九州大学大学院芸術工学府 先導的デジタルコンテンツ創成支援ユニット 新しいコンテンツの姿と求められる人材像 コンテンツ産業へのイノベーションの導入のために 5/29/2008 株式会社 シンク 代表取締役社長 森 祐治 日本政府は「コンテンツ大国」を宣言した – 政府知的財産戦略本部は、毎年発表する『推進計画』において、 コンテンツ・ビジネスの育成に注力することを明記 – 2006年、経済産業省『経済成長戦略大綱』では、「今後10年間 でコンテンツ市場を約5兆円拡大する」ことを宣言 – 結果、大学・大学院など高等教育機関における人材育成が 活発化し、多くの「コンテンツ人材」が育ってきている – しかしながら、古い体質を有するメディア・コンテンツ業界の変 化は遅く、依然として閉鎖的な状況にあるといってよい… – そんな状況の中、インターネットの普及に加えて経済不況の進 行によって、メディア産業の低迷が深刻化しつつある 2015/10/1 2 コンテンツへの注目にもかかわらず市場は縮小? 日本コンテンツ産業の市場規模* (億円) 132,736 132,187 135,263 138,350 137,909 138,994 – 全体としては微増、ほぼ横這い – しかし、依然として多くが「アナログ」 な産業部分が占めている 図書 新聞 – 音楽音声のようにデジタル配信が 進んだ領域は減少傾向明確 ゲーム – 映像図書、ゲームへのネット配信導 入で市場規模縮小は確実? 音楽 音声 – 直観的には、コンテンツの活躍 機会がより増えているという印象 があるが、なぜ? 映像 * デジタルコンテンツ協会「デジタルコンテンツ白書」より 2015/10/1 3 既存メディアの勢力は急速に低下しつつある 地上波テレビ局平均世帯視聴率 CAGR=▲1.7% –全国型マスメディアの衰退は 徐々にだが確実に起っている –フリーペーパーが都市部を中心 に勃興(2007:4,320億円) ビデオリサーチ『テレビ視聴率年報』関東地区6~24時の週・年平均 フリーペーパーの市場規模(億円) 日刊紙の発行部数 CAGR=▲1.6% CAGR=38.7% メディア開発綜研「情報メディア白書2007」 日本新聞協会調査(毎年10月)を基に作成 Copyright © 2007 THINK Corporation All rights reserved. 2015/10/1 4 新興メディアでは「無料ビジネスモデル」が台頭 DVDビデオ売上金額* インターネット利用人口* * 億円: 社団法人日本映像ソフト協会発表 コミック・コミック誌販売金額* * 万人: 総務省通信利用動向調査 – Googleをはじめ、ネット上の サービスの多くが利用者に 経済的な負担を求めていない コミック誌 – 携帯電話も「勝手サイト」と 呼ばれる会員制無料サービス 利用が急増中 コミック * 億円: 社団法人全国出版協会 出版科学研究所発表 2015/10/1 5 クリス・アンダーソンは「無料ビジネス」を6つに分類した * – “Freemium” 無料となるもの: 利用可能なヒト: ウェブのソフトウェアやサービス、一部のコンテンツ 基本バージョンの利用者 – Advertising 無料となるもの: 利用可能なヒト: コンテンツやサービス、ソフトウェアなど だれでも – Cross-subsidies 無料となるもの: 利用可能なヒト: 有償のモノに付随するものであればなんでも 有償で購入するつもりがあればだれでも – Zero marginal cost 無料となるもの: 利用可能なヒト: 流通コストが大きかったもの(音楽など) だれでも – Labor exchange 無料となるもの: 利用可能なヒト: ウェブ・サイトやサービス だれでも: 利用そのものが別の価値を形成する – Gift economy 無料となるもの: 利用可能なヒト: オープンソフトやユーザー生成コンテンツなど だれでも * クリス・アンダーソン: 「ウェブ2.0」や「ロングテール」といった造語で知られるWIREDの編集長で、現在「無料ビジネス」の著作を準備中 Anderson, Chris. (2008) “Free! Why $0.00 Is the Future of Business.” on WIRED MAGAZINE 16.03 (http://www.wired.com/techbiz/it/magazine/16-03/ff_free) 2015/10/1 6 無料ビジネスは、ただ「観る」「聴く」だけで成立しない 利用者の行動を取り込む「経験デザイン」によって無料を正当化 検索大手のグーグ ルはクリックを反映 した「Page Rank」 によって、新たなリ スト=コンテンツを 生成することで広 告商品を作った 映像投稿サイトの ユーチューブはコ ンテンツそのもの である映像を利用 者から集め、ラン キングによって広 告価格を決めた セカンドライフは、 アバターを作ると ころからユーザー の参画を求め、日 常生活同様の参 画によるコミュニ ケーションを求め た 世界的大手SNS フェースブックは、 ユーザーに書き込 みを求めるだけで はなく、様々なアプ リケーション開発・ 公開を奨励した 2015/10/1 7 「無料で利用」の背後でカネが流れる仕組みが必要 • 提供者⇄利用者などの単 純な関係性では成立しな い • 我々にとってなじみの深い テレビ放送も、多くのプ レーヤーにより成立: メディア コンシューマ クリエータ クライアント – – – – 広告主 テレビ局 制作者 視聴者 • 柔軟にビジネス・モデルを デザインするスキルをもっ た人=プロデューサーが 求められている 2015/10/1 8 コンテンツではなくメディアを作り出す機会が溢れている ケータイや個人情報などをリアルタイムで組み合わせる ライブカメラ 地理情報 October 2005 accident in which her Mercedes-Benz collided with a van 建造物 情報 Tom’s Coffee Shop 7:00 to 22:00 Comments: MORE> 既存のカーナビと同様の出力を、 自動的にリアルタイムでネットワー クでマッシュアップし、現実の画像 に各種情報を合成して提供: オーグメンテッド・リアリティへ 交通情報 ・ ・ ・ TO MUSIUM 5 more min. to walk 利用者情報 9 2015/10/1 9 求められるコンテンツ人材像とは: プロデュース力 コンテンツだけではなく、利用シーンまで含んだデザイン力が必須 広義のプロデュース メディア ビジネス 狭義のプロデュース プロデューサ コンテンツ クリエータ クライアント テクノロジー 2つのトライアングルを ブリッジできる人材が不足 2015/10/1 10 世界のメディアコンテンツ経営者は変化を認識 Q: マルチプラットフォーム 配信でコンテンツ産業 は成長するか Q: コンテンツ企業は Q: 著作権管理技術導入 配信のオープン化を推 でコンテンツ配信は大 進しているか きな成長が可能か いいえ はい Q: HD品質映像のイン ターネット配信は今後 も高コストである * Q: P2Pによるコンテンツ 配信が一般化するの には時間がかかる アクセンチュアが大手メディア・コンテンツ企業の経営者1000名を対象に実施した調査 “Accenture‘s Global Content Study 2008: The Challenge of Change: Perspectives on the Future for Content Providers” より 2015/10/1 11 既存メディアの範疇から活動領域を拡大する 「モノを作らない」強みを転用するという発想を コンテンツ産業のワーク・プロセス 既存メディア 周辺適応 領域 医療・金融などの 専門領域の教育領 域を対象化 直接応用 領域 プレゼンテーション制 作支援などホワイト カラー生産性分業 間接応用 領域 製造業におけるプロ トタイピングなどへの スキル適用 企画 開発 制作 流通 回収 2015/10/1 12 まとめとして – コンテンツへの国家的な注目がなされるようになったことは喜ぶ べきことだが、その視線の多くは既存のメディアに依存したコン テンツに注がれている – 一方で、既存メディアはテクノロジーと密接につながった新興メ ディアに押され、これまで勢いを失いつつある – 新興メディアは固有のビジネスモデルを擁さず、コンテンツの提 供者にビジネスモデルのデザイン自体を求める傾向が強い – 結果、利用者獲得が容易な無料ビジネスモデルが採用される 傾向が強いが、そのデザインを行えるプロデューサーは少ない – これらの動向を十分に理解した上で、新たなコンテンツ/メディ アのデザインを志すものには、可能性が大きく開かれている 2015/10/1 13 株式会社シンク アニメーションおよびデジタル・コンテンツへの投資・プロデュースを 行う、日本ではユニークな業態をとる「コンテンツ・キャピタル・カンパ ニー」。 独立アニメプロデューサーとして国内外で知られる竹内宏彰によっ て1988年に創業。2005年から森祐治が代表に就任し、現在の事業 形態に移行。メディア/コンテンツ業界のイノベーターとして、国内 外で積極的な活動を行っている。 〒105-8085 東京都港区虎ノ門5-11-1 オランダヒルズ森タワーRoP 708 TEL: 03-5405-3771 FAX: 03-5405-2230 Web: http://www.think.ne.jp eMail:contact@think.ne.jp 2015/10/1 14
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