株式会社カクダイ及び株式会社ナスカに対する審決について (携帯電話端末の電波の受信状態が向上すること等を標ぼうする商品に係る不当表示事件) 平成22年1月22日 公 正 取 引 委 員 会 公正取引委員会は,被審人株式会社カクダイ及び同株式会社ナスカ(以下,2社を併せ て「被審人ら」という。)に対し,それぞれ審判手続を開始し,審判官をして審判手続を 行わせてきたところ,平成22年1月20日,被審人らに対し,独占禁止法第66条第2 項の規定に基づき,被審人らの審判請求を棄却する旨の審決を行った(本件平成21年 (判)第4号及び同第5号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」 及び「審決等データベース」参照。)。 1 被審人らの概要 事 業 者 名 所 在 地 代 表 者 株式会社カクダイ 埼玉県川越市喜多町1番地4 染谷 清文 株式会社ナスカ 大阪市淀川区西中島六丁目9番20号 後藤 晃 2 被審人らの審判請求の趣旨 被審人株式会社カクダイ(以下「被審人カクダイ」という。)に対する平成21年 (排)第17号排除命令及び被審人株式会社ナスカ(以下「被審人ナスカ」という。) に対する同第20号排除命令(以下,各排除命令を「原処分」という。)の全部取消 しを求める。 3 主文の内容 被審人らの各審判請求をいずれも棄却する。 4 本件の経緯 平成21年 3月 9日 排除命令 4月 7日までに被審人らから審判請求 5月19日 各事件につき審判開始を通知 7月 7日 被審人カクダイにつき第1回審判 7月14日 被審人ナスカにつき第1回審判(審判手続終結) 8月 7日 被審人カクダイにつき第2回審判(審判手続終結) 11月14日までに各事件につき被審人らに審決案送達 11月27日 被審人カクダイから審決案に対する異議申立て 平成22年 1月20日 各事件につき審判請求を棄却する審決 問い合わせ先 ホームページ 公正取引委員会事務総局官房総務課審決訟務室 電話 03−3581−5478(直通) http://www.jftc.go.jp 1 5 審決の概要 (1) 違反行為の概要等 公正取引委員会は,被審人らが販売する「バリ5」(被審人カクダイが販売)及 び「復活くん」(被審人ナスカが販売)と称する商品(以下,併せて「本件商品」 という。)を販売する際に,本件商品が携帯電話等のアンテナとして機能すること によって,携帯電話等の電波の受信状態が大幅に向上するかのように,携帯電話等 を使用できる時間が大幅に長くなるかのように,また,劣化した充電池の機能を再 生し充電池の交換までの期間が大幅に長くなるかのように示す表示(以下「本件表 示」という。)について,景品表示法(注)第4条第2項の規定に基づき,被審人ら に対し,期間を定めて,本件表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を 求めた。しかしながら,被審人らから提出された資料(以下「本件資料」という。) は,いずれも本件表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められ なかったことから,当委員会は,本件表示は一般消費者に対し,実際のものよりも 著しく優良であると示すことにより,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害する おそれがあると認められる表示とみなされ,同条第1項第1号の規定に違反すると して原処分を行ったものである。被審人らはこれを不服として審判を請求し,その 全部の取消しを求めた。 (注) 消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成21年法律第4 9号)附則第6条第3項ただし書の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の不 当景品類及び不当表示防止法をいう。以下同じ。 (2) 6 (1) (2) 本件の争点 ア 本件資料が合理的根拠資料に該当するか否か(争点1) イ 原処分が不当か否か(争点2) 争点に対する判断の概要 争点1について ア 景品表示法第4条第2項の立法趣旨にかんがみれば,同項所定の合理的な根拠 を示す資料(以下「合理的根拠資料」という。)とは,商品又は役務が表示に沿っ た効果・性能を有することを客観的に実証する資料をいうものと解するべきであ り,具体的には,結果の妥当性を担保できる適切な方法で実施された試験・調査 によって得られた結果又は当該商品又は役務が表示された効果・性能を有するこ とを示した専門家等の見解等であって,当該専門分野で一般的に認められている もの等がこれに該当するといえる。 イ 本件表示は,本件商品を携帯電話等に内蔵されている充電池の裏に設置して携 帯電話等を使用することにより,①本件商品が携帯電話等のアンテナとして機能 することによって,携帯電話等の電波の受信状態が大幅に向上するという効果・ 性能,②携帯電話等を使用できる時間が大幅に長くなるという効果・性能及び③ 劣化した充電池の機能を再生し充電池の交換までの期間が大幅に長くなるとい う効果・性能があることを一般消費者に認識させる表示であるが,本件資料は, いずれも,本件表示により一般消費者が認識する上記の効果を客観的に実証する ものといえず,合理的根拠資料に該当するとは認められない。 争点2について 前記(1)イのとおり,本件表示は,その合理的根拠資料の提出を欠くから,景品 2 表示法第4条第2項の規定により,同法第6条第1項の規定の適用を受ける範囲で, 同法第4条第1項第1号に該当するものとみなされる。よって,公正取引委員会は, 同法第6条第1項に基づき,被審人らに対し,その行為の差止め若しくはその行為 が再び行われることを防止するために必要な事項等を命ずることができる。 そして景品表示法第6条によると,公正取引委員会は排除命令を行うか否かの判 断につき裁量を有するところ,本件表示及び本件資料の内容等を踏まえても,原処 分を行ったことがその裁量を逸脱する不当なものであるとは認められない。 3
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