2008年度後期 異文化コミュニケーションのための 英語学概論(第3回) 立教大学 異文化コミュニケーション学部 平賀 正子 はじめに • 前回のリアクション・ペーパー • 今日の講義: – 「色々な英語」(第2回のつづき) – 「母語英語のバラエティー」 英語学概論第3回 2 英語学概論第3回 3 シンガポールの英語 • 建国以来、英語は公用語の一つだったが、国内統 一のための言語(language for national unification) とされ、多民族間を繋ぐことばとされた。 • 1980年代には、英語が家庭、学校、職場などあらゆ るところで話されるようになった。 • イギリス英語・中国語(北京語)・マレー語・タミル語 に加え出身者が多い広東語・福建語、さらにアメリカ 英語、オーストラリア英語の単語・文法構成に影響さ れているところが多い。 英語学概論第3回 4 シンガポール英語の特徴 1 文尾につけられる“lah” (日本語の終助詞「ね、 よ、さ、ぞ」のようなニュアンス) “Hurry up lah!” (いそいでよ!) “This way can lah.”(こっちにいけるんじゃない) 本名信行『世界の英語を歩く』(2005, pp. 58-59) 英語学概論第3回 5 シンガポール英語の特徴 2 “Th”の発音が “T”と同じになる (ThreeとTreeは同じ発音) 強調のために単語を繰り返す “Can, can!”(できますよ!) “Ting, Ting and Ting.”(考えに考えに、考え抜い た) 英語学概論第3回 6 シンガポール英語の特徴 3 福建語・広東語・マレー語など他言語から の借用語 例:「散歩する」=Jalang-Jalang 「おばさん」=Tai-Tai 「かわいい女性」=Chio Bu 「バカ」=Siao 「食べる」=Makan http://jp.youtube.com/watch?v=ess4LnyrhQ U 英語学概論第3回 7 日本の英語 • 特徴はどんなものがあるだろう。 – 発音 • “th”は “s”または “z”になる。 • “r”と “l”の区別をしない。 – 語彙 • 和製英語 – 文法 • 冠詞の不使用 • 複数形の不使用 英語学概論第3回 8 国際派日本人の英語 • 緒方貞子さんのスピーチ • 最近の新聞の切り抜き – 緒方さんの仕事 英語学概論第3回 9 『ダボス会議で聞く 世界の英語』(2005 ) 英語学概論第3回 10 World Englishes という考え方 • 世界で話されている様々な英語は、平等である。つ まり同じ価値がある。 • 英語は英米文化から切り離して運用できる。 • 多様な文化を多様な形式で表現できる。 • 多国間・多文化間の交流を可能にする。 V.S. • Native Speakerの英語が正しい英語。だから手本に すべき。 • アメリカ英語がイギリス英語よりいい(またはイギリス 英語がアメリカ英語よりいい)。 英語学概論第3回 11 World Englishesで 国際交流するとは 柔軟性 – 一つの基準で物事を捉えたり判断したりしない。複眼を持つ。 – 予期せぬ出来事に対しても、あわてない。 応用力 – 分かっていることから始めて、分からないことを解決する。 – 出来る限りのアンテナを張り巡らし、最善の道を模索する。 許容性 – 相手を許す気持ちを忘れない。 – 優しさと厳しさが大切。優しさも厳しさも愛があってこそ活きる。 英語学概論第3回 12 母語英語 (Native English) • • • • • • イギリス英語 (British English) アメリカ英語 (American English) カナダ英語 (Canadian English) オーストラリア英語 (Australian English) ニュージーランド英語 (New Zealand English) 南アフリカ英語 (South Afrian English) 英語学概論第3回 13 イギリス英語 使用地域 • 連合王国(イングランド、ウエールズ、スコットランド、 北アイルランド)。 • 英語を公用語としている英連邦諸国で使用されてい る英語は、「語彙」・「スペリング」ともに「イギリス英 語」を基本としている。 • ただし、カナダで使われる英語は語彙やスペリング は「イギリス英語」と「アメリカ英語」の混合で、発音 は「アメリカ英語」との共通点が多い。 英語学概論第3回 14 イギリス英語の標準語 • 方言には大別して、「地域方言」(regional dialectsー地 域によるバラエティ)と「社会方言」(social dialectsー社会 階層によるバラエティ) がある。もちろんイギリス英語にも 両方ある。 • イギリス英語では、「社会方言」のうち上流階層の方言が 「標準語」(RP=received pronunciation)として認識され ているという特徴がある。 – 例:”The Queen”という映画の中のエリザベス2世 – 例:”My Fair Lady”という映画の中の大学教授(RP)と花売り娘 (Cockney*というロンドンの労働者階級の英語) 英語学概論第3回 15 Cockney*の特徴 • /ei/という発音が/ai/となる – Rain in Spain stays mainly in a plain. • 語頭の/h/の発音が欠落する。 – In Hertford, Hereford, and Hampshire, harricanes hardly ever happen. • 二重否定 – I ain’t done nothing wrong.(何も悪いことしちゃいな い) • オーストラリア英語の特徴として現在残っている。 特に/ei/という発音が/ai/となる点。 英語学概論第3回 16 イギリス英語の特徴 (発音1) • 「イギリス英語の標準発音」 と国際的に認知されている 発音は、容認発音 (Received Pronunciation, RP) 、 King’s English (Queen’s English)、BBC英語 (BBC English) と呼ばれている。 • BBC放送の標準となっている英語。 • 上流階級、パブリック・スクール(英国の私立中等学校) やケンブリッジ大学、オックスフォード大学出身者が話 す英語。 映画で参考になる作品(“My Fair Lady,” “If …,” “The Queen”など) • 1960年代以降その使用が失われる傾向にある。現在、 容認発音(RP)の話者はイギリス人口の約3%と言われ ている。 英語学概論第3回 17 イギリス英語 の特徴 (発音2) ・音節末の”r”を発音しない。 "car" [kɑː], "hard" [hɑːd], "born" [bɔːn], "water" [wɔːtə] ・”o”の発音が[ɒ]になる。 ”stop”の発音は「スタップ」(米)でなく「ストップ 」(英)。”not,” “”hot”なども同じ。 英語学概論第3回 18 イギリス英語 の特徴 (発音3) ・母音にはさまれた”t”の発音。 “better”など母音間・強勢後の /t/ は “t”(ベター)とはっき り発音。アメリカ英語では/d/に近い発音となる。”water,” “bitter” なども同じ。 ・ [j]の挿入。 "new" を[njuː](ニュー)、tune を[tjuːn](チューン)と発音す る。アメリカ英語では[nuː](ヌー)、[tuːn](トゥーン)と発 音する人が多い。 英語学概論第3回 19 イギリス英語 の特徴 (語彙) ・(イギリス)英語の成立 - 11世紀後半以降フランス語の語彙が流入する。日本語の「漢語vs 和語」と英語における「ラテン語・ロマンス語vsゲルマン語」語源のこ とばは一種同じような関係 - commence (開始する)vs begin (始める) - ascend (上昇する) vs climb up (登る) ・ ヨーロッパ大陸との地理的関係 - aubergine, courgette, serviette, curriculum vitae ・ イギリスの暮らしに関連 - lollipop woman, off-licence ・ 別紙の表を参照 英語学概論第3回 20 http://queen-movie.jp/ 英語学概論第3回 21 第4回予告 • イギリス英語と社会階層(補足・My Fair Ladyの 一場面) • アメリカ英語について • その他の母語英語について – 永井さんのNZ留学体験談 – 受講学生さんの体験談 • 英語とジェンダー 英語学概論第3回 22
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