JREA講演

著書のエッセンス(36シート)
満員電車がなくなる日
-鉄道イノベーションが日本を救う-
(株)ライトレール 代表取締役社長
阿
部
等
http://www.LRT.co.jp
はじめに
• 満員電車をなくすためのイノベーション
– (1)運行のイノベーション
• 供給を大幅に増やし満員電車をなくす方策はある
– (2)運賃のイノベーション
• 商品値付けの適正化により実行資金を調達できる
– (3)制度のイノベーション
• より短期で効果的に満員電車を解消できる
• 本気で取組めば満員電車はなくせる
– 本書が満員電車をなくすきっかけに
– 鉄道が社会の発展と人々の豊かさを実現
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第1章
満員電車の現状と歴史
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1.満員電車の現状
• 人類史上まれに見る集住と満員電車
– 国が豊かでも、国民は豊かさを実感できず
• 首都圏の満員電車ワースト20
– 山手、京浜東北、中央快速、総武緩行・・
• 鉄道営業法では満員電車は違法?
– 乗車券ヲ有スル者ハ列車中座席ノ存在スル
場合ニ限リ乗車スルコトヲ得
– 鉄道係員旅客ヲ強ヒテ定員ヲ超エ車中ニ乗
込マシメタルトキハ三十円以下ノ罰金又ハ
科料ニ処ス
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2.満員電車の歴史
• 戦後で最も混雑していた頃
– 戦後の混乱期を除き昭和40(1965)年
• 鉄道路線の変遷と満員電車の概略史
– 1900,1935,1970,2008年の東京圏路線図
• 満員電車と東京圏人口の変遷
– 昭和40年以降は、輸送力増強>人口増
• 満員電車緩和の最近の工夫
– 車両拡幅、シート改良、6扉車、ロング
シート化
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3.満員電車の歴史は運賃抑制の歴史
• 鉄道の運賃設定と経営状況の歴史
– 明治の鉄道開業以来、常に低運賃政策
– 鉄道の運賃抑制を大衆は歓迎
– 低収益、設備投資の遅れ、国鉄経営の破綻
– ニーズとそれに応える技術がありながら設
備投資できず = 現代社会に残る満員電車
• 運賃抑制の呪縛からの解放を
– 利便性が上がれば運賃が高くなっても納得
– 商品価値と生産コストに応じた運賃設定
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第2章
満員電車をなくすための
運行のイノベーション
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1.信号システムの機能向上
• 現行の信号システム
– 閉そく方式(軌道回路による列車位置検出)
– 効率性を犠牲にし「過疎」な運行
• 新たな信号システムの提案
– 高機能で経済的なシステムを構築
• 普及済みの機器・インフラ
• 実用化された技術
– 安全に運転間隔を縮め運行本数を増大
• 新たな信号システムの機能
– 列車位置検出、データ通信、運転指示
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新たな信号システム
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運転席モニターへの表示イメージ
運転曲線と同時に他列車等の情報を表示
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2.総2階建て車両
• 現状の2階建て車両と異なる総2階建て車両
– 1階と2階を独立した別々の客室に
– 定員増と高頻度運行を両立
• 総2階建て車両に対応した駅の構造
– ホームも2階建て(本出版後に発想転換)
– 1階ホームの天井は低くなるが一時の滞留
– 現行の線路配線のまま設備改修できる
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現状の2階建て車両
両端部は1階建て、階段部はデッドスペースと
なり、床面積は通常車両の1.4倍に過ぎない。
また、扉が少なく乗降時間が掛かる。
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提案する総2階建て車両
1階と2階を完全に別室とし、扉も増やし、床面
積を純粋に2倍とする。
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乗降りの方法
車両もホームも2階建て
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3.3線運行
• 3線運行とは
– 3線の真ん中を朝は上り、夕方は下りに
• 都心ターミナルでの折返し方法
– 上り2本を連結して下り1本にして折返し
– 折返しより都心貫通型の方が効率高い
• 24時間運行
– 昼は2線で運行し残り1線は保守作業
– 人々の生活様式や健康に悪影響の心配
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2本の電車を1本にして折返す仕組み
上り電車の2編成を連結して、1編成として下り
電車とする。
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3線運行の都心貫通型の運行パターン
双方の上り電車の2編成を連結して1編成とし、
都心を貫通して下り電車とする。
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4.鉄輪式リニア
• 鉄輪式リニアとは
– 荷重支持と進路案内は車輪とレールによる
– 地上と車上間の電磁力で駆動・制動
• 加減速性能の向上
– 通常の電車は加速時に空転、制動時に滑走
– リニアは空転・滑走なし、運転間隔も短縮
• 総2階建て車両のスムーズな導入
– モーターを台車に搭載せず車体床面を低下
– 地上一次方式ではパンタ・架線を省略
– 現在の走行空間内で総2階建て車両を導入
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5.実現可能な輸送力増強量
• どこまで輸送力増強できるか
– 運転間隔
• 発~着80秒+停車60秒+余裕10秒=150秒
• 発~着35秒+停車30秒+余裕7秒=72秒
– 運転本数
• 150秒間隔=24本/h、72秒間隔=50本/h
– 本数2倍強×床面積2倍=輸送力4倍以上
• 必要な工夫
– 定時運転:ホームドア、ホーム流入制限
– 開かずの踏切:エレベーター棟式の横断橋
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第3章
満員電車をなくすための
運賃のイノベーション
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1.運行のイノベーションを実現するために
• 満員電車をなくすには運賃抑制を改める
• 商品値付けの適正化で実行資金を調達
– 輸送力増強=商品価値向上→値付け引上げ
– 利用増えずとも収益向上し経営として成立
• 首都圏で調達可能な資金額と回収年数
– 200円/人×250万人×600回/年=3000億円/年
– 30km強×30路線強×100億円/km=10兆円
– 回収:10兆円÷2000億円(年間投資)=50年
• 人口減少=国家衰退で満員電車消えると
– 値付け引上げ=鉄道発展のチャンスを失う
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2.着席と立ち席の値付け
• 着席と立ち席の現実
– グリーン料金で立ち席、通学定期で着席
• 着席サービスのマーケットは証明済み
– 通勤ライナー、有料特急、グリーン車
• 天ぷらそばとかけそば
– 蕎麦屋では両者に値段差
• 着席と立ち席の値段差に関わる制度
– 鉄道事業法に禁止規定なし
• 着席と立ち席に値段差を付ける方法は?
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ICカードで座席を引出す仕組み
ICカードを読取り機にタッ
チすると座席が下り、立上が
ると跳ね上がる
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3.ICカードを使った戦略的プライシング
• 鉄道運賃のプライシングの問題点
– 繁閑での値段差逆転、固定費と限界費用
• 商品価値と生産コストに応じたプライシング
– ラッシュ時は閑散時より高い値付けに
• 社会的目的達成と企業の利潤追求のバランス
– 政府は社会的強者から弱者への所得移転を
• 割高感を感じさせないプライシング
– 時間帯等で運賃変動、多頻度利用・グルー
プ・乗継ぎ等の割引き、弱者への公的補助
のデータ管理、商店等の運賃負担、会員制
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第4章
満員電車をなくすための
制度のイノベーション
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1.運転士免許基準の規制改革
• 鉄道とバス・タクシー・トラックの比較
– 前者は後者より格段に免許取得が困難
• 鉄道運転士の免許基準の規制改革
– 実際の業務の難易度に応じた免許基準に
– 保安システム・異常時体制を整備の上
• 電車増発経費の大幅低減
– 人件費負担を低減して増発をスムーズに
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2.自動車の適正な費用負担
• 道路特定財源制度の50年間の振返り
– 道路投資の40%以上が道路特定財源以外
• 道路利用者は受益に応じた費用を負担せず
• 国が鉄道でなく自動車の利用を奨励
• 道路財源のあり方
– 自動車の受益と費用負担の関係を明確に
• 受益に応じてガソリン税等を引上げるべき
– 無料または格安な公共駐車場も同根の問題
• 鉄道事業者が正当な収益を得るように
– 事業者へ儲けを認めることで活力向上
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道路財源の構成
国 費
地方費
合 計
区分
特定財源
年度
比率
特定 一般 計 特定 一般 計 特定 一般 計
昭和33~42
0.18 0.03 0.22 0.08 0.12 0.20 0.26 0.16 0.42
63%
(1958)(1967)
昭和43~52
0.78 0.12 0.91 0.48 0.62 1.10 1.27 0.74 2.01
63%
(1968)(1977)
昭和53~62
1.91 0.10 2.01 1.25 1.77 3.03 3.17 1.87 5.04
63%
(1978)(1987)
昭和63~平成9
2.84 0.49 3.33 2.19 4.34 6.68 5.03 4.83 9.86
51%
(1988) (1997)
平成10~18
3.53 0.53 4.07 2.26 3.47 5.73 5.79 4.01 9.80
59%
(1998)(2006)
昭和33~平成18
1.82 0.25 2.07 1.23 2.04 3.30 3.05 2.29 5.33
57%
(1958) (2006)
※金額の単位は兆円。
※各行は、それぞれの期間の1年平均を示す。
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第5章
満員電車のなくなる日を目指して
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1.モノは地下へ、人を地上に
• 現状の地下鉄と道路の関係
– 物流が地上を占拠、人の移動は地下
• 地上と地下の本来の使い方
– 地下鉄を物流へ転換し都市間鉄道と結節
– 地上の道路にLRTネットワーク
– 高架の道路に都市内高速鉄道ネットワーク
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現状の地上と地下の使い分け
モノの運搬が地上と高架、ヒトの移動が地下30
本来の地上と地下の使い分け
ヒトの移動が地上と高架、モノの運搬が地下31
2.忘れてはならないこと
• 首都圏直下型地震の際の最悪のシナリオ
– 阪神淡路大震災は時間帯に恵まれた
– 朝8時前後に起きたら、
• 各所で脱線、正面衝突、ホーム激突、高架橋転落
• 鉄道関連の死者が最悪なら数十万人
– 本提案を単純に実行すると被害が拡大
• 最悪のシナリオを防ぐ方策
– 車輪フランジを高くして脱線確率を低減
– 鉄輪式リニアで減速度を大幅向上
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3.鉄道が豊かさを実現
• つくばエクスプレスは最先端の鉄道か
– 130km/hは40年以上前の210km/hより低速
• つくばエクスプレスを最先端の鉄道に
– 急行と各停の混在、曲線の高速走行
• 交通利便の向上が社会を活性化
– 40年前までは鉄道、以降は自動車が主役
• 鉄道の能力発揮
– 同じ負担で広い家、子供を産み育てやすく
• 人口減少から増加への転換
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おわりに
• 35年間の蓄積整理=今後30年間の取組み
– 実行へ向けての基本的方向性は示せた
• 企業は人なり、事業は人なり
– 問題解決の根幹は人材の集結と能力の発揮
– 鉄道や交通への関心を芽生えさせたい
• 交通ビジネス塾
– http://www.LRT.co.jp/kbj
• 満員電車をなくすため
– この本を広めて下さい!!
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満員電車とは
• 利用者にとっては
– 最大の不満=事業者のビジネスチャンス
• 鉄道行政にとっては
– 最大の課題=国民の期待、社会活力の向上
– 要諦は事業者の活力を引出すこと
• 鉄道事業者にとっては
– 最大のビジネスチャンス←値付けが鍵
• 鉄道技術者にとっては
– 最大の取組み対象=チャレンジしがいあり
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この本の基本コンセプト
• 鉄道はイノベーションにより
– 社会にもっともっと貢献できる
• 満員電車の解消は
– 新時代に鉄道が社会で活躍するシンボル
• 鉄道が社会で活躍するためには
– 技術革新と適正な費用投入による利便向上
– 利便の高さに応じた適正な受益者負担と弱
者への公的補助
– 制度の改革による民間活力の引出し
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