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Centaurus 銀河団におけるプラズマのバルク運動
2006/11/06 雑誌会@サロン
銀河団
川埜直美
Abell 2199 のイメージ (5 kpc x 5 kpc)
・ 数100 ~ 数1000 の銀河の集団
銀河
: 可視光
銀河団プラズマ : X線
ダークマター
: X線、重力レンズ
・ 宇宙最大の自己重力系
可視光
X-ray
より小規模のシステム(銀河/銀河群)が衝突合体して進化
衝突合体後は ICM が非熱的な状態になる
・ 非一様な ICM 密度、温度
・ ICM の bulk motion
⇒ simulation : ICM の bulk flow ~ 1000 km/s (several Gyr)
もし ICM 中で bulk motion が起こっていると、
P
全重力質量分布 ⇒ 静水圧平衡を仮定して測定
thermal velocity ≪ bulk velocity
ICM
重力
P+ΔP
静水圧平衡が成り立たなくなり、非熱的圧力を考慮する必要
X線と重力レンズによる全重力質量の不一致を解決できる
(2-3)×MX ~ Mlense
bulk motion の有無は、銀河団の dynamics にとって非常に重要
どのようにして調べるか?
A2199
輝線のドップラーシフトを用いる
6.7 keV の Fe-K (He like)
Centaurus
エネルギーを正確に測定できれば OK
Fe-L
(CCD でも十分に議論が可能である)
Fe-K
Suzaku XIS
(4 CCD chip XIS0,1,2,3)
・ 55Fe 較正線源によりエネルギーの決定精度が高い
・ background が低く、Fe-K line 付近の感度がよい
⇒ 3つの表面照射型の XIS0,2,3 を用いて解析
・ ~2’ の空間分解能 ⇒ 数10 kpc スケールで議論
Suzaku XIS は、ICM の bulk motion の検出に有利である
55Fe
cal source
Centaurus 銀河団
A2199
Suzaku 2005/12/27-29 に3度の観測
(中心と中心から南北 8’ )
Centaurus
・ 近傍(z=0.0104)にあり、強い Fe 輝線放射
光子統計が良く、小さなスケールで
bulk motion の測定が可能
・ 周辺部で温度マップにムラ (hot spot)
Fe-L
Fe-K
offset2
⇒ merger の痕跡か
・ Chandra (ASCA) 衛星の観測から
bulk motion が見つかっている
center
offset1
Chandra による bulk motion の観測 (Dupke & Bregman 2006)
中心
R+3
R-2
PEAK+
PEAK8 arcmin
各領域でスペクトルフィットし、Fe line のピーク位置のズレを測定
bulk velocity gradient
(2.3 ± 1.1)×103 km/s @ R-2 ⇔ R+3
(2.9 ± 0.7)×103 km/s @ PEAK- ⇔ PEAK+
CCD chip 間のエネルギースケール違い、その経年変化が考慮されていない
他の観測による cross confirmation が必要
XIS のエネルギー決定精度
1000 km/s の bulk motion の検出するには、
22 eV の輝線シフトを測定しなければいけない
center+offset2
(a) peak energy
機上の構成線源 55Fe (Mn Kα : 5.895 keV)
ピークは3観測、XIS0,2,3 間で < 0.1 % で一致
center+offset1
(b) 観測領域による peak energy の位置依存性
3観測の overlap した領域を比較 : < 0.1 %
(c) ゲインの位置依存性
荷電粒子による放射線損傷により時間的にも変化する
Centaurus 観測時期の XIS0,2,3 間のゲインの違い : < 0.2 %
XIS エネルギースケールの系統誤差は、±0.13 % (1 sigma)
⇒ ± 10eV, ± 470 km/s
Fe-K 輝線の解析
2.1’×2.1’ (28×28 kpc) の 52 セルに分割し、
各セルでスペクトルフィッティング
model : 熱制動放射 + 3 つの gaussian
① He like Fe Kα (6.70 keV)
② H like Fe Kα (6.97 keV)
③ He like Ni Kα (7.80 keV)
+He like Fe Kβ (7.90 keV)
①
asymmetric shape (26 lines)
⇒ gaussian でよいか?
simulation :
E0 = 6.677 keV,
σ0 = 27.8 eV ≪ Eres~70 eV
②
③
フィッティングで得られた peak energy, Eobs を用いて、
bulk line shift : z = (E0-Eobs)/Eobs
を各セルで見積もった結果、
52 個のセルで consistent な line shift
<Eobs> = 6.6133 ± 0.0162 keV
<zobs> = 0.0097 ± 0.0024
zcluster = 0.0104 ± 0.002
consistent
数分スケールでの bulk motion は見つからなかった
large scale bulk motion
3つの領域に分けて、zobs と bulk velocity
を見積もると、
zobs
②
velocity (km/s)
①
0.00933 ± 0.00015
-144 ± 44
②
0.0119 ± 0.0011
441 ± 316
③
0.0094 ± 0.0015
-306 ± 450
sys err
±0.0015
①
③
± 470
誤差の範囲内で一致 ⇒ 10’ スケールでの bulk motion もなし
2
2
bulk motion の上限値 : |Δv| < √(σstat + σsys) = 1400 km/s
Discussion
(a) Chandra で見つかった bulk motion
PEAK- ⇔ PEAK+
R-2 ⇔ R+3
2900 ± 700
2400 ± 1000
Chandra
Suzaku XIS
-660 ± 300 (660)
-540 ±360 (660)
PSF の影響か?
Chandra の 90% lower limit の速度差を持たせて simulate
PEAK-,+ : Δv = 1700 km/s, R-2,+3 : Δv = 760 km/s
XIS
+690 km/s
(690+960=1650)
+300 km/s
(300+1020=1320)
Chandra の下限と XIS の上限を考えるとぎりぎり consistent といえる
Chandra の長時間観測の解析結果を待ちたい
(b) 上限値 : |Δv| < 1400 km/s
ICM thermal velocity = sound velocity ~ 880 km/s (3 keV)
∝ (温度)1/2
thermal velocity ~ bulk velocity
全重力質量の推定に与える影響
bulk gas が σr ~ |Δv| / 2 で回転している仮定すると、
(重力)
(ICM圧力) (bulk 圧力)
bulk 回転速度 :σr ∝ r
ICM 密度 : ρgas ∝ r -1
f : bulk fraction (0 ≤ f ≤ 1)
2
βr ≡ ρgas σr / kT
(kinetic energy ratio)
σr < |Δv| / 2 = 700 km/s ⇒ (1+fβr) ≤ 2
σr < |Δv| / 2 sinθ = 1100 km/s ⇒ (1+fβr) ≤ 3.6
全重力質量は静水圧平衡を仮定した場合の 2~3.6 倍以内となる
まとめ
・ Suzaku XIS を用いて、Centaurus 銀河団における bulk velocity を
測定した結果、数分・10分スケールでの bulk 運動は見つからなかった
Chandra の結果とは consistent とは言い難い
・ bulk motion の上限値は、静水圧平衡を仮定したときの2~3.6 倍以内の
全重力質量を示唆している
・ 個人的には、Perseus 銀河団 (明るく高温、温度ムラあり) を用いた
bulk motion の解析を楽しみにしている