販店のように取引規模が大きく複数調達をしている場合
・需要者が電子商取引により供給者を選択している場合
・需要者が供給者の商品を容易に内製化できる場合
・需要者が当該商品以外の取引商品を容易に変更できる場合
【欧米において需要者側の価格交渉力が評価された事例】
○ 欧州 P&G - Gillette[2005年]
(電動歯ブラシ市場、シェア70~80%)
当該製品の購買者である、カルフール、ウォ
ルマート、メトロなど大規模小売業者は巨大な
財務力を有し、常にサプライヤーの価格を見
比べているため、価格交渉力を有している。
○ 米国 Whirlpool - Maytag[2006年]
(洗濯機市場、シェア70~80%)
当該製品の購買者である、シアーズ、ホー
ムデポ、ベストバイ、等の大型家電店が合併
当事会社に対して価格交渉力を有している。
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4.効率性の評価手法が明確になる
○ 合併による効率化がもたらす需要者の厚生増大の程度を考慮要素とする。
(効率性向上が評価されるための3条件)
①合併固有の効率性向上であること
②効率性の向上が実現可能であること
③効率性の向上により需要者の厚生が増大するものであること
(例)環境対応能力の向上など研究開発の効率化等を通じてその成果が需要者に還元される場合など
【米国独禁法現代化委員会※における効率性に対するコメント】
○革新的製品の開発など、イノベーションを促進
するような効率化については評価すべきである。
○合併によって製品開発が促進され、より効率
的に商品化を実現することで需要者にメリットが
生じる可能性を認識すべきである。
○合併による効率化の効果と反競争的効果を比
較できるのと同様にイノベーション効果について
も比較可能である。
(※)法律に基づき本年4月までに独禁法の現代化について議会・大統領に
報告することとされている(Antitrust Modernization Commission )。
【米国において効率性の向上が評価された事例】
○SBCによるAT&T買収、VerizonによるMCI買収(2005年)
当該合併により、競争が実質的に制限されるとしつつも、互
いに補完的な事業を行っていた企業同士が合併することで
効率性が向上し、顧客により安い価格でサービスを提供する
ことが可能となる。
○WhirlpoolとMaytagの合併(2006)
当該合併により、洗濯機市場において、高い市場シェアを有
することとなるが、GEなど競争者からの圧力やLGやサムス
ンなどからの参入圧力が存在するとともに、コスト削減により
効率性が向上し、消費者利益に繋がると判断。
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5.問題解消措置の選択肢の追加
○ 市場の競争状況に合わせた問題解消措置が可能になる。
(問題解消措置に係る変更点)
①イノベーションが活発な市場においては行為的措置(ライセンス供与など)が有効であることを明示
②合併後も継続する行為的措置に対して、競争状況に応じて終了できる、“サンセット”規定を新設
③問題解消措置の選択肢を拡大(業務提携解消、共同資材調達制限等)
【イノベーション市場における問題解消措置の事例】
○合併を認めた上で市場をモニタリングする
・NTL-Cable & Wireless Communications(電気通信市場、1999年)
NTL(あるいはケーブル産業全体)が将来市場支配力を持ち、需要者に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、規制当局が
レメディを講じるという条件を付けた上で、合併を認める。
○合併を認めた上で競争者の動向如何で判断する
・Glaxo・Welcome-Smithkline Beecham(慢性閉寒性肺疾患の研究開発市場、2000年)
競合他社の開発している二次処方用のパイプライン薬が失敗した場合には、スミスクライン・ビーチャム社の「Ariflo」を他社に
ライセンスするという条件を付した上で、合併を認める。
○時限的問題解消措置(3年)という条件付きで承認
・Vodafone Airtouch-Mannesmann(携帯電話サービス市場、2000年)
VodafoneとMannesmannの統合後ネットワークを競合他社が利用できるようにするため、アクセス権(3年の時限付き)を
Vodafoneが保障することを条件に合併を認める。
(参考)OECD(“Merger Review in Emerging High Innovation Markets(2003)”)
イノベーション市場においては、必ずしも構造的措置(事業分割等)が優先す
るわけではなく、行為的措置(ライセンシング、アクセス契約等)を高度にカス
タマイズしつつ、必要であれば分離も行うという措置が望ましい。
(参考)ICN(”MERGER REMEDIES REVIEW PROJECT(2005)”)
「特定の期間後にその措置が妥当でなくなった場合には、速やかに解
消できるよう、期限を設けて問題解消措置を課すことが望まれる。」
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6.事前相談手続の明確化
○ 事前相談ガイドラインの改訂ポイント
・事前審査に必要な提出資料(必須資料&任意資料)を明確化。
・公正取引委員会は、当事会社から資料が提出された日から20日以内に不足資料について書面で提示。
・上記資料が提出された日を事前審査の起算日とすることを明確化。
・公正取引委員会は、独禁法上の問題点の根拠を提示する一方、当事会社は、審査中どの時点において
も意見書が提出できることを明文化。
(事前相談期間)
現行
ガイドラインに基づく
事前相談開始
実質上の
相談開始
☆ 6ヶ月近く要する場合あり
公取委からの資料要求
等への対応期間
(期間の規定・目安なし)
改訂
問題があれば詳
細審査に移行
30日※
<書面審査>
事前相談
終了
★20日以内
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問題があれば詳
細審査に移行
<一次審査>
報告、情報、資料の
提出を求めた場合、
期間延長
排除措置等の通知
期限(15条第5項)
90日※
30日
独禁法15条第4項
に基づく待機期間
(事前相談期間)
30日※
★不足資料がない場合は
その旨の通知日で起算
合併等の
届出
90日※
<詳細審査>
事前相談ガイドライン
で明示されている期間
★不足資料がある
場合は、20日以内 ★追加資料提出が
あった時点で一次
に書面指示
審査30日を起算
★提出すべき必須資料
と任意資料を具体的に
ガイドライン中に明記
(法定手続期間)
(法定手続期間)
事前相談
終了
合併等
の届出
90日※
報告、情報、資料の
提出を求めた場合、
期間延長
30日
排除措置等の通知
期限(15条第5項)
90日※
<二次審査>
独禁法15条第4項
に基づく待機期間
★ 当事会社は、審査中のどの時点においても意見書等を提出できる。
★ 公取委は独禁法上問題がある旨指摘する場合には、当事会社に判断根拠を示す。
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7.セーフハーバー、「おそれの小さい範囲」
○ 過去の審査実績を踏まえ、セーフハーバー(通常詳細審査が不要な範囲)、「おそれ
が小さい範囲」を適正化。
【市場シェア・HHI基準と審査実績】
(平成13~17年度:全178件)
【現行】
通常問題とならないと
考えられる
・10%以下
・25%以下
+1000未満
通常おそれは小さいと考えられる
(単独行為のみ対象)
・25%以下+1800未満+10%*1
・35%以下+1800未満+10%*2
・Δ100未満
3件
その他
45
45件
130件
問題点指摘:22件
2%
27%
【改定案】
47%
通常問題とならないと
考えられる
・1500以下
・2500以下+Δ250以下
・2500超 +Δ150以下
30%
通常おそれは小さいと考えられる
35%以下+2500以下
その他
54件
30件
94件
問題点指摘:2件
問題点指摘:20件
20%
(36件)
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7.セーフハーバー、「おそれの小さい範囲」
○ 過去の審査実績について、シェア毎のシロ・クロ比率を継続的にHPで公表。
【審査実績に係る公開情報の大幅な拡充】
①過去の審査実績のシェア水準に応じたシロ・クロ比率
(参考)
シェア
0~35%:シロ比率98%
シェア 35~50%:シロ比率85%
シェア
50%超:シロ比率60%
(過去5年間実績)
②公表事案についてのHHIに関する遡及的な分析情報の充実
③非公表事案についての件数情報等の公開充実
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<参考:HHI(ハーフィンダール・ハーシュマン・インデックス)について>
○HHIとは、市場構造(寡占の度合い)を表すものとして、企業結合審査で広く利用されている指標。
全事業者のそれぞれの市場シェアを2乗したものを合計して算出。
○HHI=(a+b)2+c2+d2・・・
※(A社(a%)とB社(b%)が合併する場合)
○HHI水準のイメージ
<7社いる市場>
<6社いる市場>
<5社いる市場>
<4社いる市場>
14.3%
14.3% 14.3%
16.7%
16.7%
20%
20%
25%
25%
14.3% 14.3%
16.7%
16.7%
20%
20%
25%
25%
14.3% 14.3%
16.7%
HHI:1429
16.7%
HHI:1673
1500
合併後HHI
20%
HHI:2000
HHI:2500
2500
合併前HHI
○HHI増分=((a+b)2+c2+d2・・・)-(a2+b2+c2+d2・・・)=2ab ※(A社(a%)とB社(b%)が合併する場合)
例えば、a社、b社のシェア合計が50%の場合、
a=40%, b=10% HHI増分800
同じ市場シェアでも、HHI増分値は異なる。
a=25%, b=25% HHI増分1250
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