(2)ヘッジファンド • ○ヘッジファンドの種類(運用戦略による分類) • ① – 割安株の買い持ち・割高株の売り持ち • ② – 市場間の価格格差から利益 – 類似証券の同時売買とレバレッジ:同一企業の転換社債 と株式、国債とモーゲージ債、原資産とデリバティブ • ③ – 企業の買収、合併、倒産等による証券の値動きを利用 • ④ – 世界中の投資対象にあらゆる戦略を用いて投資 • ヘッジファンドはパッシブ運用ではなく、アクティブ運用 1 ・為替の直物・先物格差を利用したアービトラージ(裁定)取引 直物・先物の格差は均衡では日米金利差分 e.g. 日米金利差3%(日本の金利安)、直物1ドル=100円、先物97円(1年先)なら均衡 現在直物100円、先物98円とすると、直物ドル割安、先物ドル割高。 直物ドル買い、先物ドル売りの裁定取引を行なう。均衡に戻った (or均衡の方向に動いた)時点で反対売買(直物ドル売り・先物ドル買い)する。 その後の為替レートの動き 直物 先物 ケース① 100円 97円 ケース②:ドル高方向に変化 101円 98円 ケース③:ドル安方向に変化 99円 96円 2 ・裁定取引の採算 直物取引 先物取引 合計 ケース① 100円売-100 98円売-97円 1円の利益 円買=0円 買=1円 ケース② 101円売-100 98円売-98円 1円の利益 円買=1円 買=0円 ケース③ 99円売-100 円買=-1円 98円売-96円 1円の利益 買=2円 為替がどう動こうが、必ず1円の利益を獲得できる。 3 ・北越製紙の株価の推移:7/24王子、北越へのTOB(860円)発表 8/29王子TOB敗北宣言 ・仮に、イベントドリブン型のヘッジファンドがTOB不成立を予想して 高値近辺で空売りを仕掛ければ、大きな利益が得られる。 4 ・ 日本銀行「ヘッジファンドを巡る最近の動向」05.7.p.29 5 ・市場全体の相場動向に左右されずに一定水準の収益率 (絶対リターン)を目指す運用 大塚明夫・神谷智『オルタナティブ投資』金融財政事情研究会 6 ・ヘッジファンド投資は株式投資より収益が安定している ヘッジファンドと株式との 収益率の比較 ヘッジファンドと株式との ボラティリティ(変動性)の比較 ・ 日本銀行「ヘッジファンドを巡る最近の動向」05.7.p.18 7 ・ヘッジファンドの投資家: ・ :機関投資家の増大、ヘッジファンド運営の組織化進展 U.K. Financial Service Authority 8 ・日本のヘッジファンド投資と投資家: 日本銀行「ヘッジファンドを巡る最近の動向」05.7.p.12 9 – としてヘッジファンド投資が有効 • 年金・財団等で として活用 – ヘッジファンド、不動産投信、私募不動産ファンド、 買収ファンド、ベンチャーキャピタル・ファンド、証券 化商品 • 年金のヘッジファンド投資は、ファンド・オブ・ ファンズ形式(複数のヘッジファンドへ分散投 資するファンド)が中心 • 日本の企業年金の代替投資:資産の7~8% 10 日本銀行「ヘッジファンドを巡る最近の動向」05.7.p.18 11 野村證券投資情報部編『証券投資の基礎』丸善 p.137 12 ○ヘッジファンドのアクティビスト化 – 株主還元策(配当増大、自社株買い)の要求、社外取締 役の受け入れ、経営改革(費用削減、部門・子会社売却) の要求、経営陣主導のM&Aへの反対 – ヘッジファンドの圧力により、マクドナルドは海外店舗の 整理・自社株買い、ファーストフードのウェンディーズは子 会社を上場 – 村上ファンドもアクティビスト・タイプのヘッジファンド • 背景: 13 ・近年のヘッジファンドの収益率低迷 日経金融06.5.29. 14 ○個人向けヘッジファンド型投信:日本 • 複数のヘッジファンドに投資する投資信託 (ファンド・オブ・ファンズ) – 各種の投資戦略のヘッジファンドに分散投資する のが普通 • 通常の投資信託であるが、絶対リターンを 狙って運用される – 投信名に「マーケット・ニュートラル」「ロング・ ショート」等が付いている • 背景:個人の資産運用ニーズ高度化に応え る代替投資商品の提供 15 日本 野村総研 Financial Information Technology Focus July 2006 16 ○ファンド資本主義 • 各種のファンドの群生 – 買収ファンド、ヘッジファンド、ベンチャー・キャピタル・ファ ンド、私募不動産ファンド、不良債権ファンド、メザニン・ ファンド、コンテンツ・ファンド、ファンド・オブ・ファンズ • ファンド群生の背景 – 世界的な金融自由化・金融のグローバリゼーション – 運用を求める投資資金の蓄積・活動性の高まり – 運用技術の高度化・運用対象の拡大、ファンドの持つ収 益機会への機敏な対応能力:投資家代理機能の強化 • 経済への影響 – リスク資金の供給、ガバナンスの強化・効率性の追求 – 経済取引・経済活動の視野が短期化する恐れ 17 ・運用を求める投資資金の蓄積 日米の家計金融資産保有推移:GDP比 倍 4.0 3.5 3.0 アメリカ 日本 2.5 2.0 1.5 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 1.0 18 第4章.ファンド資本主義:参考文献 • 越純一郎編『プライベートエクィティ』日本経済新聞 社2000 • 和田勉『買収ファンド』光文社新書2002 • 佐山展生「日本のM&A市場とバイアウト」『証券アナ リストジャーナル』2005.5. • 笹沼泰助「PE投資ファンドと企業再生」『証券アナリ ストジャーナル』2005.5. • ウィリアム・クレンド『ヘッジファンド&リスク』日本短 波放送2000 • 日本銀行「ヘッジファンドを巡る最近の動向」2005.7. • 光定洋介・白木信一郎『投資ファンドのすべて』金融 財政事情研究会2006 19
© Copyright 2024 ExpyDoc