学校事故と法的問題 原因と対策及び法的責任 プールで死亡事故 • 埼玉県秩父 • プール最初の授業で、25メートル泳ぎ中、動 かない女子児童を後ろを泳いでいた児童が 発見。救急車で搬送後死亡。 • 誰に責任があるか 校長・教師・無 • 予見可能性・回避可能性(教育的・法律的) 学校事故を考える視点 • • • • 学校事故は教育権の侵害 事故を起こさない教育計画と実施 起きた場合の「信義誠実」原則の対応 学校事故の法理 過失責任と無過失責任 学校事故の法1 • 憲法第十三条 すべて国民は、個人として尊 重される。生命、自由及び幸福追求に対する 国民の権利については、公共の福祉に反し ない限り、立法その他の国政の上で、最大の 尊重を必要とする。 学校事故の法2 • 学校教育法 • 第二十一条 義務教育として行われる普通 教育は、教育基本法 (平成十八年法律第百 二十号)第五条第二項 に規定する目的を実 現するため、次に掲げる目標を達成するよう 行われるものとする。 • 八 健康、安全で幸福な生活のために必要 な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養 い、心身の調和的発達を図ること。 学校事故の法3 • 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 • 23条教育委員会の職務権限 • 九 校長、教員その他の教育関係職員並 びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生 及び福利に関すること。 学校事故の法4 • (不法行為による損害賠償) • 民法第七百九条 故意又は過失によって他 人の権利又は法律上保護される利益を侵害 した者は、これによって生じた損害を賠償す る責任を負う。 学校事故の法5 • 国家賠償法 • 第1条〔公務員の不法行為と賠償責任、求償 権〕 • 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務 員が、その職務を行うについて、故意又は過失 によつて違法に他人に損害を加えたときは、国 又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。 • 2 前項の場合において、公務員に故意又は 重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、 その公務員に対して求償権を有する。 授業中の事故 • 授業中の事故は学校と教師の責任 • 最大限の安全配慮が必要 • 教育活動の萎縮は回避する必要 ↑ そのために必要なことは何か 図画工作での事故 • 小学校2年生の図工の授業で版画制作中、 児童が振り向いたときに、別の児童のハサミ が目に入り、左眼角膜裂傷、左上眼瞼裂傷 の傷害を負ったという事件である。このとき、 被害者は学校設置者を国家賠償法によって、 校長と担任を民法の不法行為で提訴した。 過失を認定 • 本件事故は被告鈴木教諭が各児童に対して個 別に作業についての指導を行うために教室内を 見回っていた間に発生したものであり、自分の 座席を離れる児童が数名いた上に、本件事故発 生までに、Sは自分の座席を離れて原告の座席 までハサミを持ったまま歩いていき、同人の座席 の周りを一周していたにもかかわらず、同被告 はSの右行動に全く気付かなかったというのであ るから、同被告には前記のような教室内の児童 の動静を見守るべき義務に反する過失があった というべきであり、その結果原告に傷害を与える ことになったものと認められる。 プール飛び込み事故 • プール飛び込み 教師は禁止していた 高校3年生、十分な注意と監督・1分程度シャ ワーの故障を点検・その間に禁止された飛び 込みで頸髄損傷四肢麻痺 教師に過失はあるか 高校生の自己責任か 判断 (1分でも責任・17歳の判断責任で原告に7割 の過失・3500万) • ではどのような防ぐ手だてがあったか 障害をもった子どもの指導例(1) • 保育園時代恐怖心から通園できなくなった子 どもが、児童相談所の紹介で知的障害児の 通園施設に入園し、平成13年、小学校は普 通学級に入学することになった。入学の前に、 母親が校長、養護学級担当教諭他の教諭に 子どもの状況について説明し、学校側も施設 と自宅を訪問して、配慮事項の確認をした。 障害をもった子どもの指導例(2) • 担任教諭は給食指導を注意深く行ったが、原告 によれば、恐怖心を起こして不登校になった。担 任は家庭訪問をしたりして、事態の改善を図った が、それもかえって子どもの恐怖心を増大させ たとして、保護者は態度を硬化させた。 • 保護者は、転校を教育委員会に願いでたが、 いじめによる転校は認めていたが、給食指導へ の不満は理由にならないとして教育委員会は拒 否、それを不満として、教育委員会の措置、学校 における指導について提訴した。 担任の過失は • スプーンに載せて勧めることが,無理に食べ させることになり,後記のようにPTSDを発症 した状況を再体験させることになるとの認識 を持つに至ることは困難である。そして,この ような認識のない状態で,前記のような給食 指導をすることは,適法な範囲を超えるもの とはいい難い。 (担任は過失なし) 校長と教育委員会の過失は • 本件小学校長には,原告の状態,配慮すべ き事項について,十分な聞き取りを行い,自 閉的特徴と併せて,b教諭及びg教諭に周知 する体制を整えるべき義務があるのにこれを 怠った過失があるというべきである。 • 教育委員会については、当時の転校を認め ることがらではなかったことから、裁量の逸脱 があったとは認めていない。 部活動中の事故 • 部活動は本来的な学校教育の対象ではない が、顧問を教師が担当し、責任を負う形で行 われている。 • 顧問は教師としての仕事があり、十分に監督 することができず、不在のときに事故が起き やすい。 須賀川中学柔道部事件03.10 • 中学1年の女子部員に、2年生の男子部長がリ ンチ的行為→急性硬膜下血腫→植物状態(顧問 は出張中・副顧問は職員室) • 学校の説明 休憩中に倒れた。 • 救急車を45分後に呼ぶ。 • 目撃した生徒への箝口令・被害者への謝罪なし • 教育委員会は事実と異なる報告書(非開示) • 顧問を刑事告訴(不起訴)、市・県・部長の保護 者への民事訴訟(約1億5千万の判決) 休み時間の事故 • 休み時間とは何か • 休み時間の管理責任 傘を投げた事故 • Aは小さいころ交通事故で1カ月の意識不明、 若干知的に遅れているのと粗暴 • 中学2年の担任は優等生のBの班にいれ、B にAの指導をせよと依頼(命令に近い) • Aは粗暴で、手がつけられないので、Bは勉 強ができないと担任に訴えるが、もっとしっか りしないといけないと取り合わず。 • 担任は日常的に体罰を振るう教師で、家庭訪 問のときに、Bを母の前で殴ったこともある • Aは窃盗で補導され、児童相談所で保護され、学校長 に報告したが、行事のために校長はいかなかった。 • D教諭の授業中、Aが後の席のBをからかったので、 BととなりのCが注意をすると、AはシャープペンでB の腿をさし、Bが痛くて声をあげると担任はBを注意。 • 授業終了後、担任はBを注意するために廊下に出た が、AとCも出て注意を聞いた。その後Aは、Bへの腹 いせに下駄箱のBの靴を外に放り出したり、Bに殴り 掛かったりしたが、Bは対応しなかった。BCともう一人 が、危険を感じたことと、顔を洗うために逃げたが、A は洋傘をもち出して、Bに投げつけ、頭にあたって翌 日死亡 洋傘事故の判決を考えてみよう • • • • • 担任の責任は D教諭の責任は 校長の責任は 教育委員会の責任は 市の責任は 学校行事における事故 • 運動会やマラソン大会などは、比較的注意が 徹底し、事故は少ないが、宿泊行事は起きや すい。特に海にかかわる行事に多い。 • 教師の専門性がフォローできない分野の行 事の問題 修学旅行水難事故 • 事実 • サイクリングの途中海で泳ぐ。強い流れで流され、 住民に救助されかかったが、ショックで溺死 • 昼食が遅れ、一斉が順次の移動、海の活動に • 快晴だったが台風接近で波浪注意報 • 争点 • 事前調査と危険告知義務(沖縄波照間島) • 指示義務 • 点呼義務 水難事故判決 • リーフカレント(珊瑚礁のあるところで、沖合に むけた強い流れ)が原因の事故 • 現場の事前調査の義務があった • 高3とはいえ、自主性に任せることは間違い • 十分な注意をしなかった 浜松ボート転覆事故 • 豊橋市の中学1年生の野外活動として、浜名 湖の青年の家でカッターボートの訓練行事 • 90名の生徒、5名の教師・3名の指導員が4 艘のボートに(1艘のボートは専門家不在) • 天候が悪かったが、大丈夫と判断して実施 • 指導員のいない船で生徒が船酔いし、漕げな くなったので、所長がモーターボートで牽引し ていく途中で転覆逆転し、ボートに閉じ込めら れた女子生徒が死亡 生活指導中の事故 • 件数は少ないが、体罰関連が多い。 事故の事例 • 事実 – 小4AがBにぶつかり怪我(掃除中) – 頭部打撲,脳挫傷,頭蓋内出血,頸椎捻挫及び嘔吐 症 • 争点 • 担任は現場にいる義務があるか。(当時ぶつか り遊びが流行?) • 病院に連れて行くまでに時間が経過。(当人は 大丈夫といっていた) 事故1判決 • 担任C教諭は,児童の清掃作業に注意義務を負っていたが,日常的に, 学校内で危険な行動をとることがないように注意指導していた上,本件 事故当時も,クラスの児童が複数の清掃場所を担当しており,その一つ である南校舎階段の清掃区域において清掃指導を行っていたのである から,注意義務を果たしていたというべきもので,それ以上に,児童を指 導監督するために本件教室に在室し,本件教室に立ち寄るなどして,本 件事故の発生を防止するための措置を講じなければならないという具体 的な注意義務を負っていたということはできない。 • 保健室における原告X1の状態のほか,本件事故当日に原告X1を診察 した高梨病院では,頭部レントゲン,MRI及びCT検査をしたところ,特に 異常が認められないとして,嘔吐症状を抑えるための坐薬を処方しただ けで同原告を帰宅させていること,原告X3は,その翌日,原告X1を病院 に連れて行って治療を受けさせていないことなどを総合すれば,養護教 諭及びD校長に,本件事故後に保健室に来た同原告を直ちに救急車で 病院に搬送すべき義務を怠った過失があるとは認められず,他に,これ を認めるべき事由もない。 知的障害者施設 • 事実 • B(重度の自閉症・癲癇・行動障害・知的障 害)が暴行を受けていた(高等部・寮) • 浴室で溺死(入浴後50分に、浴室を見に 行った者が発見。それまでは見守りはなかっ た。 • そのときの勤務者は2名で、1名は前日の採 用で、癲癇を知らなかった。 知的障害者施設判決 • 愛会は,加害者の暴行に予見可能性は,c寮の利用者ら は知的障害者であるから,加害行為を具体的に予測する ことは困難な面があるが,侑愛会は,知的障害者の支援 施設を設置する社会福祉法人であり,知的障害者の行動 への対処については知識や経験を有するはずであり,行 動障害を伴う知的障害者が加害行為に及ぶ可能性があ ることを当然に予測しうるというべきである • 死亡事故に関し,被告Y1がてんかん発作の危険性があ るBの入浴時の見守りを怠り,適切な引き継ぎを怠ったこ とについては被告らも認めており,争いがない。したがって, 本件死亡事故につき被告Y1は不法行為に基づく損害賠 償義務を,被告侑愛会は使用者責任に基づく損害賠償義 務をそれぞれ負うものというべきである。 学校行事中の事故 • 授業とは異なる活動であり、解放的になって 事故につながりやすい。 • 子どもの行動理解と綿密な計画が必要 組み立て体操事故 • 事実 – 組み立て体操4段ピラミッドの頂点から落下 – 5、6年で指導、6年のみ最後まで – 最上位の児童が立とうとしたとき、3段目の児童の一 人の首が沈んだため、落下 – 当日最上位児童が欠席のため急遽代役 • 争点 – 補助教員 – 本人の責任?予測可能性 – 落下時を想定した練習や注意 組み立て体操事故判決 • 十分な安全配慮をしなかった • 落下しそうになったときの注意なし 過失責任主義と無過失責任主義 • 無過失責任主義は保険制度 • 掛け金と補償の比例関係
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