「予防法務研修会」 神奈川予防法務研究会 講師:行政書士 小関典明 「予防法務」とは? • 「予防法務」とは、“当事者間或いは利害 関係者との争いやトラブルを未然に防止 する法的な手法”のことであり、その範囲、 内容はきわめて広汎・多岐にわたるもの です。 • 「予防法務」は、“企業予防法務”と“消費 者予防法務”に大別されます。 「予防法務」: 予測・戦略・検証・予防 =会計・法務・マネジメント “暖かい社会”から“冷たい社会” • 1973年の第一次石油ショックを契機に 日本社会の経済的、経営的、国際的且つ 法律的環境が大きく変わってきた。 • 工業化社会(規制社会)の終焉と情報化 社会への移行という時代背景の中で、 “暖かい社会”から“冷たい社会”が到来し つつある。 “暖かい社会”とは、 事前チェック(規制)社会であ る。 “暖かい社会”の特徴(1) • 義理・人情、しきたりや“カン”が重視され、 いわゆる腹芸がまかり通る • 一般的には法意識が低く、法的紛争は泣 き寝入りして裁判沙汰になりにくい • 企業取引においては商的危険(コマー シャルリスク)のみを追求して法的危険 (リーガルリスク)は追求しない。 “暖かい社会”の特徴(2) • 企業経営の政策決定においては、“経営 (判断)”と“法律(判断)”を分離(非一体 化)して考える志向が高い。 • 法律及び法律専門家の活用が下手であ る。 “冷たい社会”とは、 事後チェック・事後救済社会” である。 “冷たい社会”の特徴(1) • 義理・人情より“法律”を重視し、腹芸はさ けて契約至上主義で行く。 • 一般的に法意識が高く、法的紛争に泣き 寝入りせず裁判に持ち込んで解決してい く。 • 企業取引において商的危険の前に法的 危険を意識する。 “冷たい社会”の特徴(2) • 企業経営の政策決定においては“経営 (判断)”と“法律(判断)”を同時に処理す る。すなわち、“法律と経営の一体化”で ある。 • 法律専門家のブレーンを持ち、法規部署 を強化しようとする。 “冷たい社会”の中での 「予防法務」の位置づけ • “事後チェック・事後救済”社会の中では、 国民は“自己責任”を追求しなければなら ない。 • 一般消費者や中小・零細企業経営者は、 自己責任を全うするために“リーガル・マ ネジメント”を必要とする。 • そのためにこそ“予防法務”が存在する。 ヒューマンサービス • これから必要とされる「予防法務」は、単に法的 知識を駆使できるだけではなく、ヒューマンサー ビスの一分野として依頼者(相談者)に精神的 満足をも与えられるものでなくてはならない。 • ヒューマンサービスとは、福祉、健康、医療、精 神衛生、教育、家庭援助、児童擁護、職業的リ ハビリテーション、地域社会のサービス、法律相 談など、人の傷つきやすい部分に直接関わるも ので、対面での提供が中心となるサービス分野 を総称したもの。 《強みを生かして、スキマを業務に》 • 儲け話があるとき、皆がそちらへ走っていたら 自分はそこへは行かない。後発はカスをつかむ。 • 法律関係専門職がこぞって「事後救済」に走っ ている。そこに「予防法務」というスキマが出来 ている。 • 他の人が嫌がる、面倒がる、やりたがらない、 難しいことにこそビジネスチャンスがあるのであ る。いくら難しいことでも、毎日毎日繰り返して やっていれば、それは簡単になるのである! 行政書士の業務は どう変わっていくのか? • 情報化社会の進展を決定づける2005年 度の「電子政府」の出現に向けてあらゆる 社会システムが変化をしている。 • 従来の「書類作成業務」の延長線上に「電 子申請」があるという考え方で「電子代理 人」としての地位を獲得しようという戦略 は成り立たず、業務形態そのものが変化 をするという認識が必要。 • 「電子申請」は、単に行政手続の電子化 にとどまらず、電子申請によって生まれる 価値観に基づく「文化」であることを理解し なければならない。 • 改正行政書士法第1条の3による「契約 代理」規定の活用によるビジネスモデル の創出を目指さなければならない。 • 司法制度改革の目指す「事後処理・事後 救済社会」の中で予防法務の担い手とし ての地位を獲得し、法務・経営コンサルタ ントしての分野を開発しなければならない。 行政書士にとっての「市場」の変化 • 業許可に関する“市場”は、「法務+会計+マネ ジメント」の指導・助言(コンサルティング)を求 める市場へと変化していく。 • 土地利用関係業務の市場は、「コンサルタント 或いは事業計画達成のためのコーディネーター としての役割を担うことが中心」の市場へと変化 する。 • 権利義務関係の市場は、「契約代理」を中心と する予防法務」の市場へと変化をする。 市場獲得のための能力開発 • 予測・戦略・検証・予防=戦略的思考を実 践できる能力の開発 • 会計に関する知識及び技術の習得 • マネジメントに関する知識及び技術の習 得 • IT(情報技術)を利用するためのPCリテラ シィー及び情報を価値に変えるための情 報リテラシィーの向上 市場の形勢(洞察) 1. 行政手続の電子化・簡素化及び規制緩 和の拡大によって従来型の代書的業務 の至上は大幅に縮小する。 2. IT革命の進行による情報化社会の拡大 が知識労働の生産性を高め、知的サー ビスの価値を高める。 3. 情報化社会の拡大によって情報主権が 顧客に移るため「戦略的な顧客」が増加 する。 4. 事後処理・事後救済社会の拡大によっ てヒューマンサービスの市場が成長して いく。 5. インターネット社会の拡大によって、情 報リテラシィーが価値を生む市場が拡大 する。 「予防法務」は、 行政書士の未来戦略である。 先を読め、そこから戦略思考が始まる。 その先に戦陣を築け、そこから戦略行動 が始まる。
© Copyright 2024 ExpyDoc