最近、自社株の評価はされましたか? 平成26年5月現在の資料です 株式評価手順 その株主が同族株主等、それ以外の株主 のいずれであるかを判定 ① 株主の判定 ・ ・ ・ ② 会社規模の判定 ・ ・ ・ その会社が大会社、中会社、小会社のい ずれであるかを判定 ③ 特定評価会社の判定 ・ その会社が特定評価会社に該当するかを 判定 ④ 評価方法の適用 以上の判定に基づいて、各区分に応じた 評価方法を適用しそれぞれの株式を評価 ・ ・ ・ ・ ・ 2 類似業種比準方式の計算 ( ( ( + C × 3+ D B D × A× )B )C ) 5 類似業種の 株価 (B)=評 価する会社 の1株あたり の配当金額 これらAB CDは国税 庁から定期 的に公表 B=類似業 種の1株あ たりの配当 金額 (C)=評価 する会社の1 株あたりの利 益金額 C=類似業種 の1株あたり の年利益金額 しんしゃく 率 0.7(大会 評 社) 0.6(中会社) = 価 0.5(小会社) 額 (D)=評価 する会社の1 株あたりの純 資産額 D=類似業種 の1株あたり の 純資産価額 3 純資産価額方式の図解計算 相続税評価上の資産 貸借対照表(B/S) 負債 帳簿上の 資産 (資本) 純資産 含み益 法人税等控除 40% 含み益 (税控除後) 土地、有価証券、 生命保険金、 (簿外資産)借地 権、営業権 H26年4月1日より変更 純資産 (相続税評価) ÷ 発行済株式数 (自己株式を除く) = 1株あたりの 純資産価額 4 最近、自社株の評価はされましたか? 平成26年5月現在の資料です (参考) 株主総会の決議要件 ① 普通決議 (取締役の選任・解任・決算 の承認等) 定款に定める場合を除き、総株主の議決権 の過半数を有する株主が出席し、出席株主 の議決権の過半数の賛成によって成立 ② 特別決議 (定款変更、合併等、自己 株式の取得、新株発行、相 続人への売渡請求、買取り 決議、事業譲渡および解散、 役員の責任免除権) 定款に定める場合を除き、総株主の議決権 の過半数を有する株主が出席し、出席株主 の議決権の3分の2以上の賛成によって成立 ③ 特殊決議 (株式譲渡制限のための定 款変更等) 議決権を要する株主の頭数の過半数が出 席し、当該株主の議決権の3分の2以上の賛 成によって成立 ④ 属人的種類株式に関 する決議 総株主の頭数の過半数で、総株主の議決権 の4分の3以上の賛成により成立 6 (参考) 少数株主の権利 提案権 (会社法303.305) 1株 帳簿閲覧請求権 (会社法433) 検査役選任請求権 (会社法358) 1% 代表訴訟提起権 (会社法847) 取締役・執行役の 違法行為差止権など (会社法360.422) 解散判決請求権 (会社法833) 取締役の解任請求権 (会社法854.479) 3% 株主総会召集権 (会社法297) 10% 1/ 6 簡易合併等の反対権 (会社法796 ④) 取締役会の 責任軽減への異議権 (会社法426 ⑤) 7 平成26年5月現在の資料です 事業承継の全体のポイント 経営の 承継 後継者の決定 後継者を決めている 後継者を決めていない 後継者がいない 後継者の育成 親族・役員・従業員・そ の他 M&A 廃業 自 社 株 の 後 継 者 へ の 集 中 対 策 贈与 株価の把握 自社株の 現状把握 事業 承継 遺言 直接承継 株主の把握 納税猶予制度 直接買取り 金庫株 資産の 承継 従業員持株会 経営権の承継 間接承継 投資育成 名義株 その他 後継者へ の自社株 の集中 種類株式 納税資金不足 納税 相続で承継 分割 財産としての承継 相続対策 事業用資産の承継における問題 (不動産・連帯保証・貸付金・借 入金) 納税猶予制度 遺言なし 遺言あり 暦年贈与 贈与で承継 相続時精算課税 生命保険の活用 9 ① 後継者への自社株の贈与 「贈与」とは、当事者(贈与者)の一方が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に 与えることを意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる (民法549条) 事業承継における「自社株贈与」のメリット・デメリット メリット デメリット ・自社株を後継者に集中できる ・(暦年贈与)後継者に移転するのに 時間がかかる ・いったん贈与が実行されると、撤回 が出来ない ・(暦年贈与)基礎控除を超えた分に ・所有権の移転が出来る(株主名簿を 累進課税(10~55%:H27.1より)が 書き換えられる) かかる。相続人への3年以内の贈与は相 続財産に持ち戻し。 ・(精算課税)相続時に持ち戻しされる ・(精算課税)選択後の変更は不可 ・「特別受益」に該当する⇒遺留分侵害 の可能性がある ⇒生命保険の活用(代償交付金) 10 「暦年贈与」を活用した自社株贈与 毎年、後継者候補に自社株を贈与する。その場合20歳以上の子や孫が後継者 の場合には、軽減税率が適用される 贈与の課税テーブル (速算控除ではないので注意) 毎年何株贈与する かを、右記の税率表 (および実効税率表) を目安に決定 基礎控除(110万円) 控除後の 課税価格 200万円以下 直系尊属 ⇒20歳以上 の直系卑属 一 般 10% 10% 200万円超-300万円以下 15% 15% 自社株の 贈与金額 × = - 基礎控除 110万円 税率 贈与税額 300万円超-400万円以下 20% 400万円超-600万円以下 20% 30% 600万円超-1,000万円以下 30% 40% 1,000万円超-1,500万円以下 40% 45% 1,500万円超-3,000万円以下 45% 50% 3,000万円超-4,500万円以下 50% 55% 4,500万円超 55% (注) 平成27年1月1日以降の税率。相続時精算課税と異なり、贈与者の年齢制限はない 11 事業承継計画書から見た自社株の暦年贈与(例) 1.事業承継計画書に沿って毎年の贈与株数を決定する 現在 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 年齢 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳 役職 社長 社長 社長 社長 社長 会長 会長 引退 70% 140株 60% 120株 50% 100株 40% 80株 30% 60株 20% 40株 10% 20株 0 33歳 34歳 35歳 36歳 37歳 38歳 39歳 40歳 取締役 取締役 常務 専務 専務 社長 社長 社長 0 10% 20株 20% 40株 30% 60株 40% 80株 50% 100株 60% 120株 70% 140株 項目 現 経 営 者 持株数 年齢 後 継 者 役職 持株数 贈与 2.毎年の株価評価を行い、贈与額・贈与税額を算出する 毎年の評価額 ( × 自社株の贈与金額 贈与株数 = - 110万 × 円) 自社株の贈与金額 税率 = 贈与税額 12 「相続時精算課税制度」を活用した自社株贈与 贈与した自社株の評価 額合計額が2,500万円 超えた場合は一律20% 課税 20歳以上の 子や孫 以降の贈与は すべて精算贈与 精算贈与 贈与時の 価格合計 贈与分を 持ち戻し + 被相続人 死亡時点の 相続財産 60歳以上の親・祖父母の財産 (平成27年1月1日以後の贈与に適用) 相続発生 相 続 税 課 税 贈与税額 を控除 13 ② 遺言の活用 「遺言」とは、自分が生涯をかけて築き、かつ守ってきた大切な財産を, 最も有効・有意義に活用してもらうために行う 「意思表示」です そのため、遺言者自らが自分の残した財産の帰属を決め、相続を巡る争いを防 を防止しようとすることに、主たる目的があります 事業承継における「遺言」のメリット・デメリット【公正証書遺言の場合】 メリット デメリット ・財産を特定の人に渡すことができる ・自社株を後継者に集中できる ・遺言者にとっては、後継者が相応しく ない時にはいつでも撤回できる ・公正証書遺言の場合は、紛失・隠匿・ 偽造のおそれがない。同様に、家庭 裁判所による検認手続が不要 ・複数の遺言があると相続人同士で もめる ・後継者にとって撤回される危険性が あり、生前贈与に比べて地位が不安 定 ・公正証書は手間と費用がかかる 同時に証人二人が必要であり、秘密 性の面では完全ではない ・遺言での分割は遺留分を侵害する可 能性がある⇒「特別受益」に該当する ⇒生命保険の活用(代償交付金) 14 「遺言」のポイント 株式を後継者に渡すには、「遺言」と言う手段があります。 遺言を遺すことにより、経営者の突然の死亡にも、後継者への経営権を確保 しておくことができます (ただし遺言でも犯すことの出来ない財産、それ が「遺留分」) 後継者に 株 式 遺言で 確実に渡す 事業承継対策 (経営者の確保) (民法上) 遺言は非後継者の 遺留分を侵害 遺言=特別受益財産とし て遺留分算定おいて 「持ち戻し」となる ○生命保険で代償交付金作り 15 「自筆」「公正」「秘密」証書遺言のメリット・デ メリット比較 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言 ・遺言の形式不備等により無効に ・遺言者が単独で作成でき なるおそれがない ・遺言書の存在が メ る ・原本は、公証役場にて保管(永 明らかでありな リ ・費用がかからない 久保存)されるため、紛失・隠匿・ がら、内容を秘 ッ ・作成の事実・内容を誰に 偽造のおそれがない ト 密にしておける も知られない ・家庭裁判所による検認手続が 不要である デ メ リ ッ ト ・方式不備等により無効と なるおそれがある ・証人2人以上の立会いが必要 ・遺言の紛失・隠匿・偽造・ ・方式が厳格で作成までに手間 変造のおそれがある がかかる ・文意不明により内容の ・費用(注)がかかる 真意が争われる ・家庭裁判所の検認手続 が必要である ・手続きが面倒な 割には内容が無 効になる危険性 がある ・遺言書は公証人 役場に保管され ないため、紛失 等の危険がある ※生前贈与の場合と同様に、遺留分による制約を受けます ※遺言者である経営者はいつでも遺言の撤回ができるので、生前贈与の場合に比べて、 後継者の地位が 不安定となります 16 ③ 納税猶予制度の活用 「納税猶予制度」とは、先代経営者から後継者に自社株を相続(または贈与) した場合、一定の割合までの相続税(または贈与税)の納税を猶予する制度です ・相続税の納税猶予制度・・・発行済議決権総数の3分の2の80%まで ・贈与税の納税猶予制度・・・発行済議決権総数の3分の2まで 事業承継における「納税猶予制度」のメリット・デメリット メリット ・後継者にとっては自社株にお ける相続税・贈与税の負担を軽減できる =税負担が軽減され、事業を承継し易い ・親族以外の後継者にも活用できる (平成27年1月1日から) デメリット ・認定・継続要件が厳しい ⇒認定取消となると猶予された税額 とそれまでの利子税の一括支払い 17 非上場株式等の相続税の納税猶予制度 相続または贈与 株式等 先代経営者 後継者 相続税の納税猶予制度の概要 後継者が、相続(または遺贈)等により、経済産業大臣の認定を 受ける非上場会社の株式等を、先代経営者から取得し、その会社 を経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、 一定の部分(発行済議決権総数の3分の2)の株式等に係る課税 価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます 18 【相続税】 納税猶予制度の要件等の流れと改正点 ●毎年80%の雇用 確保⇒5年間の平均 で80% ●後継者の親族要件廃止 ●事前確認制度 の廃止(平成25年 4月からスタート) 確認要件 相続開始前 相 続 発 生 ●資産保有型・資産運用 型会社の要件見直し 継続要件 (5年間) 認定要件 8ヶ月 5ヶ月 ●認定取消し⇒延納・ 物納選択を認める 申 告 期 限 5年間 ●猶予額の全部又は 一部を納付する場合、 5年間の利子税免除 継続要件 (以降) 免除要件 ※事前確認以外は平成 27年1月1日か適用 10ヶ月 1年 ●【新設】民事再生許可決定⇒納税猶予額を再計算して継続 ●株券不発行会社についても一定要件で納税猶予制度を適用 19 【贈与税】 納税猶予制度の要件等の流れと改正点 ●後継者の親族要件廃止 「贈与税の 納税猶予」 独自のもの ●贈与者は役員でないこと ⇒代表者でないこと ●役員である贈与者の会社 からの給与受給OK ●事前確認制度 の廃止(平成25年 4月からスタート) 確認要件 ●毎年80%の雇用 確保⇒5年間の平均 で80% ●資産保有型・資産運用 型会社の要件見直し 継続要件 (5年間) 認定要件 贈与開始前 贈 与 発 生 翌年1月15日まで 申 告 期 限 翌年3月15日 ※事前確認以外は、平成 27年1月1日から適用 ●認定取消し⇒延納・ 物納選択を認める 5年間 ●猶予額の全部又は 一部を納付する場合、 5年間の利子税免除 継続要件 (以降) 免除要件 ●【新設】民事再生許可決定⇒納税猶予額を再計算して継続 ●株券不発行会社についても一定要件で納税猶予制度を適用 20 ④ 後継者による直接買い取り 株主から後継者が直接買い取る(相対で買い取る)ことによって、会社 の経営権を強化することができます 買取先は親族以外の他の株主や、経営者死亡の場合に自社株を相続した相 続人からです 問題として考えられることは、株主が自社株の譲渡を拒否すること、およ び後継者に買い取るための資金がないことが考えられます 後継者による直接買取りのメリット・デメリット メリット デメリット ・うるさい親族以外の株主から自社 を直接買い取ることにより、後継 経営がし易くなる ・他の相続人から買い取ることによ 経営権の争いを防ぐことができる ・買い取るための資金が後継者には ない ⇒生命保険の活用 (個人契約・法人契約) ・株主が拒否した場合は買い取れな 21 ⑤ 金庫株の買取り 金庫株とは、企業が自社の株式を買い戻して、手元に置くことをいいます 株券を手元の金庫にしまっておくところから「金庫株」と呼ばれています 2001年10月1日、商法改正が施行され、金庫株が解禁となりました これにより、企業は目的を問わずに、自社株を取得・保有できるようになりました 事業承継における「金庫株」買取りのメリット・デメリット メリット ・相続人から買い取ることにより、後 継者との間で経営権を争うことを防 ぐことができる ・うるさい株主から自社株を買い取る ことにより、後継者の経営がし易くな る ・分散した自社株を会社が買い取るこ とで、経営者の支配権を強める ・引退後の老後資金作りにもなる デメリット ・剰余金分配可能額がないと買い取れ ない(財源規制) ⇒生命保険の活用(分配可能額と買取 資金の捻出) ・株主が拒否した場合は買い取れない ⇒対抗策「売渡請求」を定款に盛込む ・中心的同族関係者の買取り価格は 相続税評価より高くなる ・買取りには「特別決議」(出席株主の 議決権の3分の2以上の賛成)が必要 22 自社株集中のための金庫株買取り 金庫株は2つある 生前金庫株 相続金庫株 会 社 会 社 相続により相続人からの買取り (申告期限から3年以内) 任意の買取り 後継者の経営に支障 が出そうな株主 譲渡の拒否。価格が折り合わなけ れば取得不能。他の株主からの譲 渡請求もある(売主追加請求) 課税は みなし配当所得 株主 相続人 相続人である株主が拒否すれば買い取れ ないが、定款に「売渡請求」を定めておけ ば、相続人からの買取りを強制できる また、売主追加請求はない 課税は 譲渡所得 23 金庫株は「剰余金分配可能額」がないと買い取れな い 【財源規制】 (純資産の部) 貸借対照表(B/S) 1 2 資本金(A) 資本剰余金 資本準備金(B) その他の資本剰余金 3 利益剰余金 利益準備金(C) その他利益剰余金 任意○○積立金 繰越利益剰余金 負債の部 資産の部 純資産の部 (資本の部) 4 根拠条文 会社法461条の2 項 「分配可能額と は」 合計= 剰余金 分配可能額 自己株式(▲) 純資産合計(D) 剰余金分配可能額=D-(A+B+C) 24 金庫株買い取り資金は「生命保険」がベスト! 貸借対照表(B/S) 貸借対照表(B/S) 増加した現金 死亡保険金 (税引後の保険金) 資産の部 生命保険金に 資産の部 よって、買取り 資金の増加 生命保険金に よって、剰余金 分配可能額の 増加 負債の部 負債の部 負債の部 純資産の部 純資産の部 純資産の部 (資本の部) (資本の部) (資本の部) 会社契約の生 命保険に加入 することにより、 剰余金分配可 能額を増やす と同時に、買 取りのための 現金をも準備 することができ る! 増加した剰余金分配可能額 死亡保険金 (税引後の雑収入) 25 生命保険を活用した自社株買取資金準備! - 契約形態と保険金額の決め方 - 契約者 被保険者 保険金受取人 法人 自社株買取り対象者 または役員 法人 ※自社株買取り対象者ごとの保険契約が必要 保険金額の考え方 一株当りの 買取り価格 × 買取り対象者の 持株数 1.5 × = 5 準備額 買取り価格 は時価!… 純資産価額等 (法人税カット前) × 対象者の 持株数 × 1.5 5 ※平成26年4月1日以降法人実効税率約35%で計算 26 【参考】 「売渡請求」とは? 相続や合併等により株式を取得した者に対し、会社がその株式の売渡を請求する ことが出来る(会社法174条) 株主が 死亡 相続人が 株式を取得 株主総会の 特別決議が必要 出席株主の議決権の2/3 以上の賛成が必要 売 渡 請 求 会社がその株式を 強制的に買取り可 譲渡制限株式会 社に限る 買取り価格が折り合わないとき 裁判所への買取価格決定の申し 立ては売渡請求の日から20日以内 相続人等には議決権 がない 相続金庫株には「売主 追加請求権」がない 『売渡請求』は 相続等があったこと を知ってから 1年以内に出す 27 ⑥ 従業員持株会 自社株の取得・保有を推進させる従業員の株主制度です 経営権に影響しない程度の株を、「従業員持株会」(民法上の持株会)に配 当還元方式によって低額で譲渡することにより、株式を社外に流出するこ となく安定株主として事業承継対策上有効となる 事業承継における「従業員持株会」活用のメリット・デメリット メリット デメリット ・経営者の相続税対策に効果がある ・会社の資金調達の有効な手法 ・安定株主となる ・従業員の財産形成の援助となり、 福 利厚生対策にもなる ・株式配当をすることによって、従 業 員のモチベーションを高める ・株式市場がないため換金性が乏し い ・従業員持株会からオーナー一族が 買い戻す場合には、課税問題が生 ずる ・従業員との株主関係が悪化すると、 会社運営が混乱する場合がある 28 「従業員持株会」 従業員持株会の組織には、次のようなものがある ① 法人組織になっている場合 ② 社団としての形態を持っている場合 ③ 民法上の組合になっている場合※ ④ 従業員がそれぞれ直接株主となっている場合 一般的には、「民法上の組合」とする例が多くなっている。理由は、従業 員が退職するときに高額で買い取りを請求されたり、株主としての権利を乱 用されたり、関係のない第三者に譲渡されるということを防ぐためである。 さらに自由に自社株の引出しができないように譲渡制限を付与しておくこと も大切である ※「民法上の組合」とは、各当事者が共同事業を営むことを約することによってその効力 が生 ずる民法667条に規定する組合契約により成立する組合を言う 譲渡価格 譲渡価格 ⇒配当還元方式 ⇒配当還元方式 従業員 従業員持株会 社長 買戻し価格⇒配当還元方式 原則評価との差額が贈与税 買取価格 ⇒配当還元方式または買い入れ価格 29 ⑦ 投資育成会社の活用 中小企業投資育成会社とは「中小企業投資育成株式会社法」に基づき設立さ れた、公的な投資育成機関のこと。業務は中小企業が発行する株式等の引き受 けにより、長期安定資金の提供とともにコンサルティングを通して優良企業への 成長をサポートしている。企業の経営者側にとっては物言わぬ安定株主としての 存在価値が大きい。現在は大阪、名古屋、東京の投資育成会社の3社で、昭和3 8年の設立以来およそ5,000社が利用 事業承継における「投資育成会社」活用のメリット・デメリット メリット ・収益還元方式での株価算定(買取り 価格)され、自社株の評価を引き下 デメリット ・株価の低い評価額でしか引き受けな い(収益還元方式) ・一定規模以上の利益を確保している 企業および一定以上の割合の配当を 行っている会社が対象 30 ⑧ 名義株の解消 名義株とは「名義を借りている株」のことです。平成2年の商法改正以 前は株式会社設立には最低7人の発起人が必要でした。そのため経営者は 親戚・知人や友人に名前(名義)だけを借り、自分でお金を出して会社を 設立していました。 この名前だけを貸している人の株式を『名義株』と呼びます。実態とし ては株主ではありませんが、株主として名前が残っている人のことです。 名義株を解消することによって、将来のトラブルを防ぐとともに、経営 者の持ち株が実態として増加します。 事業承継における「名義株」のメリット・デメリット メリット ・会社を設立するのに必要であった デメリット ・解消には当事者同士の納得が必要 ・名義株主が死亡し、相続人から買 請求 ・最悪は少数株主権を主張 31 ⑨ 種類株式の発行 「種類株式」とは、剰余金の配当や議決権の内容等について、他の株式と内容 の異なる、複数種類の株式をいいます。種類株式発行の目的の第一は、「会社 支配権の確保」でしょう。特に議決制限株式・譲渡制限株式・(全部)取得条項付 株式・拒否権付株式(黄金株)・取締役選解任権付株式などがこれにあたります 事業承継における「種類株式」活用のメリット・デメリット メリット ・会社支配権が確保できる ・費用がかからない デメリット ・種類株式発行には出席株主の議決 権 の3分の2以上の賛成が必要 (特別決議) ・支配権は確保できても相続税対策は 出来ない 32 (参考)種類株式 【9種類+α】 剰余金配当 優先株式 残余財産分 配優先株式 議決権制限 株式 譲渡制限 株式 取得請求権 付株式 取得条項付 株式 全部取得条 項付株式 拒否権付株 式(黄金 株) 属人的種類 株式 取締役・監 査役の選・ 解任権付株 式 33 平成26年5月現在の資料です 平成26年5月現在の資料です 【相続による自社株取得】 納税・分割問題と生命保険の活 用 個人保険の活用 (納税資金) 納税資金 不足のカバー 納税 問題 納税猶予制度 の活用 自社株を 相続で承継 法人契約の活用 (退職金適正額) 金庫株の活用 (後継者から買取 り) 法人契約の活用 (後継者納税資金相 当) 納税猶予の 取り消しリスク 非後継者が 自社株を相続 するリスク 分割 問題 遺言あり 一時所得形態 死亡退職金の活用 ③ 遺言なし みなし相続形態 後継者による 遺留分侵害 リスク 個人保険の活用 (納税資金合計額) 金庫株の活用 (相続人から買取 り) 相続人から 相対での買取り ① ② 法人契約の活用 (法人買取り資 金) 個人保険の活用 (個人買取り資 金) ③ 個人保険の活用 (代償交付金) ④ 36 遺言で後継者に自社株を集中させた場合 ① 後継者の納税資金確保 1.後継者の納税資金確保に自社株の一部を買取 り 契約者 被保険者 受取人 法人 経営者 法人 会 社 売却代金支払い 相続税支払い ●後継者の納税資金額×1.55倍 =加入する保険金額 ●(後継者の納税資金額×1.55 倍) ÷1株当たりの評価額 =買い取る株式数 経営者の相続財産 経営者の相続財産 自社株含む (自社株は後継者へ) 自社株の一部を売却 後継者(自社株) 他の相続人 他の相続人 37 ②相続税の納税猶予制度の取り消しリスクと生命保険 改正後、納税猶予制度が緩和されても、取り消しリスクは残っている! 継続要件(5年間) 相 続 発 生 申 告 期 限 5年間 納税猶予の 取り消しリス ク 生命保険を使って納税猶予の取り消 し リスクをカバーする。保険金 額は最低でも猶予された税額以上、相 続税総額未満 継続要件(以降) 安心して納税猶 予が活用できる 個人保険で納税資金確保 契約者 被保険者 受取人 経営者 経営者 後継者 契約者 被保険者 受取人 後継者 経営者 後継者 38 遺言がない場合 ③円満な経営承継のために、非後継者から金庫株の買 取り 遺言がない場合には、他の相続人も自社株を 相続することが充分考えられます 他の相続人と後継者との経営権の争いを防ぐ ために、生命保険を活用して自社株の買取り資 金(いわゆる金庫株買取り資金)を確保し、円 満な事業承継につなげます 契約者 被保険者 受取人 法人 経営者 法人 経営者の 経営者の相続財産 相続財産 自社株含む (自社株含む) 会 定款に、相続人に 社対する「売渡請求権」 を盛り込む 買取り代金支払 自社株の売渡し 相続人・保有自社株 他の相続人 相続人・保有自社株 他の相続人 買取り資金(剰余金分配可能額)が不 十分な場合、後継者個人が買い取るた めの資金を、次ページ個人保険で準備 することもできます 後継者 39 遺言が無く、会社での買取りも剰余金がなくてできない場合 ③ 自社株買取り「円満な事業承継」 遺言がないため、他の相 続人も自社株を相続 そのため後継者との間で 経営について揉める 会社での買取りもできな い 経営者の相続財産 自社株含む 会社での買取り不可 (分配可能額がない) 相続人・保有自社株 他の相続人 相続人・保有自社株 他の相続人 現経営者からの保険料贈与を活用 個人保険で自社株買取り資金確保を! 契約者 被保険者 受取人 後継者 経営者 後継者 生命保険金 後継者 後継者自身が 自社株を直接個人で 買い取るために、生 命保険を活用 40 遺言があり他の相続人の遺留分を侵害する場合 ④後継者の代償交付金作り 1.個人保険で代償交付金作り 契約者 被保険者 受取人 後継者 経営者 後継者 経営者の相続財産 自社株含む 経営者の相続財産 (自社株は後継者へ) 後継者自身の保険料 捻出が難しい場合、 父親からの保険料贈 与等を活用する 後継者(自社株) 生命保険金 他の相続人 他の相続人 代 償 交 付 金 41 平成26年5月現在の資料です 【贈与による自社株取得】 遺留分問題と生命保険の活用 ① 暦年贈与 自社株を 贈与で承継 相続時精算 課税制度 自社株の生 前贈与によ る 遺留分侵害 リスク 個人保険の活用 (代償交付金) 民法特例 「除外合意」 「固定合意」 ② 贈与税の納税猶予制度 43 自社株の生前贈与にはメリットが多い が・・・! 後継者に 自社株式を 生前贈与 株 式 暦年贈与 相続時精算 課税 (事業承継上) ①後継者への経営権の移転 が進む (相続税法上) ②相続財産が減ることに よっ て、相続税も軽減となる ③相続時精算課税の場合は 贈与された自社株の評価 額 が上がっても、贈与時点 の価 格で持ち戻し しかし・・・ (民法上)では、相続 人(後継者)に対する 生前贈与された自社株 は、「特別受益」とし て遺留分の算定おいて、 相続時点の時価で「持 ち戻し」の対象となる つまり後継者に生前 贈与された自社株は、 ほかの相続人の『遺留 分を侵害』する可能性 が高くなるという、デ メリットもある 44 生前贈与された自社株は、時価で遺留分の対象とな る! いわゆる「特別受益」として、遺留分算定時に『時価』で持ち戻しの対象となる! 相続時点の 時価評価 生前贈与さ れた自社株 生 前 贈 与 分 遺留分の減殺請 求が起こされ、 他の相続人へも 財産を分割 後継者 遺留分の算定基礎額 相 続 分 侵害分 自社株式 を含む 相続財産 社長 後継者 他の相続人 侵害分 他の相続人 45 ①自社株の生前贈与による遺留分侵害は生命保険で解消! 生前の自社株贈与における遺留分侵害問題は、生命保険の代償交付金で解消できる! 生前贈与され た自社株 遺留分侵害は生命保険 の活用で解決を! 相続時の評価額 (時価評価) 生 前 贈 与 分 契約者 被保険者 受取人 長男 父 長男 後継者 遺留分の算定基礎額 相 続 分 自社株式 を含む 相続財産 社長 後継者 代償交付金 代償交付金 遺留分侵害分 遺留分侵害分 他の相続人 他の相続人 46 民法特例 自社株式が相続財産の多くを占めるオーナー経営者にとって、生前贈与や遺言 を使って後継者に自社株を承継します しかし財産の大部分が自社株のため、相続発生後、他の相続人より 「遺留分 の減殺請求」が起される可能性があります。そうなると後継者は、遺留分を侵害し た部分に相当する財産を、他の相続人に渡さざるを得ません。このことにより株 式が分散し、経営が不安定になる可能性が出てきます。 「民法特例」は自社株の生前贈与に関わるリスク(遺留分算定における特別受益 の持ち戻し)を軽減できる特例です 事業承継における「民法特例」活用のメリット・デメリット メリット ・民法特例を活用すると、遺留分侵害 が起こらないか、起こってもごく小額で 済む ・経営の承継が安定する デメリット ・相続人全員の合意が必要 ⇒合意してくれない場合もある ・合意を得るために、代替資産が必要 になる場合もある ⇒民法特例を使わなくても、生命保険 の代償交付金で解決(前述) 47 ② 民法特例「(1)除外特例または除外合意」 相続人全員の合意があれば、贈与株式等は遺留分の算定基礎額から除外 生前贈与された自社株を、す べて遺留分減殺請求の対象外 に 生前贈与さ れた自社株 生 前 贈 与 分 後継者 相 続 分 他の相続人から合意を得るには、 代償財産が必要か? 前述の生命保険の活用も一考! 代償財産 代償財産 他の相続人 他の相続人 相続 財産 社長 後継者 遺留分の算定基礎額 48 ② 民法特例「(2)固定特例または固定合意」 相続人全員の合意があれば、贈与株式の評価額を固定化 生 前 贈 与 分 生前贈与され た自社株 後継者の 努力分 後継者 遺留分の算定額から、後継者に 対する「贈与分」を加えないことに 対し、他の相続人から反対が出る 場合がある この場合、贈与以降の価値の上 昇分は後継者の努力分が含まれる ため、それを除いて、例えば、「贈与 時点の価額に固定」して遺留分に 加える 遺留分の算定基礎額 相 続 分 相続 財産 社長 後継者 他の相続人 他の相続人 49 民法特例を受ける主な要件 (1)[会社の要件] ・中小企業であること ・3年以上継続して事業を 行っている非上場会社 (3)[後継者の要件] ・先代経営者の推定相続人 ・現在において会社の代表者 ・株式等を先代経営者から の贈与により取得 ・議決権の過半数を保有 先代経営者 (2)[先代経営者の要件] ・特例中小企業者の元代表 者又は現代表者 ・推定相続人の一人に株式 等を贈与したこと 株式等の贈与 特例合意の当事者 (先代経営者の推定相続人) 後継者 非後継者 非後継者 (4)[合意の必須要件] ①当事者全員の合意 ②合意の対象となる株式を除くと、後継者が議決権の過半数を確保できない ③非後継者が取るべき措置の定めがあること ・後継者が合意の対象とした株式を処分した場合 ・先代経営者生存中に後継者が代表者でなくなった場合 50 経営者個人の事業用の資産(プラスもマイナスも含めて)を、相続人 が承継することによって、様々な問題が発生します。 その問題解決には生命保険での事前準備が大切です。 (1) (2) (3) (4) 事業用の不動産等を相続人が承継 会社への貸付金を相続人が承継 連帯保証債務を相続人が承継 会社からの借入金を相続人が承継 平成26年5月現在の資料です (1) 事業用不動産を相続人が承継 会社 地代・家賃 社長が死亡したら、 会社に貸付けてい る 事業用不動産は誰 が継ぐか? 貸し付け 資金が ない! 社長個人の土地建物 相続人から 買取り申し出 52 生命保険を使って事業用不動産の買取り! -会社契約の生命保険で、相続人から不動産買取り資金作り- 契約者 被保険者 受取人 会社 社長 会社 相続人が相続した事 業用不動産を、会社 が会社契約の生命保 険を使って購入 事業用不動産を 相続 会社 買い取り 保険金 不安 解消 必要な保険金額=貸し付けている土地・建物の評価額×1.55倍 (定期的な見直し必要) 53 (2) 会社への貸付金を相続人が承継 会社 会社が順調に行 かない限りは戻 せない 会社設立時や資 金繰りが悪化した ときの給与からの 貸付金 お金の貸し付け 相続人 社長 相続人からの 返還請求 相続人 相続人 相続人 【問題点】 社長個人が会社に貸し付けている金銭(債権)は相続財産となり、 相続税の課税対象となる。相続人から会社に対する貸付金返還請求があっ たら、会社経営は経営困難になる? 54 「会社への貸付金対策」は生命保険で解消! お金の貸付け DESや債権放棄も あるが、貸付金対 策は、生命保険が ベスト! 会 社 社 長 対策 法人契約の生命保険で、死亡の場合も勇退 の場合も、借入金の返済資金ができるように 手を打っておく 契約者 被保険者 受取人 会社 社長 会社 55 (3) 「連帯保証債務」を相続人が承継 お金の借入れ 社長は 連帯保証人 社長が死亡しても 連帯保証債務は なくならない! 会 社 ○ ○ 銀 行 連帯保証債務 連帯保証債務 連帯保証債務 連帯保証債務 【問題点①】 会社の『連帯保証人』になっている社長が先に死亡した場合、 連帯保証債務は法定相続分に従って「当然分割」される 【問題点②】 『連帯保証債務』は、連帯保証人が債務を肩代わりしなければ ならないことが確定していないため、相続税の計算上、「債務控除」の対象とは ならない 56 「連帯保証債務対策」は会社の保険で解消! 法人契約の生命保険で、借入金の返済資金作り =連帯保証債務の解消へ 対策 ※保険金額=生命保険の加入時点における借入金残高×1.55 倍 (定期的に見直しの必要あり) 契約者 被保険者 受取人 会社 社長 会社 社長の死亡に より保険金が 会社に入る 連帯保証人 社 長 借入金返済 保険金 会 社 ○ ○ 銀 行 57 (4) 会社からの借入金を相続人が承継 社長が会社から お金を借入れ 会社 社 長 債務 会社から 返済申し出 債務 会社への借入金返 済資金は、個人の 生命保険か退職金 保険の上乗せで準 備 債務 債務 契約者 被保険者 受取人 社長 社長 相続人 会社 社長 会社 58 著作・制作: 株式会社シャフト 1.本資料の著作権は、株式会社シャフトが保有しています。 2.本資料は著作権法による保護を受けており、本資料の使用者は、本資料の全部又は 一部を株式会社シャフトの許諾なく無断で利用できません。 3.本資料の内容の改ざん・Copyrightの削除・ロゴマークの改変を行うことは禁じられています。 4.FP塾プレミアム会員に対しては、本人の営業活動に限り、使用を許可しています。 (ただし、セミナー活動等で使用する際には、当社への申請書の提出が必要となります。) 5.本資料で提供する情報について、その取扱いには十分注意しておりますが、 当社は利用者等が提供情報に関連して被った損害等について一切の責任を負いません。 6.本資料へのお問い合わせについては、株式会社シャフトまでご連絡ください。 〒531-0071 大阪市北区中津1-2-18 ミノヤビル7階 TEL:06-6375-8520 FAX:06-6374-7887 URL http://www.shaft-creations.com/ 『FP塾』 URL http://www.fp-school.com/
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