平成26年度 「『想定読者』を意識した説明法・自己教育法」第10回授業(補習) 13. 演示実験を取り入れたプレゼン 大学院工学研究科 物理工学専攻 葛生 伸 平成26年12月13日 311L講義室 はじめに サイエンスコミュニケーション 科学について、科学者ではない一般市民と対話すること 青少年向け,一般向け科学啓発活動として盛ん 多くの場合,演示実験や実験工作教室を含む ex. 青少年のための科学の祭典 私の実践経験 大学で児童向けイベント(1997~1998頃) スライム+演示実験を中心とした高分子物性の説明 リフレッシュ理科教室(応用物理学会1999) 初日:教員向け → 2日目児童向け 児童向けイベント等での活動(2000~2005) 児童向けの各種イベントで依頼される 保護者向け啓発活動(2005~) 大学公開講座 → PTA研修など(児童と一緒の場合も含む) 教員向け(2009~) 教員免許状更新講習,福井県教員研修 実演例 空気の膨張で風船を膨らませる コルク栓飛ばし 空き缶つぶし 熱気球 再沸騰 ゴム弾性(ペンシルバルーン使用) ペットボトルの不思議 4. 「小さな暴れん坊」と内部エネルギー 熱くなると元気になる! 空気の分子 =小さな あばれんぼう 熱に関する実験 水を入れてコルク栓をした試験管 火であぶると? 身の回りのものは分子からできている 分子 = 小さなあばれんぼう 熱くなると元気になる! なぜコルク栓が飛ぶの? 小さなあばれんぼうのパワー 水蒸気のエネルギー 熱 水の分子 空き缶つぶし くうき ぶんし 空気の分子 みず ぶんし 水の分子 なか すいじょうき みず カンの中の水蒸気は水になり カンの中はからになる 空き缶の周りにはたらく大気圧の大きさ 320 kgの重さ 空きカンの展開図 空きカンの表面積と表面にかかる力の計算 カンの高さ 7 カンの周りの長さ 展開図の重さ (厚紙の重さ) 周りの部分 上下の円 厚紙の周りの部分の面積 重さから計算 上下の円の面積 半径から計算 空き缶カン全体の表面の面積 空きカンにかかる力 センチメートル(cm) 2 センチメートル(cm) 1 8.6 グラム(g) 2.6 グラム(g) 平方センチメートル(c m2) 平方センチメートル ( c 38.1 m2) 平方センチメートル ( c 38.5 m2) 平方センチメートル ( c 290 m2) キログラムの力(kg 290 f) 252 ゴミぶくろをつかった熱気球 ゴミ袋 (45 L, 0.012 mm) b@b メンディングテーブ ドライヤー ゴミ袋がうすくないと飛ばないよ! 熱気球が浮かぶしくみ 中の分子が勢いよくなる 中の気体が膨張 中外の圧力が等しいので 中の余分な空気が出る 球体の中が軽くなる 浮力で浮く まわりの小さなあばれんぼう 気球の中の小さなあばれんぽう 水圧を調べる 本を重ねると下の方ほど大きな力がかかる。 同じように水も下の方が大きな力がかかる 浮力のしくみ 浮力の測定 おもりの重さを測る 水をメスシリンダー に入れて水の体積 と重さをはかる 水の体積と重さを測る おもりをメスシリンダーの おもりをメスシリンダー 中に糸でつるして入れて の底に落として重りを はかる 体積と重さをはかる 測定した値の例 A おもりの重さ 10.1 グラム B 水の重さ(40 mL) 39.9 グラム C おもりと水の重さの和(A+B) 50.0 グラム D おもりを底に置いた時の重さ 50.0 グラム E おもりをつり下げたときの重さ 41.1 グラム F EとBの差 (E-B) G 水の表面の変化(体積変化) H Gの変化分の水の重さ 1.2 グラム 41.2 ミリリットル 1.3 グラム * Hは密度の体積変化をかけることによって計算できます。 水の密度=(39.9グラム)÷(40ミリリットル)=1.0 グラム/ミリリットル 浮力の説明 71.3 g 水の高さが増えた 分重くなる 75.9 g 75.9 g 水の高さが増えた 分の重さと浮力が同じ 空気の重さの測定 空気を入れる 重さをはかる ペットボトルの容積 水を口まで入れる 重さをはかる 空気の密度 A 空気の重さ 4.7 グラム B 水の重さ 1065 グラム C ペットボトルの中の体積 1065 グラム/ミリリットル D 空気の密度(4気圧の時) 0.0044 グラム/ミリリットル E 空気の密度(1気圧の時) 0.0011 グラム/ミリリットル 実際の値 0℃,1気圧の時の空気の密度 0.0012 グラム/ミリリットル 20℃,1気圧の時の空気の密度 0.0011 グラム/ミリリットル お湯を入れた容器の空気を抜くと? ペットボトルの知識 ・ 最初の用途は? 1974年米国で炭酸飲料用,日本1977年醤油容器 ・ 「ペット」とは? ポリエチレンテレフタラート(PET)のこと ・ 何からできてる? ポリエチレンテレフタレート ・ どうやってつくる? 後で説明 ・ 口が白いペットボトルは? 後で説明 PETボトルをオーブントースターに入れると 糸を引く → 繊維 ポリエステル 白くなる ← 結晶化 ペットボトルのつくりかた ふくらませる 熱い 冷ます PETボトルに熱湯を入れると 細長風船をつかった実験1 クイズ 細長風船(ペンシルバルーン)を両手でもって急 にひっぱると? 持ち上げる = 仕事 ゴムの中での小さなあばれんぼう 高分子のくさり あみめのように 手をつないで暴れる子どもたち プラスチックの鎖をゆらすと JAEEE第8回全国大会 平成25年8月18日 於;島根大学 教員免許状更新講習「身近な熱とエネルギー」 ~現職高等学校教員の目で見た意義と課題~ 島田直子* 葛生 伸** 福井県立足羽高等学校* 玉川大学教育学部*** 石井恭子*** 福井大学大学院工学研究科** 1.はじめに 教員免許状更新講習「身近な熱とエネルギー」 現職高校教員がTA(Teaching Assistant)として参加 講習の意義や課題を探る 改良 ○ 講習が教員にとって学校現場にすぐに活かせるもの ○ 講習が教員としての質を高めるもの 本講習と指導要領との関係 中央教育審議会答申(2008) 学習指導要領解説理科編(2008) エネルギー・生活関連 講習と方向性があっている 学習指導要領解説 理科編 小学校(2008年),中学校(2008年),高等学校(2009年) ≪改善の基本方針≫ ・ 「エネルギー」・・・・などの科学の基本的な見方や概念を柱として・・・・ ・ 実社会、実生活との関連を重視する内容を充実する・・・ 2.講習の概要 受講者別内訳 計 理 小学校 8 2 中学校 13 11 高等学校 7 3 合計 28 16 国 英 数 社 体 技 他 6 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 6 2.講習の概要 講義;3部構成容 ステンレスのマグカップ Ⅰ. 熱と様々なエネルギー(9:00~11:00) [実験数;32] 1. はじめに(講義の概要と試験の説明) *ペンシルバルーンを使った実験 2. 熱とは?エネルギーとは? 3. 温度と熱 4. 「小さなあばれんぼう」と内部エネルギー *空き缶つぶし *消せるボールペン *感熱紙 5. 様々なエネルギーと熱 *IH調理器で電球をつけよう 2.講習の概要 講義;3部構成容 Ⅱ. 熱機関とエネルギーの利用(11:00~13:30) [実験数;10] 6. 熱と熱機関 *スターリングエンジンの実験 7. 低温から高温へ熱を移す 8. 電気とエネルギー *モーターの原理(磁石で実験) *モーターを電気的につないで回す実験 *発電実験(水力発電、火力発電) 9. 私たちの生活とエネルギー 湯 ドライアイス 2.講習の概要 講義;3部構成容 Ⅲ. 地球と物質と熱力学(13:30~15:30) [実験数;7] 10. 地球も一つの熱機関 11. 身近な現象と熱力学 *ドライアイスの液化実験 ビニールホース *ペットボトルの加熱実験 *ガスの液化(液体窒素) ドライアイス バイス (万力) バイス (万力) Ⅳ. 試験・アンケート(15:40~16:30) 3.試験による評価 試験問題 学校 種 問題1 授業案作成 答案のまとめ 専門 教科 小 学 校 中 学 校 指導案 対象学年 指導案数 エネルギー 6年 2 家庭科「身の回りの環境」 5年 1 学級会活動「地球温暖化を考えて」 もののかさと温度 理科 1 4年 3 ものが燃える仕組み 1 電気のはたらき 1 電磁誘導 3年 2 仕事とエネルギー 3年 3 身の回りの物質 1年 1 状態変化 1年 2 熱の変化 総合「自分で作った火で綿菓子を作る」 1 1~3年 1 3.試験による評価 試験問題 学校種 中 学 校 高 等 学 校 問題1 授業案作成 答案のまとめ 専門 教科 指導案 対象学年 指導案数 保体 熱エネルギーと地球温暖化 1 国語 エアコンの仕組み(解説文) 1 物理 熱エネルギーの導入 1 物理 ボーアの原理・断熱変化 理科 エネルギーの変換効率 数学 立体図形 地歴 火の使用と人類の変化と歴史 工業 電気はどのようにつくられているか 英語 Mottainai運動 3年 1 1 1年 1 定時制 1 1 1 1 3.試験による評価 試験問題 問題1 授業案作成 解答例1:高校 地歴担当 概要 導入で火起こし実験 ↓ 「火」とはどのようなものか、 旧石器時代に戻って考えさせる ↓ 時代を追ってエネルギーを考え 、現代のエネルギーを見直す 3.試験による評価 試験問題 問題1 授業案作成 解答例2:小学校 概要 導入にペンシルバルーンの実験 ↓ ゴムがどうなるのか考えさせる ↓ 「小さなあばれんぼう」の概念を 説明し、モデル図を使用して考 えさせる 3.試験による評価 試験問題 問題2(1):説明が不十分な点 (2):改良するとよい点 数式を少なくしてほしい(3) 数式がもっとほしい(2) LED(2) 交流と直流の変換(2) 分光カード実験(2) 温泉卵は色つき容器で(2) ペルチェ素子(1) 熱平衡(1) 状態図(1) 半導体(1) ヒートポンプの原理(1) 熱と電気の関係(1) 原子力発電(1) 3.試験による評価 試験問題 問題2(3):期待していた事・それに対する相違点 身近な実験がたくさんあり,生活と関連していて、 科以外の教科でも面白く学ぶことができた。(7) 理 実験がたくさんあり,期待以上だった。(6) 手元カメラが良かった。(1) 内容が盛りだくさんなため、講義についていくのが大変だ った。(3) 「ありがとうございました」等の謝辞(11) 4.アンケート結果による評価 結果 受講を勧めたいか 難易度 参考になったこと はい 25 いいえ 1 難しい 1 やや難しい 8 ちょうど良い 14 やや易しい 4 易しい 0 実験 27 資料 16 生活関連の知識 14 楽しさ・面白さ 13 説明の仕方 4 教科横断型の知識 2 5.考察 意義 自分の授業に本講習を活かしていこうという 積極的な姿勢がみられた かみ砕いた表現を用いて丁寧に解説 身近な道具を使用した実験 ストーリー性をもった授業展開 理解が深まる 生活関連重視・実験・ストーリー性のある授業を受講 面白い・楽しい 自身の授業の見直し 教員としての質の向上 5.考察 課題・提案 内容が多すぎる 受講者の要望 説明不足(LED・半導体・平衡・相図) 専門以外の受講者は分かりにくい PPTの工夫が必要 数式は興味がある受講者にだけ配布 受講者の要望をどれだけ受け入れるか、検討が必要 生活関連学習を意識した 熱・エネルギー分野の 教員免許状更新講習 福井大・院工 葛生 伸 福井県立足羽高等学校 島田 直子 玉川大学教育学部 石井 恭子 H25.11.16 平成25年度日本理科教育学会北陸支部大会 A06 51 教員免許状更新講習 題名: 身近な熱とエネルギー(6時間[含試験時間]) H21 高校物理教員想定 H22~ 理科教員以外でも理解できるように 定員30名 年度 人数 内訳等 H21 H22 H23 3 高(理 [物理]),高(特 [数]),中(理) 9 小:中: 高 = 8:13:7,(中高の理,国,社,工) 28 小:中: 高 = 11:9:7,(中高の理,技,数,工,特) H24 H25 28 小:中: 高 = 8:13:7,(中高の理,英,国,数,社,体,技) 20 理科教員中心,小:中: 高 = 7:6:6(その他1) 講習の概要 講義;3部構成容 Ⅰ. 熱と様々なエネルギー(9:00~11:00) [実験数;32] 1. はじめに(講義の概要と試験の説明) *ペンシルバルーンを使った実験 2. 熱とは?エネルギーとは? 3. 温度と熱 4. 「小さなあばれんぼう」と内部エネルギー *空き缶つぶし *消せるボールペン *感熱紙 5. 様々なエネルギーと熱 *IH調理器で電球をつけよう 講習の概要 講義;3部構成容 Ⅱ. 熱機関とエネルギーの利用(11:00~13:30) [実験数;10] 6. 熱と熱機関 *スターリングエンジンの実験 7. 低温から高温へ熱を移す 8. 電気とエネルギー *モーターの原理(磁石で実験) *モーターを電気的につないで回す実験 *発電実験(水力発電、火力発電) 9. 私たちの生活とエネルギー 講習の概要 講義;3部構成容 Ⅲ. 地球と物質と熱力学(13:30~15:30) [実験数;7] 10. 地球も一つの熱機関 11. 身近な現象と熱力学 *ドライアイスの液化実験 *ペットボトルの加熱実験 ビニールホース *ガスの液化(液体窒素) ドライアイス バイス (万力) バイス (万力) Ⅳ. 試験・アンケート(15:40~16:30) 豊富な図やイラストの使用 水 加 熱 冷 却 返繰 しり 試験問題 問題1 受講した内容に基づく授業案の提案 問題2 良かった点/改善点/自分ならばどうするかの提案 試験問題は最初に提示 ・自分ならばどうするか考えながら受講していただく ・担当者が受講者から学ばせていただく ・講習の改善 → 毎年の改善の経緯を示す 改善の経緯(その1) 1回目(H21) 「熱とエネルギー」 講義室 高校物理教員を想定して実施 ← H12実施の福井県高校物理教員研修をベース 3名参加: 高校物理,高校数学,中学理科 中学校教員: 数式難しい 数学教員: 式の文字が頭に入らない 2回目(H22) 「熱とエネルギー」 理科教育実験室 多様な教員13名参加 ← 全面改訂(現在の原型)/実験集用意 スライド配布資料に説明無し → 後の復習困難 改善の経緯(その2) 3回目(H23) 「熱とエネルギー」理科教育実験室 多様な教員28名参加 ← 配布資料に詳細な説明文を追加 ・説明文はわかりやすくてよい ・受講者によってわかりにくいところを追加説明 4回目(H24) 「身近な熱とエネルギー」理科教育実験室 多様な教員28名参加 ← より親しみやすくするために改題 ・資料,実験はマイナーチェンジ ・現職高校教員の補助を受ける 改善の経緯(その3) 5回目(H25) 「身近な熱とエネルギー」 理科を中心に20名(校種は小中高バランスよく) ← 「テキスト」「実験集」に加え「コラム集」追加 コラム集 ・少し高度な内容。豆知識を加えた ・他教科とのつながりを理解するのに有効 ・余談のネタなどに使用できる 次年度に向けての計画 1) 再度改題 「生活の中の熱とエネルギー」 2) 実験集・コラム集の充実 資料単独でも活用できるように整備 生活関連学習/教科横断型学習への橋渡し 3) 案内文でのアピール HPからH25年度資料が得られることを案内に明記 ⇒ 受講判断に役立たせる/資料の普及 4) 学生補助者の活用 進行表(指導案)の整備により,効果的に学生を活用 5) 講義室での開講 丸イスでの5時間の受講はきつい 講習の成果 講習を通じて得られたこと ・授業の自己評価方法と継続的な改善ノウハウ 本務の大学授業での評価方法への応用(変容の自由記述等) ・授業の運営方法,準備方法などのノウハウ ・理科教育法授業の参考(指導案など) ・簡単にできる実験の開発(毎年少しずつ増やす) 受講者,関係者など多くの方々からさまざまことを学ばせて頂いた 感謝するとともに,引き続き改善を続けていきたい
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