PowerPoint プレゼンテーション

薬剤感受性mRNA検査について
200 年
月 日(
病院
)
(株)エスアールエル
遺伝子・染色体解析センター
遺伝子検査課
2005.5.1作成
何を測定して、何がわかるのか?
mRNAの発現量
Real-time PCR法にて定量
抗癌剤の至適投与量、投与法、投与効果を予測できるので
は?
“エビデンスに基づくテーラーメイド治療”
薬剤感受性遺伝子検査について
 調べた結果をもとに患者様一人一人に応じた抗癌化学療
法をデザインし、個人の希望に応じた至適投与量、投与法
を選択し、より効果的な抗癌化学療法の手助けが可能とな
ります。
 抗癌剤は化学物質を基にした薬剤で癌細胞の増殖を直接
阻害して、癌細胞を死滅させることを目的とした薬です。
効かない抗癌剤を使ってしまった場合、正常な体の細胞に副作用が
起こります。抗癌剤の効く、効かないに個人差があるように,副作用の
強さにも個人差があります。つまりもし効かない抗癌剤で治療が行われ
た場合、癌が良くならない上に副作用で体が弱り、かえって寿命を縮め
てしまったり、副作用のために次の治療が遅れ、癌を進行させてしまっ
たりする危険性があります。この様な不利益をできるだけ避けるために
薬剤感受性遺伝子検査は有意義な手段といえます。
検査項目
 TS mRNA定量
 DPD mRNA定量
 MDR-1 mRNA定量
遺伝子名
TS mRNA
(チミヂン合成酵素)
何に関与しているのか
腫瘍細胞のDNA合成に関与
しています。
何がわかる
治療効果
DPD mRNA
(ジヒドロピリミジン脱水酵素)
抗癌剤の分解に関与してい
ます。
副作用
MDR-1 mRNA
(多剤耐性)
抗癌剤を癌細胞から排出す
ることに関与しています。
抗癌剤耐性
TS mRNA:抗癌剤

5-FUの標的酵素のmRNA
RNAに取り込まれて、RNAの機能障害を起こす。
5-FUが結合することにより、DNA合成が阻害される
 癌細胞は増殖を抑制される
TSが多い≒TS mRNA発現量が高い
5-FU系抗癌剤
5-FU・テガフール
TS-1およびUFT
 5-FUはTSの働きを阻害しきれず、
抗腫瘍効果が低下すると推測
弊社TS mRNA測定原理特許出願中
(Full Length mRNA検出系)
DPD mRNA:抗癌剤

5-FUを分解
→ F-β- alanine
細胞内の5-FU濃度を左右する
5-FU系抗癌剤
5-FU・テガフール
TS-1およびUFT
DPD活性が高い≒DPD mRNA発現量が高い
抗腫瘍効果が低下すると推測
F-β- alanineによる副作用が増強されると推測
5-Fluorouracilの代謝経路
FUR
F-β-alanine
FUMP
FUDP
F-RNA
FUTP
(2-フルオロβ-アラニン)
OPRT
UrdPase
RR
[1] 5-FUが核酸に取り込ま
れ(F-RNA、F-DNA)、核酸に
機能障害をきたすこと
FdUDP
FdUTP
DPD
FUdR
FdUMP
DPDmRNA
5-FU
TdRPase
dUMP
[2] 5-FUの代謝産物である
FdUMPと還元型葉酸、そしてde
novo DNA合成酵素である
thymidylate synthase(TS)
が三者共有結合体を形成するこ
とにより、DNA合成が阻害される。
5,10-CH2FH4
TSmRNA
F-DNA
TS
dTMP
dTDP
dTTP
DNA
DPD:dihydropyrimidine dehydrogenase,
OPRT:orotate phosphoribosyl transferase,
TS:thymidylate synthase,
FdUMP:5-fluorodeoxyuridine,
RR:ribonucleotide reductase
MDR-1 mRNA:多剤耐性を獲得させる
 細胞膜に存在し細胞内の薬剤を細胞外に排出する
多剤
ドキソルビシン・イリノテカン・
エトポシド・エピルビシン・
タキソール・ビンブラスチン・
メソトレキセート・STI571
 MDR-1の数が多い≒MDR-1 mRNAの発現量が高い
 細胞内の薬剤濃度を保ち
にくく抗腫瘍効果が低下
すると推測
まとめ
TS(Thymidylate synthase)mRNA
抗癌剤5-FUの標的酵素TSの mRNA
5-FUがTSと結合することによりDNA合成を阻害し,癌細胞の増殖は抑制されます。
一般的に、TSが少ない≒TS mRNA発現量が低いとき5-FUがTSの働きを効率よく阻害し、
抗腫瘍効果が期待できると推測されます。
DPD(Dihydropyrimidine dehydrogenase)mRNA
抗癌剤5-FUを分解する酵素DPDのmRNA
DPDは肝臓において5-FUを代謝します。標的細胞においても取り込まれた5-FUを分解
することにより、細胞内薬剤濃度を左右します。
一般的に、 DPDが少ない≒DPD mRNA発現量が低いとき細胞内の5-FU濃度が保たれ、
抗腫瘍効果が期待できると推測されます。
MDR -1(Multidrug Resistance-1)mRNA
多剤耐性を獲得させるMDR-1の mRNA
MDR-1は細胞膜に存在し,主に抗生物質や植物性アルカロイドなどの
天然産物中の抗癌剤を細胞外に排出することで、細胞に多剤耐性を獲得させます。
一般的に、 MDR-1が少ない≒MDR-1 mRNA発現量が低いとき細胞内の5-FU濃度が保たれ、
抗腫瘍効果が期待できると推測されます。
5-FU系抗癌剤
5-FU・テガフール
TS-1およびUFT
5-FU系抗癌剤
5-FU・テガフー
ル
TS-1およびUFT
多 剤
ドキソルビシン・イリ
ノテカン・エトポシド
・エピルビシン・タキ
ソール・ビンブラスチ
ン
メソトレキソート・
STI571、その他多種
留意点
 TS遺伝子多型について:TSの非翻訳領域にある「繰り返し配列」の数による遺伝子型とTS発
現量との関連があります。「繰り返し配列」が直列に並ぶことからtandem repeat とも呼ば
れます。「繰り返し配列」は、翻訳後調節に関与していることが判明しつつあります。TS
mRNA 5‘側の28塩基対(base pair:bp)を単位とするtandem repeatの数と5-FUの奏効率との関
係がある様です。また、3’側のstart codonから1429番目の非翻訳領域に、6bpを単位とする
配列の有無が奏効・非奏効に相関する様です。
本検査はこの様な多型を検出する検査とは異なりますので、ご注意下さい。
 DPD欠損者の重篤な副作用について:稀にDPDの遺伝情報に変異が認められ、DPDの働きが低
下している又は欠損している患者様がいます。この場合は血中の5-FU濃度が高くなり過ぎ、
重篤な副作用を引き起こす場合があります。DPDの場合は、exon 14のinvariant splicing
doner siteにpolymorphismが存在すると、DPD pre-mRNAのsplicingの時にup streamにskip
が起きて、wild typeのmRNAに比べて165塩基のdeletionを生じます(exon14-skipping
mutation(IVS14+ 1G>A) )。アミノ酸にして55個分短くなるので、このmRNAから翻訳される
DPD蛋白には活性がありません(homoでmutationがあると完全にDPD活性が欠損する)。
本検査はこの様な欠損を検出する検査とは異なりますので、ご注意下さい。
 MDR-1は細胞の中から外へ能動的に薬剤を輸送することで細胞に薬剤耐性を獲得させます。
薬剤耐性には2種類存在し、薬剤を投与し始めた当初から抗癌剤に対して耐性を示す自然耐
性と、良好な治療効果が得られていた抗癌剤に対して、次第に強い耐性を示す獲得耐性があ
ります。従いまして、薬剤の投与前にMDR-1 mRNA発現量が低値であっても、投与を継続して
いる間に発現量が上昇することがありますので、ご留意ください。
Real-time PCR法
 PCR反応にるDNAの合成が起こると、蛍光物質が発光するシステム
 PCR反応による増幅に伴う蛍光強度の増加をPCR反応中に検出
RNA抽出
↓
1μgRNAからcDNA合成
↓
Real-time PCR
↓
データ解析
↓
報
告
検出原理:Real-time PCR法
R
2本鎖DNA
変性
Probeがインタクトな状態
では蛍光共鳴エネルギーの
R
移動現象によりリポーター
の蛍光は抑制される。しか
し、プローブが分解してリ
ポーターが遊離するとPCR
プロダクトに比例してリ
R
ポーターの蛍光強度が増加
する。Probe自体の3’末端
はリン酸化されているので、
プローブ自体から伸長する
R
ことは無い。
Q
Q
Q
クェンチャーから離れるこ
とによりリポーター色素特
有の蛍光を発する
Q
R
R
Q
Probe Q
R
Primer
Q
Taq DNAポリメラーゼの5’
ヌクレアーゼ活性によるリ
ポーター色素の遊離
アニーリング
Taq DNAポリメラーゼ伸長
報告形態
コピー/μg RNA(比率を除く)
例
1. GAPDH mRNA発現量にて
対象 mRNA発現量を補正した定量値
8.0×10 3
2. 対象 mRNA発現量実測値
1.0×10 3
3. GAPDH mRNA発現量実測値
1.0×10 6
4. GAPDH mRNA発現量に対する測定依頼 mRNA発現量の比率
0.001
1.定量値 : 『検出せず』・『102 未満』・『1.0×102〜9.9×109』
対象mRNA発現量(実測値)を下式のとおり補正した値
対象mRNA発現量×(健常人GAPDH mRNA発現量/検体GAPDH mRNA発現量)
2.実測値 : 『検出せず』・『102 未満』・『1.0×102〜9.9×109』 :対象mRNA発現量
3.GAPDH 実測値 :『検出せず』・『102 未満』・『1.0×102〜9.9×109』:GAPDH mRNA発現量
GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)内在性コントロールhousekeeping gene
(すべての細胞で発現し,間断なく転写される遺伝子)
4.比率:0.000001〜99999999 (単位なし)
対象mRNA発現量/検体GAPDH mRNA発現量 (単位なし)
すべて血液を用いて測定し
固形癌への抗癌剤投与効果も予測は可能?→×
何故?
 mRNAは必要な時に、必要な場所で、必要量が発現
癌細胞が増殖する時に、癌細胞の中で、正常細胞とは異なる
量が発現
 DNAは遺伝情報の設計図:血液中の白血球・臓器の胃・腸・
膵臓・肺同一人物由来であれば、そのDNAの配列はまったく
同じ。どこから採取しても同じ結果
血液を使用
課題と今後の展望
 各種mRNA発現量を測ることことが可能
 抗癌剤の投与効果や副作用を予測する因子と成り得る
 Cut Offが必要
 データ蓄積中
 テーラーメード化学療法
組織サンプルの取り扱い
mRNA定量検査ご依頼の場合
 滅菌容器を組織採取前からドライアイスなどにより冷却
 採取後直ちに容器に入れ、凍結(最低必要量10mg)
 保存は−70℃以下のディープフリーザー
RNAの分解を防ぐために、現行の輸送方法では
低温を保つ必要があります。温度管理にはご注意下さい。
主な臨床サンプル:
抗癌剤投与対象の固形癌
血液サンプルの取り扱い
EDTA-2Na 7mL採血
冷蔵保存(4℃)
mRNA定量検査ご依頼の場合
 参考資料
Total RNAの各状態
電気泳動
28S
高品質なtotal RNA
18S
部分的に分解したtotal RNA
rRNA:28s
(4,718b)
:18s(1,874b)
 主な臨床:白血病
OD260/OD280=1.8~2.0
ほとんど分解したtotal RNA
培養細胞の取り扱い
mRNA定量検査ご依頼の場合
 培養細胞を回収後、1mLの新しい培養液に再浮遊
(106 cells)
 終濃度が10%になるように、DMSOを添加
(ジメチルスルフォキシド)
 保存は−70℃以下のディープフリーザー
・ 保存容器例
RNAの分解を防ぐために、現行の輸送方法では

SUMILON
セラムチューブ
低温を保つ必要があります。温度管理にはご注意下さい。

Nalge Nunc International K.K.

 測定実験系では培養細胞から測定
Nuncクライオチューブ
インナーキャップ
アシスト
凍結保存チューブ(Micro tubes)
など
各項目コード
 TS mRNA定量: 6157-3
 DPD mRNA定量:6156-6
 MDR-1 mRNA定量:6155-9
検査要項
 検査要項
検査項目名
TS mRNA定量
項目コード№
検 体 量
容 器
保 存 方 法
所 要 日 数
DPD mRNA定量
6157 3
組織
血液
(10mg~)250 mg
r
7.0 mL
A
(滅菌ポリスピッツ)
(EDTA-2Na入 り )
必ず凍結保存
冷蔵保存
MDR-1 mRNA定量
6156 6
細胞
6
1x10 cells
培養容器
必ず凍結保存
組織
6155 9
血液
(10mg~)250 mg
r
7.0 mL
A
(滅菌ポリスピッツ)
(EDTA-2Na入 り )
必ず凍結保存
冷蔵保存
細胞
6
1x10 cells
培養容器
必ず凍結保存
組織
血液
細胞
(10mg~)250 mg
r
7.0 mL
A
1x10 6 cells
(滅菌ポリスピッツ)
(EDTA-2Na入 り )
必ず凍結保存
冷蔵保存
培養容器
必ず凍結保存
事前にご確認ください。
検 査 方 法
RT-PCR(リアルタイムPCR)
検査実施料
未収載
検査判断料
未収載
受託可能日は月~金曜日です。
備 考 本検査方法ではコンタミネーションの影響がより大きくなりますので、検体採取にあたっては取り扱いに十分ご注意ください。
検体採取後、速やかにご提出ください。




予約検査となりますので、採取前に必ず担当営業員にご連絡ください。
検査のご依頼方法および検査結果の報告について詳細は末頁をご参照ください。
PCRはエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社のライセンスに基づいて実施しております。
薬剤感受性関連遺伝子検査のご依頼について
組織:検体採取後,速やかにドライアイスまたは液体窒素で急速凍結し,必ず凍結した状態でご提出ください。
提出されるまでに検体を保存しておく場合,必ず-70℃以下のディープフリーザーをご使用ください。
血液:検体採取後,速やかに血液を冷蔵保存してご提出ください。
細胞:培養液1.0 mLに規定細胞数(1×106 cells)を再浮遊させ,DMSO(ジメチルスルフォキシド)の最終濃度が10%
になるように添加し,必ず凍結保存して速やかにご提出ください。
ご清聴を感謝いたします。
 当該検査や関連検査の
お問い合わせは、
弊社担当営業
まで
お願いいたします。
※ 補足資料
抗癌剤の種類
 抗癌剤は化学物質を基にした薬剤で癌細胞の増殖を直接阻
害して、癌細胞を死滅させることを目的とした薬です。
 抗癌剤は作用の仕方や由来などにより、「細胞障害性抗癌剤」
と「分子標的治療薬」に分類されます。「細胞障害性抗癌剤」
はさらに、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗癌性抗生物質、微小
管阻害薬などに分類されています。アルキル化剤や抗癌性抗生
物質は、ある一定の濃度に達すると作用時間が短くても確実に
効きます。しかし正常細胞への攻撃も避けられません。そこで
現在、薬をより効果的に癌病巣に到達させる研究がさかんに行
われています。また最近は癌に特異性の高い標的を探し出し、
その標的に効率よく作用する薬(分子標的治療薬)の開発も積
極的に行われており、すでに医療の現場で使われはじめていま
す。より薬物有害反応が少なく、効果の高い薬の開発が期待さ
れています。
※ 補足資料
抗癌剤の細胞内標的および細胞周期との関連性
細胞周期
細胞内標的
薬剤
作用結果
G1 /S
核酸代謝
メソトレキセート
5-FU
ゲムシタビン
S期遅延
S
DNA修復
トポテカン
イリノテカン
エトポシド
S期遅延
チュブリン
ビンクリスチン
ビンブラスチン
タキソール
タキソテール
M期停止
細胞内シグナル
成長因子受容体の抑制剤
チロシンキナーゼの抑制剤
bcl-2の抑制剤
インテグリンの抑制剤
p53の活性化剤
アポトーシスの誘導
DNA
放射線
ブレオマイシン
シスプラチン
マイトマイシン
G1 、G2 停止
S期遅延
代謝拮抗剤
※ DNA又はRNA合成に必要な
代謝工程を抑制して細胞増殖
を抑制する
トポイソメラーゼ阻害剤
※ DNA修復酵素のひとつであ
るトポイソメラーゼを抑制する
ことにより細胞増殖を阻害する
抗チュ ブリン剤
※ チュブリン蛋白に結合して
紡錘体形成に作用して細胞増
殖を分裂中期で止める
M
ア ポトーシ ス誘導剤
※ 癌細胞のアンテナともいう
べきか種々の分子標的に特異
的に作用する薬剤
G0 、G1
ア ルキル化剤・ プラチナ
製剤・ 抗生物質 など
※ ・DNAの鎖橋形成により
DNA複製(合成)を抑制する。
その他、RNA及び蛋白の持続
的合成が保持できなくなり細胞
増殖はバランスを失い細胞死
に至る
・DNAのintrastandに架橋を形
成しDNA合成を抑制する
G1 、G2 (G0 )
微小管は直径25ナノメートル前後の中空の繊維でアルファとベータチューブリン(Tubulin)という蛋白から構成されています。
2つの蛋白のユニットがさらに13個あつまってリングをつくり、このリングが管状構造を形成しています。微小管は細胞内
器官の位置の固定や輸送、細胞分裂の際に染色体を2つに引き離したりします。
正常の細胞は増殖しますが、ある程度増
殖するとそれ以上の細胞分裂は停止しま
す。癌細胞はこの増殖が無限に続く異常
細胞で、周囲の正常組織を破壊したり、転
移によって遠隔臓器で増殖したりします。
癌細胞には染色体数の異常、染色体の部
分欠失、複製や遺伝子の突然変異等が見
られます。
※ 補足資料
抗癌剤の種類
1)代謝拮抗剤
 増殖のさかんな癌細胞に多く含まれる酵素を利用して、増殖を抑え込もうと
する薬です。代謝拮抗剤はプロドラッグといって、本来の働きをする前の化
学構造を持った薬として投与されます。これが癌細胞の中にある酵素の働き
を受けて活性化され、抗癌剤としての効果を発揮するようにつくられていま
す。しかし、この酵素は正常細胞にも存在するので、ある程度の薬物有害反
応は避けられないことになります。この薬は癌細胞が分裂する時に効果を発
揮するため、個々の癌細胞が分裂する時をねらって、長時間、持続的に薬を
投与する必要があります。
2)アルキル化剤
 もともと毒ガスの研究から開発された薬です。遺伝情報の伝達など生命の本
質に重要な役割を果たしているDNAに働く薬です。DNAは普通、核塩基が対に
なって2本の鎖状に結合しそれがらせん状にねじれた構造になっています。
アルキル化剤は強力で異常な結合をDNAとの間につくります。するとDNAの遺
伝情報が障害され、またDNAそのものも損傷を受けます。細胞が分裂して癌細
胞が増殖する際には、アルキル化剤が結合した場所でDNAはちぎれ、癌細胞は
死滅します。
※ 補足資料
抗癌剤の種類
3)抗癌性抗生物質
 細菌に対してペニシリンといった抗生剤が選択的に効くように、癌細胞に対
しても選択的に働く抗生物質があるのではという研究のもとに開発されまし
た。ある種の抗生物質と同じように土壌に含まれる微生物からつくられたも
のです。もともと細菌やカビに効く構造を持った抗生物質の化学構造を変化
させたりすることにより、癌細胞を死滅させる効果を発揮するようになった
ものもあります。
4)微小管作用薬
 細胞の中にあって細胞の分裂に重要な微小管というものの働きを止めること
により、癌細胞を死滅させます。微小管に対する作用の違いにより、ビンカ
アルカロイドとタキサンの2種類の化学物質に分類されます。また、微小管
は神経細胞の働きにも、重要な役目を負っているため、これらの抗がん剤に
よって、手足のしびれなどの神経障害が出ることがあります。
5)その他
 白金製剤:DNAと結合することにより、癌細胞の細胞分裂を阻害します。
 トポイソメラーゼ阻害剤:DNAを合成する酵素(トポイソメラーゼ)の働きを阻害す
ることにより、癌細胞の分裂を阻害します。
※ 補足資料
抗癌剤の種類
6)分子標的治療薬
 従来の抗癌剤は、ほぼ偶然に発見された細胞障害作用のある物質の研究によ
って開発されてきました。そのため、それらは癌細胞を殺す能力に重点が置
かれてきたため、癌細胞と正常細胞を区別する力が乏しく、多くの薬物有害
反応が生じていました。しかし、近年の分子生物学の急速な進歩により癌細
胞だけが持つ特徴を分子レベルでとらえられるようになりました。それを標
的とした薬は、分子標的薬と呼ばれ、開発が進んでおり白血病、乳癌、肺癌
などにおいて、有効な治療手段となりつつあります。
抗癌剤による薬物有害反応について
 抗癌剤には、癌細胞を死滅させるとともに、正常な細胞も傷害させてしまうという作用
(薬物有害反応)があります。理想的な抗がん剤は癌細胞だけに作用して、正常な組織
には作用しないという薬ですが残念ながらそのような薬は現在のところ存在しません。
もちろん分子標的薬といった腫瘍にのみ作用する抗癌剤の開発、あるいは投与の工夫に
よりなるべく腫瘍への選択性を高めるための研究が行われていますが、薬物有害反応を
ゼロにすることはできていません。抗癌剤の薬物有害反応はさまざまですが、正しく使
えば多くの場合は使用を中止すれば治ります(可逆性)ので、癌の治療は可能です。薬
物有害反応を薬により軽減させることも薬物療法の大きな役割です。治療を受ける方が
薬物有害反応に十分耐えることができ、そして十分効果的に癌細胞を破壊できる抗癌剤
が実際の治療に使用されています。
※ 参考資料
薬物の体内動態
薬物の体内動態
薬物
吸収
分布
肝臓
P450
排泄
代謝
代謝物
※ 参考資料
遺伝遺伝子多型とは?
 遺伝子の配列の中には、個人間で比較するとその配列が、
個人によって一部異なる部分がある。この遺伝子配列の違
いを『遺伝子多型(ポリモルフィズム)』と呼び、その配
列が一箇所異なる多型を『 SNP 』と呼ぶ。
遺伝子多型検査
チトクロームP450(CYP)
CYP2D6
CYP2C9
CYP2C19
NAT2(Nーアセチルトランスフェラーゼ)
TPMT(チオプリンSーメチルトランスフェラーゼ)
※ 参考資料
P450分子種
CYP1A2
薬物代謝に関与する主要なヒトP450分子種と
各分子種により代謝される薬物(薬効別分類)
薬物名
β遮断薬
キサンチン誘導体
ブフラロール*、プロプラノロール*
カフェイン、テオフィリン
イミプラミン*、クロミプラミン*、 R-,S-ミアンセリン*
CYP2C9
CYP2C19
CYP2D6
CYP3A4
* 代謝の一部に関与
抗不整脈薬
その他
抗炎症薬
プロパフェノン*、メキシレチン*、
その他
アミトリプチリン*、セラトロダスト*、タモキシフェン*、トルブタミド、フェニトイン*、ロサルタン*、S-ワーファリン
抗潰瘍薬
抗うつ薬
抗てんかん薬
その他
抗うつ薬
オメプラゾール*、ランソプラゾール
β遮断薬
チモロール、ブフラロール*、ブプラノロール、プロプラノロール*、メトプロロール
抗精神病薬
抗不整脈薬
モルヒネ誘導体
その他
ホルモン薬
クロルプロマジン、チオリダジン、ハロペリドール、ベルフェナジン
ベンゾジアゼピン
アルプラゾラム、ジアゼパム*、デスメチルジアゼパム、トリアゾラム、ミダゾラム
抗不整脈薬
抗うつ薬
アミオダロン、キニジン、ジソピラミド、プロパフェノン*、リドカイン
モルヒネ誘導体
エチルモルヒネ*、コデイン*、デキストロメトルファン*、ブプレノルフィン
マクロライド系抗生物質
エリスロマイシン、クラリスロマイシン
カルシウム拮抗薬
免疫抑制薬
ジルチアゼム*、ニフェジピン、ベラパミル
その他
オメプラゾール *、カルバマゼピン、キニン、コルヒチン、セラトロダスト*、タキソール、ダプソン、テルフェナジン、フェンシクリジン、フェン
タニル、プログアニル*、ロサルタン*、R-ワーファリン*、MK639、ゾニサミド
クロザピン、タクリン、ナプロキセン*、フェナセチン、R-ワーファリン*
イブプロフェン、ジクロフェナク、テノキシカム、ナプロキセン*、ピロキシカム、フルルビプロフェン、メフェナム酸
イミプラミン*、クロミプラミン*、シタロプラム*
S-メフェニトイン、R-メホバルビタール、フェニトイン*
カリソプロドール、ジアゼパム*、プログアニル、へキソバルビタール
アミトリプチリン *、イミプラミン *、クロミプラミン *、デシプラミン、フルオキセチン、ノルトリプチリン、パロキセチン、ベンラファキシン *、R,S-ミアンセリン*
エンカイニド、フレカイニド、プロパフェノン*、メキシレチン*
エチルモルヒネ*、コデイン*、デキストロメトルファン*
スパルテイン、デブリソキン、プロメタジン
アンドロステロン、17α-エチニルエストラジオール、コルチゾール、タモキシフェン*、デキサメタゾン、テストステロン
アミトリプチリン*、クロミプラミン*、シタロプラム*、ベンラファキシン*、 R-ミアンセリン*
シクロフォスファミド*、イフォスファミド、シクロスポリン、タクロリムス
小林カオルら 治療学, 32, 285-290 (1998).より引用1
※ 参考資料
薬剤投与を受けた際の効果と副作用の固体差
代謝能力の明らかに遅い固体
poor metabolizer(PM)
通常の代謝能力をもつ固体
extensive metabolizer(EM)
その中間の代謝能力をもつ固体
intermediate metabolizer
(IM)
※ 参考資料
日本人におけるCYP450遺伝子変異
変異遺伝子
塩基置換
変異
酵素活性
CYP2C9 *2
C430T
R144C
減少
CYP2C9 *3
A1075C
I359L
減少
CYP2C19 *2
G681A
スプライシング異常
無
CYP2C19 *3
G636A
終止コドン
無
CYP2D6 *2
C2850T; G4180C
R296C; S486T
正常
CYP2D6 *5
欠失
欠失
無
CYP2D6 *10
C100T; G4180C
P34S; S486T
減少
CYP2D6 *14
C100T; G1758A;
P34S; S486T
無
C2850T; G4180C
R296C; S486T
※ 参考資料
その他の遺伝子多型
1. 薬物代謝酵素
C Y P フ ァ ミ リー ( C Y P 1 A 2 , 2 A 6 , 2B 6 , 2 E 1 , 3A 4 , 3 A 5 )
2.その他
DPD(DPYD),UDPファミリー(UGT1A1,2A)
UDP-glucuronosyl transferases
3.トランスポーター
M D R - 1 , M R P , O C T N フ ァ ミ リ ー
4. チロシンキナーゼ阻害剤のターゲット
c-kit 遺伝子(GIST:消化管粘膜下腫瘍の原因遺伝子)