ネットワークの任意の規格・接点を インターネット上で設定可能にする 仮想物理層に関する研究 九州大学 工学部 電気情報工学科 岡村研究室 林 健太朗 目次 研究の背景 次世代ネットワークにおける問題 研究の目的 研究の内容 仮想物理層とは 問題の解決 設計案 まとめと今後の課題 卒業論文口頭試問:林 2 研究の背景(1/4) ネットワークの高速化の中で、1Gbpsをこえる帯域 を必要とする超大容量のデータ通信に対する要求 が高まっている 例えばCERNのLHC(Large Hadron Collider)加速器からは年間数 Pbyte(1日平均3Tbyte以上)の大量のデータが得られる。そのデータ を世界各地の研究施設に送信するためには1拠点に10Gbpsという 非常に大きな帯域の通信路が必要になる。 国立情報学研究所(NII) 大学や研究施設に対しネットワーク基盤を提供している。 そこで、NIIは次世代学術ネットワークにおいてL1帯 域オンデマンドサービスというものを提供している。 卒業論文口頭試問:林 3 研究の背景(2/4) L1帯域オンデマンドサービス ユーザの要求により一時的に臨時の専用線を使用可能と するSINET3のサービスのひとつ。 SINET3:NIIにより構築・運用されている次世代学術ネット ワーク オンデマンドサーバ ユーザ ①接続対地、開始時間、 終了時間、確保帯域を指定 ②開始時間になるとネットワーク 内にL1パスを張る 一時的な専用線 共用回線 ユーザ端末 ユーザ端末 卒業論文口頭試問:林 4 研究の背景(3/4) 増加した物理線分の帯域をまとめて高速化したい bonding:Linuxにてカーネル側で帯域をまとめる技術 リンクアグリゲーション:スイッチ側で帯域をまとめる技術 新しい物理線 新しい専用線 eth1 :192.168.0.2 eth1 bond0:192.168.0.1 eth0 :192.168.0.1 eth0 既存の共用線 既存の共用線 しかし、帯域をまとめる技術は複数あり統一性がな い。また毎度その設定を行うのは煩雑であるという 問題点がある。 卒業論文口頭試問:林 5 研究の背景(4/4) 大容量のデータ通信での、パケットロスの問題 ボトルネックリンク:エンドエンドのネットワークパス上で帯 域幅が最も狭いリンク。 ボトルネックリンクと送信時の帯域の差 パケットロスによるスループットの低下 受信キュー UDP UDP UDP UDP UDP 1Gbps 1つのパケットを送信する間 に10個のパケットが届く スイッチングHUB 送信キュー パケロス 100Mbps 回線速度の差 卒業論文口頭試問:林 6 研究の目的 物理線の増加に対するユーザの設定の負担の問題。 ボトルネックリンクにおけるパケットロスの問題。 物理層の変化や問題を物理層を仮想化することで 柔軟に対応できないだろうか。 仮想物理層の提案 上記2つの問題が仮想物理層により解決でき ると示すことを目的とする。 卒業論文口頭試問:林 7 仮想物理層とは(1/3) 定義 仮想物理層とは,任意の接続間の実際の物理層 の規格に依らず,自由に設定させた規格をOSに 認識させる仕組みである。 1Gbps規格を認識させる 有線の規格を認識させる 100Mbps 仮想的なケーブル 100Mbps 無線ルータによる通信 卒業論文口頭試問:林 8 問題の解決(1/2) L1帯域オンデマンドサービス利用時 ユーザの操作はオンデマンドサーバへのアクセ スのみ オンデマンドサーバ ①900Mbpsの 帯域を要求 ②900Mbpsの帯域をもつL1パスを確保 一時的な専用線900Mbps ユーザ端末 共用回線 100Mbps ユーザ端末 ③1Gbpsの規格を動的に認識させる 卒業論文口頭試問:林 9 問題の解決(2/2) パケットロスの回避 両端末で100Mbpsの規格を認識させ、仮想的な 100Mbpsのケーブルを張る。 これにより100Mbpsでパケットが送信されるようになりパ ケットロスを回避できる。 UDP 両端末に100Mbpsの規格を認識させる UDP 受信キュー 送信キュー UDP スイッチングHUB UDP 仮想的な100Mbpsの線 100Mbps UDP 1Gbps 回線速度の差 卒業論文口頭試問:林 10 設計(1/2) 前提 OSはLinux。 端末は共用回線に接続されている。 仮想デバイスドライバ 仮想ネットワークインターフェースの提供 パケット送信時の制御 デーモンプロセス L1帯域オンデマンドサービスの監視 規格の設定 接続相手のデーモンプロセスとの通信 卒業論文口頭試問:林 11 設計(2/2) L1帯域オンデマンドサービス利用時 オンデマンドサーバ ①接続対地,開始・終了時間、帯域を指定 ユーザ ②指定情報の取得 ⑤L1パスの設定・解放 ④vdev1の作成、規格設定 一時的な専用線 ⑥vdev1の削除 vdev1 仮想デバイスドライバ デーモンプロセス 共用回線 ③接続対地へ指定情報の送信 ユーザ端末 卒業論文口頭試問:林 12 考察 仮想物理層を適用しなかった場合 帯域をまとめるためにはbondingやリンクアグリゲーショ ンの設定が必要。 ボトルネックリンクにおけるパケットロスの発生。 仮想物理層を適用した場合 物理線が増えたとき、帯域は動的にまとめられ、ユーザ による設定は必要ない。 送信時の帯域をボトルネックリンクの帯域に合わせること で、パケットロスを抑えることが可能。 卒業論文口頭試問:林 13 まとめと今後の課題 まとめ 物理線が増加した時のユーザの設定の負担という問題と、 ボトルネックリンクにおけるパケットロスの問題に対し仮 想物理層というものを提案した。 上記二つの問題が仮想物理層により解決できることを示 した。 今後の課題 パケットの送信速度をより細かに制御可能にする 新しく物理線が接続されたとき、その物理線の帯域を自 動で認識するオートネゴシエーション機能 ボトルネックリンクの帯域の取得方法 卒業論文口頭試問:林 14
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