第62回言語・音声理解と対話処理研究会 統語論に基づく新しい意味理論の提案 上山あゆみ(九州大学) [email protected] 生成文法のモデル Numeration (いくつかの 単語の集合) Computational System PF(Phonological Form: 単語を構造化した、音関 連の表示) LF (Logical Form: 単語を構造化 した、意味関連の表示) 2 世界知識 Information Database 具体的なモノ/コト(オブジェクト)が、指標番号で区別さ れ、次のような形式で、その性質とともに記憶されている On:attribute1=value1, attribute2=value2, attribute3=value3,... X19:名称=ジョン, 類=大学生, 年齢=20, ... X225:名称=渡辺くん, ... E65:名称=北京オリンピック, 開催年=2008年, 開催国=中国, ... E923:名称=○○海岸OL殺人事件, 犯人= X45, 被害者= X225, ... E82:類=落とす, 落下物=X53, 行為者=X19,... 3 言語と世界知識の接点 Numeration Lexicon Computational System PF LF (Semantic Representation) SR Working Space Information Database Inference rules 4 言語と世界知識 John kissed Mary. どのようにして、これらが結びつくのか? X 19: 名称=John, 類=大学生, 年齢=20, ... X 22: 名称=Mary, 類=OL, 年齢=24, ... E 614: 類=kissed, Patient= X22, Agent= X19, ... 5 SR (Semantic Representation) John1 kissed2 Mary3 変換 o1: ... John ... o2: ... Mary ... o3: ... kissed ... 知識内の検索と同定 X 19: 名称=John, 類=大学生, 年齢=20, ... X 22: 名称=Mary, 類=OL, 年齢=24, ... E 614: 類=kissed, Patient= X22, Agent= X19, ... 6 SR (Semantic Representation) John1 kissed2 Mary3 変換 xo1: 名称 ... John =John ... linguistic x o : 名称 ... Mary =Mary ... 2 SR e o3: 類 ... =kissed, kissed ...Patient=x2, Agent=x1 知識内の検索と同定 X 19: 名称=John, 類=大学生, 年齢=20, ... X 22: 名称=Mary, 類=OL, 年齢=24, ... E 614: 類=kissed, Patient= X22, Agent= X19, ... 7 語彙の「意味」と構造の「意味」 「John1 Mary2 Alaska3 go4」 変換 x1: 名称=John x2: 名称=Mary x3: 名称=Alaska e4: 類=go, Goal=_, Agent=_ 知識内の検索と同定 X11: ... 名称=John, ... X204: ... 名称=Mary, ... X4743: ... 名称=Alaska, ... E61: ... 類=go, ... 8 xn型のSR式を導入しうる表現 John1 SR式 x1: 名称=John 知識内の検索 x1 = X19 あのOL3 SR式 x3: 類=OL 知識内の検索 x3 = X22 その4人11 SR式 x11: 人数=4人 知識内の検索 x11 = X105 X19: 名称=John, 類=大学生, 年齢=20, ... X22: 名称=Mary, 類=OL, 年齢=24, ... X105: 名称=ビートルズ, 人数=4人, ... 9 同定(Identification) 同定そのものは、言語のシステムの外の操作 であるが、表現によっては、即時の同定を要求する ものがある。 (7) A: ジョンがメアリを推薦したんだって。 B1: (その事実を知らない)へえ、そう。 B2: (そのジョンを知らない)え、ジョンって? 情報量の問題ではない。 (8) A:ジョンっていうやつがメアリを推薦したんだって。 B:へえ、そう。 (9) A: 誰かがメアリを推薦したんだって。 B: へえ、そう。 10 en型のSR式を導入しうる表現 北京五輪2 落ちた1(Theme) 落とした38(Theme, Agent) SR式 SR式 SR式 e2:名称=北京五輪 e1:類=落ちた, e38Theme=_ :類=落とした, Theme=_, Agent=_ 知識内の検索 e2 = E65 知識内の検索 e1 = E22 知識内の検索 e38 = ?? E65: 名称=北京五輪, 開催年=2008年, ... E22: 類=落ちた, Theme=X24, ... E8825:類=落とした, Theme=_, Agent=_... 11 attributeを示してvalueを指す表現 「彼女の年齢をこの欄に書いてください。」 =欄に「25」と書く 「彼女の名前をこの欄に書いてください。」 =欄に「陽子」と書く 「犯人を連れてきてください。」 =その事件の犯人である人物を連れてくる 12 vn型のSR式 X19:名称=John, 類=大学生, 年齢=20, ... X22:名称=Mary, 類=OL, 年齢=24, ... E614:類=kissed, Patient = X22, Agent= X19, ... E614 Patient X22 X22 : Patient(E614) John :名称(X19) 大学生 : 類(X19) 20 : 年齢(X19) vn型のSR式 value :attribute (object) 13 vn型のSR式を導入しうる表現 年齢2 SR式 v2: 年齢( ) オブジェクトの同定 v2 : 年齢(X19) 知識内の検索 v2 =20 犯人4 SR式 v4: 犯人( ) オブジェクトの同定 v4 : 犯人(E246) 知識内の検索 v4 = X22 目標1 SR式 v1: 目標( ) オブジェクトの同定 v1 : 目標(X19) 知識内の検索 v1 = E205 X19: 名称=John, 類=大学生, 年齢=20, ... E246: 名称=○○殺人事件, 犯人=X22, ... 14 attributeを表すが、 valueだけを指しているわけではない表現 「彼女の年齢にはびっくりした。」 ≠「25才にびっくりした」 =「彼女が25才であるということにびっくりした。」 「名前は関係ない。」 ≠「陽子は関係ない」 =「名前が何であるかは関係ない。」 「犯人は知りません。」 ≠「X22は知りません」 =「犯人が誰なのか、知りません」 15 an型のSR式 X19:名称=John, 類=大学生, 年齢=20, ... X22:名称=Mary, 類=OL, 年齢=24, ... E614:類=kissed, Patient = X22, Agent= X19, ... E614 Patient X22 a1: Patient(E614)= X22 a2:名称(X19)=John an型のSR式 a3:類(X19)=大学生 an :attribute(object)=value a4:年齢(X19)=20 16 an型のSR式を導入しうる表現 年齢2 SR式 a2:年齢( )=_ オブジェクトの同定 a2:年齢(X19)=_ 知識内の検索 a2:年齢(X19)=20 犯人4 SR式 a4:犯人( )=_ オブジェクトの同定 a4:犯人(E246)=_ 知識内の検索 a4:犯人(E246)=X22 黄色い1 SR式 a1:_( )=黄色い オブジェクトの同定 a1:色(X79)=黄色い 知識内の検索 a1:色(X79)=黄色い X19: 名称=John, 類=大学生, 年齢=20, ... E246: 名称=○○殺人事件, 犯人=X22, ... X79:色=黄色い,... 17 SR式を導くために知らねばならない語彙の知識 導入しうるSR式の型 en: attribute = value (その表現はvalueに対応する) このattributeは? 他に指定されたattribute(=いわゆる「項構造」)は? xn: attribute = value (その表現はvalueに対応する) このattributeは? 他に指定されたattribute(=いわゆる「項構造」)は? vn: attribute(object) (その表現はattributeに対応する) an: attribute(object)=value その表現がvalueに対応する場合、そのattributeは? その表現がattributeに対応する場合もありうる。 18 構造の違いによる意味の違い x2:類=ギター, 色=白い x3:類=箱 (a) 箱3 白い1 a1:色( )=白い x2:類=ギター x3:類=箱 ギター2の (b) x2:類=ギター x3:類=箱, 色=白い 白い1 ギター2の 箱3 19 修飾のSRとアブダクション ○1: ... α ... ○2: ... β ... α1 β2 |○1 ○1は○2に「関連している」 「関連している」とは? [推論1] ak:Attribute(oi)=Valuej ⇒ oi:.... | ak [推論2] oi:.... Attribute=vj ... ⇒ oi:.... | vj [推論3] oi:....Attribute=oj, ...,Attribute=ok ...⇒oj:.... | ok [推論4 <symmetry>] α:... |β ⇒ β:... |α [推論5 <transitivity>] α:... |β かつ、β:... |γ ⇒ α:... |γ 20 修飾関係 1 linguistic SR フロリダ産1の オレンジ2 a1:産地( )=フロリダ x2:類=オレンジ |a1 「|」を解くためのアブダクション a1:産地(x2)=フロリダ と仮定すると、 [推論1] より、 x2:.... | a1 が導出されるので、 この仮定は適切。 ∴ x2:類=オレンジ,産地=フロリダ [推論1] ak:Attribute(oi)=Valuej ⇒ oi:.... | ak 21 修飾関係 2 linguistic SR 高校生1の 子供2 v2:子供(x1) x1:類=高校生, 子供=v2 v2: ... |x1 x1:類=高校生 v2:子供( ) |x1 と仮定すると、 となり、 [推論2]とsymmetry により、 が導出されるので、 この仮定は適切。 [推論2] oi:.... Attribute=vj ... ⇒ oi:.... | vj [推論4 <symmetry>] α:... |β ⇒ β:... |α 22 修飾関係 3 linguistic SR 落ちた1 おもり2 e1:類=落ちた, Theme=_ x2:類=おもり|e1 e1:類=落ちた, Theme=x2 と仮定すると、 [推論2]とsymmetry により、 x2: ... |e1 が導出されるので、 この仮定は適切。 [推論2] oi:.... Attribute=vj ... ⇒ oi:.... | vj [推論4 <symmetry>] α:... |β ⇒ β:... |α 23 修飾関係 4 linguistic SR 落ちた1 おもり2 e1:類=落ちた, Theme=_ x2:類=おもり|e1 e3:... _=e1, _=x2, ... と仮定すると、 (たとえば、その「おもり」が何かの「落下」を引き起こした ような場合を仮定すると) [推論3]により、 x2: ... |e1 が導出されるので、 この仮定は適切。 [推論3] oi:....Attribute=oj, ...,Attribute=ok ...⇒oj:.... | ok 24 修飾関係 5 linguistic SR つかまえた1 人数2 e1:類=つかまえた, Theme=_, Agent=_ v2:人数( )|e1 e1:類=つかまえた, Theme=Xi, Agent=__ と仮定すると、[推論2]により、 Xi:... |e1 が導出される。さらに、 v2:人数(Xi) と仮定すると、 [推論2] により、 v2:... |Xi が導出される。この2つに対して、 transitivity を適用すると、 v2: ... |e1 が導出されるので、これらの仮定は適切。 [推論2] oi:.... Attribute=vj ... ⇒ oi:.... | vj [推論5 <transitivity>] α:... |β かつ、β:... |γ ⇒ α:... |γ 25 英語の関係節の場合 linguistic SR x1:類=boy|a3 x2:類=person NP a boy1 a3: x1=x2 CP e4:類=saw,Theme=x5,Agent=x2 x5:名称=Mary who2 IP φ3 t2 saw4 Mary5 26 (perceived) phonetic strings frequent patterns Numeration Extractor Lexicon (formal) features Numeration Computational System PF Phonology (generated) phonetic strings LF Information Extractor SR Concepts Working Space Information Database Inference rules input/output process system influence reference (dynamic) database 27
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