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セッション2;
口腔微生物学各論
Ⅱ 口腔微生物学各論
3口腔に常在するその他の微生物
到達目標
1)スピロヘータの種類を列挙する
2)スピロヘータの歯周病原性を説明する
3)マイコプラズマの病原性を説明する
4)原虫の種類を列挙する
5)原虫の病原的役割を説明する
6)カンジダの病原性を説明する
微生物の定義
肉眼でみることのできないほど小さな生き物
●ウイルス
●リケッチア/クラミジア
●マイコプラズマ
●細
菌
●真
菌
●原
虫
微生物の世界
微生物
細菌 (グラム陽性菌、
原核生物 スピロヘータ、
クラミジア・リケッチア
マイコプラズマ
古細菌
細胞性の生物 真核生物 真菌
原虫
ウイルス
DNA
ウイルス
RNA
ウイルス
グラム陰性菌)
1) スピロヘータ
Spirocheata
菌体内鞭毛
外膜
細胞体
梅毒トレポネーマ
Treponema pallidum
病原性のあるSpirochaeta
の3属
種類
生息場所
Leptospira属
湿地帯、家畜
Treponema属
口腔、腸管、生殖器
Borrelia属
シラミ・ダニの腸管
おもな疾患名
ワイル病など
梅毒
流行性回帰熱
ライム病
口腔内に常在する
SpiroheataはTreponemaのみ
↓
口腔スピロヘータあるいは
口腔トレポネーマ
と呼ぶ
口腔スピロヘータの特徴
●(偏性)嫌気性
●栄養要求性が厳しい
→血清、糖類、脂肪酸、アミノ酸、
その他ビタミン類
→そのために培養が困難、あるい
は培養できないものもある
現在、ヒトの歯肉縁下歯垢から
分離される口腔スピロヘータ
 T. denticola
 T. socranskii
 T. pectinovorum
 T. lecithinolyticum
 T. vincentii
 T. medium
 T. amylovorum
 T. parvun
 T. putidum
口腔スピロヘータの
病原性
歯周病の発症と進展に関連している
最も研究が進んでいるのは
→
T. denticola
T. denticolaの病原性
●付着に関するもの;

外膜成分に血球や細菌と凝集、

細胞外マトリックスと結合するタンパクを持つ
●生体防御に対する抵抗性;

抗体・補体の分解酵素

リンパ球機能抑制因子
●組織破壊に関係する酵素

トリプシン様酵素活性など
●免疫抑制因子(分子量90,000)の存在;
 免疫を回避して増殖
2)
マイコプラズマ
自己増殖能を持つ
最小の原核生物
*細胞壁を持たない
マイコプラズマのコロニー
マイコプラズマの特徴-1
●細胞壁を持たない
→多形性
→細胞壁合成阻害に働くβ−ラクタム系抗菌薬は無効
テトラサイクリン,エリスロマイシン感受性
●最小増殖単位は125-250nm
→ウイルスとほぼ同じ、したがって光学顕微鏡で見
えない
マイコプラズマの特徴-2
●人工培地で発育可能
●コロニーが寒天に食い込む
→目玉焼き状,nipple状
●特異抗体で発育阻害
●酢酸タリウム耐性
病原性のあるマイコプラズマ
●Mycoplasma pneumoniae
・原発性異型性肺炎を起こす
・幼児,子供に多い
● M.hominis
Ureaplasma urealyticum
・尿路感染
・非淋菌性尿道炎→不妊症との関連.
口腔マイコプラズマ
常在するものはM. salivarium が一番多い
他には
M. orale
M. buccale
M. fermentans
口腔マイコプラズマの
病原性
●歯周炎の進展につれて口腔内
での数が増加するのが歯周病原
性の有無は不明
3)
真菌
True fungi
真菌は細菌に比べて、細胞分化が進
み、化学組成も複雑でヒトの細胞に
近い真核生物である。俗にカビと呼
ばれる約20万以上ある真菌のうち、
ヒトに病気を起こす病原性のあるも
のは約50種ある。
ヒトと真菌の関わり
ー悪い面ー
真菌
易感染
宿主
日和見
感染症
免疫不全状態にある宿主
→免疫抑制剤の投与
→加齢
→ HIV 感染・ AIDS 患者
ヒトと真菌の関わり
ー良い面ー
応用微生物の領域
●食品との関係

アルコール飲料

発酵食品
●バイオテクノロジー

医薬品開発
真菌の生物学的特徴
●核膜を持つ真核生物
●細菌と同様に細胞壁を持つ
●好気ー通性嫌気性
真菌の分類
接合菌
ムコール
子嚢菌
アスペルギルス
ヒストプラズマ
担子菌
クリプトコッカス
不完全菌
カンジダ
Candida 属
ヒトに関わる真菌の中で口腔内に
常在し、日和見病原体としても
重要なものがCandida 属である
口腔から分離される
Candida
●Candida albicans
● C. glabrata
C. parapsilosis
C. guilliermondii
C. tropicalis
C. krusei
C. kyfyr など
→とくにCandida albicansが重要
Candida albicansの
病原性
●細胞表層の糖タンパクが付着に関連
・マンナンタンパク質
・フィブリノーゲン接着因子
●二形性;状況により菌糸型・酵母型にスイッチす
る
→菌糸は方向を定めるセンサーともなる
●分泌型プロテアーゼ酵素類
・分泌型アスパラギン酸プロテアーゼ
・ホスホリパーゼ
Candida albicansの
二形性発育;菌糸型・酵母型
菌糸
酵母
口腔カンジダキャリア疫学調査結果
(平成10年6月〜平成15年5月)
ドライマウス
> 75 10 人 100
ダ ウン症候群
23 人 ドライマウス
65ー 74 16 人
75
老人ホーム
111 人 HIV (+)
22 人
594
人
1430
% 50
19 人
ドライマウス
> 64 16 人
78 人
25
53 人
0
9.6
16.9
32.7
70
80
人
偽膜性カンジダ症
肥厚性カンジダ症
カンジダによる口角炎
補綴物の装着とCandida
との関連
新潟大学との研究
Candida陽性者/陰性者の割合、平均菌数、保有Candida種数
ー補綴物の有無および種類による比較ー
補綴物の有無/種類
被験者数
Candida
1)
陽性者 (%)
保有 Candida 種数
平均菌数
2)
CFU(SD)
0
1
2
3
4
補綴物なし
40
11 ( 27.5)
4.7 (20.9)
29
11
0
0
0
ブリッジのみ
89
54 (60.7)
19.2 (85.6)
35
43
7
4
0
部分床義歯とブリッジ
163
128 (78.5)
42.9 (90.1)
35
75
40
11
2
全部床義歯
74
58 (78.4)
70.0 (114.6)
16
29
21
7
1
抗真菌剤
種類
ポリエン系
薬剤
特徴
アンホテリシンB
細胞膜透過性障害
ナイスタチン
耐性出現度低い
腎毒性あり
アゾール系
イミダゾール系
細胞膜に異常もたらす
(ミコナゾール)
耐性出現しつつある
トリアゾール系
(フルコナゾール、イトラコナゾール)
フロロピリジミン系
5−フルオロシトシン(5FC)
DNA合成阻害
耐性出現しやすい
4)原虫
●真核生物に分類され、原生生物界に属する単細胞生物であ
る。口腔に寄生する
歯肉アメーバ(Entamoeba gingivalis)
→偽足を出して、運動し、栄養を取る
口腔トリコモナス(Trichomonas tenax)
→1ないしは数本の鞭毛で運動する
歯肉アメーバ
外肉
食細胞
核
偽足
口腔トリコモナス
前鞭毛
波動膜
核
軸索
後鞭毛
歯肉アメーバ・
口腔トリコモナスの病原性
●歯肉アメーバ・口腔トリコモナスとも歯垢、歯周
疾患患者の歯周ポケットから検出されることがあ
る
● →病原性は不明だが、歯周疾患の進行に伴い、増
加する傾向がある
→健康/衛生状態良い口腔には存在しない?
最後に
口腔感染症の成立と
口腔微生物
口腔感染症
① う蝕;歯肉縁上
②
歯周病;歯肉縁下
③
歯髄/根尖歯周炎;
歯内、歯槽骨内
う蝕の成立と
口腔細菌
 歯の硬組織が口腔細菌の産生
する酸によって脱灰される
=う蝕
歯;ヒドロキシアパタイト
口腔細菌;S. mutansグループ
食物;スクロース
う蝕とは
口腔細菌
う 蝕
食事(蔗糖)
宿主(歯)
時 間
う蝕の原因となる
口腔細菌
 歯の硬組織の種類によって原因菌が異なる
 エナメル質う蝕;S. mutansグループ
 象牙質う蝕;グラム陽性桿菌;Actinomyces,
Lactobacillus, Bifidobacteriumなど
 (歯)根面う蝕;エナメル質う蝕と象牙質う蝕の
特徴が混在
歯周病の成立と
口腔細菌
 歯周局所に常在する細菌が原因となって発症、進
行する慢性炎症性疾患=歯肉疾患(歯肉炎)と歯
周炎とに大別される。
 原因となる歯周病関連菌はほとんどがグラム陰性
嫌気性桿菌である。
 しかし、病態の進展(進行/悪化)には宿主の炎
症や免疫が関連している。
 一般的な感染症の治癒や予防に結びつくはずの炎
症や免疫反応が宿主(歯周組織)を傷害する。
歯周炎の進展に関わる
宿主の反応
●炎症反応;食細胞(好中球、マクロファージ/単
球)が放出する酵素が歯周組織を傷つける。
●免疫反応は生体防御に働くよりも、むしろⅡ型、
Ⅲ型アレルギー、遅延型アレルギーなどの免疫の
マイナス面が強く起こる。
●炎症や免疫反応に関わる生体細胞が産生するサイ
トカイン、とくにIL-1,6,8などの炎症性サイトカイ
ンが歯周組織を傷つける。
→このサイトカインは血流に乗って全身を巡り、糖
尿病などの全身的な疾患に関係する!
歯髄への感染経路
もともと歯髄は無菌である!
●う蝕;う蝕が進行して感染
●歯科治療;歯の切削で象牙質から感染
●外傷;歯を打撲して歯肉溝の細菌が感染
歯が破折し象牙質から感染
●根尖部;隣在歯の根尖病巣から感染
●側枝;深い歯周ポケットから側枝を介して感染
●アナコレーシス;炎症が存在する場所には血流を介して細
菌が到達しやすい。打撲などあり、炎症が存在する歯に血
流から感染
根尖部歯周組織への
感染の波及
●急性歯髄炎→急性根尖性歯周炎→根尖部の膿瘍
→他の組織の膿瘍
→骨髄炎
→蜂窩織炎
●慢性歯髄炎→慢性根尖性歯周炎→歯根嚢胞
→歯根肉芽腫
根尖部歯周組織の
破壊に関連する宿主の
反応
① 細菌の侵入により炎症が起こる
② 細菌感染により起こった炎症が組織を傷害する
③ 細菌感染により生じた免疫反応がさらに組織を
傷害する
免疫反応;Ⅲ型アレルギー反応
Ⅳ型アレルギー反応
プレ/ポストテスト
11/6/12 正しいのはa、誤っているのはbにマークして下さい。
①
口腔に常在するスピロヘータはトレポネーマ属だけである。
②
口腔トレポネーマは菌体内鞭毛を持ち、独特の運動性を示す。
③
口腔トレポネーマは好気性で発育する。
④
歯周病の進行に連れてスピロヘータは減少する。
⑤
マイコプラズマは細胞壁を持たない。
⑥
マイコプラズマ肺炎にはペニシリンが有効である。
⑦
真菌は核膜を持つ真核生物である。
⑧
Candida albicansはカンジダ属の中で最も病原性が強い。
⑨
Candida albicansは二形性の発育をする。
⑩
原虫は健康な口腔に多く存在する。
⑪
う蝕は歯肉縁下には発症しない。
⑫ 歯周炎の進展には免疫反応が深く関わる。
⑬
根尖性歯周炎の骨吸収は歯周炎と同じメカニズムで起こる。