「健康日本21」の評価の視点を 含んだ実践活動について (社)地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター 藤内 修二 「健康日本21」の評価 • 評価の5W1H Why 評価の目的は? What 何を評価するのか? Who 誰が評価するのか? When いつ評価するのか? Where どこで評価するのか? How どう評価するのか? 評価の目的は何か? Why • 評価をすることで無力感を味わうだけだったら・・・ 評価しない方がまし?? • 評価をしたら,目標が達成できた! → スタッフも住民も元気が出る (エンパワー) • 評価をしたら,目標が達成できなかった → 事業の見直し(改善)をしよう エンパワーと事業の見直しにつながる評価 • スタッフや住民のエンパワーにつながるためには? • 結果としての数値に表れない努力(プロセス)を も評価すること • 事業の見直しにつながる評価であるためには? • 目標を達成するための条件と事業とがきちんと整理 されていること 何を評価するのか? What • 計画に設定された数値目標値だけが評価だろうか • 評価指標の設定が困難な事業が多い 必ずしも数値で測れないQOLの評価など • 数値化が困難な効果の評価も重要! 「評価の視点」が重要! 評価の視点とは? • 数値化はできないが,「事業の効果を端的に示す 事象」を観察するポイント • 事業の効果を端的に現す事象とは? それが事業のめざすものに他ならない • 事業のめざすものを住民をはじめ関係者と一緒に 具体的に考えることが必要 専門職だけで考えたのでは,「支援」が「導く」こと になってしまう 育児不安を軽減する事業の評価指標は? • 「安心して子育てができる」とはどういう状態か, 具体的に描くことが必要 こうした検討から,次のような指標が考えられた 「ゆったりとした気分で子どもと過ごせる時間が ある母親の割合 」 • このような指標を住民や関係者と一緒に考えることが 望ましい • 既存の指標は,他地域との比較や経年変化が評価 できることが利点 いつ評価をするのか? When • 中間評価は5年後ということになっているが・・ 中間評価で思うような成果が出ていなかったら, それまでの5年間の努力は・・?? 評価は5年(10年)後で良いのか? 10年後の目標 健診受診者に対する ヘルスアセスメント で得られた数値 5年後の目標 必要に応じて軌道修正を早めに行うことが ベースライン値 目標達成のポイント 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 ルーチンワークで経年的にモニターすることが重要 10 年 どうやって評価をするのか? How • 評価のための事業が必要だろうか? そんなことをやっている暇はない!? • 日常業務の中で評価できることがポイント 健康診査の問診やヘルスアセスメントなどの活用 誰が評価をするのか? Who • 評価をするのは専門職だけで良いのか? • 住民や住民組織にも評価ができるはず!! • 自分たちが評価を行うことで,取り組みの見直しに つながる 食生活改善推進員による家族の生活習慣チェック 老人クラブによる高齢者の食生活の実態 食材の入手方法など どこで評価をするのか? Where • 評価のための資料を会議室に集めて行うのが評価 だろうか? • 「事件は会議室で起きているのではない! 現場で起きているのだ!」 (青島俊作) • 住民と接する「現場」で評価ができるはず • 住民に「指導」するスタンスでは,評価はできない • 住民から「学ぶ」スタンスで接することで,数値化で きない生の評価が得られる 地方計画は推進できそうですか? 地方計画の推進が難しい理由 • 予算の制約がある • 日常業務で手一杯でゆとりがない • どの目標から取り組めばいいかわからない • 他課の協力が得られない • 関係機関の協力が得られない • 住民組織や団体の協力が得られない • 推進組織を設置していない 目標値を達成するために • 誰が,どんな取り組みをすればいいか明確に なっていますか? • 「野菜を毎食とるようにする」目標を達成する ためにどんな条件が必要でしょうか? • こうした条件を明確にした上で,取り組みが 検討されているでしょうか? 今年度の取り組みは? • 具体的に何をするかが明確になっていますか • 計画書に具体的に書かれているでしょうか? • 達成すべき数値目標は書いているが・・ 取り組みについては記載がない!? 書かれていなければ, 記載されているが,「充実する」「推進する」 今からでも書き込みましょう 「良い計画」とは という表現でしかない!? 書き込みがされている計画書 取り組みの「主語」がない! 今年度の取り組みは? • 予算が増えないと,記載されている事業等の 実施は困難でしょうか? • 既存の事業の枠組みでは,目標の達成がで きないものでしょうか? • 日常業務は,いつもと同じように「こなして」 いませんか? • 地方計画を策定したことで,日常業務に変化 はないのでしょうか? 関係機関や住民組織は • 自分達の計画だと思ってくれているでしょうか? • 今年度の組織の事業計画に,地方計画の内容 が少しは盛り込まれているでしょうか? 市民は ・・ • 地方計画のことを知っているでしょうか • ダイジェスト版はどれくらい読まれているので しょうか? • 自分たちの計画だと思っているでしょうか? • 市民は自分がどんな取り組みをすればいいか わかってくれているでしょうか? どうしたら推進できるのでしょうか 広く市民に計画を周知しよう • あらゆる機会を通じて,計画の内容(健康課題 とその対策)をPRしましょう • 策定委員や作業部会のメンバー,推進会議の メンバーは「動く広告塔」です • 日常業務の中でも,計画の内容をPRしよう 基本健康診査の中でもPRができるはず! その工夫を考えてみましょう 地区ごとの目標を考えてもらおう • 町内会や自治会,校区ごとに取り組みを検討して もらえると効果的です 校区ごとの推進協議会がお勧め! • 計画の推進に向けて,住民との「対話」が大切です。 • こうした地区単位の取り組みは,市町村合併後も, 継続できるのが強みです 関係機関や住民組織・団体へのPR • 策定プロセス等は,当該の機関や組織から策定 に加わった人に紹介してもらおう • 計画の内容もできれば,保健師や栄養士以外 の人が紹介した方が効果的です! • 年度末など,次年度の活動計画を立てる時期に 紹介をすると,効果的です • ここでも「対話」が大切です! 日常業務を見直そう • 目標達成のために,既存の業務がどのような 位置づけになるのか,整理をしましょう 基本健康診査(事後指導を含む)によって, 達成可能な目標は? • その目標を達成するには,既存の事業をどう 見直したら良いでしょうか? • 目標を達成するための条件を,皆で検討して おくことが必要です 条件を考える際のヒント • 準備因子 その気になるために必要な知識や信念,価値観 • 実現因子 実践するために必要な技術や社会資源,サービス • 強化因子 継続するために必要な実施後の肯定的な感想や 周囲の支援 • 環境因子 実践を容易にする地域の環境 • これらの条件を1つでも満たすために,既存の事業 を見直してみましょう 何から手を着ければいい ? • 優先順位を検討することが望まれます 一度に多くのことはできません • それぞれの組織や団体,家庭や個人ごとに 取り組みの目標を決めてもらいましょう • 計画の周知の際に,それぞれの取り組みの 目標を考えてもらうと効果的です! ● 歯科保健での例(杷木町の事例から) 生活習慣や保健行動 甘い味を覚えた時期が1歳頃 55% (福岡市 40%) 1日のおやつ回数が3回以上 32% (福岡市 12%) 毎日,親が仕上げ磨きをする 43% (福岡市 67%) 歯科医院で定期検診をしてる 0 % (福岡市 33%) 断乳の時期が1歳以前だった 22% (福岡市 49%) どの生活習慣の改善に取り組むべきでしょうか? 優先順位の考え方 Changeability 大 改 善 可 能 性 小 最優先で実施 戦略的な場合 にのみ実施 Evidenceに基づいて 優先順位を検討する 優先的に実施 実施しない 大 小 のが原則 重要度(効 果) Causal Importance 重要度(効果)=因果関係×働きかけが必要な者の割合 上位の指標との関連の強さ 協議会などで,住民や関係者と一緒に協議することも必要 ● 歯科保健での例(杷木町の事例から) 生活習慣や保健行動 甘い味を覚えた時期が1歳頃 55% (福岡市 40%) 1日のおやつ回数が3回以上 32% (福岡市 12%) 毎日,親が仕上げ磨きをする 43% (福岡市 67%) 歯科医院で定期検診をしてる 0 % (福岡市 33%) 断乳の時期が1歳以前だった 22% (福岡市 49%) どの生活習慣の改善に取り組むべきでしょうか? 優先順位の検討 • こうした優先順位を,推進協議会で検討してもらい ましょう (ラフでもOK!) • 優先順位を検討するためのデータを可能な限り, 用意しましょう • 実際はエビデンスが乏しく,限られたデータで検討 することになりますが・・ • これからの事業の中で,こうしたエビデンスを蓄積 することが大切です。 推進組織の運営 (1) • それぞれの組織や機関の取り組みを発表し てもらいましょう • これらの取り組みの中で,協働で取り組める ものが見つかるはずです • 協働で取り組むことで,既存の事業の見直し につながります 推進組織の運営 (2) • 毎年開催しても,新しい話題がない!? 目標値の推移を毎年モニターしておけばOK • 具体的な取り組みが不明確な場合は それを考えてもらうのも推進組織の役割 • 専門部会をおいて,優先順位や具体的な取り 組みを検討してもらいましょう 領域ごと,あるいは,ライフステージごとの 専門部会でもOK! 日常業務での推進のポイント(1) • 基本健康診査をはじめとする既存の事業を見直そう 住民へのサービスの提供(保健指導)の機会から 「傾聴」の機会へ • 各教室では「傾聴」により健康課題の共有を図り, 「対話」により解決策を考える 糖尿病教室で,糖尿病と言われて,何が気になり, 困っているかを「傾聴」しよう 出てきた課題をどう解決するかを「対話」していこう 日常業務での推進のポイント(2) • 個別健康教育もヘルスプロモーションの視点で見直 そう 検査結果だけでなく,QOLや主観的健康観も評価 準備・強化・実現因子や環境因子へもアプローチを • 老人保健福祉計画と「健康日本21」地方計画との整 合性を確認しよう 老人保健福祉計画に盛り込まれた各種の 事業で,どう目標値を達成するのか? 健康を支援する環境づくりに向けて 行政各部局や関係機関との協働 • 食環境の整備:「地産地消で健康づくり」等,農政部 や商工観光部との協働 「健康づくり協力店」等,栄養成分表示とヘルシー メニューの提供 商店街を上げての取り組みへと発展することも 期待できる • 運動環境の整備:教育委員会,土木部等との協働 • 分煙環境の整備:総務課との協働 官公庁がまず模範的な分煙をすることが大切 住民自身による環境へのアプローチ • 住民自身が環境を変える役割があることを認識して もらおう • 地域の食環境や運動環境,分煙環境についての 住民による点検 • 地域の健康づくりを支援する社会資源探し (お宝探し)も有効 住民組織と協働での展開 • 市町村合併に伴い,既存の住民組織も存続の危機 住民組織の育成や支援にも改めて力を入れよう • 行政の「手足」的な組織ではなく,地域のことを一緒 に考えるパートナーとして • 人間関係が希薄になる中で,改めて「地域とのつな がり」を求める人たちも出てきた こうした地域の人材が活躍できる場を作ったり, 交流できる場を作ろう 学校保健との協働 • 「食育」が旬です! 文部科学省,厚生労働省,農水省の3省で推進中 • 食生活改善推進協議会や生産者を巻き込んだ展開に 「地産地消」ともリンクさせて • 子ども達のエンパワメントをめざして,関係者と協議を することも必要 次世代育成支援対策推進法に基づく地域行動 計画の策定も一つのチャンス 職域保健との協働 • 関係者と意見交換をする機会を持ってみよう 商工会議所,地域産業保健センター,保健所 健診センター,働基準監督署,社会保健事務所 • それぞれが健診のあとの事後指導などで,課題を 抱えている! → 困っていることがあれば,連携のチャンス!
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