今後の対策について

今後の対策について
 平成13年11月12日の事故は、その原因として、1本の増倍管が爆縮
を起こして衝撃波を発生し、その衝撃波が隣の増倍管を破壊し、さらに
その増倍管が衝撃波源になるという連鎖反応が起きたことが明らかに
なった。
 今後2度と同様な事故を起こさないためには、以下の対策を講じる必要
がある。
 作業時の対策
作業時に、監督員を増員し、増倍管にストレスがかからないよう監督し、スト
レスのかかった疑いがあるときには直ちに適切に対処するようにする、
 増倍管に対する対策
増倍管が万が一破壊されても、衝撃波を発生しない対策をとること。
作業時の安全対策
共通作業:光電子増倍管搬入、光電子増倍管ケーブル前処理と試験
光電子増倍管搬入(浜松より)
運搬方法:トラック
坑内は上記に加えて、カミオカンデ奥についてはトロッコ、その他はローラーを併用
保管場所:
旧カミオカンデ坑道奥およびカミオカンデ斜坑(1992 - 1993年) (作業:研究者+鉱山作業者)
東4号 (1994 - 1995)
(作業:作業者+研究者)
鉱山倉庫(1995)
(作業:作業者)
改良項目:カミオカンデ奥坑道の保管場所は環境、作業性とも悪かったので、そのような場
所に保管場所を選ぶべきではない。
備考)PMTの箱は上下に分かれており、上側が段ボール、下側がプラスチック段ボールである。坑
内の湿気が高いため、数年におよぶ長期の保管をしたPMTについては保管の際、上側の段ボー
ルを取り去り、ビニール袋をかぶせた。
注)以後「作業者」は特にことわらない限り全て
神岡鉱業エンジニアリングの下請け作業者をさす
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
光電子増倍管ケーブル処理と試験
場所: 東4号
・段ボール製の上蓋(またはビニール袋)を取り去り、ケーブルの先端の外皮を専
用工具を用いてはぐ。
(作業:作業者)
・PMT6個づつ暗箱に入れて高電圧をかけ、信号をオシロスコープで確認する。こ
の際PMTは搬入時のプラスチック製段ボール下箱に入ったまま。
(作業:研究者)
・後の作業のために高電圧ケーブル線をケーブルに巻き付けビニールテープで固
定する。
(作業:研究者)
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
上面中央部分
上面3個モジュール製作
場所:現在のコントロール室と倉庫
・3個組PMTモジュール用取り付け金具組立 (作業:作業者)
・PMTを保管箱から出して発泡ポリエチレン製の取り付け用台に乗せ、アルコール洗浄、PMT
番号確認
(作業:研究者)
改良項目:PMTの洗浄時にPMTの傷、形等の異常がないかを確認、記録する。
・PMT3個に取り付け金具をかぶせて、取り付け用のバンドを締める(この際、取り付け金具は
ポリエチレン製の取り付け台に乗っているので落としてPMTにあたるような心配はほとんどない、
またバンドを締める工具は全てクッションで被いPMTにあたってもPMTが破損しないようにし
た)
(作業:研究者)
改良項目: PMTモジュールに取り付けられたPMTの位置等PMTモジュールに異常
がないか項目を決めて確認、記録する。
・ケーブル処理(洗浄し、3本を束ねる)
(作業:作業者)
・ポリエチレンシートで被い、埃よけと、万が一のPMT破損の際、ガラスの飛散を最小限におさ
える処理をする
(作業:作業者)
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
PMT一時保管
場所: 東4号
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
(水槽内は幅60cm長さ1.8m、赤さ10cm程度の専用台車)
改良項目:PMT一時保管の際、経費が足りないことからPMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台が足りず、浜松フォトニクスからの輸
送に使われたPMTの箱を切って仮に使用した。そのため、仮の台か
ら専用台に乗せ換える1工程だけ余分にPMTがむき出しになった。
経費的に許されるなら、PMT保護・運搬用の発泡ポリエチレンの台
は必要数製作すべきである。
上面中央部PMTの水槽への取り付け
場所: 水槽底面
・下向きの3個組のPMTモジュールを支持金具と運搬用PMT保護台ごと取り付け専用
リフトに乗せて、上面架構(高さ約2m)まで3個組PMTモジュールを上げ、架構にボルト
で取り付ける。この際ボルト締めは電動工具を用いて行い、工具が誤ってPMTにあたる
ことがないようにした。
(作業:作業者)
・ケーブルを水槽上面架構上のケーブルトレイに沿って引き回し、ケーブルを水槽上ま
で引き上げる
(作業:作業者+研究者)
・PMT面のところにブラックシートを取り付ける。
(作業:研究者)
・PMTの番号と取り付け位置を記録する。
(作業:研究者)
PMT取り付け作業備考
・外水槽PMTは、内水槽PMTがついた後にまずタイベックシートを取り付けてその後P
MT取り付け。 (アメリカ側担当)
・上面中央部は水槽底面上でPMTを取り付けた後、上面全体を所定の位置までつり上
げた。 (三井造船担当)
側面
側面3個モジュール製作
場所:現在のコントロール室と倉庫
・3個組PMTモジュール用取り付け金具組立 (作業:作業者)
・PMTを保管箱から出して発泡ポリエチレン製の取り付け用台に乗せ、アルコール洗浄、PMT
番号確認
(作業:研究者)
改良項目:PMTの洗浄時にPMTの傷、形等の異常がないかを確認、記録する。
・PMT3個に取り付け金具をかぶせて、取り付け用のバンドを締める(この際、バンドを締める工
具は全てクッションで被いPMTにあたってもPMTが破損しないようにした。 また、側面用金具は
上面、底面用に比べると軽く、万が一PMTにあたった場合等の衝撃は小さいと考えられる)
(作業:研究者)
改良項目: PMTモジュールに取り付けられたPMTの位置等PMTモジュールに異常
がないか項目を決めて確認、記録する。
・ケーブル処理(洗浄し、3本を束ねる)
(作業:作業者)
・ポリエチレンシートで被い、埃よけと、万が一のPMT破損の際、ガラスの飛散を最小限におさ
える処理をする
(作業:作業者)
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
PMT一時保管
場所: 東4号、鉱山坑内事務所跡、
鉱山旧工作室
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
(水槽内は幅60cm長さ1.8m、赤さ10cm程度の専用台車)
改良項目:PMT一時保管の際、経費が足りないことからPMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台が足りず、浜松フォトニクスからの輸
送に使われたPMTの箱を切って仮に使用した。そのため、仮の台か
ら専用台に乗せ換える1工程だけ余分にPMTがむき出しになった。
経費的に許されるなら、PMT保護・運搬用の発泡ポリエチレンの台
は必要数製作すべきである。
側面PMTの水槽への取り付け
場所: 水槽底面
・3個組PMTモジュールとPMT運搬用保護台を4本のバンドで固定し、側面PMT取り付け専用リ
フトで側面架構(高さ約2.1m、PMT12個が取り付く)まで3個組PMTモジュールの一端をつり上
げ、架構にボルトで取り付ける。この際、作業が終わるまでPMT保護をかねた発泡ポリエチレン
製のPMT取り付け台はPMTモジュールからはずさず安全を確保した。また、ボルト締めは電動工
具を用い工具が誤ってPMTにあたる等の事故を防ぐようにした。 (作業:作業者)
改善項目: 万が一PMTが架構にあたってもPMTに衝撃を与えないよう、PMT取り付
け前に架構に養生をする。
・PMT面のところにブラックシートを取り付ける。
(作業:研究者+作業者)
・PMTの番号と取り付け位置を記録する。
(作業:研究者)
・側面架構造の補強のための横向きの2本のLアングルをボルト締めする
(作業:作業者)
改善項目:万が一の事故に備えて、Lアングル取り付け前に上下のPMT前面を防爆用
の布で覆う。
・翌日、PMT架構をつり上げ水槽に固定する。
(作業:三井造船作業者)
・ケーブルを水槽上まで引き上げる
(作業:三井造船作業者)
PMT取り付け作業備考
外水槽PMTは、内水槽PMTがついた後に、同じ日の内に、まずタイベックシートを取り付けてそ
の後PMT取り付け。 (アメリカ側担当)
底面
底面3個モジュール製作
場所:現在のコントロール室と倉庫
(一時期、鉱山の旧坑内工作場跡)
・3個組PMTモジュール用取り付け金具組立 (作業:作業者)
・PMTを保管箱から出して発泡ポリエチレン製の取り付け用台に乗せ、アルコール洗浄、PMT
番号確認
(作業:研究者)
改良項目:PMTの洗浄時にPMTの傷、形等の異常がないかを確認、記録する。
・PMT3個に取り付け金具をかぶせて、取り付け用のバンドを締める(この際、取り付け金具は
ポリエチレン製の取り付け台に乗っているので落としてPMTにあたるような心配はほとんどない、
またバンドを締める工具は全てクッションで被いPMTにあたってもPMTが破損しないようにし
た)
(作業:研究者)
改良項目: PMTモジュールに取り付けられたPMTの位置等PMTモジュールに異常
がないか項目を決めて確認、記録する。
・ケーブル処理(洗浄し、3本を束ねる)
(作業:作業者)
・ポリエチレンシートで被い、埃よけと、万が一のPMT破損の際、ガラスの飛散を最小限におさ
える処理をする
(作業:作業者)
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
PMT一時保管
場所: 東4号
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
(水槽内は幅60cm長さ1.8m、赤さ10cm程度の専用台車)
改良項目:PMT一時保管の際、経費が足りないことからPMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台が足りず、浜松フォトニクスからの輸
送に使われたPMTの箱を切って仮に使用した。そのため、仮の台か
ら専用台に乗せ換える1工程だけ余分にPMTがむき出しになった。
経費的に許されるなら、PMT保護・運搬用の発泡ポリエチレンの台
は必要数製作すべきである。
底面PMTの水槽への取り付け
場所: 水槽底面
・下向きの3個組のPMTモジュールをバンド4本で運搬用PMT保護台と固定し、PMTモジュールを
運搬用PMT保護台ごと上向きにする。
改良項目: ここが危険な作業なので、万が一バンドを止め忘れてもPMT破損がないよう
に床に発泡ポリエチレン等を敷いて、その上でPMTモジュールを回転させる。
・取り付け専用リフトに3個組PMTを乗せて転倒防止の固定をする。
・PMT保護台を取りはずし、厚い布製の防爆用キャップを各PMTにかぶせる。
改良項目: 建設時のものは上からかぶせるだけでPMTの後ろの方にガラスが飛び散ると
完全にはガラスが止まらない構造であったので、すっぽりPMTを覆ってしまうよ
うな(シャワーキャップのようなイメージ)ものに換える。
・取り付け専用リフトで底面架構(高さ約2m)まで3個組PMTモジュールを上げ、架構にボルトで取
り付ける。この際ボルト締めは電動工具を用い工具が誤ってPMTにあたる等の事故を防ぐようにし
た。
(以上の作業:作業者)
・ケーブルを水槽側面までケーブルトレイに沿って引きのばす(作業:作業者+研究者)
・ケーブルを水槽上まで引き上げる
(作業:三井造船作業者)
・PMT面のところにブラックシートを取り付ける。
(作業:研究者+作業者)
・PMTの番号と取り付け位置を記録する。
(作業:研究者)
底面でのPMT取り付け作業備考
外水槽PMTは、内水槽PMTがついた後にまずタイベックシートを取り付けてその後PMT取り付け。
(アメリカ側担当)
上面端部
上面3個モジュール製作: なし。上面端部は本数が限られ、
また端であるのでPMT1本づつ水槽架構に取り付けた。
上面PMTバンド取り付け
場所: 水槽上部
・PMTを保管箱から出して発泡ポリエチレン製の取り付け用台に乗せ、アルコール洗浄、PMT
番号確認
(作業:研究者)
改良項目:PMTの洗浄時にPMTの傷、形等の異常がないかを確認、記録する。
・PMT1個に取り付けバンドをかぶせて、取り付け用のバンドを締める(この際、バンドを締める
工具は全てクッションで被いPMTにあたってもPMTが破損しないようにした) 。その後で、上面
フレームに取り付けるための小フレームをねじ止め。
(作業:研究者)
改良項目: PMTのバンド取り付け位置等に異常がないか項目を決めて確認、記録する。
・汚れていればケーブル洗浄
(作業:研究者)
・ポリエチレンシートで被い、埃よけと、万が一のPMT破損の際、ガラスの飛散を最小限におさ
える処理をする
(作業:研究者)
水槽上面マンホールまで台車で箱に入ったPMTを運び、水槽内のボートに
箱ごとホイストで降ろす
(作業:研究者)
上面端部PMTの水槽への取り付け
場所: 水槽水面でボート
による作業
・ボートにPMTを箱ごと乗せ、所定の位置まで行く。 (作業:研究者)
・バンドと小フレームのついたPMT1個を上面架構の上に設置した小さいウインチでつり上げ、上
面架構に電動工具でねじ止めする。 この際架構の上下に人がいて、PMT破損等の危険がないよ
うに注意した。
(作業:研究者)
改良項目: PMTに防爆用の布をかぶせて作業を行う。
・ケーブルを水槽上面架構上のケーブルトレイに沿って引き回し、ケーブルを水槽上まで引き上げ
る
(作業:研究者)
・PMT面のところにブラックシートを取り付ける。
(作業:研究者)
・PMTの番号と取り付け位置を記録する。
(作業:研究者)
PMT取り付け作業備考
・外水槽PMTは、内水槽PMTがついた後にまずタイベックシートを取り付けてその後PMT
取り付け。 (アメリカ側担当)
光電子増倍管取り付け作業時等における光電子増倍管破損について



カミオカンデ奥の坑道からPMTを取り出す際、誤ってPMTの入った箱を倒した。このとき箱の上側は湿
気対策のため段ボールからビニール袋に変えてあった。PMTはプラスチック段ボールの下箱とビニール
袋で被われていたため、PMT破損以外の被害はなし。
作業者が水槽底面で底面PMT取り付け作業で3個組PMTモジュールを上向きに変えるとき、PMTモ
ジュールと保護用の台を固定していたバンドを止め忘れて作業したため、PMTモジュールと保護用台が
はずれPMTがむき出しになって底面に衝突、破損。ガラスが粉々になった。作業者を含めてPMT破損
以外の被害はなし。
三井造船作業者が水槽上面で作業(足場撤去)をしていたときあやまって物(足場用パイプ)を水槽上面
に取り付けたPMTにあて、PMTにひびが入る。被害はPMTが壊れた以外はなし。
増倍管に対する対策
衝撃波防止ケース(3案)
基本的考え
増倍管をケースで完全に覆う。
ただし、ケースで水圧を持たせようとすると、ケースの経年変化を新たに考えなければならず、またケースを透過する
チェレンコフ光が効率よく増倍管の光電面に到達できるように工夫しなければならない。
ケースにいくつかの小孔を開けケース及び増倍管の隙間に周囲の純水を充満させることで回避することができる。
ケースには当然差圧がかからず水圧による経年変化を心配する必要がない。
万一増倍管が爆縮したとき、ケース内の純水は増倍管体積と比べて少量のため衝撃波を発生せず内部は一瞬
真空になる。
ケースに開けた小孔は、真空状態になったケース内部に時間をかけて(数秒以内)純水を注入する。注水はゆっ
くり行われるため衝撃波は発生しない。
ケースは注水中の数秒間外圧を受けるから、この外圧(水圧)に耐える設計をしなければならない。しかし、常時外圧に
さらされるよりも強度的にはずっと楽である。
アクリルケース断面1
アクリルケース断面2
前面は12ミリのアクリル、後半は7ミリのFRP
金具を使えるように広くする
21
_
アクリル
FRP
R 341
155
624
184
R 176
ネック部を守る
ために広くとる
図中ではアクリル10ミリだが実際は12ミリ
184
後半部詳細
624
_
140
48
R 178
184
68
36
20
20
20
20
8φ 9
PCD600
250
40
R 142
20
155
550
20
145
後半部、穴詳細(前回提案型バンド用穴は未記入)
M8
20
20
20
20
564
140
20
20
M8
B-B'断面
C-C'断面
2.75
大口径バンド部詳細図
M8
φ 523
φ 513
PMT直径の公差の最大値
20
20
20
564
φ 10.5
アクリル
SUS
高耐水圧増倍管
形状
glass
light
Lead and
support
diode
reflector
photocathode
photoelectron
耐水圧
 球の直径500mm、ガラス厚7mmとする
 外圧によって球が座屈を起こす限界圧力は、
pcr = 2Et2/a2[3(1-n2)]1/2
で与えられる。
 E=7×1010 Pa, t=2, a=250, n=0.14として、
pcr = 2.7×107 Pa
となる。この限界圧力は、280気圧に相当する。
予想電気的特性

基本的動作









反射型光電面から光電子が放出される
光電子は10kV型はそれ以上に加速されてダイオードに衝突する
ダイオード中で電子・ホール対を約1000対生成する
電子、ホールは次段のアバランシェダイオードで100倍程度増幅される
電子、ホールは電極から取り出されて出力パルスとなる
ゲイン:105
量子効率:50%
パルス立ち上がり:2nsec以下
パルス立ち下がり:2nsec以下