電磁気学C

電磁気学C
Electromagnetics C
6/3講義分
電磁波のエネルギーと運動量
山田 博仁
電磁波のエネルギー
1
1
媒質中の電磁場のエネルギー密度 u は、 u   E 2   H 2 で与えられるが、
2
2
E

電磁波の電場と磁場の大きさの間には

 Z の関係がある
H

1
1
従って、  E 2   H 2 つまり、電場のエネルギーと磁場のエネルギーは等しい
2
2
2
2
従って、電磁波のエネルギー密度は、 u   E   H で表せる。
電場も磁場も正弦関数的に振動している場合、
E  E0 sinkz  t 
H  H 0 sinkz  t 
また、E = v B, Z = μv (Z0 = μ0c )
の関係も成り立つことが分かる
u は時間的にも空間的にも変動するが、1周期 (T=2p/)について平均すれば、
1
1 T 2
 1
 u   E   sin (kz  t ) dt   E02   H 02
2
T 0
 2
平面電磁波の場合、E と H は電磁波の進行方向 k に垂直な平面内にあるので、
k
と表せる。従って、
Poyntingベクトル S は、 S  E  H  vu
k
1
1
 S  v  u  v E02  v H 02
2
2
2
0
2個の点電荷間に作用する力
運動している2個の点電荷を考えたとき、それらの間に作用する力は、作用・反作
用の法則を満たしているか?
q1
E2(z1) 1
v1
B2(z1)
m
z1 1
F1
v2
q2
F2
2
E1(z2)
m2 B (z )
1 2
z2
速度 v2 で運動している2番目の点電荷 q2 が、1番目の電荷の存在する位置 z1
につくる電場および磁場を、E2(z1), B2(z1)とすると、質量 m1 電荷 q1 の1番目の点
電荷の運動に対して以下の運動方程式が成り立つ
m1
dv1
 q1 E 2 ( z1 )  q1v1  B2 ( z1 )
dt
速度 v1 で運動している1番目の点電荷 q1 が、2番目の電荷の存在する位置 z2
につくる電場および磁場を、E1(z2), B1(z2)とすると、質量 m2 電荷 q2 の2番目の点
電荷の運動に対して以下の運動方程式が成り立つ
m2
dv 2
 q2 E1 ( z 2 )  q2 v 2  B1 ( z 2 )
dt
2個の点電荷間に作用する力
さて、それぞれの点電荷の電荷密度と電流密度は、
1 ( x)  q1 3 ( x  z1 )
i1 ( x)  q1v1 3 ( x  z1 )
2 ( x)  q2 3 ( x  z2 )
i2 ( x)  q2v2 3 ( x  z2 )
Coulombの法則より、
q
x  z1
E1 ( x)  1
4p0 x  z1 3
E2 ( x ) 
q2 x  z2
4p 0 x  z2 3
B2 ( x) 
0 q2 v2  ( x  z2 )
3
4p
x  z2
Biot-Savartの法則より、
B1 ( x) 
従って、
0 q1 v1  ( x  z1 )
3
4p
x  z1
m1
dv1 q1q2 z1  z2 0 q1q2 v1  (v2  ( z1  z2 ))


3
dt 4p0 z1  z2 3
4p
z1  z2
m2
dv2 q1q2 z2  z1 0 q1q2 v2  (v1  ( z2  z1 ))


3
3
dt 4p 0 z2  z1
4p
z2  z1
2個の点電荷間に作用する力
m1
dv1 q1q2 z1  z2 0 q1q2 v1  (v2  ( z1  z2 ))


3
3
dt 4p0 z1  z2
4p
z1  z2
m2
dv2 q1q2 z2  z1 0 q1q2 v2  (v1  ( z2  z1 ))


3
3
dt 4p 0 z2  z1
4p
z2  z1
上式は、各々の点電荷が他の点電荷からの力の作用の下で運動する時の運動
方程式。右辺第1項は、他の電荷からの静電力を表し、第2項は、他の電荷が作
る磁場内で受けるアンペールの力を表している。
上の2式の和をとると、
 qq
d
1
(m1v1  m2v2 )  0 1 2
[v1  (v2  ( z1  z2 ))  v2  (v1  ( z1  z2 ))]
3
dt
4p z1  z2
y
0
0
v2
従って、点電荷間の静電力は作用・反作用の法則を満たしているが、アンペール
の力はこれを満たしていない。このため、二つの点電荷の全運動量は保存しない。
x
v1
何故でしょう ?
z
z1 - z2
2個の点電荷間に作用する力
前の議論では、二つの点電荷の全運動量が保存しなかった。
即ち、二つの点電荷間で作用反作用の法則が成り立たなかった。その理由は ?
理由その1. 電磁場の運動量を考慮に入れていなかった
・ 外力によって点電荷が加速されると、その点電荷は電磁波を放射する
・ そしてその電磁波も、点電荷と同様に運動量 Ge.m. を持っている
・ 従って、電磁波の運動量をも考慮に入れてこそ運動量保存則が成立する
つまり、
d
(m1v1  m2 v 2  Ge.m.)  0
dt
理由その2. 自己場の影響を考慮に入れていなかった
・ E2(z1) や B2(z1) は、点電荷2が点電荷1の存在する位置 z1 に作る電場およ
び磁場
・ しかし、点電荷1自身も、点電荷1の存在する位置 z1 に電場および磁場を
作るはずであり、この影響をも考慮する必要がある
自己場と微分形式
二つの点電荷間に働く力の表し方
原点にある電荷 Q が、もう一方の点電
荷 q のある位置 r に作る電場 E(r)は、
一方、微分形式で書かれたMaxwell方
程式の、電場に関するGaussの法則は、
divE ( x ) 
E (r ) 
r
+Q
+q
Q
r
4p0 r 3
F
力
 e( x )
0
e(x) は位置 x での電荷密度
この電場 E(x) には、電荷 q による電場
(自己場)も含まれている
この電場の下で電荷 q に働く力 F は、
従って、電荷 q に働く力 F は、
F  qE (r )
この場合、電荷 q のある位置 r での電界E(r)
には、電荷 q による電界は含まれていない
F  qE (x)
となり、微分形式で表す方が自己場の
影響も正確に取り入れて扱うことがで
きる。
微視的体系における運動方程式
領域 V 内に多数の点電荷が存在しているとする
q1 m1
z1
i 番目の点電荷に対する運動方程式は、
領域 V
q3 m3
z3
q2 m2
z2
qj mj
zj
qi mi
zi
d 2 zi (t )
dzi (t )

3 
3
3
mi

d
x
q

(
x

z
(
t
))
E
(
x
,
t
)

q

(
x

z
(
t
))

B
(
x
,
t
)
i
i
i
V  i

dt 2
dt

  gradi V ( zi (t )  z j (t ))
i j
ここで、
V ( zi  z j )  G
mi m j
zi  z j
G: 万有引力定数
全点電荷に対して和をとると、
またこの場合の E(x, t),
B(x, t)は、各々の点電
荷による自己場を含ん
でいる
N
N
d N


3 
3
3 
3
m
v
(
t
)

d
x
q

(
x

z
(
t
))
E
(
x
,
t
)

d
x
q

(
x

z
(
t
))
v
(
t
)
 i i V 
i
i
i
i

 i
  B( x, t )

V
dt i 1
i 1

 i 1

N
N
  gradi V ( zi (t )  z j (t ))
i 1 i  j
0
万有引力に関しては、作用・反作用の
法則が成り立っているので
微視的体系における運動方程式
N
N
d N


3 
3
3 
3
m
v
(
t
)

d
x
q

(
x

z
(
t
))
E
(
x
,
t
)

d
x
q

(
x

z
(
t
))
v
(
t
)
 i i V 
i
i
i
i

 i
  B( x , t )

V
dt i 1
i 1

 i 1

代入
代入
N
3
div D( x, t )   qi ( x  zi (t ))
i 1
D( x, t ) N dzi (t ) 3
rot H ( x, t ) 
  qi
 ( x  zi (t ))
t
dt
i 1


d N
D( x, t ) 

 B( x, t ) 
すると、  mi vi (t )   d 3 x  E ( x, t )div D( x, t )   rot H ( x, t ) 

V
dt i 1
t 



ここでの電磁場は、点電荷系の自己場を含む
ベクトルの微分公式より、
ファラデーの電磁誘導の法則を用いると、

D
B
D
( D  B) 
 B  D

 B  D  rot E
t
t
t
t
従って、上式の被積分関数は以下のようになる。
D

E div D  rot H  B 
 B  E div D  B  rot H  D  rot E  ( D  B )
t
t
1

  0 ( E div E  E  rot E ) 
B  rot B   0 0 ( E  H )
0
t
微視的体系における運動方程式
d N
mi vi (t )   d 3 x[ 0 ( E ( x, t )div E ( x, t )  E ( x, t )  rot E ( x, t ))

V
dt i 1
1


B( x, t )  rot B( x, t )   0 0 ( E ( x, t )  H ( x, t ))]
0
t
N
ここで、
GM (t )   mi vi (t )
Ge.m.(t )   0 0  ( E ( x, t )  H ( x, t )) d 3 x
i 1
と置くと、
V
d
[GM (t )  Ge.m. (t )]   d 3 x 0 E ( x, t )div E ( x, t )  E ( x, t )  rot E ( x, t )
V
dt
1
3
B( x, t )div B( x, t )  B( x, t )  rot B( x, t )

d
x
なので 0
V
0
x 成分は、
0
( E div E  E  rot E ) x  E x div E  [ E y (rot E ) z  E z (rot E ) y ]
同様に、x 成分は、
 E E y E z 
 E E 
 E E 
  E y  y  x   E z  x  z 
 E x  x 

y
z 
y 
x 
 z
 x
 x
 1
1
1  

  E x2  E y2  E z2   ( E x E y )  ( E x E z )
x  2
2
2  y
z
( B div B  B  rot B) x 
 1 2 1 2 1 2  

B

B

B

(
B
B
)

( Bx Bz )
x
y
z 
x y

x  2
2
2  y
z
微視的体系における運動方程式
y 成分、z 成分についても同様に計算した後、以下のような行列を定義する。
 Txx( e ) Txy( e )
 (e)
 Tyx Tyy( e )
 T (e) T (e)
zy
 zx
 2 1 2
 Ex  E
(e)
2
Txz 


Tyz( e )    0  E y E x

(e) 
Tzz 

 Ez Ex

Ex E y
E y2 
1 2
E
2
Ez E y



E y Ez 


1
E z2  E 2 
2

Ex Ez
磁場に関しても同様に、
 Txx( m ) Txy( m )
 (m)
Tyy( m )
 Tyx
 T (m) T (m)
zy
 zx
すると、
 2 1 2
 Bx  B
2
Txz( m ) 


1 
Tyz( m )  
B y Bx

0
Tzz( m ) 

 Bz Bx

 0 ( E div E  E  rot E ) x 
1
0
Bx B y
1
B y2  B 2
2
Bz B y



B y Bz 

1 2
2
Bz  B 
2 
Bx Bz
( B div B  B  rot B) x
(e)
( m)
Txx( e ) Txy Txz( e ) Txx( m ) Txy
Txz( m )






x
y
z
x
y
z
微視的体系における運動方程式
y 成分、z 成分についても同様に計算すると、以下の式が得られる。
T
T
T
1
 0 ( E div E  E  rot E ) y  ( B div B  B  rot B) y  yx  yy  yz
0
x
y
z
T
T
1
T
 0 ( E div E  E  rot E ) z  ( B div B  B  rot B) z  zx  zy  zz
0
x
y
z
( e)
( m)
ただし、 Ti j  Ti j  Ti j と置いている。
この Ti j を要素とする行列は、電磁場におけるマクスウェルの応力テンソルと呼ばれている。
x 成分に関する上式の右辺を領域 V にわたって積分し、ガウスの定理を用いて
領域 V を囲む閉曲面 S 上の面積分に置き換えると、
 Txx ( x, t ) Txy ( x, t ) Txz ( x, t ) 
d
x
V  x  y  z 
3

n  (nx , ny , nz ) は、閉曲面S上の
単位法線ベクトル

  Txx ( x, t )nx ( x )  Txy ( x, t )n y ( x )  Txz ( x, t )nz ( x ) dS  Fx (t )
S
従って、
d
[G M (t )  Ge.m. (t )]  F (t )
dt
となる。
と表され、
F(t) は、領域 V 内に存在する点電荷系と電磁場に、外部から作用する電磁的な力を表す。
電磁場の運動量
この式の意味するところは、
d
[G M (t )  Ge.m. (t )]  F (t )
dt
点電荷系の全運動量
N
GM (t )   mi vi (t )
i 1
Ge.m.(t )   0 0  ( E ( x, t )  H ( x, t )) d 3 x
V
電磁場の全運動量
ニュートン力学的な力ではない
領域 V 内の点電荷系と電磁場に外部から作用する電磁力
これが、
点電荷系の電磁場に対する運動量保存則
従って、単位体積当たりの電磁場の運動量(運動量密度) g は以下の式で与えられる。
S ( x, t )
g   0 0 E ( x, t )  H ( x, t )   0 0 S ( x, t ) 
S(x, t) は Poynting ベクトル
c2
電磁場の運動量 Gは、
U は電磁場のエネルギー
1
U k
G   gdV    S ( x, t )  2  S ( x, t ) 
U   udV
V
V
V
v V
v k
電磁波の運動量と放射圧
電磁波は単位体積当たり、下記の式で与えられる運動量を運ぶので、電磁波が
物体に当たると圧力を及ぼす。これを放射圧と呼ぶ。
g   0 0 S ( x, t ) 
S ( x, t )
c2
電磁波は、この空間内に存在する電磁運動量を、波数ベクトル k の方向に波の
伝搬速度 c で運ぶので、単位面積あたり単位時間に物体に及ぼす放射圧 p は、
単位体積当たりの
電磁場の運動量 g
g
c
電磁波は、単位時間に c だけ進む
p
k
完全吸収のとき p 
S
c
完全反射のとき p 
2S
c
電磁場のエネルギーと運動量との関係
従って、電磁場のエネルギー密度 u と運動量密度 g との間には、以下のシンプルな
関係が成り立つ。
u vg
ところで、光は粒子(光子)としての性質も合わせ持っているので、古典電磁気学にお
ける電磁波のエネルギーとか運動量とかの概念は、光子のエネルギーや運動量と
いった概念で置き換えられる。即ち、光子はエネルギー E と運動量 p を持つ粒子で
あり、その間には、
E c p
c は光速度
というシンプルな関係がある。この関係は相対性理論の結果からも導かれる。
電磁波における重要な関係式
伝搬速度: v
f 
v

真空中の光速度: c 波長: λ 周波数: f 角周波数: ω 周期: T 波数: k
  2p f
T
電場(電界)ベクトル: E
インピーダンス: Z
1
f
k
2p



v
v
磁場(磁界)ベクトル: H
真空のインピーダンス: Z0

k 
1 
k 

E  Z  H  , H    E  
k
Z
k

電磁場のエネルギー密度: u
Z
1

c
1
0 0
波数ベクトル: k
電界振幅: |E|
E
H
 2.998108 m/s



Z0 
磁界振幅: |H|
0
 377 []
0
ポインティングベクトル: S
1
1
(E  D  B  H )
 ( E 2   H 2 ) (等方性媒質の場合)
2
2
k
S
EH
1
1
S  E  H  vu
u

 S  v  u  v E02  v H 02
k
v
v
2
2
u  ue  u m 
電磁場の運動量密度: g
g   S   E  H 
1
S
v2
u vg