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エージェントベース経済学試論
井庭 崇
Iba Takashi
慶應義塾大学 政策・メディア研究科後期博士課程2年
日本学術振興会特別研究員
フジタ未来経営研究所リサーチアソシエイト
[email protected]
http://www.boxed-economy.org/
Today’s Topic
「エージェントベース経済学試論」
現在取り組んでいる Boxed Economy について
エージェントベース経済学試論
http://www.boxed-economy.org/
個人的な出発点
Cf. 音楽CDの購入基準アンケート
経済や社会の成長っていったい何なんだろう?
好きなアーティストだから
71.5
聞いて気に入ったから
50
年齢とともに経験するライフステージによって、考え
29.5
好きなジャンルだから
ることや好みは変化していく。
ヒットしているから
22
人はそれぞれお互いに、いろいろな面で影響しあって
16
話題の曲/ジャンルだから
15.5
友人/知人の薦めで
いる。
話題のアーティストだから
7
音楽雑誌の評価で
6
0
20
40
60
80 (%)
?
「社会について理解したい。」
井庭崇, 広兼賢治, 高部陽平, Boxed Economy Prototype 0, 1999
?
「社会について理解したい。」
「社会」というブラックボックス
「個人」というブラックボックス
経済学:
貨幣の関係
政治学: 権力の関係
社会学:
多様な関係
構成的手法 (Constructive Method)
対象のモデルをコンピュータ上につくりこみ、その
振舞いを観察し、モデルを修正していく。この模索
過程を通じて対象を理解する方法。
•モデル
•初期値
振舞い
(現象)
構成的手法の手順
対
象
の
観
察
特
徴
の
抽
出
構成モデル
モ
デ
ル
の
作
成
シ
ミ
ュ
レ
ー
シ
ョ
ン
結
果
の
評
価
比対
較象
と
・
検モ
討デ
ル
の
井庭崇, 福原義久, 『複雑系入門』, NTT出版, 1998
より建設的な構成的手法へ
More Constructive Constructive Approach!
より建設的な構成的手法に向けての私たちの取り組み
Boxed Economy
構成的手法による社会シミュレーション研究の支援
人工経済シミュレーションのための共通言語
Boxed Economy 基礎モデル
時間
経路
情報
空間
生成
付随
所有財
財
貨幣も財の
一種として扱う
関係
経済主体
記憶
社会集団
個人
機能(思考・行動)
欲求
Boxed Economy 基礎モデル
空間
経路
0..*
情報
0..*
時間
1
生成
1
付随
所有財
1
財
1
1
経済主体
1
1
貨幣も財の
一種として扱う
1
1
0..*
1
1
社会集団
関係
0..*
記憶
個人
0..*
1
0..*
※クラス図
UML(統一モデリング言語)表記
欲求
機能(思考・行
動)
井庭崇, 中鉢欣秀, 高部陽平, 田中潤一郎, 上橋賢一, 津屋隆之介, 北野里美, 廣兼賢治,
「Boxed Economyの実現に向けて: エージェントベース経済シミュレーションのための基礎モデル」,
電子情報通信学会「人工知能と知識処理」+情報処理学会「知能と複雑系」合同研究会, 2001
より建設的な構成的手法に向けての私たちの取り組み
Boxed Economy
モデル・コンポーネント
時間
経路
情報
空間
Boxed Economy 基礎モデル
生成
付随
所有財
経済主体
財
貨幣も財の
一種として扱う
関係
記憶
社会集団
個人
機能(思考・行動)
欲求
シミュレーション・プラットフォーム
社会モデルのインクリメンタルな作成プロセス
Feedback
Application
Feedback
Application
Prediction
or Explanation
Prediction
or Explanation
エージェントベース経済学
Agent-Based Economics
エージェントベース経済学に向けて
Agent
「動因、(ある変化を起こす)力」
– Cf. ラテン語 agere = 「する、行う」
個人
– ひとりひとりの人間
社会集団
– 家族、地域社会、国、企業、学校、政府など
異質性(heterogeneity)
多様性(diversity)
特徴1
社会集団は、個人または社会集団を構成要素としてもつ。
複数の社会集団に属することができる。
特徴2
エージェントを経済社会モデルの最小単位としない。
エージェントは複数の[機能]をもつ。
Ex. 個人の消費者として側面
特徴3
エージェントは自己の境界決定・変更が可能
■構成員の増減
■機能の組み換え
■エージェントの生成・消滅
特徴4
ダブル・リアリティの経済社会モデル
「ダブル・リアリティ(二重の現実性)」
–「唯物論的リアリティ」
–「現象学的リアリティ」
- Double Reality -
[橋爪 1978, 1993]
エージェントベース経済学の射程
広がりと変化の経済学へ
– 制度や構造の変化と波及効果
• 金融政策の波及効果の分析
• 社会保障制度と人々の行動の分析
• 需要不足と消費の駆動力の分析 など
多様な自由の経済学へ
– アマルティア・センの潜在能力アプローチ
潜在能力アプローチ
– 人々が享受する自由というものを増大させることを開発(発
展)であると捉え、従来のようなGNPの増加や所得の向上、
工業化の進展ということでのみ開発を捉えるアプローチは
不十分であると指摘
「潜在能力」(capability)
– ある人が選択できる「機能」の集合のことであり、その人
に何ができるかという可能性を表している
– ここでいう機能とは、「ある状態になること」や「何かを
すること」を指す言葉
(Photo)http://www.economics.harvard.edu/faculty/sen/sen.html
潜在能力アプローチの
現実分析における限界
「潜在能力集合全体に関する情報を集めることの困
難さゆえに、このような潜在的な利点も生かすこと
ができないということがしばしば起こることも否定
できない」[Sen 1992]
(観察不可能な潜在能力集合を扱うかわりに)「現実問
題としてはしばしば『達成された機能』のみを分析
するにとどまらざるをえない」
[Sen 1985, 1992]
戦略的学際研究
•「総合化の持つ遠心力が議論を拡散させるのを避ける」(西部75)ために、
ここではあえて経済行動に焦点を絞った上で、社会科学の総合化を準備するとい
うことが重要
•これはまさに「科学的総合という大胆なテーマに臆病に近づくという方法」
(西部75)なのである
Summary
「エージェントベース経済学試論」
現在取り組んでいる Boxed Economy について
–
–
–
–
より建設的な構成的手法の支援に向けて
構成的手法による社会シミュレーション研究の支援
人工経済シミュレーションのための共通言語
モデルのコンポーネントとフレームワーク
エージェントベース経済学試論
– 特徴のいくつかを考察
– ひとつの可能性として潜在能力アプローチ
http://www.boxed-economy.org/
シミュレーション――動きの中で理解する
Boxed Economy 基礎モデルにおける
経済主体としての[社会集団]・[個人]
空間
経路
0..*
情報
0..*
時間
1
生成
1
付随
所有財
1
財
1
1
経済主体
0..*
集約
社会集団
1
1
1
継承
貨幣も財の
一種として扱う
関係
0..*
1
1
継承
1
記憶
個人
0..*
1
0..*
欲求
機能(思考・行
動)
Boxed Economy 基礎モデルにおける
『エージェント』
エージェント
経済主体
1
記憶
社会集団
個人
0..*
欲求
機能(思考・行
動)
理論化
理論化
新古典派
ケインズ学派
ネオ・オーストリア学派
シカゴ学派
現代制度学派
エージェントベース
経済学
表現
現実世界
人工経済社会モデル
経済理論
cf.
経済循環のシミュレーション
における重要先行研究
N.Basu, R.J.Pryor, and T.Quint (1998)
http://www-aspen.cs.sandia.gov/
cf. Economics Framework for Swarm
経済シミュレーションのための
フレームワークに関する注目研究
Charlotte Bruun (2000)
http://www.socsci.auc.dk/institut2/empl/cbruun.html
cf. バーチャルエコノミー
[出口 2000]
消費者の意思決定モデル
EBMモデル
欲求認識
内的情報探索
個人差
・消費者の資源
・動機づけと関与
・知識
・態度
・性格、価値観、
ライフスタイル
情報探索
露出
刺激
・マーケティング
によるもの
・その他
外的情報探索
購買前
代替案評価
注意
理解
記憶
環境の影響
・文化
・社会階層
・対人的影響
・家族
・状況
購買
受容
消費
保持
購買後
代替案評価
不満足
満足
処分
Engel, J.F., Blackwell, R.D., and Miniard, P.W., Consumer behavior (8th ed.), The Dryden Press, 1995
Boxed Economy Project
Boxed Economy
マルチエージェントによる人工経済
マルチエージェントモデル
– 主体性と行動ルールをもっている多数の
エージェントが相互作用するモデルのこと
人工経済アプローチ
– コンピュータ上に人工的に経済モデルを
作成することを通して現実の現象を理解する
Boxed Economy Simulation Platform
構成的手法によるシミュレーション研究の効率化
社会モデルの部品化と再利用化
複数の研究者による社会モデルの並行開発
社会認識を外部化して伝達するための新しいコード
体系の構築へ
< Small World 1 > におけるエージェント
社会集団
個人
公的組織
政府
個人
中央銀行
金融機関
銀行
×100人
第一次産業
農林水産業
エネル
ギー
製造(設備機器)
製造(部
品)
建設業
製造(食
品)
製造(消費
財)
製造(耐久
財)
運輸業
マスコミ
不動産
第ニ次産業A
第ニ次産業B
第三次産業
小売業
< Small World 1 > 内の取引関係
製造業
(1:食品)
小売業(店)
農林水産業
1A社
総合店A
1B社
製造業
(5:材料・部品)
1C社
総合店B
製造業
(2:消費財)
5A社
5B社
総合店C
2A社
2B社
個人
専門店A
2C社
エネルギー業
製造業
(3:耐久消費財)
専門店B
3A社
専門店C
3B社
製造業
(4:設備機器)
3C社
建設業
多くのエージェントと取引する企業
運輸業
不動産業
マスコミ
(新聞)
Boxed Economy Project
Takashi Iba
Yoshihide Chubachi
研究プロデューサー・代表
武藤佳恭・竹中平蔵 研究室
政策・メディア 博士2年
開発プロデューサー
大岩元 研究室
政策・メディア 博士3年
Junichiro Tanaka
Yoshiaki Matsuzawa
研究ディレクター
開発ディレクター
斉藤信男 研究室
環境情報学部4年
大岩元 研究室
政策・メディア 修士1年
Masaharu Hirokane
Kotaro Asaka
竹中平蔵・武藤佳恭 研究室
環境情報学部3年
大岩元 研究室
政策・メディア 修士1年
アドバイザー
Heizo Takenaka
Yoshiyasu Takefuji
Kenichi Kamihashi
Ken Kaiho
小熊英ニ 研究室
環境情報学部2年
大岩元 研究室
SFC研究所研究員
Satomi Kitano
(合資会社ニューメリック)
Hajime Oiwa
熊坂賢次 研究室
総合政策学部2年
サポート
Ryunosuke Tsuya
Yohei Takabe
竹中平蔵 研究室
総合政策学部2年
PriceWaterHouseCoopers,Inc.,
SFC研究所研究員
フジタ未来経営研究所
文部省科研費
森泰吉郎記念研究振興基金
Boxed Economy Project の歩みと、これから
1999
政策メッセ’99 ←
MACC’99 ←
2000
CIEF2000 ←
JAFEE2000 ←
政策メッセ2000 ←
2001
SIG-ICS123 ←
JAFEE2001 ←
…
[4月~] In-The-Box Project 発足
エージェントベース社会シミュレーションのコンポー
ネント・ライブラリの構築を目指す。
[6月~] Boxed Economy group 発足
シミュレーションの対象を一般経済を対象に絞る。
[4月~] Boxed Economy Project として独立
プロジェクト体制や運営方法を改め新たにスタート。
[1月~] シミュレーション・プラットフォーム (version one)
研究開発開始
[夏] シミュレーション・プラットフォーム
(version one) 公開・試用
+ Small World
http://www.boxed-economy.org/