確率的情報処理の最近の動向 東北大学 大学院情報科学研究科 田中 和之 [email protected] http://www.statp.is.tohoku.ac.jp/~kazu/ 参考資料:田中和之, 樺島祥介, 田中利幸: 確率的情報処理 ---確率モデルと統計 力学を用いた情報処理の新展開, リレー連載/確率的情報処理と統計力学 --様々なアプローチとそのチュートリアル---,数理科学2004年11月号, pp.61-68. 2005年1月24日,KDDI研究所 1 What is SMAPIP? http://www.smapip.eei.metro-u.ac.jp./ 文部科学省 科学研究費補助金 特定領域研究 「確率的情報処理への統計力学的アプローチ」 2002年4月-2006年3月 2005年1月24日,KDDI研究所 2 本講演の参考文献 西森秀稔,田中和之他著, “特集/知識情報処理の統計力学的アプローチ”, 数理科学1999年12月号. K. Tanaka: Statistical-mechanical approach to image processing (Topical Review), J. Phys. A: Math. & Gen.,vol.35, no.37, pp.R81R150, September 2002. 田中和之・樺島祥介編, “ミニ特集/ベイズ統計・統計力学と情報処理”, 計 測自動制御学会誌「計測と制御」2003年8月号 甘利俊一,池田和司,田中和之他著, “特集/統計科学の最前線 ― 新しい 情報科学への技術と手法 ―”, 数理科学2004年3月号. 田中和之,田中利幸,渡辺治,喜多一,堀口剛他著,``連載/確率的情報 処理と統計力学 ---様々なアプローチとそのチュートリアル---‘’,数理科学 2004年11月号から開始. 樺島利幸,田中利幸編,”小特集/確率を手なづける秘伝の計算技法~古 くて新しい確率・統計モデルのパラダイム~”,電子情報通信学会誌2005 年9月号. 2005年1月24日,KDDI研究所 3 確率的画像処理 K. Tanaka, J. Phys. A, vol.35, no.37, 2002. 劣化画像(ガウス雑音) 確率的画像処理手法 MSE:520 MSE: 2137 平滑化フィルター MSE:860 ウィナーフィルター MSE:767 2005年1月24日,KDDI研究所 メジアンフィルター MSE:1040 4 誤り訂正符号 Y. Kabashima and D. Saad, J. Phys. A, vol.37, no.6, 2004. 符号化 G J 0 J0 ノイズ n G J 伝送路 復号化 J J0 n 確率伝搬法により高性能の復号アルゴリズムができる. 2005年1月24日,KDDI研究所 5 CDMA復調法の性能評価 T. Tanaka: IEEE Trans. Inform. Theory, vol.48, no.19, 2002. Y. Kabashima: J. Phys. A, vol.36, no.43, 2003. 移動体通信と統計力学の意外な関係. ノイズ 話し手の信号 拡散符号系列 無線 通信 他人の 会話 拡散符号系列 復号処理 基地局の 受信信号 2005年1月24日,KDDI研究所 この復調方式をベイ ズの公式で確率モデ ル化すると統計力学 でよく知られた確率モ デルで表される. 6 統計力学的アプローチによる公開鍵暗号 Y. Kabashima, T. Murayama and D. Saad, Phys. Rev. Lett., 2000. ゴルフコース問題と情報の秘匿 カップが天辺にあれば 何度得ってもボールは もどってくる 鍵 カップが底にあれば どこから打ってもボー ルはカップインする. エネルギー関数による暗号設計の基本戦略 2005年1月24日,KDDI研究所 7 人工知能 ベイジアンネット 本村陽一, 人工知能学会誌, vol.17, no.5, 2002. AC AR AS AW 無向グラフ上の確率モデル (グラフィカルモデル) 確率推論システム 確率伝搬法(Belief Propagation)が 実現のポイント 2005年1月24日,KDDI研究所 8 情報通信トラフィック T. Horiguchi and S. Ishioka: Physica A, vol.297, pp.521-531, 2001. T. Horiguchi, H. Takahashi, K. Hayashi and C. Yamaguchi: Physica A, vol.339, pp.653-664, 2004. 統計力学でよく知られた確率モデルがインター ネットのパケット流制御に使える. 物理モデルのある種の ダイナミックスとして書 き換えられる. どの経路を通ってパケットが届けられるか はその経路の距離と途中のルーターの混 みぐあいによって決まる. 2005年1月24日,KDDI研究所 9 ポイントは何か 2N 通りの和が計算できるか? x1 True,False x2 True,False W x1, x2 ,, xN x N True,False 厳密に計算するのは一部の特殊な例を除いて難しい. 一部の特殊な例とは何か? 一部の特殊な例に適用できるアルゴリズムを一般 の場合に近似アルゴリズムとして適用できるか. →動くか?精度はどの程度か? 2005年1月24日,KDDI研究所 10 扱い易いモデル 閉路のないグラフ上の確率モデル どの枝もそれぞれで独立に和がとれる. Aa, x B(b, x)C (c, x) D(d , x) a a b c d b A(a, x) B(b, x) C (c, x) D(d , x) a b c d c d 閉路のあるグラフ上の確率モデル それぞれで独立に和をとることが困難. a b d c W a, b, c, d , x a b c d 2005年1月24日,KDDI研究所 11 閉路のないグラフ上の確率モデル P12 x1 , x2 Pa, b, c, d , x , x 1 2 a, b,c, d M 31 x1 M 31 x1 W12 x1 , x2 M 62 x2 M 52 x2 a 4b 3 2 6 d 1 5 ノード1,2の周辺確率分布は ノード1と2にそれぞれ隣接する ノードから伝搬されるメッセージ の積により表される. c 2005年1月24日,KDDI研究所 12 閉路のないグラフ上の確率モデル M12 x2 W12 x1, x2 M 31 x1 M 41 x1 x1 a 4b 3 2 6 d 1 5 c ノード1から隣接ノード2に伝搬するメッ セージは(ノード2を除く)ノード1の隣接 ノードからノード1に伝搬されるメッセー ジの積により表される. M M 2005年1月24日,KDDI研究所 メッセージに対する 固定点方程式 13 確率的情報処理と確率伝搬法 ベイズの公式 確率的情報処理 確率モデル 確率伝搬法 J. Pearl: Probabilistic Reasoning in Intelligent Systems: Networks of Plausible Inference (Morgan Kaufmann, 1988). S. Ikeda, T. Tanaka and S. Amari: Stochastic reasoning, free energy, and information geometry, Neural Computation, vol.16, no.9, pp.1779-1810, 2004. 2005年1月24日,KDDI研究所 14 画像修復の確率モデル 劣化画像 原画像 白色ガウス雑音 雑音 通信路 原画像 劣化画像 尤度 事前確率 事後確率 Pr劣化画像 | 原画像 Pr原画像 Pr原画像 | 劣化画像 Pr劣化画像 周辺尤度 2005年1月24日,KDDI研究所 15 画像修復の事前確率分布 1 2 2 PrF f exp f x , y f x 1, y f x , y f x , y 1 2 ( x , y ) 2値画像の例 y 0.25 0 .5 1 ( 1 4) ( 1 2) ( 1 1) x Paramagnetic Ferromagnetic 0.44068付近でゆらぎが大きく なる. 臨界点 2005年1月24日,KDDI研究所 16 ベイズ統計・最尤推定と画像処理 Pf 画素 事後確率 Pf g, , x 周辺尤度 g g 原画像 加法的白色ガウス雑音 劣化画像 g x, y f x, y ~ N 0, 2 事前確率 y Pg f , f Pg f , Pf 計算困難 Pg , P g , P g z , P z dz ˆ ,ˆ arg max Pg , , fˆx , y z 2005年1月24日,KDDI研究所 x, y P z g , ˆ , ˆ dz 17 確率伝搬法(Belief Propagation) のメッセージ伝搬規則 M 12 f 2 W12 f1 , f 2 M 31 f1 M 41 f1 M 51 f1 df1 M M 3 M 31 ( f1 ) M 41 ( f1 ) M12 ( f 2 ) 1 4 M 51 ( f1 ) 5 2 メッセージに対する 固定点方程式 メッセージが計算できれば 統計量が得られる 2005年1月24日,KDDI研究所 18 固定点方程式と反復法 固定点方程式 反復法 繰り返し出力を入力に入れることにより, 固定点方程式の解が数値的に得られる. M1 M 0 M 2 M1 M3 M2 * * M M yx y M1 0 y (x) M * M1 2005年1月24日,KDDI研究所 M0 x 19 Image Restoration by Gaussian Graphical Model ˆ ,ˆ arg max Pg , 40 , MSE ˆ ˆ LBP 327 0.000611 36.302 GBP 315 0.000758 37.909 40 MSE MSE ˆ ˆ LBP 260 0.000574 33.998 GBP 236 0.000652 34.971 2 1 f x, y fˆx, y | | x, y 2005年1月24日,KDDI研究所 20 Image Restoration by Gaussian Graphical Model and Conventional Filters MSE Degraded Image 40 Original Image LBP GBP LBP MSE GBP 2 1 f x, y fˆx, y | | x, y MSE 327 Lowpass Filter (3x3) 388 (5x5) 413 315 Median Filter (3x3) 486 (5x5) 445 Wiener Filter (3x3) 864 (5x5) 548 (3x3) Lowpass 2005年1月24日,KDDI研究所 (5x5) Median (5x5) Wiener 21 Image Restoration by Gaussian Graphical Model and Conventional Filters MSE Degraded Image 40 Original Image LBP GBP LBP MSE GBP 2 1 f x, y fˆx, y | | x, y MSE (3x3) 241 260 Lowpass Filter (5x5) 224 236 Median Filter (3x3) 331 (5x5) 244 Wiener Filter (3x3) 703 (5x5) 372 (5x5) Lowpass 2005年1月24日,KDDI研究所 (5x5) Median (5x5) Wiener 22 Gray-Level Image Restoration (Spike Noise) Original Image Belief Propagation Lowpass Filter Median Filter MSE: 2075 MSE: 244 MSE: 217 MSE:135 MSE: 3469 MSE: 371 Degraded Image MSE: 523 2005年1月24日,KDDI研究所 MSE: 395 23 まとめ 確率的情報処理の動向 確率伝搬法と画像処理 1. 2. 3. 4. 5. References K. Tanaka and J. Inoue: IEICE Trans. on Information and Systems, Vol.E85-D, No.3, pp.546-557, 2002. K. Tanaka, J. Inoue and D. M. Titterington: J. Phys. A, Vol. 36, No. 43, pp.11023-11036, 2003. 田中和之: 計測と制御, Vol.42, No.8, pp.631-636, 2003. K. Tanaka, H. Shouno, M. Okada and D. M. Titterington: J. Phys. A, Vol.37, No.36, pp.8675-8696, 2004. 田中和之: 数理科学2004年3月号, pp.15-21. 2005年1月24日,KDDI研究所 24
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