JREA講演

第3回
「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」
in 横浜
満員電車がなくなる日
(株)ライトレール
代表取締役社長
阿
部
等
http://www.LRT.co.jp
平成20年12月6日
1.はじめに
• 満員電車
– 人にやさしくない交通の典型
• 『満員電車がなくなる日』
– 角川SSC新書
• mixi「満員電車が苦手」
– 1.5万人近くが参加
• 本気で取組めば満員電車はなくせる
– 本書が満員電車をなくすきっかけに
– 鉄道が社会の発展と人々の豊かさを実現
1
2.満員電車の現状と歴史
• "JAPAN as No.1"の時代
– 国が豊かでも国民は豊かさを実感できず
• 20年以上経ち
– とても満足できる状況ではない
• 鉄道の歴史130数年を振返る時
– 常に低運賃を社会から要請され
– ニーズと技術がありながら経費投入できず
– 満員電車の歴史は運賃抑制の歴史
2
3.満員電車をなくす運行のイノベーション
• 電車の2~3分おきの運行
– 自動車と比べたら“過疎”運転
• 運行本数を現行の倍以上に
– 信号システムの改良
– 加減速性能の向上
– 駅停車時間の短縮
• 総2階建て車両
– 床面積を2倍
• 両者を合せて朝ラッシュ輸送力は4~5倍
3
現状の2階建て車両
両端部は1階建て、階段部はデッドスペースとな
り、床面積は通常車両の1.4倍に過ぎない。また
扉が少なく、多数が乗ると乗降時間が掛かる。
4
提案の総2階建て車両
1階と2階を完全に別室とし、扉も増やし、床面
積を純粋に2倍とする。
5
総2階建て車両向けの大駅
線路の両側にホームを設置し、片方を1階用、も
う一方を2階用とする。
6
総2階建て車両向けの中小駅
1階用ホームの所々へ、2階乗換用のタラップ、
エレベーターを設置する。
7
LRT&BRTデザインコンテスト
C部門グランプリ作品
車両もホームも2階建て
8
鉄輪式リニア
• 鉄輪式リニアとは
– 荷重支持と進路案内は車輪とレール
– 地上と車上間の電磁力で駆動・制動
• メリット
– 加減速性能が高い、勾配・急曲線に強い
– 車輪径が小さく車体床面を低くできる
• 地上一次方式(一次側コイルを地上へ)
– 動力電源の車両への供給が不要に
– 架線とパンタグラフを省略
– 総2階建て車両の導入がスムーズに
9
4.満員電車をなくす運賃のイノベーション
• 「運行のイノベーション」の実現
– 資金確保が不可欠
• 混雑緩和=商品価値向上に応じた値付け
– 着席は立席より明らかに商品価値が高い
– それに応じて価格差
• 着席の割増料金
– 跳ね上げ式座席とICカードの組合せによ
り無人で確実に収受
10
ICカードで座席を引出す仕組み
ICカードを読取り機にタッ
チすると座席が下り、立上が
ると跳ね上がる
11
調達可能な資金額と実現の期間
• 着席料金による増収と投資額(首都圏)
– 200円/人×250万人×600回/年=3000億円/年
– 30km強×30路線強×100億円/km=10兆円
– 10兆円÷2000億円(年間投資)=50年
• 過去の鉄道の偉業
– 明治の鉄道開業2年、東海道新幹線5年半
• 満員電車の解消
– 一致団結して10年
– 提案の技術開発に不可能な要素はない
12
5.満員電車をなくす制度のイノベーション
• 鉄道運転士の免許基準を規制緩和
– システムと異常時対応体制を整備の上
– 電車の大増発による人件費負担を軽減
• 道路特定財源制度のあり方
– 現行の道路投資の40%以上が一般財源
– 自動車の受益と費用負担の関係を明確に
– 自動車関係諸税を引上げるべき
– 鉄道事業者へ正当な収益を得さす
13
6.満員電車のなくなる日を目指して
• 首都圏直下型地震への対応
– 朝8時前後に発生したら各所で大事故
– 本提案を単純に実行すると被害を拡大
– 被害を軽減する方策を提案
• 鉄道は社会へもっともっと貢献
– 満員電車の解消が代表
– 適正な技術開発・設備投資・運営費増
• 満員電車の解消
– 肉体的・精神的・時間的浪費が緩和
– より広い家で今以上に子供を産み育て
14
7.おわりに
• 『満員電車がなくなる日』
– 議論のきっかけに
• 交通新聞の書評
– 「運行の改善方法は新規性はない」
– 専門家の間では実行可能と了解済み
– 必要なことは「運賃抑制の呪縛から開放」
• 商品価値に応じた値付けにより資金の流れを作る
• ICカードシステムを活用して低コストに実行
15
満員電車とは
• 利用者にとっては
– 最大の不満=事業者のビジネスチャンス
• 鉄道行政にとっては
– 最大の課題=国民の期待、社会活力の向上
– 要諦は事業者の活力を引出すこと
• 鉄道事業者にとっては
– 最大のビジネスチャンス=値付けが鍵
• 鉄道技術者にとっては
– 最大の取組み対象=チャレンジしがいあり
16
この本の基本コンセプト
• 鉄道はイノベーションにより
– 社会にもっともっと貢献できる
– 自動車に過度に依存しない社会作りにも貢献
• 満員電車の解消は
– 新時代に鉄道が社会で活躍するシンボル
• 鉄道が社会で活躍するためには
– 技術革新と適正な費用投入による利便向上
– 利便の高さに応じた適正な受益者負担と弱
者への公的補助
– 制度の改革・適正化による民間活力の引出し
17